生命保険業界への転職がもたらす求職者への人生影響
みなさん、こんにちは。
求職者の皆さんはそれぞれに転職に期待を持っているかと思います。できれば転職のきっかけは前向きなものであって欲しいと思います。
後ろ向きの転職活動をすると、ある傾向があるのです。1つは、転職失敗を繰り返して転職回数が多くなる、2つは現職を退職するきっかけが転職先の企業でも同じことが起きているというものです。
中でも、ある業界へ転職する方の多くはその業界で仕事がしたいと本当に考えて転職していないことが多いです。その業界とは生命保険業界です。
今回は生命保険業界と実情と、生命保険業界へ転職する方の理由などいろいろな視点から生命保険への転職が求職者の人生にどのような影響をもたらす可能性が高いのかご紹介できればと思います。
まずは、生命保険業界について、このあたりから今回の話を起こしていこうと思います。なお、はじめにお伝えしておきますが、今回の内容は絶対ということではなく可能性が高いとう理解で認識頂ければと思います。
今回の記事の目次
生命保険業界とは
生命保険業界は、狭義の意味であり、広義の意味としては金融業界に入ります。
金融業界に入る背景としては金融商品である保険を取り扱う性格があるためです。
そのため、生命保険業界は金融庁管轄の業界となっています。
生命保険業界の歴史
生命保険業界は昔から日本にある業界で、日本では馴染みの深い業界の一つです。
時代の変化に合わせて生命保険の種類やメニューが多くなっており、現在も成長を続ける業界です。
また、この後詳しくご紹介しますが、保険業界は企業数が非常に多く飽和状態になっていることが特徴で、新規参入しても成功する可能性が低い業界とも言われています。
現在も成長する業界ではあるものの、生命保険という商品自体があまり評判の良いものではありません。
このような評判を覆すために、生命保険業界の企業の中には、生命保険の販売とともに業界全体としてクリーンなイメージを広げる活動を行い、また、企業理念にもその内容を加えています。
保険業界の企業
生命保険業界に属する企業は日本に多く存在します。
保険を取り扱う事業を行っていれば良いのですから、その中には対面型の営業方法ではないインターネットで保険を広げる企業も生命保険業界です。
また、その企業がメーカーでなくとも生命保険を扱うことができる保険代理店も保険業界に入ります。
そうなると、生命保険業界に属する企業数は100、200というレベルではなく非常に多くの企業が存在することになります。
特に保険代理店は、保険メーカーが販売強化を目的に非常に多く抱えており、日本全国に小規模の保険代理店が多く活動しています。
保険代理店は、生命保険だけでは事業として成立しておらず、他の事業と同時に行うことが多いです。
生命保険業界の労働環境
あくまで求職者視点でご紹介しますが、保険業界の労働環境は求職者にとっては良い内容とはお世辞にも言えないものです。
生命保険業界の企業では、大半の従業員が営業職となります。
そのため、営業職が企業の中で意見の強い立場にあり、営業体質の企業文化を持っています。
一般的に、営業色が強い企業の場合、営業職で成績を残すとキャリアアップとして他の職種へのキャリアチェンジが仕組みとして持っています。
しかし、生命保険業界の企業は、どれだけ営業で成績を残しても営業部門で昇格はあっても、他の職種への配置転換は期待しない方が良いと思います。
雇用形態と給与体系
生命保険業界の企業(代理店を除く)は、特殊な雇用形態と給与体系を持っています。まずは雇用形態についてです。
個人事業主の要素を持った正社員!?生命保険業界の雇用形態
雇用形態は通常、転職において正社員での採用となり、無期契約の雇用契約となりますが、保険業界の企業は違います。
採用も各支店単位で行い採用決裁も各支店の支店長が持っています。
営業職以外については、他の業界と同じように無期契約の雇用契約で正社員としての採用となりますが、営業職は各企業の中でも異才を放つ存在となっています。
具体的に説明すると、個人事業主の要素を持った正社員という雇用形態です。
圧倒的実力主義!!完全歩合制の給与体系
続いて、生命保健業界の給与体系です。
生命保険業界の営業職の試用期間は3カ月と限定しており、また、その呼び方も準備期間と言います。
