農業は国の課題業界。農業への転職が求職者に与えるメリットとデメリット。
転職市場にある求人のほとんどが民間企業の求人になりますので、求職者のほとんどはホワイトカラーの職種を希望しているのだと思います。
ただ、転職市場は都心部が中心になっていますが、何も都心部だけのものではありません。
私は転職エージェントとして現在、求職者の方の転職支援をしています。
都心部を中心に転職エージェント事業を展開していますが、その範囲は、北海道から九州まで全国に渡ります。
地方の企業から求人を受けることもありますし、現在都心部で仕事をしている方でも何らかの理由で地方を転職エリアにしている場合も多くあります。
今回の記事の目次
今回のテーマは?
今回は、農業の転職市場についていろいろな視点からご紹介できればと思います。
まず、農業とは事業の一つであり、農業に従事する労働者を農家と言います。
都心部に住居を構え都心部の企業で働く方にとっては、なじみがない事業、職種だと思いますが、農業こそこれまでの日本を支えてきた代表的な事業です。
しかし、そういった農業が人材不足に悩まされて、国産の農作物が減少し、海外からの輸出に頼っている現状があります。
農業とは、農作物を育て、流通して利益を得るビジネスモデルになるのですが、自然との共存が必要で非常に難しい働き方である一方、それに見合う収入を得ることが難しいということで廃業する経営者が増えています。
また、人材不足とご紹介しましたが、特に若者が農業に従事する割合が非常に少なく、後継者不足となっています。
若者が農業を敬遠する理由は、仕事内容や労働環境がハードであることはもちろん、土や泥にまみれて仕事をするというスタイルにあります。
農業は国の課題事業
私には実家が農業を営んでいる友人が何人かいるのですが、その全員が農業を継ぐことはなく、都心部でサラリーマンとして仕事をしています。
そんな中で、自分が生まれ育った環境が農業とかけ離れた環境で、高校、大学と縁がない生活を送れば農業という事業に関わる選択肢がないのは自然の流れのように思います。
しかし、最近は国が農業に対して課題事業として考えていて、積極的に農業に対するイメージアップを図っていますので、農業に興味を持つ人が少しずつ増えています。
国の施策が農業に興味を持つ人が増えている
国は、いろいろなメディアを活用して農業についてのニュースを世間に提供することで、農業に転職することを検討するように促進しています。
今まで農業に全く興味がなかった人も、農業に触れてみたいと考える人が少しずつ増えているのが現状です。
ただ、あくまで興味を持つレベルで、その働き方や労働条件は割に合わないと考える方が多いと聞きます。
今回は、農業がしんどいということを言いたいがための記事ではないですが、現実的なことを考えると農業への転職は未知の世界が多く、ホワイトカラーの働き方や労働環境とはギャップも大きいはずです。
いきなり農業に転職というよりも、インターンや農業体験を経てステップアップで転職した方が良いと私は思います。
農業とは?
