採用担当者が語る「正しい転職理由の伝え方」

どの会社の採用担当者も「優秀で会社にとってプラスとなる人材を採用したい」と考えています。

そのためにある程度の予算をかけて人材紹介会社や転職サイトなどを利用し、人材を獲得しようと奮闘しています。

「無料で人を採用する時代ではない」「人材を採用する際にある程度の費用をかけなければほしい人材は手に入らない」と考えているのです

良い人材を採用するために採用担当者が面接で重視する事の一つとして「転職理由」が挙げられます。

中途採用では前職になんらかの問題や不満がある人材が受けに来る事が当然ですが、その伝え方によっては、どれだけ仕事ができて優秀な人材でも採用を見送る事もあります。

私がこれまでの採用面接経験で転職理由について思ったことをご紹介します。

執筆者の情報
名前:澤田香苗(仮名)
性別:女性
現在の年齢:36歳
面接の経験人数:200名(アルバイトを含む)
面接経験時の役職:1次面接責任者
企業・業種:中堅電機部品メーカー

人間関係が理由の転職

昨今、企業内でのモラハラやパワハラが多くあり、うつ病での休職の多さが社会問題になりつつあります。

私の在職していたどの会社でもうつ病で休職している人はいました。

うつ病での休職は長期にわたることが多く復帰後も細かな制約が多いことがあるので、会社としては頭を抱える事が少なくありませんでした。

そういった問題を最小限に抑えたいため、人間関係が原因で転職する人には慎重になります。

転職後に気の合わない人がいた場合、また退職を選ぶのではないかと考えるからです。

しかし、以前にこの転職理由で採用となった人がいました。

その人の転職理由は上司との関係でしたが、「数年単位で試行錯誤してみたけれどもどうにもならず、それでも現在の職種を続けて行きたいので転職を決意した」と述べていました。

人間関係につまずきつつも数年試行錯誤したという部分で、問題が起きてもすぐに放り出しはしないというイメージを持ち、その間も仕事に前向きに取り組んだとアピールする事で逆境での耐性がある印象を持ちました。

危惧していた事を払拭(ふっしょく)できるだけの具体的な行動があったので、転職理由が好印象に変わりました。

転職後、5年以上たちますが、彼は今も問題なく会社で働いています。

給与、会社の将来性への不安

一昔前のようにどんどん給与が上がっていく時代ではありません。ですから、この転職理由も増えています。

採用担当としてはそれほど不信に感じる転職理由ではありませんが、ではうちの会社が経営不振になった時にこの人はどうするのかな?という疑問はわいてきます。その答えとして良い印象を持ったのは不安だけでなく、取り組んだ事を話してくれる人でした。

例えば業績が悪くなる中で上司にどんな提案をしたか、資格取得をしたか、語学を勉強したかといった、自助努力を欠かさなかった事をアピールすることで転職理由に説得力を持たせる事ができます。採用担当者も同じ会社員ですので、給与に不満がある事は十分理解できますし、海外に事業が移行している業界がある事も分かっていました。

この理由は行動力があるという事を印象付ける事ができる転職理由だと感じています。転職希望者の中には経理関係の仕事ではありませんが、自社の財務諸表を読んで経営状況を判断する人などもおり、そういった人はとても良い印象を受けました。

残業、休日など待遇への不満

この理由も転職理由としては非常に多いものです。

前職の具体的な残業時間や休日出勤の状況を伝えるようにしましょう。

その状況をひどいと感じるかどうかは会社それぞれですが、少なくとも前職と同じような待遇の会社へ入社することは免れます。

仕事に全力で取り組み、高い生産性を上げるためには適度な余暇は必要です。

採用担当としてその位は理解していますし、それが理解できない採用担当者がいる会社はブラック企業の可能性もあるので、間違って入社しないように気をつけましょう。

また、待遇面を聞く事は決してマイナスにはなりません。

具体的なイメージを持つためにも積極的に社内の事は聞いてもらいたいと感じています。

入社後のミスマッチをできるだけ無くしたいと思っているので、特に書類などでは伝わりにくい社内の雰囲気や取り組みなどはどんどん聞いてほしいと感じています。

大事なのは嘘をつかずに伝え方を工夫する事

これまでに数多くの採用面接を行っていますので、転職理由についてもある程度は予想できています。

大切なのは嘘をつかずに伝え方を工夫する事だと思っています。

第2新卒までならばポテンシャル採用もありますが、基本的に中途採用は異なります。

中途採用で重視される部分

  • 何ができるか?
  • 即戦力になるか?
  • 会社にとってプラスの影響をあたえられるか

会社の求めるものと転職希望者の求めるものが違えば、転職しても数年後に退職してしまうことも少なくありません。

私が新卒で入社した会社はまだ創業20年弱の人材系の会社でした。

勢いがあり、全員一丸となって上場を目指して頑張っている社風です。

そんな企業は前向きでアグレッシブな人を求めていますし、2社目である現職は創業が長いメーカーであり、協調性のある人を求める傾向にあります。

ほしいタイプは会社によって全く異なりますので、入社する事を目標にするのではなく、会社でどんな事をしたいかという事を前提において転職活動をしてほしいと思っています。

転職先が自分の希望と合っている会社だと感じたら、転職理由の伝え方を工夫して勝ち取ってほしいと思います。

この記事の筆者

澤田 香苗(仮名)
1979年生まれの36歳。新卒で人材業界に入社後、法務課、人事課で従事。

中堅メーカーに転職後、人事課に配属され、現在はアルバイト採用責任者、正社員面接担当者として従事している。

創業の浅いベンチャー企業と歴史あるメーカーの両方の経験を生かし自社に合う人材採用にまい進中。

採用後は人事担当として相談に乗る事も多く、採用者定着率の向上に努めている。
特に女性社員の育成に力を注いでいる。

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