元スポーツ選手の転職市場は?
みなさんの職歴の多くは民間企業のものだと思います。
しかし転職者の方のなかには、例外的に民間企業でのビジネス経験を持たない方もいます。
例えば就活時代に何らかの理由で就職することができず、既卒者として転職活動をする方もその一例です。
多くの方は学生時代などのアルバイトなどで、多少は民間企業での就業経験を持っているのですが、今回はその経験すら持たない元スポーツ選手の話です。
近年、転職市場では元スポーツ選手が民間企業へ転職しようとしているケースが目立ちます。
今回の記事の目次
スポーツ選手の転職活動前の人生
現在、私は転職エージェントとして求職者のみなさんの転職支援をしていて、その前は民間企業の人事として仕事をしていました。
私自身スポーツ選手を目指して生きてきて、学生時代の友人のなかにはプロ野球選手になった友人もいます。
そういった経験を踏まえつつ、スポーツ選手はどのような人生を送っているのかご紹介します。
スポーツ選手は基本的に幼少期からそのスポーツでプロになりたいと考え、その道しか考えないことが多いです。
多くのプロスポーツ選手は将来その競技で生計を立てるということを考え、勉強は二の次で人生の多くをスポーツにささげてきたという場合がほとんどです。
スポーツしかやっていない人が就職すると・・・
スポーツにどれだけ時間を割いても、全員が希望通りにはいかない世界がスポーツ界です。
私も学生時代まではスポーツ選手として生計を立てようとしていて、自分が大学を卒業後に民間企業で働くとは夢にも思っていませんでした。
私の場合はケガでスポーツを断念して就職活動を始めたのですが、他の就活生が話す内容が明らかに自分と違うことを感じていました。
一般学生は、勉強で大学に入学して単位を取得して卒業する一方、私の場合は寮とグラウンドの往復の日々です。
こういった状況で学生時代を送ると一般教養や一般常識が、明らかに世間とズレてくるのです。
就職後も、同期はある程度PCスキルを持ち、入社研修にもついていける一般常識を持ち合わせているなかで、私は何もできず劣等感を抱いていました。
パソコンの電源の付け方すら分からなかったんですよ。
仕事で失敗があると、上司や先輩には『お前は、スポーツしかやってないから、こんなこともできないんだ。大学に戻って出直して来い』と言われ続けました。
スポーツ選手が得意にすること
スポーツ選手が特にすることは、あいさつと礼儀、言葉遣いです。
それもそのはずで、基本的には寮生活でコーチや先輩の恐怖と隣り合わせで生活していますし、人としての基本であるあいさつや礼儀、言葉遣いは嫌というほどたたき込まれます。
私は就活時代、就職後もこういったことだけは異常に褒められましたが、それ以外に部活動から学ぶことはありませんでした。
あまりに部活動に割く時間が長いため、今の日本のニュースも知る時間がありません。
また、友人関係も部活動のなかだけで完結したもので非常に狭いです。
スポーツが無ければ体は大人、頭脳は赤ちゃんです。赤ちゃんが大人に交じって仕事をしていたのです(汗)
元スポーツの転職活動をする背景
このように元スポーツ選手は、求職者のみなさんが身に付けている当たり前のスキルや能力を持ち合わせいません。
このような状況で、これまでの元スポーツ選手は自分の友人や知人のつてを使い、飲食業に転職することが多かったです。
最近はこの流れも変わってきていて、当たり前のスキルを持っていない元スポーツ選手も転職エージェントや転職サイトを活用して転職活動することが増えています。
実は、元スポーツ選手は企業から中途採用のニーズが増えているのです。
私も転職エージェントとして元スポーツ選手の転職支援をしたことが何度かありますが、全員短期間で転職決定しています。
多い方だとその転職活動中に10社近くの内定をもらっています。その内定も優良企業だらけです。
企業はなぜ、仕事経験がなくPCすら触ったことがない元スポーツ選手を採用するのかご紹介します。
元スポーツ選手はビジネスマンとしての基礎がある!
