中高年の求職者と中高年の求人について
みなさん、こんにちは。
最近、中高年の就職難民が社会問題になっております。
キャリアを積み、企業の上層部として活躍している方であれば、引き抜きやヘッドハンティングなどで転職することはそこまで苦労しませんが、中高年の求職者が全員、上層部で仕事をしているとは限りません。
むしろ、上層部ではない立ち位置で仕事をしている方の方が圧倒的に多いです。
今回は、『中高年の求職者と中高年の求人について』というテーマで、中高年の求人や転職市場について、いつくかの視点からご紹介したいと思います。
まずは、中高年とはそもそもどのような特徴を持つ求職者を言うのか、このあたりから今回の話を起こしていこうと思います。
今回の記事の目次
中高年とは?
雇用や転職に限らず、中高年という言葉をよく耳にすると思います。この中高年という定義は、一般的には特に定められている訳ではないですが、労働関係の法令上は、中高年とは、『40代から60代以降』の求職者を言います。
中高年とひとくくりにしてしまうと、話が曖昧になってしまいますので、中年者と高齢者で分けてお話します
中年の求職者について
中年とは40代から50代の求職者を言いますが、この年代は年金受給年齢ではなく、どちらかと言えば、それまでの仕事経験を生かし部門や部署の管理職として組織を管理し部下のマネジメントをするケースが多いです。
上層部と言うよりも、中間管理職ということです。
自分も早く管理職になりたいと考えている20代や30代の方からすると、この中年の管理職の方をうらやましく思うと思いますが、この世代の求職者は後がないという感覚になっている場合が多いです。
本来であれば転職しても良いと思える大きなきっかけがあっても、転職市場で苦戦することを懸念して、転職活動に踏み切ることができないのです。
転職市場では、年齢が上がれば上がるだけ、求人数は減少します。これは、転職エージェントであっても、転職サイトであっても同様です。
特に転職エージェントを利用している場合は、あらかじめ求人企業から応募条件を設定されていますので、年齢や性別、業務経験などにより、紹介枠が決められています。
中年の求職者の現状
このような状況ですので、多くの求人があったとしても中年または高齢の求職者には、求人も紹介が少なかったり、または全くなかったりということがあります。
私も現在、転職エージェントとして求職者の転職支援を行い、企業の採用支援を行っていますが、この現状は、今後も変わることはないと思います。
また、私も40代や50代の求職者の転職支援を行っていますが、紹介できる求人数は明らかに少ないです。
中年の求職者の場合、年齢や経験、役職に伴い年収も高くなっていますし、そうなると企業からするとコストが上がります。
また、中年の求職者の場合は経験がありますのでその経験から物事を判断する傾向が強く、転職してもその企業の文化ややり方よりも自分の経験を中心に判断や決断してしまい、組織に不協和音をもたらす可能性もあります。
そして、求人を公開する企業からすると、採用するならば長く就業して貢献してほしいと思うのですが、中年の求職者に場合は、長くても20年少しの雇用期間となることは年齢的にも当然です。
そうなれば、コストが抑えられ、経験で判断する可能性が中年の求職者よりも可能性として低い30代、より長く雇用期間を想定できる30代以前の求職者を優先して採用したいと考えるものです。
高齢の求職者について
高齢の求職者の場合は、中年の求職者よりも転職市場においては非常に苦労すると言われています。中高年の雇用が社会問題になっていますが、この社会問題の中心人物は高齢の求職者です。
高齢の求職者とは、60代または70代を言いますが、この世代は本来、年金受給可能な世代です。
しかし、現在の年金制度は年金受給年齢の引き上げや、年金額では生活ができないということで仕事をして生活費を稼ぐ必要があります。
健康面においてもむかしの日本とは違い、この年代の方もまだまだ十分働ける体であり仕事に対して意欲的である場合が多いです。
この二つの理由により、高齢の求職者も働く場合があるのです。
私の転職エージェントにも高齢の求職者が登録していますが、正直なところ、求人はほとんどないです。
本人の希望職種や経験職種に合致した求人は多くありますが、中年の求職者でお伝えしたように、あらかじめ企業から『○歳までの求職者だけに紹介してほしい』という指示があり紹介したくてもできない状況です。
60代や70代の求職者は、転職エージェントや転職サイトを使って転職成功するということは、恐らく難しいように思います。
そのため、私は高齢の求職者の方には、ハローワークや地元の求人情報誌を活用することをおすすめしています。
高齢の求職者採用よりも新卒採用!?
このように、高齢の求職者は、給料は新卒以下でもフルタイム勤務を希望しないことがあります。そもそも論として、求人は企業が公開しますので、企業がこの希望を飲むかどうかがです。
企業視点でお話しすると、給料面については、新卒以下ということでリスクはないのですが、フルタイムで働けないとなれば、新卒以下の給料でも高いと判断する場合が多いです。
仕事とは、労働者ひとりで完結することの方が少ないのですし、部門や部署単位で週単位、月単位で計画があります。このような状況で、高齢と言ってもフルタイムで働けないとなれば、計画が立てにくいということになります。
給料が新卒以下でもフルタイムで働けないとなれば、企業は、高齢の求職者の中途採用よりも、新卒採用を優先することになります。
新卒採用であれば、新卒ですので新卒の給料はもちろん、フルタイムが雇用の前提になりますので、企業としては新卒者の方が、魅力に感じるのです。
私も、かつては、企業の人事として採用という業務に関わっていましたが、この企業の判断は経営を考えると正当な判断だと思います。
高齢となれば、業務中に何か健康状態に問題が起きると、『労災』に該当してしまい、企業としてはこの観点でもリスクです。
また、今の時代は残業は当たり前ですが、少しの残業で体調を崩すかもしれない、無理ができない高齢の求職者を採用してしまうとリスクが伴います。
中高年の採用は周りが仕事をしにくくなる!?
少し想像していただきたいのですが、みなさんの会社や部署に、自分より年齢が明らかに高い求職者が転職したとして、その求職者は、みなさんの部下や後輩になるとします。
もっと極端に言いますと、転職してきた人が70歳の方で、給料は新卒レベルで業務内容は書類整理などの軽作業です。みなさんが、その70歳の方をマネジメントや指導する側だとすると、どうでしょうか?
しっかりとしたマネジメントや指導をする自信はありますか?
私だったら、遠慮してしまい、マネジメントや指示する前に自分でその軽作業をやってしまうか、違う人にその仕事をお願いしてしまうと思います。
仕事は軽作業であっても、年齢は中高年です。確かに会社という組織内では年齢は関係ないのですが、誰しも『人として』という観点があると思います。
一歩、会社の外に出れば、その中高年の方は、みなさんの人生の先輩ということになります。
このように組織の人員構成や、『人として』という理由により、遠慮なく接することができない場合が多く、企業としては、経験が豊富でも業務は軽作業となる場合が多い、高齢の求職者の採用を控えることが多くなっています。
中高年の転職活動の法則
先述の通り、中高年の求職者(上層部として活躍している方を除く)の場合は、転職エージェントや転職サイトとの親和性が低く、相性もあまり良くないです。
したがって、ハローワークや求人情報誌をうまく活用することが転職成功のカギになります。
ハローワークと求人情報誌に分けてそれぞれご紹介します。
ハローワークの求人
ハローワークとは、国が運営する職業紹介の機関になります。職業安定所という言葉を聞いたことがあると思いますが、ハローワークの別名です。
ハローワークには私も企業の人事として、または転職エージェントとして求人の動向を確認するために何度も出向いたことがあります。また、実際にどのような求人があるのか、求人の紹介に出向いたこともあります。
まだハローワークに行ったことがないという方は、ぜひ、一度、経験という意味でも出向いても良いと思いますが、ハローワークに来る方の多くは中高年の求職者が多いです。
中高年の転職=ハローワークということが、いつの頃からか当たり前のようになっています。この当たり前が、企業にも浸透していることもあり、求人の多くは中高年の求職者向けということが多いです。
企業としては、中高年の求職者を採用する際、そのポジションは軽作業であることがほとんどですので、無料で採用することができるハローワークに求人を公開することが多いです。
そうなると、転職エージェントや転職サイトの有料の採用方法では割に合わないのです。
ハローワークは中高年の憩いの場・・・
本来、ハローワークは、求職者の就職支援を斡旋する機関になりますが、ハローワークは、なかなか転職できない中高年の方々にとって、憩いの場になってしまっているようです。
と言うのは、毎日、ハローワークに通っていると、求職者同士が仲良くなることが多く、そこでお互いの転職活動の状況を共有したり、なかなか転職できない自分の状況を良い意味で忘れたりすることができる場になっています。
この憩いの場とすることは悪いことではないのですが、ある高齢の求職者から話を聞くことがあったのですが、
『自分も転職に苦戦しているけど、周りも苦戦しているし、何か変な勇気が出る。だから、みんな同じだし、気が楽。』
と言っていまいた。この言葉は、一見、焦らずじっくり転職活動をしているという風に聞こえますが、一方では、変な仲間意識になってしまっています。
この変な仲間意識が強く、また、長期化すると、就職難民になってしまうようです。全員がそうとは限りませんが、ハローワークに通う中高年の方には、このようなタイプの中高年の求職者もいます。
ハローワークと相談窓口はあまりあてにならない!!
