人材業界は『人』の雇用に関わる仕事!しかし離職率が高い
みなさん、こんにちは。
転職活動を行う上で、大きな転職軸としては業界、職種は中心的なものになります。私も求職者時代に、この2つは大切な転職軸として位置付けて転職する企業選びを行いました。
求職者の中にはそれまで経験のない業界や職種を希望する方もいると思いますが、比率としては、経験のある業界や職種を考慮して転職後も同じ業界や職種を選ぶ方が多いです。
どちらのタイプも正しい選択ですが、転職はその後の仕事人生に大きく影響をもたらすものですので、業界や職種選びは慎重に行いましょう。
今回は、業界の中でも人材業界へ転職を希望する方に向けて、人材業界に関して色々な視点から転職活動に活かせる情報をご紹介したいと思います。
まずは、人材業界とは?ということで人材業界を取り巻く状況や業界全体の情報から今回の話を起こしていこうと思います。
今回の記事の目次
人材業界は人に関わる仕事
人材業界と言っても、この範囲は広いです。また、人材業界は人に関わる業界で、いろいろな業種があります。
また、人の雇用に関わる業界であるため、歴史も古いことが特徴です。
人材業界へ転職を希望しているという求職者もこの背景を理解しなければ人材業界でどのような仕事をしたいのかまで落とし込まなければ良い選択とは言えないものとなってしまいます。
人材業界を細分化していくつかの業種ごとにご紹介しようと思います。
転職エージェント
これだけ転職というものが日本の文化の一つとなっている今、転職エージェントを知らない求職者はほとんどいないと思います。
しかし、転職エージェントを理解している方は少ないのかなと思いますので、しっかりと理解した上で転職エージェントへの転職を考えた方が良いです。
また、どのような規模の転職エージェントへ転職するのかも重要で、転職エージェントでも労働環境や社風、働き方が様々です。
転職エージェントの営業担当、その1
転職エージェントへの転職を希望する場合は、大きくは企業の採用支援を主な仕事とする企業営業と求職者の転職支援を主な仕事とするキャリアアドバイザーの2つがあります。
どちらも、やりがいのある仕事ですが、求職者の希望や思考、そして性格によっては相性が合わないことも考えられます。
企業営業については、求職者との接点よりも求人を発注する企業との接点の方が明らかに多いです。
転職エージェントの企業営業はほとんどが新規営業
転職エージェントの企業営業は、取引実績のない企業へ新規営業することと既存企業へルート営業することが主な動きになります。
新規営業については、取引実績がないため、口座を開けるという言い方を転職エージェントではしますが、新規取引のための新規営業は難しい一面もあります。
採用する企業は転職エージェントと新規契約する場合、費用発生はありませんので、場合によっては簡単に新規取引を開始することができることもあります。
この場合の相手先企業の特徴としては、採用活動に苦戦していることやベンチャー企業であることが多いです。
ベンチャー企業においてはネームバリューに欠けるため、また、社風として柔軟な姿勢を持つ企業が多いために、多くの転職エージェントと取引する傾向があります。
一筋縄ではいかない大手企業との新規契約
一方で、大手企業との新規取引においては苦戦することが想定されます。
大手企業の場合は、求職者の応募となる母集団形成が比較的、容易であり、また、容易であるため必要以上に新規の転職エージェントと取引しなくとも採用することができる環境にあります。
新規の転職エージェントを増やす企業も含めて大手企業も転職エージェントを増やし過ぎると応募者が増え、書類選考などの事務処理の簡素化に繋がらないために、取引することに消極的です。
しかし、どの転職エージェントの営業部門でも新規取引(新規求人)の数は営業担当者ごとに目標が決まっているため、何度も訪問を繰り返して新規取引を応じて貰うように働きかけなければなりません。
企業営業の最も難しく最もやりたくない仕事はこの新規営業と言われています。
転職エージェントの営業担当、その2
比較的穏やかなルート営業
新規営業の他に既存顧客となる企業のルート営業もあります。
このルート営業は既に取引があり企業とも顔見知りであるために、厳しい一面はほとんどないと思います。
企業営業は、既存顧客との打合せは、内々では『心のオアシス』と呼んでいます。
打合せは大体、1時間程度になりますが、大半が雑談です。
雑談は仕事?と思う方もいると思いますが、この雑談こそが大事なことです。後ほど、理由を紹介します。
雑談から企業の情報を仕入れて採用ミスマッチを防ぐ
打合せの大半を雑談で終わり、そして、お茶やお菓子を出してくれる企業もあり、誤解を恐れず言いますと、楽です。
打合せの雑談については、単なる世間話のように聞こえると思いますが、企業営業は、この雑談から企業とのコミュニケーションを円滑に行い、この雑談からその企業の考え方や社風など、その他の情報を仕入れて採用支援や採用決定に生かしているのです。
この雑談により多くの情報をキャッチアップして正確な情報により採用ミスマッチを防ぐ役割を担っています。
転職エージェントの中には、このルート営業をあまり行わない企業もありますが、その転職エージェントからの紹介求職者は、的外れが多かったり採用する企業としては事務処理が増えるだけで良好な取引を続けることが難しいようです。
雑談で企業との距離を縮め、新規顧客を獲得!?