農業に興味はあってもなかなか、その実情を詳しく分からないという求職者の方のために、農業の具体的な話をご紹介したいと思います。
まず、都心部にも農業を事業とする方は多くいます。
ただ、気候などの優位点があり、地方が農業に適しているということはあります。
農業=地方というイメージがあると思いますが、それは正しい認識です。
農業の種類
まず、農業と一言で言ってもその範囲は非常に広いです。
もしかすると、農業=稲作と限定的に考えている求職者の方もいるかと思いますが、それだけが農業ではありません。
- 稲作
- 畑作
- 果樹
- 植物
- 養鶏
- 養豚
- 花
- 酪農
農業と酪農を別事業とする場合もありますが、広義の意味では酪農も農業の範囲になります。
私の友人の実家は稲作と果樹、花を事業の種類として農業を営んでいますが、どの農家も人手が不足していて、将来的に農業が衰退するのではないかと危惧しているそうです。
現在農業に従事する方々も、ハードワークで給料がそれほど高くないと認識しているため、若者には苦労させたくないと、積極的に継承する人材を採用しようとはしていないそうです。
農業の給料
続いて農業の給料についてご紹介したいと思います。
農業法人と自営業ではその差が大きいのですが、今回は農業法人を中心にご紹介したいと思います。
農業を事業とする企業に転職した場合、その給料は20万程度です。
都心部で農業として転職した場合は、もう少し高いとは思いますが、それでもハードワークに見合う給料ではないと思います。
20~25万円という給料は、都心部であれば新卒入社の初任給とほぼ同じ金額ということになります。
国は農業に転職した方の給料を穴埋めすることは一切ないので、私は慎重に転職を考えた方が良いと思っています。
農業はハードワークでありながらも、その見返りとなる給料が安いためモチベーションが自然に低下してしまい、農業を辞めるという方もいます。
農業の働き方
先ほどから農業はハードワークとお伝えしていますが、農業の働き方について具体的にご紹介したいと思います。
まず、農業は、朝が早い仕事です。
朝5時には仕事を開始するイメージですので、起床時間はもっと前ということになります。
朝5時に仕事を始めて、変則的な休憩になりますが、朝ご飯の時間帯に休憩があります。
その日により変動しますが、7時か8時という場合が多いです。
その後また働くのですが、その後は昼食までノンストップで肉体労働となります。
ハウス農家も最近増えていますが、基本的には外で仕事をする職種であるため、雨のなかでも当たり前のように仕事をすることになります。
昼食の休憩は約1時間ですが、その後18時ぐらいまで、また肉体労働となり田畑を耕したり、動植物のお世話をしたりすることになります。
これが酪農となれば、急な出産が深夜にあることもあり、その場合は、厩舎(きゅうしゃ)で睡眠を取ることになり、24時間態勢で対応をすることになります。
そして農業は農作物や動植物を育てる事業になりますので、休みがほとんどないと思った方が良いです。
もし私が求職者であれば、この働き方で先ほどご紹介した給料であるならば、ちょっと農業に転職するのは難しいなと感じます。
今、働き方を書いているだけでも、かなりハードだとあらためて感じますし、当事者として関わるとなれば、相当な体力が必要な仕事だと思います。
このハードさと衣服の汚れなどを気にして若者は農業を敬遠することが多いです。
農業の転職市場について
このように実際の労働環境は非常にハードですが、冒頭でご紹介した通り、日本では国を挙げて農業を盛り上げようと必死です。
この世の中の流れをくみ取り、農業専門の求人サイトも出始めています。
インターンなど見つけることができますので、農業に興味がある求職者の方はぜひ一度調べてみると良いと思います。
また、農業の状況をなかなか知らないという方が多いため、ハローワークのような立ち位置で農業の就職センターといったものもあります。
私のような転職エージェントに農業の求人があるかと言えば、正直かなり少ないです。
かつては1社だけ求人がありましたが、現在は農業関係の求人はありません。
ただ、大手のある転職エージェントは、国の施策事業となる農業への転職支援を積極的に行っていますので、ぜひ調べてみてください。
余談ですが、その転職エージェントは、自社のビル屋上に田畑を作り、農業のような状態になっています。
同じ転職エージェントとして、農業への転職支援を積極的に行うその転職エージェントは非常に社会貢献度が高いと思いますし、少しずつ農業へ転職する求職者の方が増えているそうです。
転職サイトや転職エージェントの他、農業に関する合同説明会も各地で開催されていますので、そのような機会を利用して少しずつ情報を得るのも大切なことだと思います。
私が勧める農業への転職方法
転職エージェントとして、総合的に考えると私が農業に転職する方法として良いのではないかと思う方法がありますので、ご紹介したいと思います。
サラリーマンやOLから農業に一気に転職してしまうと、その段階で、後戻りすることはできません。
農業に転職後、やはり自分には向いていないと考えた際に、前職に戻ることはほぼ不可能に近いことです。
そのリスクを回避するために、私は兼業として農業を始めることが良いのではないかと思います。
昔は副業を一切禁止とする企業がほとんどでしたが、現在はライフスタイルの多様化が進み休日を利用して副業をしても良いとする企業が非常に多いです。
休日は農業をして平日は現職で仕事を続ける、この方法はリスクもなくなり、農業を直接経験することができます。
農業については、低賃金、重労働で転職しても続けることが難しい職種だと思っているので、後戻りできるような環境を整備することが大切だと思います。
実際、農業に従事してお金をもらうことと、体験などで農業を知ることはプロとアマチュアとして大きな感覚の違いがあると思っています。
求職者の方で農業に興味があって転職を考えている方は、現職と並行して農業を始めてみてはいかがかと思います。
副業をOKとする企業も増えていますし、受け入れる農業業界も、副業として転職することもまずは良しとしているので私はこの方法が良いと思います。
農業はブラック企業なのか?