この準備期間を超えると基本給の保証は一切ありません。完全歩合制となります。
一ヶ月単位でカットされていく基本給
しかも、3か月間で一律の金額ということではなく1ヶ月単位で数万円ずつカットされます。
なお、生命保険業界の中でも、この準備期間を3ヶ月とするものの、基本給の保証を1年とする場合もあるようです。
しかし、1年間ある程度の基本給が保証されるということではなく、時系列の経過とともに数万円ずつ減らされます。1年後にはゼロとなるように設定されています。
通常の場合、営業職であっても基本給の保証は絶対ですし、業務粗悪であってもゼロになるということはあり得ません。
交通費や軽食代も自己管理!?個人事業主的要素が強い生命保険業界の営業職
また、完全歩合給という仕組みも労働基準法違犯になりますし、最低賃金を当然下回りますので、最低賃金法違反に当たります。
しかし、生命保険業界の営業職はこの法令に一切抵触しません。
これは、個人事業主という要素の方が正社員要素よりも大きいためです。
そのため、給与以外でも顧客へ訪問する際の交通費や軽食代なども全て自腹で生命保険会社が負担する必要がありません。
このように生命保険業界の営業職は個人事業主と同じで全てを自分で行う必要があります。
生命保険業界への転職成功は人脈次第
生命保険業界への転職は個人事業主であり言い換えるならば経営者的な要素が強いため、何の保証もないと考えた方が良いでしょう。
しかし、生命保険業界への転職で成功する求職者ももちろんいます。まさにハイリスクハイリターンの世界です。
生命保険業界の営業方法
冒頭で消費者からは生命保険業界のイメージが悪いとお伝えしましたが、その理由はここにあります。
生命保険業界の各営業マンの顧客開拓のための営業方法は人脈次第です。
生命保険業界の人脈は広くもっと深い対象も入りのが特徴です。
自分の家族、親戚、友人、学生時代の先輩後輩や同僚など、それまでの自分の人生で少しでも関わった人は全て人脈となります。
芋づる式の営業理論『XYZ理論』
生命保険業界の営業理論として『XYZ理論』というものがあります。
このXYZ理論は、Xは自分と直接関わりのある人脈(家族などです)、YはXを通じて知り合った人脈(分かりやすい例えとしては友達の友達です)、
ZはYを通じて知り合った人脈(分かりやすく言いますと、友達の友達の友達です)を言います。
このXYZ理論の繰り返しにより自分の営業マーケットを広げる営業スタイルであるため、まずはXである自分に直接関係のある人脈に営業する必要がります。
営業マン本人がどれだけ自分の直接の人脈に営業することを嫌がっても、上司が許しません。
また、例え上司が許してもXに営業しなければ営業成績を上げることは難しいです。
そのため、どの営業マンも必ず遅かれ早かれXに営業するのです。
ロープレの反復
生命保険業界の営業マンは言葉巧みという話を良く耳にします。これはロープレという練習の積み重ねの結果です。
生命保険業界では営業マンは毎日、朝なり晩なりロープレを行います。
生命保険業界で成功するためにはXYZ理論とロープレが非常に重要で、逆にこれさえできれば、かなりの確率で、生命保険業界で転職成功と言える実績を残すことができると思います。
上司や教育係を顧客役に!?営業の反復練習ロープレ
このロープレは、上司やリクルーターと呼ばれる自分の教育担当者が顧客と過程して営業トークを磨いたり、そのロープレで商品知識を習得するのですが、生命保険業界のロープレは本当にすごいです。
私の友人から私が顧客と考えてロープレを披露してもらったことがあるのですが、何かマニュアルがあるのではないかというぐらい、何度ロープレを聞いても一字一句同じ内容でしたし、その間の身振りや手振り、そして表情も全て一緒でした。
営業トークは皆同じ?マニュアルが存在する生命保険業界の営業
先程、マニュアルがあるのではないかとお伝えしましたが、実はあります。
しかも、教本的なマニュアルだけではなく、その支店やその支店を管轄する他の支店も含めた中で、営業成績がトップの営業マンのロープレを動画にしてそれを見て、ロープレにしているのです。
ですので、同じ生命保険業界の企業で、管轄する支店が同一であれば、どの営業マンもほぼ同じ営業トークを展開するようになっています。
