中途採用の転職活動に前職調査は今もあるのか?

転職活動で虚偽の申告をしている方がいれば、今すぐ事実を申告して転職活動を始めた方が良いです。

求職者の皆さんを100%信用していない企業が中にはあります。
私は元人事・現在の仕事である転職エージェントとして、未だに申告内容の真偽を調べている企業を知っています。

ただ、昔は転職者の申告内容に虚偽がないか調べる企業が当たり前だったのですが、最近は個人情報の兼ね合いでそういった企業は減っています。

今回は、未だに行われることのある転職活動での前職調査の実態についてご紹介できればと思います。

前職調査とは

求職者が現職または前職以前にどのような労働者だったのか調べる行為
・金融業界でされることが多い。
・費用には20万円程度かかるため、採用決定の直前になされるケースが多い。
・部長クラス以上のポジションであれば調査される可能性が高い。

前職調査をされる人

どのような求職者が前職調査の対象になることが多いのかご紹介します。

高い給料の役職者

まず、高い給料を貰える求職者や高い役職者の求職者です。

転職では、求職者の申告内容を参考にして経験がスキルを買われます。

新卒と異なり転職者の給与は高い場合が大半で、その人件費を考えると決して安い買い物ではありません。

つまり、求職者の給料が高ければ高いだけ企業のリスクが大きくなります。

この経営リスクを未然に排除するために、企業では前職調査を行うことがあります。

部長職以上の求職者は前職調査をされることが多いようです。

実際に、私は人事として前職調査に関わったことがありますが、中には、事実とは異なる職歴で転職活動をしている求職者もいました。

特に信用が必要な業界

次は業界です。

信用が必要な業界へ転職する方は役職など関係なく、確実に前職調査の対象となります。

ズバリ、お金を中心に扱う業界で金融業界はその傾向が強くあります。

消費者のお金を預かる立場として相応しい人材のみを採用したいという気持ちが強くあるためです。

金融業界として、

  • 銀行
  • 証券会社
  • 保険会社

などが挙げられますが、いずれも企業も求職者の採用に伴い前職調査を行います。

また、警備業界も前職調査を積極的に実施しています。

警備業と言えば、銀行の金銭を運送するような業務もあります。

特に信用が必要となるため、金融業界と同じく信用のおける人材だけを採用したいのです。

前職調査のタイミング

企業が前職調査を行うタイミングは、面接前ではなく、選考フローが全て終わったあとです。

企業は面接前に前職調査を行わないのは、前職調査に大きな予算が必要だからです。

前職調査には1名あたり数十万単位の経費が必要で、面接前に前職調査を行うとコストが大きくなるのです。

企業は募集している求人の選考を終えると、採用会議を開きます。

前職調査を行う企業では、最終面接後に候補者を2名~3名ホールドしており、その求職者から正式に内定を出すのです。

この採用会議の前に前職調査を行い、採用会議で前職調査結果も含めて最終的に内定を決めます。

ちなみに、転職エージェントも企業が前職調査を行うかどうか知っていますので、応募する相談してみるのが良いと思います。

前職調査はどのような方法で行われる?

求職者は現職に在籍しながら転職活動を行っているため、やましいことがなくとも転職先がバレるような調査は避けたいですよね。

そのため、前職調査は企業が直接行うのではなく、興信所などの第三者機関を利用して前職調査を行うことが原則となっています。

第三者機関が行う前職調査

私は人事として、第三者機関と前職調査に関して打合せをしたことがありますが、内心は非常に不愉快でした。

前職調査の打合せでは、その第三者機関に対して会社に提出した履歴書や職務経歴書を共有し、そこに記載されている企業を片っ端から調査するという流れでした。

その結果は全くでたらめな職歴の方もいましたし、自己申告に相違ない求職者の方もいました。

また、第三者機関となれば、職歴関係の他、家族構成や借金などもありとあらゆることまで調べ上げます。
ここまでくると探偵です。

金融業界では、借金をしている求職者は採用見送りになるそうです。

企業の人事担当者が前職調査するパターン

第三者機関が普通は前職調査を行うのですが、数十万円単位でかかる費用が非常に高いので、自社で前職調査を行う企業もあります。

この場合は前職に対して企業名を名乗らず、個人名で対象となる求職者の状況を調べます。

現職中の求職者からすると企業名を名乗られてはたまったものではないでしょう。

社会保険の加入歴を調べるパターン

前職調査の中心は職歴で、企業に対して行うことが基本ですが、社会保険の加入を調査することもあります。

この問い合わせ先はハローワークや年金事務所になります。

国が管轄している公共機関であるため、そう簡単には開示しません。

開示する場合は本人の同意書と印鑑が必要で、最も調べる難易度が高いと言われています。

前職調査は違法ではないのか?

役職や業界に関係なく、前職調査は個人情報保護法の観点で違法です。

本人の同意なく、プライバシーに関係する情報を取得することはできません。
また、情報を提供するのも違法になります。

この個人情報保護法の規制が強くなったため前職調査が少なくなったのです。

ただ、前職調査は、ある工程を踏むことで違法ではなくなります。

事前に求職者に同意を取っていれば、適法で前職調査を行うことができるのです。

企業は、求職者の身にやましいことがないのであれば前職調査に同意するだろうと考えており、同意しない場合はそもそも怪しいのです。

違法の前職調査

前職調査は同意を取得していれば法的には全く問題ないのですが、中には求職者の同意なく前職調査する企業があります。

個人情報保護法は比較的新しい法律で、数年前に規制が厳しくなったものです。

その規制が厳しくなっても、ばれなければ良いという精神で同意なく第三者機関に前職調査を依頼する企業があります。

第三者機関もプロでやっているため、今まで同意なく前職調査を行い発覚したケースがないのです。

第三者機関との打合せに同席した経験がある私から言わせると、ありとあらゆる方法を使って調査します。
そこまでやるのか?というぐらいにです。

ただし求職者は同意していないため、前職調査を何らかの形で知った場合は、その企業を相手に訴訟すれば絶対に勝訴できます。

前職調査での失敗例

同意を取らずに前職調査をされた

これは私が元人事担当として前職調査を拒否した事例です。

この時は、対象となる求職者がすでに退職しており、転職先企業の人事担当者から突然電話がありました。

『御社の元従業員である○○様が今、当社の採用選考を受けているのですが、在籍期間と、業務内容、最終役職、賃金について教えて欲しい』といったものです。

私は、退職した元従業員から前職調査に関する同意の連絡を受けていなかったため、企業から同意の有無を尋ねられていないということでした。

その段階で違法行為であることを伝え、情報開示を断りました。

私は元従業員に事実を伝える必要があったため、本人に連絡したところ、非常に不愉快だとしてその企業は辞退したようです。

なお求職者が現職中の場合は、よほどのことがない限り企業が直接 前職調査をすることはありません。

現職に転職活動がバレてしまった

これまた、ある企業から私が元人事担当として前職調査の依頼を受けた話です。

その企業は有名なブラック企業で、法律は一切無視、求職者の立場も一切無視でした。

電話で『御社で勤務している○○さんが、当社の選考を受けていますが、勤務態度はどうですか?』と聞いてきました。

私は、その求職者が転職活動をしていることを知りませんでしたので、その企業からの前職調査の電話で知ったのです。
本来、このようなことは絶対にあってはいけないことです。

私は、その従業員にその事実を伝える義務があったため、前職調査の電話があったことを伝えました。

その求職者は、そのことを聞いて選考を辞退して違う企業へ転職しましたが、転職活動を知られたことで気まずい思いをしています。

この2つの前職調査の失敗例から分かるように、前職調査が個人情報保護法と強く関わっていることを知らず、当たり前のように違法行為を行う企業も存在します。

前職が調査を悪用するパターンも

前職の企業が調査で虚偽の内容を伝え、求職者の転職活動を妨害するという最悪なパターンもあります。

もしかすると求職者にも責任があるのかもしれませんが、転職活動の基本は立つ鳥跡を濁さずです。

この求職者は、転職に伴う退職の引継ぎで適当に仕事をしてしまい前職の印象を下げており、恨みを買って転職してしまったようです。

そして、時を経て次の企業への転職を試みましたが、その企業が前職調査を行う企業だったのです。

前職調査の同意は取っており、法的には何ら問題はなかったのです。

求職者も恨みを買った企業が、転職妨害するとまでは思っていなかったのでしょう。

その企業は前職調査の結果を本人に間違いないかどうか照合する工程を持っており、そこで求職者がこの事実を知ったのです。

話が逸れてしまうかもしれませんが、退職する企業とはうまく対応して変な関係で退職しない方が今後のためです。

前職調査のメリット

これまで、前職調査について個人的な意見含めて否定的な内容を紹介しましたが、前職調査が求職者にとってもメリットとなることがあります。

前職調査を行った結果、正式に内定が決まると、内定条件が良いのです。特に年収面においては、前職調査の結果で虚偽がなかったということで、企業は100%の信用をします。

通常は、内定を出しても、その求職者がまだ実際に就業していないため、100%までの信用がないのです。

前職調査後は、給与面のほかに、前職調査の恩恵だと思いますが、通常はあるべき入社後の試用期間が排除されることがあります。

この試用期間も、企業が100%、求職者を信用していないための設定するものですが、前職調査で100%の信用を勝ち取ったために、試用期間がカットされます。

また、入社後も、その企業の重役とは円滑なコミュニケーションを取る環境ができるため、入社して間もない中でも、スムーズに馴染むことができます。

前職調査が入社後に?

ほとんどの場合、前職調査は入社前になりますが、入社後に求職者の前職調査を行う場合があります。

求職者の仕事ぶりが明らかに履歴書や職務経歴書の内容と違う場合です。

この前職調査は、私も納得するところが多いです。
企業は求職者の自己申告を信じて、仲間として迎えたにも関わらず足した結果を出せない求職者は、周りに違和感を持たれて当然です。

ただし、この場合ももちろん求職者の同意を得ることが必要ですし、前職の企業も求職者の同意を得る必要があります。

大体の場合は、前職調査を行って良いかどうか聞くと求職者は虚偽があったことを自白します。

この場合は、虚偽により入社したということで最悪は懲戒解雇、または減給や降格という処分になります。

まとめ

前職調査は今でもあります。

私がお伝えした業界に転職を希望する方や、高い給料や高い役職で転職を希望する方は、前職調査があると思っていた方が良いと思います。

 

個人情報保護法があると言っても、法令の知識を有していない人事担当者もいるため、違法行為である認識がないまま求職者の前職調査を実施する企業もあります。

求職者にはその違法行為で大きな損害が出ることが多いです。

これを未然に回避することが前職調査への対策となりますので、是非転職エージェントに前職調査の有無について確認した方が良いでしょう。

前職調査はやはり入社後の勤務態度に問題があった際に行うの対等です。
特定の業界を除けば、今は少しずつこの動きに変わりつつあります。

企業の中には職歴だけではなく、学歴についても前職調査の項目に入れている場合がありますので、そちらもしっかり事実を申告しましょう。

求職者の皆さんが、前職調査に翻弄されず、良い転職活動ができるよう祈りながら、今回はこれで終わりにしようと思います。

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