会社を経営した経験を持つ求職者の転職事情
みなさん、こんにちは。
転職市場で転職活動をする求職者の多くは、民間企業での就業経験を持つ方が多いと思います。
しかし求職者の方のなかには、これまでの経験で一度、自分が経営者として企業経営していたという方もいます。
私は転職エージェントとして活動していますが、私の転職エージェントにも元経営者という肩書や経験を持つ求職者の方が登録しています。
今回の記事の目次
企業はどうなるのか分からない!
求職者のみなさんを採用する企業は民間企業ですが、民間企業は将来どうなるのか分からないということが現実にあります。
労働統計によると、起業してもその企業が3年以上存続することはそんなに多くありません。
一度、起業したとはいえ経営がうまくいかず、経営者としてビジネスすることにはコリゴリだ。
ということで、やはり民間企業でビジネスマンとして生きていくことを決めて、転職活動をする元経営者の方もいます。
今回は転職活動をする元経営者にスポットを当ててご紹介できればと思っています。
経営者が求職者になる理由
経営者が求職者になる理由は、大半が事業に失敗しそれ以上経営を継続することができないため、会社を倒産させて労働者として一から出直すため です。
一方で事業に失敗しても、人脈を使って資金を集めてまた起業するという方もいます。
企業を経営するということは、それだけリスクがあることです。
一度事業に失敗すると大きな借金を抱えることも少なくありません。
二度と会社経営をしたくないということで、民間企業に在籍してビジネスマンとして安定的な道を選ぶ方もいます。
そんな人は私の友人にもいます。
転職市場には多くの求職者の方がいて、その大半は労働者として民間企業に勤めていた経験を持つ求職者の方です。
しかし、割合としては少ないながらも求職者の数で言うと結構、元経営者という求職者の方はいます。
元経営者は、民間企業へ転職することで自分の経営者としてのトラウマを解消しようとします。
また一方では、事業には失敗したものの、経営者だったということは変わりませんのでその経営者としてのスキルや経験を企業で生かしたいと考えています。
経営者の転職活動状況
次に元経営者が行う求職者としての転職活動状況についてご紹介したいと思います。
この記事を読んでいただいている方の中には、元経営者という方もいるかもしれません。
経営者ではなくても、企業の役員として働いていた方が何らかの理由で求職者として現在、転職活動をしているという方もいると思います。
あらかじめお伝えしますが、元経営者、元役員であっても、転職市場では求職者であることは変わりありません。
また求人を公開して中途採用活動を行う企業からしても、ヘッドハンティングではない限り、民間企業の経験を持つ求職者の方と何ら見方は変わりません。
私の転職エージェントにも、数名、元経営者という肩書を持った求職者の方がいます。
中には元経営者ということで、 転職条件に高い基準を希望する方もいますが、内定条件を決めるのはあくまで採用する企業になります。
また、元経営者の方が希望する今まで受けていた給与条件は一般の転職市場にはないと思った方が良いと思います。
元経営者の求職者が拾う求人
元経営者ということで、自分は他の求職者の方と別格な立ち位置にあると変な誤解をされている方もいます。
まず、そのスタンスは転職市場では通用しないということを認識した方が良いですし、元経営者で求職中の方の転職活動のスタートはその考えを良い意味で覆すことだと思います。
この「自分は別格、特別」という意識があるうちは、転職活動しても良い結果になることはないと思います。
さて、そのような元経営者の肩書を持つ求職者の方が集めることができる求人はと言いますと、勿論、業界や職種に関係なく一般の求職者の方と同じように集めることはできます。
求人の応募資格に、『元経営者はNG』という表記がある求人は転職エージェントである私も見たことがありません。
そもそもとして、そのような制限を持つことは求人企業は禁止行為になっています。
元経営者の求職者の方は、転職活動の方法に偏りがあり転職エージェントを利用することがあります。
また、元経営者の方は小規模の転職エージェントを積極的に利用する傾向があります。
理由は、小規模の転職エージェントは企業の経営者と密接な関係にあり、コミュニケーションを直接図ることができる場合が多いからです。
そのため、自分の転職にも有利になると考えているためです。
元経営者の求職者の書類選考状況
転職エージェントなどを利用して転職活動をする元経営者である求職者は、求人を拾っても、かなり厳選して応募手続きを行う傾向があります。
と言うのは、かなり転職後の働き方や労働条件にこだわりがあるため、一般の求職者の方が良いと判断する基準を上回る基準を転職軸に設定しているためです。
転職軸を高く設定すること自体に特別問題はありません。
しかし、元経営者となる求職者の方は、経営をしていたことがあるということで転職市場や周りが思う以上に自分を過大評価していることがあります。
そのような求職者の方が、高い基準を転職軸に入れたとしても、本当の自分の価値とはかけ離れてしまい、転職活動がうまくいかない ということにもなります。
このような状況のなかで厳選に厳選を加えた中から求人に応募して、書類選考を受けることになりますが、元経営者の求職者の方は一般の求職者の方以上に書類選考の通過率は悪いです。
というのは、もともと転職条件を引き上げて求人を選んでいるため、その求人は労働条件も比例して良い条件になります。
良い労働条件の求人は求職者であれば誰でも応募したいと考えますし、実際に応募する求職者のレベルも高い方が大半です。
そのため絶対基準がそもそもとして高い上に、相対的な基準が上がります。
さらには、元経営者という肩書が時には選考でも邪魔をします。
元経営者という肩書は書類上、あまり良いイメージがない
書類選考という選考フェーズは、採用する企業としては見送ることを前提に行われる選考です。
すべての選考フローのなかで、通過率が最も悪いとされています。
また書類選考は、その選考の性格上、応募した求職者が作成した履歴書や職務経歴書だけを見て選考を判断します。
企業にとって気になる点について、面接であればその場で求職者の方に質問をすることができます。
しかし、書類選考の場合は質問する対象がありません。
気になる部分があった場合その部分はマイナスにしたり、そのまま選考の要素に加えなかったりということもあります。
ご自身が書類選考を行う立場だとして、書類選考する企業に元経営者という肩書を持つ求職者の書類を見たらどう思いますか?
