転職エージェントが自分で応募したくなることはあるのか?
今回は「転職エージェントは、自分で保有する求人に応募したくなることはあるのか?」という話をしていきます。
本来、転職エージェントとして、求職者の方の転職成功を支援する役割の立場の者が、応募したくなるのかどうか?
転職エージェントとして勤務する中で、実際にあった3つのエピソードを紹介したいと思います。
今回の記事の目次
ケース1:とある転職エージェントで働く友人の話
まずは、私と同じく転職エージェントで働く友人から聞いた話です。
まさに今回のお話にピッタリで、友人の部下が会社で保有する求人に応募したいと意思表示してきたそうです。
その話を聞いて、私は笑ってしまいましたね。
「そんなことありえないだろう」と思っていたのです。
転職は上司や同僚には伏せて活動するのが普通ですから、2重にアブノーマルなことをしているのです。
なかなか正直な部下の方ですよね。
その転職エージェント内では、自社保有の求人に応募することは禁止行為となっていたので、結局その求人には応募できなかったそうです。
しかし、その部下の方はどうしても応募したかった為、会社には伝えない形で同様の求人を保有している転職エージェントから、その企業へ応募したそうです。
結果は残念ながら不採用で、その部下の方はまた別の企業へ転職したそうです。
転職エージェントで働く人も、皆さんと同じように会社員です。
将来に不安を持つ人や、違う環境でスキルアップしたいと思うことは当然のことだと思います。
この友人の部下のケースは若干珍しいですが、自分の転職エージェントにある求人に応募したくなることは当たり前のようにあります。
裏話、個人的な考え
実際、私の会社にも他転職エージェントで働く方が何人も登録しています。
転職エージェントは転職先に、同じく転職エージェントか、人事を希望する傾向があります。
転職エージェントと人事は共通点があり、経験を活かし易いのです。
この話は機会があったらまた詳しく紹介していきます。
ケース2:人事側からの経験
これから紹介する2つの話は、私が転職エージェントを始める前に企業で人事として勤めていたときのことです。
どちらもまたレアケースですね。
当時、ある転職エージェントの営業担当者と長い付き合いがあったのですが、ある日こんな相談を受けました。
「弊社の従業員で御社で募集している職種に応募したい人間がいるんですが、紹介して良いですか?」
社内的には公開出来ないので、クローズでお願いしたいと。
当時の私が勤める会社規定や法令に触れるものではない為、紹介を受けました。
その転職エージェントの従業員は無事採用に至り、とても活躍してくれましたよ。
ただやはり話はどこからか漏れてしまい、転職エージェントの社内では問題となったそうです。
内密での契約だったので無報酬でしたし、自社の従業員が他社へ入社したとなればダブルで痛手になりますからね。
どうやら、他の会社でもこういったことはそれなりにあるようです。
ケース3:営業担当者が自分を売り込む!?
私が人事をしていた頃、ある転職エージェントに営業系の求人を公開していたころです。
良い人材の紹介こそあるものの、なかなか採用までは至らず苦戦していました。
そんな中、ある営業担当者に来社して頂き、打合せの途中に「今回の営業職の紹介人材ですが、こんな人はどうですか?」と、個人情報が見えない履歴書を渡されました。
その履歴書には営業実績や経験がまとめて記載されており、十分選考に乗る人材でした。
「是非紹介して欲しい」と伝えると、その営業担当者は「このレジュメの人材は、もうお会いしたことがあります」と答えました。
営業担当者は苦笑いしながら、「ここにいますよ」と言ったのです。
漫画みたいな話ですよね。
最初は冗談かと思い、大爆笑しましたが、話を聞くと本気で応募してきたようなのです。
このケースについても規定としては問題なかった為、自己応募に切り替えて選考を承諾しました。
結果的にこの営業担当者も採用され、私の会社としては採用コストがゼロで人材を確保できたのです。
ただその後、前職の転職エージェントの営業担当者とばったり受付で遭遇してしまったそうです。
何か起こったわけでもありませんが、こういったことは気まずいですよね。
私自身、魅了される求人はあります
私は転職エージェントとして活動している中で、求人に応募したいと思ったことはありませんが、「魅力的だな」、「働いたら楽しそうだな」と思うものはいくつもあります。
先述の通り、転職エージェントの従業員が自社で保有する求人に応募したいと思うことは当たり前にありますし、悪いことではありません。
むしろ、転職エージェントとしては、ポジティブだと思います。
私が求人に魅了されることも、ごく普通のことだと思います。
自分が働きたいと思わない、魅力的だと感じない求人を求職者に紹介するのは違和感がありませんか?
私が求職者の立場なら、担当者自身が入社したい魅力的な求人を紹介して欲しいです。
私は部下にそうするよう伝えています。
転職エージェントをしていて、新規の求人依頼があっても魅力的だと感じない求人は、あまり積極的に求職者に紹介しないようにしています。
その前に、公開する企業に対して、この条件をこう変えて欲しいなど提案しながら、自分が働きたいと思える状態まで改善してもらっているのです。
企業の方は、同職種の入社条件を他社と比較できない為、公開する求人の質を判断できないのです。
あまり魅力ある入社条件でない場合は、求職者が仮に入社したとしても長続きしませんし、そうなると求職者は再度、転職活動をしなければなりません。
企業としてもまた募集し直すことになり、両者にとって二度手間に繋がる可能性があるのです。
こういったことを見極めるのも転職エージェントの仕事になります。
企業も採用を早く決めてしまいたいので、改善を頑なに拒むことはありません。
最後に
転職エージェントで働く方々も、皆さんと同じように人間であり、会社員です。
その為、自社で保有する求人に応募したくなることは必然的なことです。
ちなみに私は、自分が転職活動する際に転職エージェントを利用したことがあるのですが、その時にもこういったことを聞いたことがあります。
特に何の問題もなく、「はい、応募したいと思う求人はものすごくあります」と答えてくれました。
もし、今回の話を読んでいる方の中に、今、実際に転職エージェントで働き、自社で保有する求人に応募したいと思っている方がいたら、細心の注意を払ってくださいね。
企業にどのように応募するのかは、転職エージェントとしての立場がある為、信頼する人に相談しながら進めなければなりません。
今回のお話は、非常にニッチなことで表にはあまり出ない実話をもとにご紹介しましたので、『え?』と思う内容もあったかと思います。
そこは、「転職エージェントも人間だもんな」と心広く思って頂けたらと思います。