生命保険業界の採用基準
これまでは、生命保険業界の内部事情をご紹介しましたが、採用にならなければ生命保険業界で働くことができません。
生命保険業界の採用基準はどのようなものなのか、ご紹介しますが、採用方法はその生命保険企業が外資系であるか日系であるかにより採用方法の他、採用基準も異なります。
外資系企業の採用
外資系の生命保険企業は自ら採用活動を積極的に行うことはありません。
もちろん、HPで年間通して採用情報を公開していますが、転職エージェントを利用するなどして募集することはあまりありません。
外資系企業の採用はヘッドハンティング
採用方法は、友人紹介が主な方法です。その企業で働く営業マンの友人や取引先の方を自分の企業へ勧誘することになりますが、外資系の生命保険企業ではこれをヘッドハンティングと呼びます。
そして、ヘッドハンティングの結果、何人か集まった段階で、各支店で支店長クラスの方が説明会を3回ほど行います。
この3回は約1ヶ月かけて行うのです、その間、興味がなければ興味を持った求職者はそのまま辞退して良いのですが、ヘッドハンティングした営業マンは辞退をあまり認めようとせず、ここでも営業をしまくり何とか入社してもらうように対処します。
ターゲットを引き止める生命保険企業の反対対処
顧客相手も含めて契約や入社を拒む方への対応を外資系の生命保険企業は反対対応や反対対処と呼びます。
この反対対応や反対対処ももちろんロープレで習得しているため、極めて巧みな話術で対応するようになっています。
なぜ、外資系の生命保険企業は積極的に転職する求職者を募集しないかは、何より優秀な人材は自ら積極的に転職しようとは考えていないと判断しているからです。
そのため、転職しようとしていない求職者を巧みな話術で入社するように勧誘しているのです。
構成は圧迫!内容は穏やか?外資系生命保険企業の面接
外資系の生命保険企業では書類選考はありません。もちろん、履歴書や職務経歴書の提出は依頼されますが、判断基準はあくまで面接です。
その面接は、支店長クラスを中心に自分を勧誘した営業マンも面接官として同席して総勢5名程度が面接官となります。
つまり5対1という構成的にはすごく圧迫的な面接となります。
しかし、面接の雰囲気や内容は圧迫的なものではなく終始和やかなものです。
面接では求職者を細かくチェック!?合格率3割の面接
面接回数は1回だけで、その後、数日で合否結果を聞きにまた来社するように指示があります。
合否結果のためにわざわざ求職者が来社しなくてはいけない理由ですが、外資系の生命保険企業では、面接基準を設けており、10項目ぐらいで細かく求職者を分析しているため、そのフィードバックも含めているからです。
なお、採用基準は外資系の生命保険企業の場合は、結構高いため、合格率は3割程度とのことです。
自ら応募する求職者は志願兵!?
補足情報ですが、外資系の生命保険企業に自ら応募する求職者を外資系の生命保険企業では、『志願兵』と呼びます。
私が受けた説明会に志願兵という立場の求職者がいましたが、志願兵という呼び方は社内で使えば良いものを入社前の求職者がいる中でも志願兵と表現している文化に違和感を覚えたことも理由で私は辞退しています。
この兵という表現を使っていることから分かるように生命保険業界では、営業マンを兵隊扱いで考えているようです。
この思考は絶対に口にしませんが、この要素は絶対的にあると思った方が良いです。
日系の採用
日系の採用基準は外資系や一般の転職市場に比べるとはるかに低いです。そのため、合格率も極めて高いです。
同じ生命保険業界でも日系の企業は外資系の生命保険企業よりもイメージが悪く、特別な理由を持たない限りはほとんどの求職者は応募しようとしないため、人気がありません。
離職率が極めて高く、採用基準は極めて低い
このように人気がそもそもとしてないために、優秀な人材の確保が難しいと言われています。
また、営業職はどの業界、どの企業でも離職率が高いことはご存知かと思いますが、外資系も含めて生命保険業界は離職率が極めて高いです。
これは絶対とは言えないのですが、日系の生命保険企業は応募する人材が少なく採用基準が非常に低いことが理由で、『誰でも受かる』と言われています。
採用基準が低いのは労働量を増やすため!?
