自動車ディーラー業界は歯ごたえ十分!
転職活動を行う場合に、まず注意しなければいけないことは、その求人企業がブラック企業かどうかということです。この要素は、転職成功する上では求職者からすると大前提の条件となります。
今回は、自動車ディーラー業界についてご紹介しようと思いますが、自動車ディーラー業界には、ブラック企業と呼ばれる企業が多く存在します。
また、ブラック企業ではなくとも労働環境が劣悪であり離職率が高い企業も多いです。
求職者にとって、ブラック企業が存在する確率の高い業界への転職を希望する場合は、是非、ブラック企業かどうかの判別は慎重に行うことをお勧めします。
- 筆者プロフィール
- 名前: 小玉崇
転職エージェント歴:10年
転職経験:3回
利用したエージェント:27社
現在の年齢:41歳
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今回の記事の目次
メーカーと販社の違い
求職者の中には趣味として自動車が好きな方もいると思いますが、自動車が好きで自動車業界について詳しいという求職者はあまりいないように思います。
自動車業界は、実はメーカーと販社の二つがあります。
- メーカー:メーカーとはいわゆるトヨタやホンダなどです。これらの企業はあくまでメーカーで販売する機能は持っていません
- ディーラー:自動車メーカーが製造した自動車を消費者に販売する企業を言います
ご存知でしたか?
そして、今回ご紹介する自動車ディーラーです。
良く街中で、ショールームに自動車が置かれていたり、多くの自動車を並べている店舗を見たことはありませんか?
これらの店舗を運営している企業が自動車ディーラーです。
中には、メーカーと自動車ディーラーが関連会社であることもありますが、大体は別企業であることが多いです。
つまり、自動車ディーラーとはメーカーが製造した自動車を販売する代理店という位置づけになります。自動車ディーラーを別名、販社と呼びます。
自動車に詳しくない求職者が陥り易い間違い
自動車業界はメーカーと自動車ディーラーの2つに分けられており、自動車ディーラーに転職できれば、イコールで大手の自動車メーカーに転職したと勘違いする求職者がいます。
自動車メーカーは滅多に転職活動を行う求職者を対象とする中途採用は行いませんので、転職市場に出回る自動車業界の求人はほとんどが自動車ディーラーだと思った方が良いです。
求人の中に資本金比率の欄がありますが、その中に、割合は別にして自動車メーカーの資本が入っていればそれば大手自動車メーカーの関連子会社であり、資本がない場合は、単独の自動車メーカーが認可した正規ディーラーや正規代理店です。
私の転職エージェントにも、かつて、この内容を理由として自動車ディーラーへの転職を希望した求職者がいましたが、やはり、メーカーと販社の違いや意味を理解していなかったようです。
自動車ディーラーの求人職種
自動車ディーラーの求人職種はどのような種類があるのでしょうか。転職エージェントや転職サイトを見て頂ければ大体は把握できるのかなと思いますが、営業職と自動車整備職と事務職がほとんどです。
このあと、それぞれの職種について詳しくご紹介したいと思います。
自動車ディーラーの営業職
自動車ディーラーの営業職は、自ら顧客となり得る消費者に出向いて営業するということはありません。
今の自動車ディーラーの営業方法は、国道沿いにショールームを構えて、興味のある消費者が訪問して、その消費者に対して営業を行うというカウンターセールスになります。
そのため、ノルマが必ずあります。また、自動車ディーラーの営業職の給料体系は基本給と役職手当と歩合給となります。
売ってなんぼの厳しい労働環境
役職のない従業員は役職手当がなく基本給と歩合給の2階建てという構造になります。
どの自動車ディーラーもこの仕組みは変わりません。自動車ディーラーは昔から売ってなんぼという社風文化がありますので、非常に厳しい労働環境です。
メーカーと資本関係のない独立した自動車ディーラーの場合は営業所となるショールームは休日であっても、ノルマを達成するために、過去にショールームに訪問した消費者に対して電話や訪問して自動車販売に繋げることをしなければいけません。
