楽とは限らない!転職を考えてる人が知っておくべき田舎の役所職員の実情

皆さんは「田舎の役所職員」と聞いてどんなイメージをされるでしょうか。「仕事に追われず、穏やかな年配者の世間話の相手」「のんびり業務をこなして18時退社」「人情溢れる同僚たちと助け合って働く」などでしょうか。

実は意外とやることが多く、ストレスやプレッシャーもあるのです。私が最終的に精神病を患って退職するまでの経験をまじえて、田舎の役所職員の日常についてお話させていただきます。

執筆者の情報
名前:安城ひろむ(仮名)
性別:男性
年齢:28歳
業界(歴):公務員(4年)
職種(歴):教育課(2年)、総務課(1年)、建設課(1年)

業務内容は?

業務内容は課によって大きく変わりますので、ここでは私が所属していた課での仕事について紹介させていただこうと思います。

教育課では町村内の小中学校に関する全ての予算、イベント、各種申請、教育関係財団助成事業、社会体育などのスポーツ振興、文化財保護、教育施設の管理などを行っていました。プールや図書館の運営も教育課の仕事です。

担当範囲の広さから、服装もスーツ、作業着、ジャージに水着と毎日変わります。人前で喋ることも多いため、コミュニケーション能力が高くマルチタスクが得意な人が向いています。

総務課も仕事の範囲がとても広いのですが、「役所内の全ての課の面倒を見る」というと分かりやすいかと思います。他の課の仕事が住民相手の「外向き」の仕事であるのに対し、総務課は職員相手の「内向き」の仕事が多いです。

町村長の秘書業務も総務課が担当します。人前で喋ったり、屋外を動き回る機会は多くない代わりに、役所内の全ての部署の仕事や人間関係を理解していることが求められます。

建設課は自治体の管轄する道路や土地、施設の管理のほか、維持工事、新規着工などの全てを担当します。デスクワークでは登記の管理や図面の調整など図を読み解く能力が必要となります。

CADなどのソフトを使うことが多いので、扱いに慣れていると重宝されます。また外仕事では現場調査や設備保全、維持工事などを季節や天候にかかわらず一日中行うため、肉体的なストレスへの耐性が必要となります。

工事現場での作業の経験があると有利です。

意外に知られていない精神疾患の多さ

心身の疲弊からうつ病やパニック障害、統合失調症などの精神疾患を患い、治療を受けながら業務を行っている職員や、休職や退職をせざるを得ない職員は少なくありません。

私の勤めていた役所は150人ほどの職員がいましたが、1人がうつ病で通院しながら仕事をしており、私以外に1人が躁うつ病で様子がおかしくなり休職していました。私が入庁する前の年にもノイローゼで1人退職したとのことでした。

地方公務員安全衛生推進協会の調査によると2012年の全国の地方公務員の精神疾患による休職者は1215人ですので、その中の2人が私の勤めていた役所から出ていることになります。これは決して低くない精神疾患の発症率といえます。

その原因はいくつか挙げることができます。まず田舎の役所職員の一日の仕事量ですが、人員の少なさから都会の役所に比べて、一人あたりが負担する業務の種類・量ともにかなり多いです。クレーマーの問題もあります。

新人がクレーム担当になることも多いので、新卒での就職を考えている方は、ある程度覚悟が必要です。また、職員同士の人間関係も、バランスを取って上手くやっていくのはなかなか大変です。

特に財政課や教育課などの一般的にストレスの多いといわれる課ほどパワハラ・モラハラ・いじめ・密告・悪口・嫌がらせなどが起きやすく、特に町村外出身者の気の弱い職員などはそのターゲットにされ易い傾向があります。

「それでもやりたい!」という方へ。田舎の役所職員のなり方と待遇

役所の職員になるためには「地方公務員試験」に合格しなくてはならないというイメージをお持ちの方も多いかと思われますが、これはあくまで資格の一つであるため、必ずしも必要というわけではありません。

特に人員不足の過疎地の役所は採用基準も都市部に比べて甘めな傾向にあり、またその地域に適合できるかを知りたいため、「その市役所での筆記試験、小論文、面接の成績」が重視され易いのです。

試験の難易度自体はそれほど高くなく、地方都市の市役所合格を目指して勉強するつもりで準備すればほぼ間違いなく筆記試験は通過できます。

小論文、面接では「わが自治体の抱えるこの問題について、あなたならどうしますか」といったローカル性の高い質問をされる可能性が高いため、広報誌や議会一般質問を読み込んでおくといいでしょう。

採用後半年間は「雇」という試用期間が定められており、終了後に「主事補」となります。主事補の給与は月収手取り17万円ほどなので、一人暮らしは厳しい面もあり実家から通う人も多いです。

賞与は夏と冬の年2回で、およそ月給の2.5か月分ほどになります。

まとめ

他の職業と同じく、田舎の役所職員にも独特の大変さがあります。役所の職員というのは一般の人よりも弱い立場なので、さらに新人となると町村で最も立場の弱い人間という考え方もできます。

つまり、楽さを求めて行く職場ではありません。都会の市区役所よりは簡単に安定した職場に就職することができるのは魅力の一つですが、役付き以下の給与は一人暮らしがやっとできるかどうかといったところです。

しかし、業務内容としては非常に幅広いことに携わることができます。特に田舎の役所では、新人のうちは役所の仕事全体を把握させるために1年ごとに部署が変わることも少なくありません。

役所内外との人間関係や仕事量の多さなど苦労もありますが、様々な経験を積むことができる職場といえるでしょう。

この記事の筆者

安城ひろむ(仮名)
1988年生まれ。大学卒業後に某町村の役場に4年間勤務し、その最中うつ病・パニック障害・統合失調症を患う。退職後は理学療法士や旋盤工・自動車工場・養鶏など様々な職業を目指したり経験しながら適職を探す。現在は学生時代からの特技を活かしフリーランスライターとして活動。得意とする執筆分野はミリタリー・アウトドア・スポーツ・健康・美容・精神疾患・発達障害など趣味と経験に基づいたものが主。

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