面接で印象の良い退職理由と印象の悪い退職理由

私は現在、転職エージェントとして求職者の方の転職支援をしている立場ですが、以前は企業の人事として中途採用にも関わり、そして私自身も何度か転職した経験があります。

今回は私の経験を踏まえて、面接における退職理由についてご紹介しようと思います。

転職エージェントをしていると求職者の方から『一番苦手な選考フェーズは書類選考』という声を多く聞きます。

確かに、選考フローのなかで、最も通過率が低いフェーズは書類選考で、その気持ちは理解できます。

しかし、書類選考は、自分ではどうしようもない部分が大きいため、求職者の方がどうこうできることではないため、運の要素も大きく働きます。

しかし、面接は?

しかし面接はというと、求職者の方が企業に出向き、自らが面接の当事者として自分のことを自分で表現することができる場です。

そのため、ある意味言い訳ができない自分の力がすべて結果に表れます。

この面接こそが本当の選考と言えるますし、人事時代にも同じように感じていました。

書類選考はあくまで書類上の選考であり、選考本来の持つべき重要なことは『会って、話してなんぼ』ということです。

面接では求職者の方が自分自身を表現できますので、書類上の経歴ではなく、実力が試されるということになるのです。

面接の内容

面接の内容は、大体5分前後のアイスブレークから始まり、その後、求職者の方がこれまでの経験を紹介し、それに基づき面接官が質問するという流れです。

最後に求職者から面接官に対して質疑応答をするということで、大体1時間以内で終わることが多いです。

どの企業でもこの流れが基本となります。

自分の経歴を紹介する際に、どのような職種でどのような仕事内容をしてきたのかも紹介内容に含まれますが、今回のテーマである『なぜ、現職や前職を退職したのか』という部分は面接官からすると絶対に知りたい内容になります。

人事時代に、私が面接内で着目した点は、その求職者の方がどのような経歴を持っているのかよりも、この『どのような理由で退職したのか』という点でした。

転職エージェントとして、多くの企業の人事担当と面接について議論することがありますが、大半の人事担当も同じように退職理由をかなり気にするようです。

求職者のみなさんは、面接の合否を決める基準の一つに退職理由があるということを、今一度再認識してみましょう。

歴史は繰り返される?

ビジネスにおいては経験が大きく左右し、第三者からすると、「過去にしたことは今後もする可能性があるのではないか」と思うものです。

面接官は、「求職者が転職後にどのような働き方をするのか」を過去から推測することが多いので、どうしても『退職』が重要視されるのです。

面接官の評価ポイント

面接官も企業に在籍し雇用契約を結ぶ労働者です。

その評価ポイントは、「いかに優秀な人材を採用し、その人材がいかに長く企業に在籍して貢献してくれるか」です。

そうなると、優秀であっても長く在籍しそうにない求職者は採用を見送るということが多くあります。

面接官の社内的な評価ポイントを把握することで、言うべきでないことを判断できると思います。

元人事として、面接はある程度のテクニックがあれば印象も良くなりますし、退職理由も工夫することで面接通過率は高まると思います。

面接と退職理由

先ほど紹介した内容を踏まえて、『面接官に良い印象を与える退職理由』と『面接官に悪い印象を与える退職理由』をそれぞれご紹介したいと思います。

自分の経歴を紹介する際に、それまで笑顔だった面接官の顔色が変わるという経験をしたことはありませんか?

または首をかしげながら、面接官が持つ書類にペンを走らせたりするしぐさを見たことはないでしょうか。

私の経験上、こういった行動は求職者が退職理由を紹介する際によくあります。

ちなみに、退職理由が面接官の納得できる内容ではない場合、その後に面接官から質問があります。

面接官に良い印象を与える退職理由

自分のキャリアを考える退職

自分のキャリアビジョンを考えている退職は非常に好感を持たれます。

転職は単純に仕事を変えることにとどまらず、ビジネスマンとしての今後のキャリアを上げるために行う行動であることは大原則です。

最近、求職者のなかには逃げ道として転職をする求職者の方がいますが、この考え方は本来の意味とはかけ離れています。

自分のキャリアを考えている方は、面接でも話に深みや発展性があり、ロジックがしっかりしている印象を受けます。

転職エージェントとしても面談で退職理由を聞きますが、キャリアビジョンを見据えて退職を考える方は中長期的に自分のなりたい像をしっかりと持っていて、その像に近づくために転職することがベストだと判断していることが多いです。

