転職するなら婚礼司会!?果たしてどんな仕事?
「結婚式の司会者」というと何となく想像はつくけれど、どんな人がどういう経緯で働いているのか、結婚式本番以外は何をしているのか、どういう仕事なのかを改めて考えると謎の多い仕事だと思います。
今回は私の経験をもとに、そんな疑問がクリアになるように婚礼司会者について掘り下げてご紹介致します。
- 執筆者の情報
- 名前:和田由美(仮名)
性別:女性
年齢:34歳
業界(歴):司会業(12年)
職種(歴):婚礼司会(8年)
今回の記事の目次
婚礼司会者の働き方や収入
現在婚礼司会者になる為の資格はなく、スクールや事務所で講習を受ける事がデビューへの第一歩となります。
デビュー後の仕事方法には大きく分けて二種類あり、一つは式場専属司会者として決まった現場でのみ勤務をする方法、もう一つはフリーの司会者として所属事務所提携先の複数の現場からの注文を受けたり、自ら売り込みをかけ契約した現場で勤務をする方法です。
専属となった場合、ある程度安定した仕事に入れる可能性が高いというメリットはありますが、フリーよりも一本の仕事に対する単価が低い場合があったり、打ち合わせ等式場に決められた回数でしか動けないというデメリットはあります。
フリーの場合のメリットデメリットはほぼ真逆で、単価やスケジュールは事務所と交渉出来るものの、仕事本数は安定しないので副業での収入がメインという司会者も多々。
収入については何れの場合も、式場や事務所が設定する司会者料金(¥60,000-位から¥200,000-程が相場で、経歴や知名度によって変わってきます)から式場・事務所が必要分を引いた金額となり、司会者本人の手取りは司会者料金の四分の一前後となります。
その中にはお打ち合わせと本番両方の交通費も含まれます。
また、事務所に所属しているという状態は社員とは異なるため、健康診断や確定申告等自身で管理する事項も多いです。
婚礼司会者の働く現場
イメージしやすいのはホテル・結婚式場・レストランでの御披露宴かと思いますが、それ以外にも実に様々な現場があります。
ここ数年人気が上がってきている人前結婚式。此方は宗教や形式にとらわれない結婚式なので、牧師や神主ではなく司会者が進行します。チャペルや庭園で行う他、御披露宴内で行う宴内人前式というものもあります。
他にも1.5次会と呼ばれるカジュアルウェディングパーティー、御披露宴後の2次会、両家のみの小さな食事会等婚礼に関する多くの現場に立ち会い進行業務を行います。
その一つ一つが、各式場によっての様々なしきたりの違いやお客様(新郎新婦)の好みにより全く別のものになるため、それに合わせた進行をしていかなくてはならないのが婚礼司会者のやりがいでもあり、大変なところでもあります。
多種多様な式場での仕事となりますが婚礼の為の施設は表面だけではなく、裏の事務所や厨房まで、食中毒の対策もありどこも清掃が行き届いていて衛生的です。
また、挙式に使うチャペルや御披露宴会場、通路も美しくデザインされていたり空調も効いていて労働環境としては贅沢ですらあります。
婚礼司会者の一件のお仕事の流れ
今回は婚礼司会者が最も多く請け負う、御披露宴のお仕事についてお話していきます。先ず、どの新郎新婦を担当するのか決定するところから始まるのですが、この時点でまず司会者しての見せ方が評価されています。
新郎新婦と式場との契約が成立した時点で自動的に司会者を振り分ける式場も稀にありますが、多くの式場が新郎新婦に司会者を選んで頂く方式を取っています。
膨大な人数の司会者の資料や動画を見た新郎新婦に、この人に任せたい!と思って頂けなくてはいつまでも現場に入ることは出来ません。見た目の印象、プロフィールや話し方、声、の要するに第一審査です。
その上でスケジュールが合致したらお打ち合わせへと進みます。お打ち合わせに進んだからといって油断は出来ません。
お客様は司会者の変更を出来る権限を持っていますので、その時の対応で自身の最善を尽くし御二人と解りあい信頼を得ることが重要となります。
お打ち合わせでは進行表を作ったりプロフィールを伺ったり、雑談でリラックスして頂きます。
その後キャンセルが発生せず、無事に担当司会者として決定すると、それ以降はご希望によって再度お打ち合わせを行ったり、電話やメールで連絡を取り合います。
この期間には、進行に関するお話以外にメンタルケアも行う事があります。
幸せいっぱいの御二人とは言え、意見の相違や両家のご両親の意向の食い違いで傷ついたり不安になったり式場に言えない悩みが生じることがある為、司会者もしっかり御二人のお話を聞くことでそういった部分の解消もお手伝いするのです。
そうして本番当日へと進んでいきます。
いざ本番!家に着くまでが本番です
当日、本番が始まる1~2時間程前には式場に到着し、婚礼担当者(プランナー、コーディネーターと呼ばれます)や婚礼主任(キャプテン、マネージャー、主任等と呼ばれ、一つの宴席の全ての監督として動く方です)、音響照明スタッフと最終確認をしたり、読み上げる祝電を揃えたり、新郎新婦のもとへ直前ご挨拶に伺います。
開始時間以降は、様々なスタッフと連携しながら司会進行をしていきます。婚礼主任が新郎新婦とゲストの様子や厨房の状況により判断と指示を出すため、それに従い必要なアナウンスを入れるというのが主な動きとなります。
無事お開きを迎えたら、新郎新婦とご両家の親御様へのご挨拶、婚礼担当者と婚礼主任に完了報告やご挨拶をし帰路につきます。
