面接官からみた「高学歴のプライドが見え隠れしてしまう人」

企業で転職者の面接を数多く行ってきた経験から、高学歴の方が持ちやすい「面接時の悪い印象を与える癖や口調」についてお話ししたいと思います。

執筆者の情報
名前:永井 成果(仮名)
性別:女性
現在の年齢:47歳
面接の経験人数:約500人
面接経験時の役職:-
企業・業種:-

学歴より職務経歴書

面接官は、次々に送られてくる履歴書にまずは目を通します。

転職の場合、基本は仕事ができるかできないかなので履歴書より職務経歴書を中心に見ます。

職務経歴書で実力を想像しながら、履歴書はあくまで参考にその人の学歴的な背景を見るといった感じです。

その時の募集は、営業職の募集でした。

会社は工業系の原料商社だったのですが、最低でも商社営業の経験者の応募を期待していました。

書類選考で選抜してから面接に進んでもらうすることにしていたので、まずは到着した書類を担当者3名で見ました。

そんな中、商社ではないがプラスチックメーカーの管理部門と営業を少しだけ経験した男性の書類に目が留まりました。

プラスチック原料のメーカー営業出身者なら多少なりとも工業原料に勘どころはあるかなと期待を持ち、面接に進めることにしました。

この時、担当者の1名が履歴書の学歴部分がすごい高学歴に気付き、実践営業にはちょっと不向きかもと反対しましたが、高学歴が悪いわけでなく、人物本位ならなおさら会ってみなければわからないということで面接に進むことになりました。

履歴書でわかった高学歴

高学歴の意味はいくつかあって、まず有名国立大学や有名私学など「学校歴」を言う場合です。

これはテレビのクイズ番組で、ゲストタレントの出身大学名までオープンにし「高学歴チーム」などと言ったりしている、あの「高学歴」です。

高学歴のもう一つの側面は、大学卒や大学院卒などの経歴です。

最も高学歴なのが、大学院の博士課程修了者です。

ここまでくれば大学に残り研究者として勤めるのが一番いいのでしょうが、そこは狭き門なのか、いろいろ事情があるようで民間企業への就職を考える方もおられます。

実は、この目にとまった人の高学歴は、これらの高学歴の要素をすべてクリアしていたのです。

つまり、超一流国立大学の博士課程修了者でした。

面接当日

履歴書の写真は柔らかい感じもあり、話しやすい雰囲気があったのですが、実際に会ってみると「ちょっと硬いかな〜」という第一印象でした。

面接室への入場、礼の仕方など身のこなし方は礼儀正しく、紳士的でした。

面接は導入で固さをほぐすためにソフトに入り話しやすい雰囲気を作るのがまず基本なので、簡単なあいさつの後、こんな言葉を投げてみました。

「○○にお住まいなのですね?こちらまで来ていただくのにかなり時間がかかったんじゃないですか?」

返事は、「あ、はい、そうですね〜。」
後が続くのかなと思うと、そこで終わりました。

まだ導入部分なので、ちょっと緊張気味かなと思って次の質問に入りました。

「では、簡単に自己紹介していただけますでしょうか?」と投げると、なんとなく口の重そうな感じで話し始めたのが次のような内容です。

「まず、履歴はそちらに書いてある通りです。前の会社は御社とも多少関係があると思いますので、名前はお聞きだと思いますが、○○ケミカルで元々品質管理の専門職で入社しました。しばらくして組織改正があり、人事から大学時代の専門知識を生かし営業をしてみないかと言われ新規卸ルートの開拓中心に仕事をしていました。」

ここまで聞いてきて、すでに前職を辞めた転職者にありがちな一生懸命さや逆に言えば焦りのようなものはまったく感じられず、むしろ堂々としているので、こちらの方が押され気味になりました。

前職での新規ルート開拓の話が一通り終わったのですが、自分の役割や営業活動の話はあまり出てきませんでした。

高学歴の持つ悪い方の意味

ちょっとイライラ感が募ってきたので、すかさず
「はい、わかりました。○○さんはその中で具体的には何をされ、どんな結果を出してこられたのでしょうか?」と質問しました。

質問の趣旨は、理屈はいいので具体的な話をしたいというメッセージです。

その返事がこのような感じです。

「う〜ん、アウトプット的に何があったかと言われると説明しづらいのですが、新規ルート開拓ということでは、前社のビジネススキームに良いも悪いもひとつの可能性を示唆したのではないかと自負しているのですが、継続性、定着性ではどうなんでしょうかねえ。辞めてしまった後なのでなんとも言いにくいですね…。」

ここまで来て、博士の意味や高学歴がもっている悪い方の意味がだんだんわかってきたのですが、応募者と長々と経営談義をするつもりもないので質問を切り替えました。

こういった調子の返事が続くようだと何を聞いても一緒だと思うので、フィニッシュ前のラストチャンスの質問をしました。

「今回の私どもの募集は営業職なのですが、営業職にとって一番大切なことはなんだと思いますか?また、あなたの高い専門性は当社の営業で行かせますか?」

「職務経歴書に書きましたが、私の専門はプラスチックフィルムで、御社的ではほとんど扱っておられないので営業的にはちょっと無理かもしれませんね。新しい販路開拓のご予定とかおありでしたら、なんとかお役に立てるのではないかと思います。営業職の募集ですが、営業にはまったくこだわりませんので、是非よろしくお願いします。」

「わかりました。今日はお忙しい中、ありがとうございました。」

本人も気づかない話すときのクセを改善

高学歴と言われる方が必ずしもみんなこんな感じだとも思いませんが、ふとした拍子に出てしまう理路整然とした受け答えやマクロ的な言い方は、受け手からすると“上から目線”に取られてしまい、営業職など高い対人スキルが必要な職種では全然かみ合わないことがあります

この例も、転職者はまったく間違ったことは言っておらず本人的には一生懸命なのでしょう。

応募職種を間違えたと言えばそれまでですが、長年の思考パターンはすぐに出てしまいます。

反対に、この面接例を転職者側に立って考えるとどうでしょう。

これは、決して高学歴が敬遠されるということではありません。
高学歴であることは努力の結果であり、それ自体は素晴らしいことです。

それを意識してひけらかすことはダメですが、そんな人はそうそうおられるわけではありません。

一番問題なのは、本人も気づかないうちに横柄な態度や偉ぶった言葉になって無意識のうちに出てしまうことです

特に営業職や販売職は人当たりの良さを大事にしますので、今回の例のような応募者は致命的です。

これを未然に防ぐには本人の心掛けが一番ですが、転職エージェントなどで模擬面接を受け、自分自身を客観的に見てくれる人のアドバイスを受けるのも良いです。

ポテンシャルが高いだけ、理解が早く改善も早いかもしれません。

この記事の筆者

永井 成果(仮名)
企業で何人も転職者の面接をしてきました。

その後、私自身が転職し、今度は反対にその経験から転職者を支援する仕事もしました。

企業の面接経験では、こんな人は絶対受からない、逆にこういう人は非常に好感を持たれ面接をパスできる人だというのがよくわかり、一方、支援する仕事ではそれを転職者にアドバイスしてきました。

この両経験から、転職者の役に立つ体験談とヒントを紹介したいと思います。

このページの先頭へ