私は人事として採用に関わり、取引のある転職エージェントの営業担当者と打合せを行いましたが、同じように大半が雑談でしたが、この雑談こそが採用成功の近道と感じています。
企業と良好な関係を築くと、食事に誘ってもらったり、中には一緒に旅行に行く営業担当もいるようです。
そして、一見、世間話と思える雑談により、企業からの信頼を得ることにも繋がり、本来、断られて当たり前でなかなか取引に応じることがない大手企業含む他の企業を紹介してもらえたりします。
新規企業の獲得率が高い営業担当者は、このように雑談から企業との距離を縮め、新規営業せずとも紹介数が多いことが特徴です。
転職エージェントのキャリアアドバイザー、その1
求職者が見ているのはキャリアアドバイザーの仕事の一部にすぎない!?
求職者としては、自分を担当するキャリアアドバイザーの仕事を直に見ることにより、キャリアアドバイザーとして仕事がしたいと思う方も多いと思います。
求職者の転職を支援するやりがいの大きい仕事ではありますが、顧客である求職者にネガティブな印象を与えるかもしれない部分を見せると思いますか?
求職者がみるキャリアアドバイザーの仕事内容は全体の中ではごく一部に過ぎません。
これは憧れに近いため、転職としては非常に危険です。入社すると顧客ではなくキャリアアドバイザーのプロとなる訳ですので、厳しい面も多々あり、それに直面することにより理想と違ったとして退職することもあるようです。
1人平均20人の転職を支援する膨大な仕事量
キャリアアドバイザーの仕事は、結果的には求職者の転職支援を行い転職決定に繋げることです。
転職支援は今さら言うまでもありませんが、求職者との面談、求人の紹介、転職軸の選定や相談、レジュメの添削、面接対策の共有、内定時の条件交渉となります。
一人のキャリアアドバイザーが同時に担当する求職者の数は平均で20名ほどです。多いキャリアアドバイザーでは40~50名となる場合もあります。
単純計算で、面談から内定交渉までの仕事を20倍行うことになります。キャリアアドバイザーの仕事量は非常に膨大です。
そのため、最近の転職エージェントではワンフェイス型ではなくツーフェイス型で求職者の転職支援や採用する企業の採用支援を行っている場合が多いです。
転職エージェントのキャリアアドバイザー、その2
転職エージェントが使っている『求職者管理』ツール
転職エージェントには求職者管理というツールがあります。自社で開発したツールもあれば、エクセルなどを使って管理している転職エージェントもあります。
この管理ツールを使い、求職者に対してどのような求人を紹介すれば求職者の希望を叶え、そして内定率を上げることができるか決めています。
ここがズレルと、ミスマッチが起こり、求職者からすると的外れな紹介だけというイメージを与え、企業としても的外れな求職者紹介となるため、この照合は転職エージェントの肝と言っても過言ではありません。
自分の目標達成と求職者視点との間の葛藤
また、キャリアアドバイザーにも当然、採用決定数と採用決定に伴う紹介手数料の額で目標が決まっています。
この目標を達成することができなければ評価に影響し、キャリアアドバイザーの昇給や賞与に影響しますので、どのキャリアアドバイザーも必死です。
自分の目標達成と求職者視点との間で葛藤があり、このバランスがキャリアアドバイザーとしては一番難しいです。
あまりに求職者視点に立ち過ぎて内定は出たものの辞退が増えればそれだけ自分の目標をクリアする確率が低くなり、評価に影響します。
中核の仕事であるからこその厳しさ
キャリアアドバイザーという仕事は、転職エージェントの中では企業営業よりも中核的な仕事であり、求職者と企業を繋ぐハブのような役割であり、求職者の人生に大きく関わる重要な仕事です。