求職者のみなさんにはそれぞれ、将来なりたい自分があると思います。

その像に近づけるために、2年後、3年後、どうするのかを積み重ねて考えることで実現に近づいていきます。

面接官は、退職理由から求職者が転職後に活躍してくれそうかどうかも判断しますので、キャリアビジョンを明確に持つことで面接官に与える印象も良くなると言えます。

現職や前職では実現できないための退職

次は、現職や前職では実現できないことを転職先で実現したいという退職理由です。

この退職理由では、求職者が前職でそれを実現するためにどこまで努力をできたかということが前提として必要です。

何ら努力もなく退職することにはマイナスイメージを持たれます。

どの企業でも、すべて自分の思い通りにできる環境はありません。

むしろできないことの方が多く、できないことをいかにできるように努力するのかも仕事の一つです。

そう考えると、できない=退職、は意味のある転職にはなりませんし、面接官も『この求職者の方は自分ができないことがあると退職するだろう』と考えると思います。

実際、このような退職理由を持っている求職者の方と面接や面談をしたことがあるのですが、私は全く前向きな退職理由だと感じられませんでした。

現職や前職がブラック企業であるための退職

次は労働環境についてです。

求職者のみなさんのなかには、前職がブラック企業であるため退職することになっている方もいると思います。

この場合、面接では具体的に今どのような労働環境であるのかを紹介することで、面接官は十分、理解してくれますし、納得できる転職理由になります。

ただ、たまに『今の会社の残業が50時間近くありブラックな環境です』というような人がいるのですが、それは結構普通のことです。

ブラック企業の労働時間の基準は、数カ月連続で月間の残業時間が80時間以上となるような場合です。

基準に満たないなかで定量的に説明したとしても、面接官は『それぐらいの残業時間で退職するなら、仕事に情熱を持てないのかもしれない』と考えて後ろ向きに捉えられることが多いです。

これまでの経歴と一貫性のある退職

経歴と一貫性のある退職理由こそ、面接官にはウケる退職理由です。

自分で言うのも何ですが、私は求職者時代に一貫性を持つ退職理由で面接官から高い評価を多く受けています。

この一貫性とは、必ず前職と同じ仕事内容で転職するべきということではありません。

私は過去に営業職から人事職にキャリアチェンジしていますが、これらは親和性がある職種です。

この他にも関連性のある職種は多くありますので、それも一貫性の一つになります。

一貫性とは今の経験を次の職種に生かすことを言い、連続性とも言い換えられます。

私も人事時代は、ロジックある退職理由・転職であるかは一つのポイントにしていました。

他の企業の人事担当者も同様のことを思っているようですので、求職者のみなさんは、ぜひ一貫性のある退職理由を考えておくと良いと思います。

面接官に悪い印象を与える退職理由

求職者のみなさんが自分の経歴を紹介する場面は面接の前半が普通です。

限られた面接時間の前半で悪い印象を与えると、後半もその印象のまま進んでしまいますので、退職理由で悪い印象を与えてしまうとなかなかリカバリーできません。

退職理由のマイナス評価はそのまま面接結果に直結しますので、慎重に考えておきましょう。

正当な評価を受けないために退職

前職での評価に納得できないということを退職理由にするのは不毛です。

評価とは本人がするものではなく他の人が客観的にするものです。

面接官に「この求職者は周りの人に責任転嫁して転職をするのだな」という印象を与えてしまい、転職後も同じ状況になるだろうという印象を持たれます。

本当に不当な評価を受けていたとしても、このことを一番の退職理由するのは避けたほうが良いです。

仕事の失敗が自分の責任になったため退職

これも評価と同じ要素を含みますが、仕事の失敗が自分の責任になったことを不満に感じたというのを退職理由にするのはやめた方が良いです。

面接管はこういった方も「自分の責任を人のせいにするタイプ」と考えます。

どの企業も組織で成り立っていますので、人のせいにするタイプを入れてしまうとランスが崩れる可能性があり、面接官としては採用したいと思いません。

面接官にはネガティブとしか取られないため、退職理由にすることは控えた方が良いと思います。

自分が希望する職種に異動できないため退職

自分の希望する職種に異動できないことを転職でカバーしたいというのは、一見悪くないように思えますが、社内異動が前提で前職に入社しているかが問題です。

どの企業も異動が前提で雇用契約することはないと思いますので、面接官は転職後も同じことが起こり得るのではないかと危惧して良い印象を持ちません。

昔に比べると異動という言葉をよく聞きますが、そう簡単にできるものではないことをご理解ください。

それは転職後も一緒のことで、希望する異動ができないため退職ということは単なるわがままにしかなりません。

プライベートを優先させたいため退職

最近、若い方に多い退職理由がこれです。

仕事とプライベートを両立させるワークライフバランスという言葉がビジネスにおいても定着しつつありますが、このワークライフバランスをはき違えている方が多いようです。

ワークライフバランスという言葉は、仕事と家庭(プライベート)の充実という意味であり、プライベートを優先させるという意味ではないです。

そのため、退職理由として当たり前のように、ワークライフバランスができない=プライベートを優先できないということを理由にする求職者の方もいるようですが、これは、完全に社会人としてはミスジャッジです。

どの企業も個人のプライベートを優先させるために中途採用するのではなく、その求職者の方を採用することで企業に貢献してもらえるという期待を込めています。

退職理由一つで面接の結果が変わる!

もしかすると、今回私がご紹介した悪い印象を与える退職理由を面接で伝えてしまっている求職者の方もいるのではないかと思います。

退職理由一つで面接の空気が良くも悪くもなりますので、面接結果に大きな影響を与える要素として退職理由を考えた方が良いと思います。

最後になりますが、求職者のみなさんの転職活動が有意義なものであり、そして転職をきっかけに人生に良い影響があることを祈り、これで話を終わりにしようと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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