自動車は高額であるとは言え、利益率の低い商材であり、ノルマを達成した場合の歩合給もそこまで高いとは言えません。
と言うよりも、ノルマ達成のための労働力や労働量から比べると明らかに安いです。
自動車ディーラーの休日は少ない
この後、ご紹介する職種も同様ですが、自動車ディーラーの休日については労働者としてはあまり良いとは言えません。
休日となる日も平日であり、土日は絶対に出勤日となります。また、1週間あたりの休日日数は隔週で1日と2日ということが普通であり、月の休日日数は8日か9日ということが一般的です。
祝祭日も一切関係ありませんし、むしろ、祝祭日は消費者がショールームに来店する可能性が高いため、出勤することが絶対であり、年間休日日数も100日を切るぐらいです。
ちなみに日本の年間の休日日数の平均は120日前後です。
洗車も営業の仕事
新車のみを扱う自動車ディーラーであれば、洗車という業務は存在しませんが、自動車ディーラーは基本的に新車と中古の事業をどちらも行っていることが多いです。
しかし、営業マンは自分の営業成績のために営業をしなければいけない中で、自らの販売ツールである中古車の洗車も業務として行わなければなりません。
中古車は新車よりも販売率が高いため、自動車ディーラーやその営業マンとしては大切な商材です。
雨や風に野ざらし状態ですので、汚れが目立ち日々、その汚れを落とすために、また、消費者への見栄えも意識して定期的に洗車しなければなりません。
休日返上で洗車業務を行う
では、この洗車はいつ行うのか?営業日は洗車するよりもショールームに来店した消費者への営業が優先度は高いため行うことはできません。
商品価値を高める洗車業務はショールームが休みである休日に行うことになります。
営業マンからすると休日労働になるのですが、ここでは残念ながら休日労働手当の支給はありません。
なぜならば、自動車ディーラーとしては、営業マンに洗車を義務としてはいないため、あくまで営業マン個人の自発的な行動となっているためです。
本当に自動車が好きでもないとディーラーの営業マンは務まらない
自動車ディーラーの営業職の求人には、休憩、休日はしっかり記載がありますが、実情は全く違いますので、入社前に自動車ディーラーの実態を何らかの形で収集する必要があると思います。
私の知人で自動車ディーラーを経営している方がいますが、自動車ディーラー業界へ転職するのであれば、休みはないと思わなければ務まらないと言っています。
また、自動車が本当に好きな人間でなければ活躍は難しいとも言っています。
この意味は、休日の洗車が仕事ではなく、本人が自動車は趣味であり、自動車が好きであるために、趣味の範囲と捉える思考でなければ『やらされている感』となってしまい、長続きしないためです。
営業職は結婚後に続けることができるのか?
先述の通り、安い給料で休日も少なく労働時間も長い自動車ディーラーで結婚後も仕事を続けることができるのでしょうか。
結論から言いますと、自動車ディーラーの営業マンは独身である場合が多く、結婚を機に自動車ディーラーから他の業界へ転職するケースが多いです。
または、独身中に管理職になり部下のマネジメントを業務とする立場の場合は結婚後も続ける労働者もいますが、確率的には、どのタイミングであれ結婚を機に違う業界や職種へ転職する場合が多いです。
また、自動車ディーラーには営業職の他に2つの職種もありますが、営業職の場合は、この2つの職種に比べると明らかに離職率が高いことで有名ですし、早期に退職するという勤続年数が短いことでも有名です。
自動車ディーラーの自動車整備職
続いて自動車整備職についてです。この職種は、整備士という資格を必要とします。
資格を持ってはじめて業務に従事することができる性格を持つために、潰しが効くと言われる職種です。
営業職とは異なりしっかりと休日には休むことができますし、労働時間もそれほど長い訳ではありません。
そのため、自動車整備職は自動車ディーラーで唯一と言っても過言ではないぐらい定着率があります。
定着率が良く人気な自動車整備職
自動車には車検がありますが、車検時期にはかなりの繁忙期になりますので、毎日深夜労働となることもありますが、しっかりと残業手当は支給されますので、問題ないと思います。