重要な仕事であり、かつ、仕事量も膨大ですので、労働時間が長くなることが多く、また、大きなストレスを抱えることも多くあります。
転職エージェントの労働環境
改善されはじめた転職エージェントの労働環境
人材業界全体としてノルマがきつく労働時間が長いという懸念点がありましたが、転職エージェントについては少しずつ改善されています。
転職エージェントも含めて人材業界はサービス内容と性別が多くな関係を持ち、きめ細かく物腰が柔らかい対応ができる可能性のある女性の方が適しているということがあり、女性上位の業界と言われています。
現在はこの傾向も改善されて男性労働者の数も増えていますが、昔は2対8の割合で女性の方が多かったのです。
現在は、5対5とはいきませんが、4対6ぐらいの割合で女性が多いというぐらいにまで状況が変わっています。
進む従業員補充と全体最適
転職エージェントの業務量は多いため、女性が多いと体力的に業務量に対応することが難しく、離職に繋がってしまう恐れがあるためです。
大手の転職エージェントでは、女性労働者の労働環境を特に配慮して残業時間の圧縮を行い、その分を補うために従業員を増やして全体最適を図ることが増えています。
どの企業にとっても労働者を新規に抱えることは固定費が発生するため、経営リスクになるのですが、現在の人材業界(転職エージェント含む)はどの企業も業績が良いため、採用数を増やすことができる状態にあります。
長期雇用を希望する女性は大手エージェントがオススメ
ただ、小規模の転職エージェントでは、労働者が少ないため、また、一人が求職者の転職支援と企業の採用支援を同時に行うために労働時間も長く業務量も多いため、女性としては長期的な就業は難しいのかなと思います。
女性で転職エージェントを希望する求職者は長期的な就業を希望すると思いますので、労働環境に配慮できる環境を持つ、大手の転職エージェントを選んだ方が良いと思います。
大手の転職エージェントでは、結婚、出産、育児などとの両立ができるようにワークライフバランスを整備している企業もあるので、この視点からどの転職エージェントを希望するのかを決めて良いと思います。
知られざる転職エージェントの裏事情
ここからの話は求職者には普通では絶対に知り得ない情報です。また、転職エージェントを営む企業としては、この内容を推奨してはおらず、転職エージェントで働く個々が思うことになります。
求職者から見る転職エージェント
求職者の中には、『求職者の人生に関わるターニングポイントに関われる仕事』として転職エージェントを見ていると思います。
これは事実です。しかし、個々の労働者、特にキャリアアドバイザーについては、そのように思っていなことがあります。
転職活動中のみ求職者との接点を持つ転職エージェントの仕事
キャリアアドバイザーは、求職者と二人三脚で並走することができる仕事であることは間違いないのですが、あくまで転職活動中だけの期間限定の話です。
転職エージェントが求職者への訴求ポイントとして、『人の人生に関わり、その後に人生の責任を担う』としていますが、これは誇張し過ぎであり、話を大きくし過ぎています。
求職者と二人三脚で並走することができる仕事とは、転職活動期間だけのことであり、転職エージェント、特に求職者との関わりが多いキャリアアドバイザーは転職活動後の人生まで責任を担うとは全く思っていません。
キャリアアドバイザーもこの部分はドライに考えていますし、キャリアアドバイザーも労働者で在籍する企業へ利益貢献しなければ生き残れないのです。
長期的視点で求職者の人生に関わりたいのであれば転職エージェントではなく人事
私は、人事と転職エージェントの両方の経験がありますので、ここについて思うことがあります。
転職エージェントの中には、誇大表現で、転職エージェントは求職者の人生を並走するとしている企業もありますが、もし、そうであるならば、人事の方がよほど、人生という視点では並走できると思います。