当たり前のことですが、転職活動をする求職者のみなさんは人間です。
求職者のみなさんのビジネス経験やスキルを企業に売り込み、企業はがそれらを評価して中途採用するかどうかを判断します。
ただし、いかに経験・スキルが素晴らしくても、これがなければ絶対に採用されないという重要な要素はご存じでしょうか。
その重要な要素は『人としての基本的な行動』です。
- あいさつ
- 礼儀
- 言葉遣い
がそれに当たります。
転職エージェントとして、求人を受ける企業に募集要件のヒアリングに必ず出向きますが、どの企業も必ず人間性を見ていると言います。
『どれだけ経験や実績があっても、人として当たり前にことができない求職者の方は魅力を感じない』
と、どの企業からも言われます。
元スポーツ選手の場合、『人として』という部分は抜群に勝っており、企業はこの点を高く評価しているようです。
面接後に企業から『今回、内定を出した方と話しているとすがすがしい』との言葉がありました。
仕事は人間性
仕事をする上でスキルや能力はもちろん大切なことですが、これはどちらかというと応用の部分に入ると思います。
そして企業が重要に考える「あいさつ、礼儀、言葉遣い」は基礎の部分です。
応用となる能力やスキルについてはビジネスマンとして経験することで嫌でも身に付く一方、基礎の部分はすぐに身につくものではありません。
元スポーツ選手を評価する企業が多い理由はこの部分だと思います。
また元スポーツ選手は、厳しい部活動の環境を耐え抜いてきたという要素も高く評価されているようです。
- 諦めない気持ち
- 目標達成意欲
- 逃げない気持ち
などは、今の時代古臭いイメージがありますが、こういった要素が備わっている方はかなり成長し、企業では欠かせない存在になるものです。
一般学生がサークルやアルバイトなど自分のやりたいことに時間を使っている一方で、元スポーツ選手は朝から晩までその競技一色という環境で長年生活しているのです。
この点については自信を持っても良いと思いますよ。
仕事は嫌なこと、うまくいかないことの方が多い
どのような仕事であっても、嫌なことやうまくいかないことの方が多いのではないかと思います。
仕事においても部活動においてもそれは同じで、嫌な事からすぐに逃げてしまうような人は中途採用しても企業に貢献してくれないと考えます。
元スポーツ選手を中途採用することで、既存の従業員へのお手本としても期待している面もあるようです。
私が取引する企業の経営者は、『昔スポーツ選手だった求職者を若手人材のお手本にしたいので、ぜひ紹介してください』と言っていました。
今、この記事を読んでいただいている求職者の方に元スポーツ選手がいれば、高い評価を得られますので、自信を持って転職活動をした方が良いと思います。
元スポーツ選手を求める業界や職種
業界や職種によってスポーツ選手との親和性が高い場合がありますので、それぞれご紹介したいと思います。
なお、元スポーツ選手は年齢や性別に一切関係なく、ほとんどの企業が好印象を持っています。
一般的な転職市場では女性が冷遇される傾向がありますが、元スポーツ選手に限って言えば問題ないと思います。
元スポーツ選手と業界
まずは業界からご紹介します。
元スポーツ選手と親和性の高い業界
- 金融
- 不動産
- 人材
- 広告
以上のような業界が中心になります。
もともとはスポーツ選手ですので、もちろんスポーツ業界やフィットネス業界とも高い親和性を持ちますが、当たり前の部分ですのでここでは割愛します。
今ご紹介したこれらの業界は、営業を中心とした経営をしている企業が多い業界です。
営業は終わりのない目標とノルマや、上司などからの厳しいプレッシャーが原因で離職率の高い職種です。
ただ、そういった環境は元スポーツ選手が経験してきた環境と似ている点が多いため、高い親和性を持つと言われています。
また営業職は、数字を追って数評価される職種の代表例ですので、目標達成意欲に長けている元スポーツ選手とは相性が良いとされています。
この二つの点は大きな評価ポイントです。
企業は教育工数をかけるのは遠慮したいと考えているので、あいさつや礼儀、言葉遣いさえしっかりできていれば営業マンとしては十分だと考えるところが多いです。
また、営業職の場合は体力面においても外回りが中心のビジネスライフになりますので、この点も十分対応できると考えられています。
元スポーツ選手と職種
元スポーツ選手は人間性を高く評価されていますので、営業の他にも教育という要素を多く含んだ人事には親和性があります。
人事の仕事は、
- 採用
- 教育
- 制度企画
- 労務