学歴や職歴など一切関係なく来るもの拒まずという採用精神があるようです。私はこの理由は分かる気がします。
と言うのは、生命保険業界は利益率が高く、また、採用した後の労働条件である給与も最長でも1年だけ負担するだけで済みますので、採用基準を下げて営業マンを増やし顧客との接触回数を増やし労働量を増やすことは業績に良い影響を与えるからだと思っています。
低コストで高い利益率を誇る生命保険業界ができる採用基準であり採用方法だと思います。
生命保険業界に自ら応募する求職者の背景
生命保険業界を自ら志望する求職者の2大要素
- 『職歴が多過ぎてどこの業界や企業も受け入れてもらえない求職者』
- 『借金を持っている求職者』
生命保険業界の営業マンは、基本給がある時期を境になくなりますが、営業成績によるインセンティブの額は強烈な印象を持つぐらい極めて高いです。
優秀な営業マンであれば、外資系の生命保険企業ではプロスポーツ選手なみに稼げており年収1億円や2億円というのは当たり前です。
そのため、どこの企業にも転職できず仕方なく転職する求職者は人生のリベンジとして高いインセンティブを目的に自ら応募しますし、借金を持つ求職者は少しでも早く借金を返済したいという理由で生命保険業界へ転職しようとします。
生命保険業界の離職率
生命保険業界は飽和状態となっており競合他社も同じようにインセンティブを期待して不眠不休に近いぐらい営業します。そもそもとして生命保険業界の印象は悪いので、営業機会すら見つけられない営業マンがたくさんいます。
離職率は50%超!?求職者は冷静な判断を
そのため、離職率は50%は楽に超える数字を持っているのが生命保険業界です。
これからどのような理由であれ生命保険業界へ飛び込もう、チャレンジしようとしている求職者の方は、インセンティブだけを基準に転職しては絶対にいけません。
インセンティブを手にするまでの環境や過程をしっかりと見極めた方が良いです。
メッリト、デメリットを書き出して整理しよう
転職エージェントとしてどの求職者にも必ず企業に応募する前にアドバイスしていることは、生命保険業界を希望する求職者は絶対に行った方が良いです。
その方法は、その業界や企業、職種に転職した場合、自分にどのようなメリットとデメリットがあるのか面倒かもしれませんが、書き出してみる事です。
ここで問題なことはメリットとデメリット1つ1つの質ではなく数が問題です。
仮にデメリットの数がメリットの数よりも多ければその転職は良い方向に進むとは言えない可能性が高いので、応募したとしても転職することは控えた方が良いと思います。
生命保険業界のインセンティブの仕組み
長期的なインセンティブが期待できる生命保険の営業
生命保険業界のインセンティブの仕組みはストック型です。一回の契約で1回だけの営業利益、インセンティブではなく、継続的に1回の契約でインセンティブが入ります。
保険は契約した顧客が解約しない限り一生、保険料を支払うことになります。この要素が強いために1度の契約で2年程度継続的にその契約からのインセンティブが入ります。
ただ、時系列でインセンティブの額は減ります。この契約を毎月積み重ねると普通では考えられないようなインセンティブが入る仕組みになっています。
楽ではないが、成果を上げれば海外旅行もプレゼント!?
なお、生命保険業界の中には、会社として成績優秀者を表彰するために海外で表彰を行い営業マンのモチベーションを上げる、または、他の営業マンのやる気を掻き立てる仕組みを持っている場合があります。
また、この表彰には一定以上の成績優秀な営業マンは家族も同伴で海外旅行として支給されます。
このように成績を上げることでインセンティブは期待できますが、先程も言いました通り、そう簡単ではないです。
生命保険業界の転職が人生に与える影響
最後に生命保険業界の転職が人生に与える影響をご紹介します。
私としては、余程の覚悟がないのであれば転職する業界として優先順位を下げて転職活動した方が良いと思いますし、転職の失敗は人生の失敗となることも想定されますので、失敗となれば取り返しがつかないことになります。
一度、生命保険業界に転職すると、そこでダメだから違う業界という訳にはいきません。次の転職も生命保険業界を中心に考えざるを得ないのです。
このことを肝に銘じて生命保険業界に転職する方は覚悟を持ち、人生を生命保険業界とともに終えるぐらいの覚悟が必要です。
最後になりますが、皆さんの転職が人生の成功となるような素晴らしいものであるよう祈り、今回はこれで話を終わりにしたいと思います。