私は人事時代に元経営者の書類を見て、まずはこう思いました。
と。
私のこのイメージに対して、みなさんはどのような印象を持ちますか?前向きに私が捉えていると思うでしょうか。
恐らくマイナスとは思わなくても、少なくとも『元経営者の方だ。それなら能力も高いし、ぜひ、会ってみたい』と思っているとは思わないと思います。
そもそもとして本当は経営者としてビジネスをしたいと思っていて、それが叶わないために、第2希望として民間企業への転職を考えているとしか思えませんでした。
元経営者の方は、書類選考は覚悟した方が良い!
私のように、元経営者の求職者に対してあまり良いイメージを持っていない企業は多くいます。
特に人事担当者についてはその傾向が顕著です。
人事担当者は多くの採用経験があります。
その採用経験のなかで、元経営者の方とも面接をしたことがあり、元経営者に対しては良い印象を持っていないことが多いからです。
企業の書類選考は基本的に最初のチェックは人事が行い、そのチェックを通過すると求人を依頼した現場責任者が書類選考を行うという流れになります。
元経営者の方は、人事担当者の書類選考でそもそもとして良い印象を持っていないため、見送りになるケースが多いです。
結果的に書類選考の通過率は通常よりもさらに悪い結果になることが予想されます。
私の転職エージェントを利用する元経営者の方も、書類選考の通過率は非常に悪いです。
現在の転職市場は、求職者が有利の売り手市場です。
求人数も豊富で、書類選考についても通常の市場よりも高い通過率を持ちます。
このように求職者の方が有利の状況でも、元経営者の方の書類選考は極めて厳しい ということです。
元経営者の求職者の面接状況
厳しい書類選考を通過すると、次は当たり前のように面接になるのですが、面接も書類選考同様に厳しい状況が続きます。
ただ企業が判断する面接の場に、求職者自身もいる状況ですので書類選考よりも良いと思います。
書類選考よりも、状況的には救われる面接ですが、元経営者の方にとっては厳しい質問が飛びます。
また元経営者としては、経営した経験で苦い思い出やトラウマを掘り出されることになりますので、その意味でも厳しいと思います。
- なぜ、事業が失敗したのか?
- なぜ、経営ではなく労働者という選択を選ぶのか?
この二つの質問は、恐らくどの企業でも元経営者の求職者の方に面接では聞く内容です。
求職者の方からすると答えにくい質問になりますが、企業にとって選考判断の大事な部分になりますので、聞かないわけにはいかないのが正直なところでしょう。
元経営者の求職者の方からすると、 面接は選考の場であるはずですが、経営や事業の失敗を公開する場になってしまうということも現実にあります。
1次面接と元経営者の求職者
面接は何度かありますが、その中でも1次面接は元経営者の方からすると非常に屈辱的なことだと思います。
先輩や上司が同席するということもなく、新卒2年目の人事担当者が元経営者の面接をするのです。
言葉だけだとあまりその臨場感は伝わらないのかもしれませんが、その面接現場は元経営者の求職者の方からすると非常に苦痛だったと思います。
その求職者の方は性格的に大人な対応であり、また、元経営者という変なプライドを持っていなかったため、まだ良かったです。
しかし、 転職エージェントである私はその面接の構図を見て、世の中は厳しいと本当に思いました。
元経営者のその求職者の方は、経営がうまくいっていれば、新卒2年目の方に経営や事業の失敗を質問される屈辱的なことはなかったでしょう。
また、新卒2年目の自分より年齢も若くビジネス経験も明らかに浅い方に自分を評価されるということはなかったと思います。
結局、その面接の結果は残念ながら見送りで、見送りの理由がまた違和感があります。
『その企業が求めるスキルが不足している』
ということだったのですが、さすがに私もこの選考理由は納得がいかずその企業に説明を求めに出向いたことがありました。
新卒2年目の人事担当者が、40歳間近の元経営者を面接で正確に判断できているのか非常に疑問に思ったためです。
選考結果は覆ることはありませんでしたが、できれば多少の面接配慮は欲しかったと個人的には思います。
元経営者の面接対策
先述の通り、求職者の方は誰であっても面接官を選ぶことはできません。
中には明らかに自分よりも若い人が面接官になることもあるでしょうし、それは元経営者であっても同じです。
元経営者の方は『元は経営して従業員をマネジメントし、経営の責任を持っていた』ということでプライドを持っている方が多いです。
このプライドを持つことは良いのですが、このプライドをどこに置くのか持つのかが重要です。