転職活動よりも企業で働く期間の方が長いことの方が多い訳ですから、また、人事の仕事は在籍する労働者と並走して社内コンサルティングの要素を強く持つ仕事であるためです。
人材業界のその他の業種
転職エージェントの他に、転職サイトを運営する企業や派遣事業を行う企業もあります。
また、人材コンサルティングを事業として教育や制度設計を事業とすることもあると思います。
人材業界の高い離職率
このいずれにも言えることですが、労働環境は他の業界との対比では良いとは言えないです。
その証拠に転職エージェントも含めて人材業界の離職率は平均を上回っています。
日本の平均有休取得率はどれぐらいかご存知ですか?50%を下回っています。
月平均80時間に及ぶ長時間残業
この有休取得の観点でも、女性の労働環境を整備する転職エージェントを除き、平均を下回っている企業が人材業界には多いです。
有休の他の労働時間についても長時間労働である企業が人材業界には多く、業界の平均は80時間前後です。
日本の企業の月間の労働日数は平均20日となっていますので、80時間ということは、1日4時間前後の残業という計算になります。
定時の終了時間が18時や19時とする企業が多いのですが、1日あたりの平均が4時間ということは、22時や23時が帰社できる時間となります。
転職するのであれば離職率の低い企業へ
人材業界は仕事量が多く、ある理由で労働者を多く抱えることが難しい背景があり、どうしても一人の労働者に抱える業務負荷が大きくなってしまうのです。
人材業界ではこの大きな業務負荷を、仕事を通じた自己成長の過程と考える場合がありますが、長時間労働から自己成長ができるとは考えにくいです。
これは私の個人的な見解で、笑い話として取って頂いても良いのですが、残業が生む産物は、『小銭と疲労』だけです(汗)
企業の経営としても労働者としてもベストの労働時間は、8時間でその日の業務を終わらせる環境です。
人材業界が労働者を抱えることができない理由
転職エージェントでは現在、業績が良いとお伝えしましたし、人材業界は、ある理由で労働者を多く抱えることができないとお伝えしました。
一見、この2つの内容は相反するように感じますが、本質的には同じ根本であり、このように相反する内容が結果としてあるのです。
それは、人の雇用により売上や利益を得るビジネスモデルである人材業界は景気や企業の業績に非常に左右され易いという点です。
過去に不況で売上が落ち込んだことで、多くの企業が倒産したという経験があるため、人材業界のどの企業も一人の労働者の業務量が多いという理由で新規に労働者を雇うという判断にはなりません。
このようにリスクを回避するために、人材業界では一人の労働者の業務量が多い点について改善することができない状況があるのです。
今は資本力のある大手の人材企業では、景気が良いため、新規に労働者を採用する基準が通常よりも下がっていますので、求人数という観点や転職後の長時間労働も回避できる環境整備もあるように思います。
人材業界のデメリット面を見て転職を決めよう
求職者の多くは人材業界の企業からすると顧客です。どの企業も顧客に自社のデメリット部分は見せることはしません。
もし求職者が転職活動で人材業界を希望するのであれば、良い面ではなくデメリットになりそうな面の情報を中心に見て判断した方が良いです。
確かに人材業界のビジネスは仕事を探す求職者の問題を解決して転職成功に繋げるやりがいのある仕事ですが、それはあくまで結果でしかなく、そのプロセスは非常にタフです。
人材業界の仕事はプロセスが非常に重要で業務量も多いです。自分の希望が憧れではないことを確信した上で人材業界へ飛び込みましょう。
最後になりますが、皆さんの転職成功が実現することを祈り今回の話を終わりにしようと思います。