こんな話をしてはハローワークに怒られてしまいそうですが、ハローワークで求人の申し込みや相談をする場合に、一人ひとり、窓口に向かいそこでハローワークの職員が相談に乗るという仕組みになっています。
転職エージェントで言うと、キャリアアドバイザーのような存在です。しかし、ハローワークの相談役の職員は、転職や雇用のプロではないです。
あくまで、公務員です。そのため、機械的なアドバイスや助言がほとんどで、求職者の転職を何とかしようとする気持ちがあまりないように思います。
私の友人がハローワークで転職活動をしたことがありますが、その友人も、結局は役所仕事と感じたと言っていました。
また、転職エージェントのキャリアアドバイザーであれば、求人の申し込みから応募、その他の選考について、フォローやアドバイスをしてくれますが、ハローワークの相談役はこのようなことは一切ないと思った方が良いです。
中高年の求職者は、この事実をしっかり理解して、過度にハローワークに対して期待してはいけないと私は思います。
あくまで、ハローワークは転職エージェントや転職サイトでは応募することができない範囲の求人を探す可能性がある場所と考えた方が良いと思います。
求人情報誌の求人
ハローワークと同じように中高年の求職者にとっては転職活動の生命線とも言える求人情報誌についてです。
求人情報誌は、新聞の折り込み広告も含みますが、ここに求人を掲載している企業は、古くから地元で小さいながらに経営を続ける零細企業が多いです。
地元の零細企業となれば、仕事世代には不人気でよほどの理由がない限り応募資格はあっても応募することすらないでしょうし、進んで転職しようとする対象企業にはなっていません。
地元の零細企業ですので、従業委員数はもちろん少なく、ほそぼそと経営しているため、業績も良いということはあまりありません。
このような理由で、給料についてもかなり低いので、仕事世代からは人気がないのです。この零細企業は、そうは言っても人材不足に悩まされていることもあり、採用基準や応募資格の範囲を広げていることが特徴にあります。
応募資格の範囲が広がれば、年齢的にも中高年の求職者も問題なく応募することができます。
私は、中高年の求職者は、まずは内定という意味でも求人情報誌を活用して、零細企業に積極的に応募する方が良いと思っています。
零細企業は給料は安いですが、簡単な事務職や軽作業が主で、都心にある企業のように企業を急成長させたいという意識はそこまで強くないです。
一方、中高年の求職者もとにかく生活費、そしてフルタイムで働けない体力面ということで、両者の利害が一致しているように思います。
実際、中高年の求職者で転職活動がうまくいかない求職者は、ハローワークもそうですが、求人情報誌を活用して地元の零細企業に転職することが多いです。
シルバー人材センター
みなさん、シルバー人材センターという言葉を聞いたことはありますでしょうか?
仕事世代の求職者の方はあまりなじみがないかと思いますが、たまにテレビで話題になることがあります。
定年退職者などの高年の求職者に、当人が希望する働き方に合わせて、臨時的な場合や短期的な場合も含めて仕事を紹介する機関。軽作業や事務職などの紹介がされる。
シルバー人材センターは、各市区町村に存在していて、社団法人として知事の許可を得た団体ですので、ハローワークと同じように安心はあると思います。
シルバー人材センターの理念としては、仕事を紹介するだけではなく、求職者のライフスタイルに合わせて、健康維持や社会貢献もあります。
ネックとなることは、短期的な仕事や臨時的な仕事も多、安定的な収入を確保するということができない場合もあります。
この点は、シルバー人材センターとの初回面談で伝えておくことで改善できると思いますが、給料はあまり高くありませんので、あらかじめ把握しておいた方が良いと思います。
職業訓練を積極的に活用しよう!
中高年の求職者に見られる二つのタイプ
- 生活費を維持したいという考えのタイプ
- 仕事世代と同じように企業貢献もしたい、給料も上げたいということで向上心を持って転職を希望するタイプ
後者については、経験やスキル、能力はあるものの、年齢制限にひっかかり、応募できる求人が少なくなっているだけです。
しかし、転職活動の基本はいかに多くの求人数を確保するかですので死活問題です。
この場合、転職活動は長期化することを前提に現職を退職することはせず、土日などを利用してさらに新しいスキルや能力を身に付けるために国が行う職業訓練を積極的に活用した方が良いと思います。
実際、中高年の求職者も応募できる求人の中には、一般的には特殊技術とされる資格やスキルがあれば応募可能という求人があります。
この特殊技術の求人は、年齢に関しては問題ないとしても技術がないだけで応募することができないということになります。
それであれば、この特殊技術を取得してしまえば、まったく問題ないと思います。
私の転職エージェントでもこのパターンで、中高年の方々の転職を成功させた実績がありますので、一つの成功法則ではないかと思います。
中高年の方は現職中で転職活動を!!!