面接でそのプライドを持ってしまっては、面接官に伝わる印象も悪いですし面接ではプライドは持たずに丁寧な対応を心掛けた方が絶対に良いと思います。
面接に年齢は基本的に関係ないです。(あまりにひどい場合は関係すると思いますが)
経営者として時間を過ごしてきたため、相応の経験やスキルはあると思いますが、問題は元経営者というプライドです。
ちょっと厳しいことを言いますが、元経営者であっても今は求職者です。
元経営者の求職者ではなく、一般の求職者として自分を見つめ、そして転職活動をした方が絶対に得策 だと思います。
採用する企業における、元経営者の評価
先ほど、面接前半については書類選考同様に厳しい選考結果になることが多いとご紹介しました。
一方で面接の後半フェーズでは、企業の部長や役員、最終面接では社長が面接官となります。
目線が高い状態で選考を受けるということになり、面接前半の通過率からは想像もできないぐらい、高い評価を受けて内定を勝ち取ることができる場合があります。
書類選考、面接前半の苦戦中の苦戦を考えると、文字通り『内定を勝ち取る』という表現が当てはまると個人的に思います。
書類選考も含めて選考前半は、人事も含めて担当者レベルが面接官になる場合がほとんどです。
そのため視点が高いということはなく、その選考判断の基準も高いとは言えません。
しかし、選考後半においては、経営視点を持っている立場の面接官が面接を担当するために、判断基準も比例して高いところで決まります。
特に最終面接となれば、元経営者と現経営者の打ち合わせのような感じになりますので、話が合うということがあります。
元経営者の求職者の方が有利になる選考後半に進むためには、鬼門と言っても良い選考前半を切り抜けることが大切
です。
企業の選考は選考の前半がなければ後半はありません。
いきなり経営者が1次面接や2次面接を担当するということは現実的に考えにくいです。
経営者のプライドが転職活動の邪魔になる
先ほど、元経営者のプライドということについて触れたと思います。
転職活動をする元経営者の方にとって、プライド以上に転職活動の障害になることはない と思います。
と言うのは、元経営者でありスキルや能力が平均より足りない方が起業するとは考えにくいです。
そうなると、元経営者の求職者の方が持つスキルや経験は転職市場においては、平均以上ということが言えます。
むしろ、スキルや能力は高いと思います。
そのため十分に転職市場で勝てる立場にあるのですが 、変なプライドが邪魔をしてしまい、なかなか転職活動が思うように進まないということがあります。
これではせっかくのスキルや能力がもったいないと思います。
転職した元経営者の転職後
転職活動の範囲は、転職後の一定期間も含めます。
その観点から、元経営者の方の転職後の働き方や状況についても、私の知り得る範囲でご紹介したいと思います。
元経営者の求職者の方は、組織になじめる可能性が低いということが現実的にあります。
これは元は経営者として経営に関わり、そして部下となる従業員のトップとして君臨したという経験があるためです。
元経営者である求職者の方は、この経験は過去のものとして考えた方が良いです。
転職において、経験は何より財産になり、転職後も自分を助ける武器になります。
経営者という肩書の経験は頭から切り離した方が良く、現実を見た方が絶対に得策 です。
元経営者の求職者の方は、一般社員で転職ということは可能性としはゼロに近いです。
何かしらの役職があり管理職として転職する可能性の方が高いです。
通常は、管理職で採用されることに十分な満足を覚えると思います。
しかし元経営者の方は、管理職でもより経営に近いポジションでなければ、100%の満足はないようです。
ところが、その方は転職から半年もたたないうちに退職してしまっています。
その企業に話を聞くと、転職後、プライドにより経営者ともめてしまったということだそうです。
経営者という経験は業務においては十分、生かせるものだと思います。
しかし、プライドとしていつまでも持っていては、組織のなかでうまく立ち回ることができないと思います。
転職活動は内定を勝ち取ってゴールではなく、転職後に活躍してこそ転職した意味があります。
このことを一般の求職者の方はもちろんのこと、特に元経営者という肩書を持つ求職者の方は肝に銘じていただきたいと思います。
余計なプライドは、余計なものでしかないです。
過去にこだわっていては、今とこれからの自分のビジネス人生に影を落とす場合があります。
もし、転職後に経営者というプライドが捨てきれないと考えるのであれば、転職活動はやめましょう。
何かしらの手段で再度、起業した方が良いと転職エージェントである私は思います。