看護教員となるためのポイント
日本で唯一の看護教員専門のキャリア・コンサルタントの森田よしあきです。
今回は看護教員となるためのポイントについてお話したいと思います。
看護教員というお仕事はどのような仕事でしょうか?
教員と名がつくので先生ということはご理解いただけると思いますが、看護学校の先生ってあまり聞いたことがある方はいらっしゃらないのではないでしょうか?
看護師(助産師、保健師)という資格は国家資格であり、その資格を得るためには国から指定を受けた看護学校に入学しなければなりません。そこで必要な単位を修得し卒業して国家試験に合格する必要があります。
看護教員とは、このような看護学校において看護師を目指す学生に対し、看護師になるために必要な知識や技術を教える教員のことを言います。
看護師の資格取得を目指す学校なので、その学生を教えるのは保健師免許、助産師免許、看護師免許のいずれかを持っていることは当然なのですが、学生に指導できるだけの臨床経験(実務経験)がなければなりません。一般的な求人では臨床経験(実務経験)は5年以上が求められています。
看護学校というのは上述のとおり看護師を目指すための学校ですが、ひと言で看護学校と言っても様々な学校の種類があります。そして看護学校の種類によって看護教員になるための資格要件は違います。
看護師を目指す学校は主には以下の3つの学校があります。
1.高等学校
2.看護専門学校
3.看護系大学・短大
以下、それぞれの学校ごとに必要な教員要件について説明していきます。
高等学校の看護教員になるには?
高等学校の教員になるためには、高等学校教諭(看護)の免許が必要になります。
高等学校教諭(看護)の教諭免許状は普通免許状(専修免許状、一種免許状)、特別免許状、臨時免許状の3つがあります。
1)普通免許状
普通免許状は上述の通り専修免許状と一種免許状があります。専修免許状は文部科学省から指定を受けた大学院で必要な単位を修得する必要があります。
一種免許状は文部科学省から指定を受けた大学で必要な単位を修得する必要があります。現在、専修免許状が取得できる大学院は全国に36専攻、一種免許状が取得できる大学は15大学あります。
この教員免許状があれば全国どの高等学校でも看護教員として勤務することができます。またこの免許状の有効期間は10年です。
2)特別免許状
特別免許状は、「社会的経験を有する者に、教育職員検定を経て授与」されます。(文部科学省より)
教育職員検定とは各都道府県教員委員会が行っており具体的な検定内容や授与基準等は都道府県ごとに定められています。教育職員検定を受けるには任命または雇用しようとする者(都道府県や私立の高等学校)の推薦が必要です。
この教員免許状は、授与を受けた都道府県内の学校でのみ有効で、有効期間は10年です。
3)臨時免許状
臨時免許状は、正確には助教諭の免許状になります。
普通免許状を有する者を採用することができない場合に限り、教育職員検定を経て授与されます。この免許状も特別免許状と同様に授与を受けた都道府県内の学校でのみ有効です。有効期間は原則3年ですが、当分の間、相当期間にわたり普通免許状を有する者を採用することができない場合に限り、都道府県が教育委員会規則を定めることにより、有効期間を6年とすることができます。
看護専門学校の看護教員になるには?
看護専門学校の看護教員は一般に専任教員と言われています。この専任教員になるには厚生労働省が定めた以下の2つの要件のうちのどちらかを満たす必要があります。
1)保健師、助産師又は看護師として5年以上業務に従事した者で、専任教員として必要な研修を修了した者
2)保健師、助産師又は看護師として専門領域での業務経験が3年以上で、大学において教育に関する科目を履修して卒業したもの又は大学院において教育に関する科目を履修したもの
上記1)の専任教員として必要な研修というのは「専任教員養成講習会」と言い各都道府県で実施しています。受講期間は10ヶ月から1年間で、ほぼ毎日通学することになるので仕事をしながら通うのは困難です。
そのため実際にこの講習を受講している方は、既に看護専門学校に入職し数年間勤務した後に学校からの施設推薦をもらい講習会を受講している場合が多いです。
その際の費用負担や給料については学校によって全額または一部負担してくれるところもあれば、奨学金として貸与し、講習会修了後、一定期間の勤務を行えば免除される等、それぞれの学校によって取り決めがあります。
また、この講習会は都道府県により、毎年実施しているところもあれば隔年で実施しているところもあります。
最近では、大学の通信課程で「専任教員養成講習会」を実施しているところもあり、今まで受講することができなかった方も働きながら専任教員の資格を取得できるようになりました。
上記2)の要件を満たす方法は、看護大学で教育に関する科目を履修したり、通信制の大学に編入し在学中に教育に関する科目を履修し卒業することによって専任教員の資格を取得することができます。
この時の注意点としては、例えば「既にある大学を卒業している方が、他の大学(または卒業した大学)で科目履修生として教育に関する科目を履修する」といったケースでは専任教員として認められません。
あくまでも教育に関する科目の履修と卒業はセットとなります。
また看護専門学校では、上記の専任教員以外にも主に臨地実習指導や学内での演習指導といったお仕事もあります。雇用形態は学校によりますが、正職員(正社員)だったり、非常勤職員(契約社員やパート社員)の場合があります。
最初は非常勤職員として勤務し実際に看護教員の仕事が自分に向いてるかな?と思ってから本格的に看護教員を目指すという方法もあります。
看護系大学・短大の看護教員になるには?
大学・短大の教員というのは文部科学省で定めている大学(短大)設置基準に定められている教員の要件を満たす必要があります。職位によって求められる要件は違いますが、一般的には教授は博士以上、准教授、講師、助教は修士以上の学位が必要とされています。
もちろん上記の学位以外にも助産師、保健師、看護師としての臨床経験(実務経験)も最低5年以上を求めているところがほとんどです。
まだ大学・短大は、学校教育法において
「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させること」
を目的としており、
「その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するもの」(学校教育法第9章83条より)
と定められています。
このように大学・短大の教員は研究職としての役割もあるので、学生指導以外にも自身での研究業務も行い、様々な学会発表や論文発表といった研究実績を収め社会の発展に寄与していく活動も求められています。
大学・短大の教員の場合、いきなり教授になることはなく、最初は講師や助教、助手といった職位で採用され、その間に様々な研究実績を積みながら徐々に上位の職位になっていくのが一般的です。
これから看護教員を目指す方の中には、最近は看護系の大学の新設が多いイメージを持っている方も多く、看護専門学校が無くなってしまうのではないか?と思う方もいらっしゃいますが、ここ数年は、看護系大学だけでなく看護専門学校も新設校が増えているのでそのような心配はありません。
このように看護教員と言ってもそれぞれの学校によって求められる資格・要件は違うので看護教員を目指そうと思ったらご自身の臨床経験や教育観、看護観も考慮してご自分がなりたい看護教員を目指してもらえればと思います。
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