先ほど、農業の働き方についてご紹介しましたが、労働時間が長く、休日もほとんどないような状況ではブラック企業と同じ環境ではないかと考える方も多いと思います。
実際のところ、一般の民間企業が労働者にこの働き方をさせた場合、確実に法律違反でブラック企業と言えます。
しかし、農業はこの働き方をしても特例として法律違反にはならないのです。
農業は特殊な事業であり、みなさんがこれまで経験した働き方とは異なるものと思った方が良いです。
私は、国がこのあたりをしっかりと整備しなければ、人材不足の解消はいつまでたっても変わらないと思っています。
低賃金、重労働は、誰でも嫌がる労働環境、労働条件だと思います。
農業へ転職することのメリット
ここまで、農業についての実態をご紹介してきましたが、農家として働くことのメリットについてもご紹介したいと思います。
農業はやはり、国の国力を支えるメイン事業ですし、農業が作る農作物は求職者のみなさんの食卓に必ず並んでいるものだと思います。
農業は、国や求職者のみなさんの食生活を支えるメーカーです。
通常、転職市場ではメーカーの企業は求職者の方に人気があるのですが、同じメーカーでありながら、農業や農家は人気がありません。
日本は、農家がなければ国力がかなり落ちますし、消費者でもあるみなさんも食生活の面で苦労すると思います。
農業は社会貢献度が非常に高く、ハードワークですがやりがいの深い仕事だと思います。
今、国は農業の労働条件や労働環境を少しずつ変えようとしていますし、地方も人材誘致のため、農業をやるために地方へ移住した場合、補助金の制度も整えています。
農業を取り巻く環境、農業へ転職するみなさんの環境は少しずつ向上するものと思います。
移住と農業の関係性
最近、地方は移住者を積極的に勧誘していますが、移住となればそこで仕事を見つける必要があります。
農業は地方が中心の事業であり、地方には多くの農業があります。
私は、転職エージェントとして地方の求人も多く見ますが、農業と移住がセットになった求人もあります。
地方の移住に関係するサイトに農業と移住の組み合わせプランがあります。
地方は農業に従事する人口が多く、仕事仲間とコミュニケーションを取ることで、孤立することなく、農業を通してより人間らしい生活ができると思います。
農業の転職難易度
先述からお伝えしている通り、農業は慢性的な人材不足で地方だけでなく都市部にも求人は多くありますので、転職のチャンスは非常に多くあります。
また農業は学歴は一切不問ですし、偏見がない状態で選考を受けることができます。
性別も関係なく女性にも転職機会は多いのですが、体力が必要な肉体労働ですので自分の体力面をよく検討するのが良いと思います。
農業は社会貢献事業としても確立されているので、誇りに思える仕事だと思います。
最後になりますが、求職者のみなさんの転職活動が充実し有意義なものであると祈りこれで話を終わりにしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。