ちなみに、自動車整備職は、自動車好きには人気の職種であり、有効求人倍率も高いです。
定着率も高いことから求職者からすると狭き門と言えます。
必要なのは技術力!寡黙な性格の人材が適正アリかも
職人気質の職種であり、人とコミュニケーションを取る機会が少ない職種であるため、人間関係で悩まされるということは少なく寡黙な性格の人材が適正とされているようです。
しかし、社内的なコミュニケーションについては営業とは相反する立場にあるために軋轢が生まれることが多い職種でもあります。
営業マンは数字を追うことが仕事であり、自動車整備職は整備することが仕事です。
営業マンとしては早く整備することを要求しますが、自動車整備職は正確に整備することを主眼としますので、この関係性は水と油と呼ばれるようです。
自動車ディーラーに事務職
事務職と聞くと契約書の作成や管理などをイメージするかと思いますが、自動車ディーラーの事務職は基本的にはショールームでの受付や来店した顧客へのお茶出しがメインとなります。
売買契約や契約書類などの管理については、営業マンがワンストップで行うことが一般的であり、事務業務も営業マンの仕事になっています。
自動車ディーラーの事務職の働き方はノンスキルで業務も簡単であり、残業がないことがあります。
事務職も休日数は少ない
しかし、休日日数はショールームに関連しますので、少ないことがデメリットとなります。
業務の性格上、女性がほとんどですが、雇用形態は契約社員やアルバイトであることが比較的、多いと言われています。
休日日数が少ないことがデメリットとであるとお伝えしましたが、これを理由に早期退職する労働者が多く、求人も定期的に存在します。
面接は1,2回!淡白な選考フロー
自動車ディーラーとしては、売上や利益に直接関係のない業務であることもあり、選考フローも非常に淡泊で面接は1回、多くても2回ということが普通です。
選考のポイントについては、経験などはほぼ不問であり、容姿の良い女性が内定を得ることが多いです。
実際、私の転職エージェントや私の友人の転職エージェントでも経験やスキルがなくとも容姿が良い女性の求職者が内定を得るというケースが極めて多いです。
自動車ディーラーは男性文化
業界によって男性上位、女性上位という場合がありますが、自動車ディーラーについてはどの企業でも男性上位であり、従業員のほとんどが男性ということが普通です。
求人には男女不問とありますが、実質的には男性のみの独占求人と言っても過言ではありません。
女性の求職者で自動車ディーラー業界へ転職を考えている方は、転職後、周りは男性だらけであり、営業職となれば休みはないと思った方が良いです。
また、自動車整備職の場合は、油まみれになるということを覚悟しなければ務まらない業界です。
男性文化でも体育会系のタイプが多く在籍しているため、強烈な縦社会であることも想定した方が良いと思います。
自動車ディーラーは営業至上主義
メーカーの資本が入っている入っていない関係なくどの自動車ディーラーも営業至上主義であり、売上や利益至上主義です。
メーカーから出される月間売上リクエスト
これにはメーカーとの関係性がかなり影響しているのですが、メーカーから年度や月単位で各自動車ディーラーには、『これだけ売ってほしい』というリクエストがあります。
このリクエストを達成することができなければ最悪の場合は販社としてそのメーカーの自動車を取り扱うことができないこともあるようです。
このリクエストは言い換えるとメーカーから自動車ディーラーが与えられたノルマとなりますが、このノルマを達成できない場合は翌年度の売上に対するコミッション額やコミッション率が低くなります。
自動車ディーラーは企業として売上や利益を確保するために、売上や利益に直接関わる営業マンに対してはかなり厳しいノルマを設定します。
新卒や第二新卒にはオススメできない自動車ディーラーへの転職
また、自動車ディーラーとしては、退職することは前提として考えており、また、特別なスキルなく自動車ディーラーの営業は従事することが可能であるため、転職後は働きやすい労働環境とは言い難いという評判は今も昔も変わりません。