今回のお話で、絶対にしなければならない内容がここの部分です。
中高年の求職者の場合、転職活動で苦戦することは前提と考えていただきたいです。もちろん、ヘッドハンティングを受ける場合は除きますが、上層部の立場で働く中高年の求職者も長期化することは前提と考えた方が良いです。
中高年の中には、転職することが初めてという方も多くいることが特徴にありそれなりの経験をしているため、自分の職歴に自信を持って、きっぱり現職を退職して転職活動に集中したいと考える方もいます。
このような場合、きっぱり退職するということは絶対に控えていただきたいことです。
間違いなく20代などの若年層の求職者よりも高い実績を持っていると思いますが、転職市場には、同じように実績を持った中高年の求職者はたくさんいます。
また、求人の特徴として、年齢が上がればそれだけ選考基準も高くなります。
そして、何より求人数です。そもそも応募資格がある求人は少ないですが、中高年の方は一定以上の役職を持っていることが多いと思います。
今、働く組織で考えていただきたいのですが、みなさんの組織に役職を持っている従業員と持っていない従業員で、どちらが割合として多いですか?
どの組織も間違いなく役職を持っていない従業員の方が多いと思います。
最近は、名刺にダミーで役職をつける企業もありますが、実質で判断してください。
どの企業も管理職の方が明らかに少ないですし、転職市場に求人を公開する企業も同じです。
このような状況で、きっぱり退職して転職活動に集中するという判断が賢明かどうかです。転職エージェントとしての私の経験上、30代中盤を過ぎると転職活動期間は長期化して平均1年ぐらいが相場です。
退職しての転職活動は死活問題!
このように求職者の年齢が上がると転職活動期間も長期化することは必至です。中にはすぐに内定を勝ち取る方もいますが、レアケースです。
退職するということは、安定的な収入の確保ができませんし、退職してから転職するまでの期間は無職期間ということになり、社会的にもあまり良い立場とは言えないでしょう。
そもそもとして、転職活動は絶対に内定をもらえるというような保証はどこにもないですし、変な話が転職活動しても転職できないということもあります。
中高年で転職活動することは、リスクがあるなかで、退職してしまうとさらにリスクは高まります。
私の知る知人は、自分の経歴に自信があるとして、転職市場を理解しないなかで、それまで働いていた企業を退職して転職活動に集中しました。結果として、自分の今までの経歴を生かす仕事に転職することができませんでしたし、内定時の条件も3割程度カットとなっていました。
退職から内定までの期間は2年ということで、その間、貯金を切り崩しても足りず、40代でアルバイトをしながら家計を支えていました。
このようなことは、レアケースではなく、中高年の求職者の場合はあり得ることです。
このようなことがあっては、人生設計も狂うでしょうし、もし、お子さんがいる求職者であれば、教育費なども切り崩すこととなり、家庭に大きな打撃を与えてしまいます。
中高年の求職者の方は、ぜひ、『自分の経歴に自信を持って、現職にとどまりながら、転職活動する』ことを強くオススメします。
中高年の求職者と中高年の求人について
中高年の求職者と中高年の求人とは、言い換えると『中高年も求職者と中高年を採用する企業』と言えます。
求人は、企業が公開するもので企業が採用するか判断します。中高年の思惑と企業の思惑が合致しないことが多く中高年の求職者は転職活動で苦戦することが多いのです。
法的に年齢制限を公に設けることは違法行為ということはお伝えしましたが、この違法行為を企業は防止し、効率的な採用活動を行うために、転職エージェントを活用して応募資格に該当しない年齢の求職者には求人を紹介しないよう伝えていたり、転職サイトでも応募しても通過しなかったりすることもあります。
どの企業でも、表の求人と裏の求人があり、裏の求人とは、選考基準を公開せずに自社でクローズにしていることを言います。
みなさんも企業に応募して選考見送りになったことがあると思います。私も求職者時代に何度も見送りになった経験があります。
見送りになると、見送り理由があると思いますが、ほとんどの会社は具体的な理由を明示することはないですし、年齢を理由にすることはしないと思います。
年齢や性別を理由に判断すると違法ですので、それを求職者に知らせることはしないためです。でも、本当の理由は年齢や性別も関係していることが現実にあります。
このように理不尽な転職市場ですが、どうにもできないことが現状です。転職市場では、求職者は弱者となりますので、弱者として自分の生活をしっかり維持できる環境のなかで転職活動をした方が絶対に良いと私は思います。