当日は、行きの電車や帰り道、どこにお客様がいるか解りません。その日の新郎新婦でなくともご家族や列席者、過去担当したお客様、もしくはその式場で婚礼を成約してこれから司会者を決める未来の新郎新婦。
予想以上にお声をかけて頂けるため、恥ずかしい思いをしないように家を出てから帰るまでをずっと本番と考え気を張っていた方が良いです。
婚礼司会者ならではの喜びと苦労
結婚という人生の晴れ舞台、笑顔と感動に包まれた場所。自身の関係者以外のその場にも沢山関われることがこの仕事の魅力です。
そして、頑張れば頑張っただけ、その場で評価を頂けます。
「○○さんの顔見たら安心できた」
「○○さんの声で素敵な一日になりました」
「列席者や家族からも好評でした」
等、お客様からの嬉しくなる言葉は活力源となります。
中でも「司会者としてだけでなく人としても、出逢えて良かった」「○○さんに出逢えたことは財産です」のように、人間性も併せて評価頂けることもあり常に次の仕事へのパワーを貰えるというのはこの仕事ならではの幸せなことです。
お礼金やプレゼントを用意してくださる方もいらっしゃいます。
勿論仕事ですから、毎回全てにおいて幸せだけで終れるかというとそうではないのが現実です。技術として、間違いがあったり言葉を噛んでしまえば叱責もありますし、お客様からのクレームに繋がる可能性もあります。
それで辛いのは、自分が傷つくのではなくお客様に悲しい思いや怒りを与えてしまうというところです。
自身を選んでくれたお客様の、人生に一度の幸せな日を自分の一言で台無しにしてしまう可能性があることは常に忘れず臨まなくてはなりません。
精神面での辛さも回避したいですが、以前主賓のお名前を間違えてしまった司会者が数十万円の賠償を支払ったとも聞き、そういった意味でも間違いは避けたいものです。
フリーの司会者にとって、良くも悪くも色々な式場があります
式場によっては雑用係の様に司会者にあれこれと押し付けたり、八つ当たりをされたり、苛めの様なことをする人もいます。毎日デスクを並べている関係ではないので、ターゲットにしやすいのかも知れません。
私も新人の頃、組んだ婚礼担当者が私の作った進行表で無いものを他スタッフに配布し私の確認不足をでっち上げられたり、夜中にわざわざ嫌みをいう電話がかかってきたり、何度も着ているスーツで向かったのに所属事務所に「露出している」と嘘のクレームを入れられたりとなかなかの苦労はありました。
幸い理解ある事務所であるため適切に対応してくれましたし私も堂々と物を言って来たため、今となっては無かったことになっていますが、萎縮してしまうタイプの司会者の方は今でも嫌な思いをされている様です。
弱いもの苛めをする人は大人になってもいるものです。
と、ネガティブな例をあげてしまいましたが、この仕事を続けていれば相性の合う式場というのも沢山見つかります。
スタッフ皆が連携を取れていて、司会者含めて全てを全員で作り上げるという式場では本当に快適に仕事をすることが出来ます。
ある程度仕事が安定してきたら相性の良い式場の仕事を優先的に受けるなど、自身に向いた方法で続ける司会者は沢山います。
ハプニングにも落ち着いて
現場ではハプニングも起こります。新郎が酔ってしまったなんて言う話を聞いたことがある方はいらっしゃるかとも思います。
男性達で盛り上がるとついつい飲み過ぎてしまう、おめでた事ですから本人が大丈夫であれば問題無いことです。他にもよくあるのは、お子様が関わるシーンです。
リングボーイやフラワーガールがグズってしまい、出られなくなってしまった、一緒に中座するつもりが眠ってしまった等々…しかしお子様だから仕方ないと誰もが笑顔になってしまうハプニングですね。
そんな微笑ましいハプニング以外の出来事もあります。新郎新婦、ご家族、列席者の体調不良で予定通りの進行が出来なくなってしまう。新郎新婦が進行に関わる忘れ物をしてしまった。
祝辞や余興の担当者が式場に来ておらず、連絡もつかない。祝辞が数十分に渡ってしまい乾杯が出来ず、冒頭にして時間が押してしまう。
お式直前に両家のご両親同士が揉め結婚を破棄すると言い出したり、本番前日に新婦が「やっぱり結婚式したくない!」と言い出したこともありました。
何が起こるか解りません。しかしそれに此方は慌ててはならず、式場スタッフの判断と指示を仰ぎ迅速に動くことが大切です。
また、当日までのお打ち合わせやご連絡の中で、新郎新婦とはとにかく沢山お話をして御二人を含めた両家のご家族とゲストの性格や心境、体調を把握しておくだけでハプニング発生時の意識が全く変わってきます。
まとめ
晴れの日を進行する婚礼司会という仕事。責任は重大、臨機応変さも求められますが、毎回毎回新しい幸せに立ち会うことができる素晴らしい仕事だと私は感じています。
自身が担当するお客様だけでなく、スタッフやゲストとも沢山コミュニケーションをとることがとにかく大切なので人が好き、話すことが好き、という人に向いています。
これからも司会者のお手伝いで、沢山の幸せと笑顔を産み出せることを願うばかりです。お読み頂き誠に有難うございました。
この記事の筆者
和田由美(仮名)
1982年生まれ。大学在学中に出席した披露宴を機に、婚礼司会者を目指す。接客業のアルバイトをしながら下積み期間を過ごす。下積み中は地方のイベントやパーティーの司会で経験を積み、念願叶い婚礼司会者デビュー。現在迄に700~800組の婚礼を担当。ライター経験はランサーズや他媒体にて1年ほど。婚礼関係以外にも、健康やカルチャーについての記事等幅広く執筆している。