余談になりますが、自動車ディーラーは新卒採用を行うことはほとんどありません。理由は、扱う商品が自動車で高額なものであるため、消費者からすると自分より若い年齢の営業マンでは安心感に繋がらず、購入に繋がらないという側面があるためです。
また、ある人材コンサルティングの方は、新卒または第二新卒に対して自動車ディーラーの営業は絶対に転職しない方が良いと言っているぐらい自動車ディーラーは求職者に取って厳しい労働環境となります。
自動車ディーラーの求人の探し方
求職者としては、自動車ディーラーに転職したいと覚悟を持って自動車ディーラーへ転職しようと考えているのであれば、求人を探す必要があります。
転職エージェントにも自動車ディーラーの求人はありますが、数としては多くはありません。
自動車ディーラーの採用手法のメインは、転職エージェントや転職サイトではなく求人情報誌やハローワークが中心です。
採用コストを抑えるため大半の求人は求人情報誌
この背景には、どの自動車ディーラーも大きな採用コストを費やす企業体力がないということもありますが、特に営業職の場合は、早期退職することが前提で採用活動を行うために、採用コストはかけずに採用したいという思惑があるためです。
コンビニや駅に無料で置いてある求人情報誌を見て頂けると、自動車ディーラーの求人が掲載されていることが多いです。
特に、メーカーの資本が入っていない正規ディーラーや正規代理店の場合は、この傾向が顕著です。
自動車ディーラーへの転職希望者はよく求人情報誌をりようする
転職エージェントや転職サイトをあまり利用しない理由のもう1つは、この業界を志望する求職者は、転職活動で転職エージェントや転職サイトを使う文化があまりなく、転職イコール求人情報誌という意識が強いこともあります。
この点からも分かる通り、企業文化も古い体質であることが多く、風通しが良い社風とは言い難いものがあります。
更に男性文化で営業文化という性格もあるため、転職先に風通りの良さやフラットな組織を希望する求職者としては真逆な文化を持つ業界と言えます。
話を戻しますが、業界的に古い文化を持ち、この古い文化が採用活動にも少なからず影響している自動車ディーラーへ転職を考えている方には、求人情報誌よりも何よりもお勧めの方法があります。
直接応募と営業マンの紹介
興味のあるメーカーを取り扱っているディーラーに直接問い合わせよう
最も簡単で最もスマートな求人の探し方は、興味のあるメーカーを扱う自動車ディーラーに直接電話やエールで問い合わせすることです。
自動車ディーラーとしては離職率が高いため、新規人材の確保は労働量という観点では必須です。
私も情報収集を目的に自動車ディーラーへ採用について問い合わせしたところ、その全ての自動車ディーラーから一度、面接したいとのことで来店するよう言われています。
営業マンと親しくなって紹介してもらおう
次の方法は、営業マンと親しくなって営業マンの紹介で入社するルートです。
この場合は、コミュニケーション力が必要になりますが、営業マンには人材確保というミッションも実はありますので、積極的に勧誘する自動車ディーラーもあります。
求職者が消費者としてショールームに来店して営業マンと親しくなり、その話の流れで採用について聞いてみると良いと思います。まず断られることはないと思います。
入社難易度が低い自動車ディーラー業界
これまでお話したように自動車ディーラー業界は、求職者にとっては自動車整備職を除き入社ハードルは低いです。
余程の特別な事情がない限り安易な気持ちで自動車ディーラー業界への転職は控えましょう。
自動車整備職は潰しの利く良い職種ですが、それ以外はかなり厳しいものとなると思います。
自動車が本当に好きで自動車が趣味だという求職者にとっては年中、自動車と接することができる最高の労働環境だと思いますが、変な憧れや偏った見解で自動車ディーラーへ転職することは早期退職に繋がる恐れが高いため、注意しましょう。
今回のタイトルは『自動車ディーラーは歯ごたえ十分』ですが、自動車ディーラーは求職者にとっては、転職後は歯ごたえがあり過ぎて歯が欠けるぐらいの環境だと思います。
最後になりますが、求職者の皆さんの転職成功を祈り、今回はこれで話を終わりにしようと思います。