- 給与計算
のカテゴリーからなりますが、元スポーツ選手は教育や採用に向いていると言われています。
先述、元スポーツ選手を組織のお手本役として採用したいと考える企業があるという話をお伝えしたかと思います。
まさに人事の教育という仕事は、お手本になる人間性を持った人材でなければ教育の説得力がありません。
元スポーツ選手は、それぞれの競技で頑張って選手になった背景があるため、教育を受ける側の従業員腹落ちするようです。
実際、私が知るある大手企業では、ビジネス経験が全くない元スポーツ選手を人事の教育担当として採用しているところがあります。
この教育は新卒入社者や年齢が若い人材にとってかなり効果があるようです。
元スポーツ選手と採用
採用と言う仕事はいかに人を引きつけるかです。
就活生はビジネス経験がない分、採用担当を見て『この人のようになりたい』と思えるかどうかは基準の一つになります。
元スポーツ選手の場合、一つの道で長年頑張ってきたという背景が請求ポイントになると思います。
求職者のみなさんも就活生時代に、
- この企業の人事担当者のようになりたい
- この企業の人事担当者には魅力を感じない
と思ったことはないでしょうか。
元スポーツ選手はビジネス経験はなくても、人という視点で言葉に重みがあると聞いています。
元スポーツ選手の面接対策
次は、元スポーツ選手が実際に企業へ応募した後のプロセスについてご紹介したいと思います。
先述の通り元スポーツ選手は、本来一番通過率が低い書類選考を無条件で通過することも往々にしてあります。
その後の面接対策についてですが、絶対にやってはいけないことは『できないことをできる』と言ってしまうことです。
企業は、ビジネス経験がない元スポーツ選手を1年ほど後に戦力になってほしいと考えています。
この状況のなか自分をよく見せたいばかりに『できないことをできる』と答えてしまっては転職後に困るのは自分自身です。
企業は元スポーツ選手の人間性を高く評価していますので、できないことはできないで良いと思います。
一般の求職者の方であれば、多少自分をよく見せる意味で『できないことをできる』と伝えても他のビジネス能力やスキルでカバーできますが、元スポーツ選手はリカバリーできる材料がありません。
この点をしっかり理解しておかなければ、選考をうまく通過しても転職後に困ります。
転職活動は、転職決定がゴールではなく、転職後も含めて転職活動です。
元スポーツ選手の適性検査
私の転職エージェントを利用した方もそうでしたが、元スポーツ選手の求職者は適性検査を最も苦手にしているのではないかと思います。
一般の求職者でも苦手にしている方が多いなか、元スポーツ選手はあまり勉強をしたことがない方の方が多いと思うので、かなり苦戦すると思うかもしれません。
ただ、昔は適性検査に重きを置く企業が多かったのですが、今はそういった企業は少なくなっています。
企業は学力を期待して元スポーツ選手の書類を通過させているわけではないので、もし適性検査が全くできなかったとしても不安になることはないと思います。
それでも対策をしたいという場合は、転職エージェントを利用してレクチャーを受けることが一番だと思います。
元スポーツ選手の労働条件
選考をうまく通過すると、最後は内定条件になります。
企業がどれだけ元スポーツ選手の人間性や目標達成意欲などの部分を高く評価しているとしても、ビジネス経験がない以上、内定時の給料はあまり高くないと思った方が良いです。
例えば年齢が30歳で転職したとしても、内定時に受ける条件は新卒レベルの給料だと思います。
今の自分のビジネス経験ゼロという立場を考えると内定時に贅沢は言えないと思います。
内定時の低い給料は、転職後に持ち前のガッツで成果や実績を作り挽回しましょう。
スポーツでは一度死んだ身だと思いますので、新しい世界のビジネスでぜひ人間力を生かしてほしいと思います。
元スポーツ選手の転職市場は?
元スポーツ選手の転職は現在良い状況にありますが、それはあくまで選考中の話で、内定時の条件にはあまり関係がありません。
私の転職エージェントで内定を勝ち取った元スポーツ選手の求職者も全員が新卒レベルの条件でした。
元スポーツ選手は、人生のリスタートのチャンスをもらったと思いましょう。
『内定はもらったけど、この給料では・・・』なんて嘆いていては、かなりもったいないです。
最後になりますが、求職者のみなさんの転職活動が充実したものとなることを心から祈り、これで話を終わりにしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうとございました。