就活が転職に与える影響

企業の採用活動は『新卒採用』と『中途採用』に分けられます。

今回は『就活が転職に与える影響』ということで、転職に就活がどのような影響をもたらすのか、いくつかの視点でご紹介したいと思います。

幸いなことに私は転職エージェントとして就活生の就職支援も行っていますので、新卒採用視点も具体的にご紹介できるかなと思います。

転職活動は、求職者がこれまでの経験を企業に売り込むことで成り立つものです。

経験は過去のものでどうにもならないということはご理解いただきたいのですが、過去の就活生として行った就活が今の転職に大きく影響しているのです。

このあたりのことを理解することで今後の転職活動に生かせることもあると思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。

求職者の前職

転職活動をしている求職者は必ず前職を持っています。

この前職は、転職市場において大きな指標の一つで、企業は前職をもとにみなさんの経験をイメージします。

私もこれまで何度か転職経験がありますが、いずれの転職においても新卒で入社した企業の影響は受けていると感じています。

これまで経験したことがない業界や職種へ転職したいと考えている場合も、新卒で入社した企業があるからこそ違ったキャリアを考えることができるのです。

そのため、転職活動において重要なことは、みなさんが新卒としてどのような企業へ入社したのかということです。

求職者の転職パターン

転職エージェントとして、私が感じる求職者の転職傾向があります。

面談などをして求職者の方を知る前に、履歴書や職務経歴書などでこれまでの経歴を見ると、何となく転職先の企業に希望している条件の予測がつきます。

この傾向とは『企業規模』です。

企業規模は大手企業とベンチャー企業の二つに分類されます。

新卒で大手企業へ入社した方は総じてベンチャー企業に転職したいと考える方が多く、逆に新卒でベンチャー企業へ入社した方は大手企業に転職したいと考える傾向があります。

100%私の予測が当たるわけではないのですが、求職者の方の履歴書や職務経歴書の職歴を見れば、大体想像がつくのです。

転職先にベンチャー企業を希望する理由

新卒で大手企業へ入社した方が、なぜベンチャー企業への転職を希望する場合が多いかと言いますと、就職活動で感じた大手企業へのイメージが実際と違うと感じていることが根本的な理由です。

大手企業へ新卒として入社した方は、入社前から大手企業に対してはこの環境は想定内であり想定通りですが、いくつか違う点もあるようです。

と言うのは、『昇給率』と『昇格率』です。

大手企業は組織の人員が多く仕事量があまり多くないため、入社後数年は裁量権の高い仕事をすることが難しく、昇給や昇格があまりよくありません。

また、大手企業の場合は組織の人員が充足していて、ポストの枠がないということがあります。

仮に大きな成果を出せば昇給には良いリターンがあるとしても、それに付随する役職はなかなか難しいです。

このような環境を不満に感じるのであれば、実績に見合う評価を受けることができる組織が未熟なベンチャー企業へ転職したと考える求職者の方が多いのです。

就職活動を経て入社した企業が大手企業であるからこそ、大手企業の良さや逆の状況を知ることができ、転職ではベンチャー企業へ転職することを希望できるのです。

転職先に大手企業を希望する理由

次は逆のパターンです。

ベンチャー企業へ新卒として入社した求職者は、新卒の際に抱いていた入社理由が退職意向の大きな原因に変わる場合が多いです。

新卒としてベンチャー企業に入社した理由であり、ベンチャー企業を退職する原因とも言えるものは『ハードワーク』です。

ベンチャー企業は小資本のなか、少ない従業員数で大手企業と同等の事業展開をしなければ生き残っていくことができません。

従業員ひとりが抱える仕事量は、大手企業の従業員ひとりが抱える仕事量の2倍、3倍は当たり前の環境です。

また、新卒時代からプロジェクトの中心人物として仕事に携わることもできますし、責任の大きい仕事を任せられます。

その仕事の成果が良ければ、大手企業の2倍、3倍以上の昇給やそれに見合う役職も付く場合が多いです。

ベンチャー企業はハイリスクハイリターン

従事した仕事すべての結果が良くなることはありませんので、大した成果が出なければ2倍、3倍の仕事量や大きな責任は水の泡になり、昇給やそれに伴う役職も得られません。

大手企業やベンチャー企業に関係なく、仕事はうまくいくことの方が少ないです。

あるベンチャー企業の経営者は、

『100本の新しい企画を立ち上げても、うまくいく企画は1本あるかないかで大半の企画は失敗に終わる』

と言っていました。

立ち上げた企画がうまくいくことの方が多いのであれば、経験をもとに独立起業することの方が多いでしょう。

話を戻しますが、新卒としてベンチャー企業に入社した方の多くは、就活時代にベンチャー企業の良い面を強くイメージし過ぎて、仕事の成果がうまくいかなかった場合のリスクをあまり考えずに入社してしまっていることが多いです。

転職にはハードワークは絶対避けたいと考える

このように新卒者が夢を見てベンチャー企業へ転職することが最近増えているのですが、これにはベンチャー企業のリスクを包み隠す採用手法に原因があるように思います。

「ベンチャー企業に入社すると仕事量は多いですがその分の見返りは大きい」

とベンチャー企業の人事担当者は絶対に言います。

また、仕事量を通じてビジネスマンとしての自己成長も実現できると必ず言います。

私はベンチャー企業に入社した新卒者を何人も見てきていますが、豊富な仕事量で高いお金を得ることができ、仕事量から自己成長につながっているという新卒者は数パーセントに過ぎません。

ほとんどの新卒者はハードワークに見合った成果が出せず、昇給や昇格ができていません。

その結果、心の部分で折れてしまい、多くの新卒者がベンチャー企業を退職しようと考えます。

ベンチャー企業の新卒者が3年以内に離職する確率は約3割~4割と言われています。

多少の差はあっても、どれだけベンチャー企業が厳しいかが分かると思います。

ここで少し余談

ベンチャー企業にて入社した新卒者が入社から3年以内に3割ほど退職するとお伝えしましたが、日本の企業全体ではどれぐらいの割合の方が3年以内に退職すると思いますか?

答えは3割程度です。

つまり、日本の労働市場として問題になっている新卒者の早期離脱の中心的な存在がベンチャー企業に新卒入社した方です。

ベンチャー企業の労働環境が問題ということではなく、就活生の研究が浅いということと、新卒採用を担当する人事が良い部分だけを伝えてしまうという部分が問題でこのような状況になっています。

転職に大手企業を希望する求職者の思い

ハードワークをずっと続けていくことに不安を感じるということで、昇給や昇格はそこまで高くなくとも仕事量は少ない大手企業への転職を希望する求職者が多いです。

このようなタイプの求職者の方の本質的な思いは、やはり『安定と継続』だと思います。

日本人は保守的な人種だと言われていますが、この保守的な考えは仕事に対しても同じです。

しかし、最近日本にはベンチャー企業が多く、年齢が若くても起業してジャパニーズドリームをつかんだ経営者が多くいます。

ジャパニーズドリームを自分もつかみたい、または同じ労働者であるならば高いお金を得ることができるベンチャー企業で勝負したいと思う人は多いです。

誰しもベンチャー企業に入社することで自分なら成功者になれると考えているでしょうし、ネガティブなことを前提にベンチャー企業に入社する人はいないと思います。

ただ、問題は誰にも平等にチャンスがあるというだけであり、全員が成功するとは限らない点です。

過去の苦い経験も転職活動ではプラスに働く!

企業規模を中心にここまでご紹介してきましたが、、転職活動を行う求職者の方にとっては経験がすべて財産になります。

ビジネスマンとして仕事をすることは楽しいことばかりではないですし、むしろ自分の思い通りにいかないことの方が多いと思います。

求職者のみなさんのなかには、新卒で選んだ企業が失敗だったと思うこともあるでしょう。

しかし、過ぎ去った過去はどのような人であっても変えることはできないのです。

私も自分のビジネスマン人生で『あの時代に戻ってやり直したい』とか、『あのとき、こうしていれば良かったかも』と思うことはありますが、このような思考は後悔を自分自身に植え付けるだけで、前向きなことにつながりません。

過去を反省して今後に生かすことは大切なことですが、いつまでも悔やんでいても前に進めません。

学歴や職歴などは過去の自分が積み上げてきたもので、絶対に自信を持つことは難しいかもしれませんが、割り切って前向きに捉えることが大切です。

就活を悔やむことはない!

ネガティブな思考をしていると、面接などでも気が付かないうちに言葉として出てしまい、転職活動もうまくいかないこともあります。

この思考を前面に出すよりも『こんな企業に転職したい』という前向きな思考を前面に出した方が転職活動はうまくいきますし、その方が楽しくなれるのではないかと思います。

就活を悔やみ続ける方もいますが、その失敗があるからこそ、今正しい判断基準で転職活動を行うことができるのです。

失敗は財産と捉えて、自分の人生も掛かっている転職活動を楽しんでみてはいかがでしょうか?

面接官も人です。そして、面接を受ける求職者のみなさんも人です。

ネガティブにネガティブを重ねたタイプの求職者は、面接官に対して前向きなオーラで選考を進めていけるでしょうか。

恐らく大体の方は、うまくいかないことの方が多いと思います。

転職活動では1社の選考がだめでも次の企業の選考と考えることもできますが、一つ一つの企業や面接を大切にすることが転職活動の成功につながると思います。

就活と転職

『就活』と『転職』は、『過去』と『現在』です。

求職者の方ごとに違いますが、必ずそれぞれに影響があります。

経歴は変えることができない以上、みなさんは経歴を不安要素ではなく武器に変えるメンタルが重要です。

転職エージェントとしての私が思う転職活動の成功のカギは、気持ちの持ちようだということです。

泥臭い言い方になりますが、気持ちの部分が転職活動には大きく左右しますので、自分の経歴を前向きに捉えて転職活動を楽しんでみてください。

転職は就活の経験を良くも悪くも生かすもの!

就活で判断を誤り失敗した方も、結果的に新卒入社は成功した方も、今は同じ転職活動をしている求職者であることに変わりはありません。

就活時代に比べると、経験や知識という意味では過去の自分よりも明らかに上回っていると思いますので、視野も広くなっていると思います。

社会や企業に対して判断基準は高いものになっているはずです。

ぜひ、この経験や知識を転職活動で生かして、自分の将来へ繋がるような活動をしていただければと思います。

私も現在、求職者の方とともに就活生の就職支援を行っていますが、就活生よりも明らかに転職活動希望者の方が、話す内容も人間的なレベルも違います。

成功や失敗それぞれ違いがあると思いますが、現在の転職という『結果』についてはこだわって活動してみてほしいです。

最後になりますが、求職者のみなさんが最高の転職活動ができることを祈り、今回の話はこれで終わりにしたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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