1,000人以上の面接をした面接官が語る、転職成功のツボ

私は20年以上、企業の面接官をしてきました。

これから面接を受ける方のために、その体験、すなわち人事担当者の面接体験談をここでお話ししようと思います。

もしあなたに、これから面接を受ける予定があるなら、ここに書いた内容はきっと役に立つに違いありません。

もちろん、面接を受けるにあたって、直前の「付け焼き刃」ではどうにもならないこともあります。

しかし直前であっても、しっかり意識することでレベルを上げられる部分もあります。

履歴書の書き方から、実際の面接まで、私が経験してきたことを率直にお話します。

執筆者の情報
名前:桐本 文俊(仮名)
性別:男性
現在の年齢:54歳
面接の経験人数:1000人以上
面接経験時の役職:-
企業・業種:金属加工業

訴求力のある履歴書とは

最初に、転職をしたい方が、企業に応募するときの手順を考えてみましょう。

まず、ハローワークや求人広告等の媒体で、求職者が求人情報を見ることから始まりますよね。

そこで、職種・勤務地・給与などを見て、自分の希望する条件に合うところがあれば、まず履歴書を送ります。
送る前に電話を入れる場合もあります。

そうしてあなたが送った履歴書は、企業の人事担当者に届きます。

ほとんどの場合、人事担当者=面接官ですから、担当者は送られてきた履歴書を開封し、ざっと目を通します。

もちろん、送られてくる履歴書は1通だけではありませんから、多数ある履歴書はまずそこで、「ふるい」にかけられます。

では、履歴書のどこに注目して選別するかと言うと、「職歴」と「志望動機」です。

職歴

企業は、ハローワークなり新聞チラシなりで広告を出し、それを見た方が履歴書を送って応募してきます。

すると続々と履歴書が送られてきますが、担当者はそこで履歴書のどこに注目するでしょうか。

まず目が行くのは、氏名、顔写真、年齢、居住地などですが、それはどういう人となりであるかを見るためであって、注目すべき点ではありません。

注目するのは、履歴書の中心とも言うべき、学歴と職歴です。

そのうち学歴は、求人を出す時点で条件として明示していますから、重要度としては2番目ぐらいです。

すなわち、中途採用にあたって最も注目するのは、職歴です。

採用したい人物像としては、できれば、同じ業界で同じ職種の経験を持っている方が望ましいです。

なぜなら、そういう方を採用すれば、過去の職歴や知識が即戦力として生きるからです。
新たに専門の知識を教育する必要もありません。

そういう意味では、全く関係ない職種しか経験がない、転職回数が多すぎるという方は、アピール力に欠けます。

特に後者は致命的で、採用しても短期間で退職してしまうと思われがちですから、離職回数は少ないに超したことはありません。

なお写真は、男性ならネクタイを締めて、女性なら白いブラウス姿がベストです。
間違ってもスナップ写真を切り貼りしてはいけません。

志望動機

次に志望動機ですが、これは履歴書についてくる「ひな型」を書いてはいけません。

例えば「御社の業務が自己の性格に最適」などという文言です。

これを見るたび、担当者は「またか」と思います。

志望動機とは、あなたが志望先で働きたい意思を端的に示すものですから、自分で考えた言葉を書くのがベストです。

私は、人事担当をしている現在の会社には中途で入社しましたが、志望動機はこう書きました。

「人事労務のスペシャリストになり、御社の業績向上に貢献したい」

面接の実際

では次に、実際の面接の体験談をお話ししましょう。

20年も面接官をしていると、実にたくさんの方がやってきました。

なお私が勤務する会社は金属加工業で、溶鉱炉から精密加工部門まである、従業員200人ぐらいの大きな工場です。

それを前提にお読みください。

面接官は、面接でどのような点に注目しているか

面接官は、応募者のどこを見ているか。

最も気になる点ですよね。

答えはズバリ、あなたの外見です。

「人は見た目が9割」というタイトルの本がありましたが、面接の本質はまさにそれであって、面接官が見ている9割は、あなたの外見です。
いささかショッキングですが、これは事実です。

でも、早合点しないでください。

私が言いたいのは、イケメンや美人でないと採用されないという意味ではなく、面接という限られた時間内では、外に出てくるものからあなたの全てを判断しなければならないという意味です。

別な言い方をすれば、面接官に対してあなたという人物をどう表現するか、あなたが持っているものをどのように外面に出すか、それが面接というステージだということです。

外見とはどういうことか

これでは分かりにくいかもしれませんから、もっと具体的にお話しましょう。

「見た目」というのは、顔がどうということではなく、あなたという人物・人格が外面にどう出てきているか、どのようににじみ出ているか、面接官はそれを見ているのです。

まずは身だしなみです。
清潔感があるか、背広の折り目はきちんとしているか、ネクタイは曲がっていないか、靴は磨かれているか。

「それって、面接の本質とは無関係では?」

と思われるかもしれませんが、考えてみてください。
面接とは、働きたいと思う会社を初めて訪問する機会でもあるのです。

そんな場面に、よれよれの服や汚れた靴で来ていいものでしょうか。
彼女との初めてのデートに、汚い服を着てくるようなものです。

これはいわば、社会人としての基本だと思います。

面接官に見られている外見

  • 椅子への座り方
  • 背筋が伸びているか
  • 猫背でないか
  • 両手の位置
  • 話すときの視線
  • こちらの話を聞くときの様子
  • 目は輝いているか
  • あいづちを打っているか
  • 自分の考えを他者に伝えやすいように工夫しているか

つまり面接とは、あなた自身を表現して他者に理解してもらうステージであり、その場で求められることは、「あなた自身をどのように表現するか、それがすなわち外見に出てくるものである」ということです。

工場見学の場面で

私が行う面接手順は、次のようなものです。

1回の募集では多人数が集まりますから、まず会議室に応募者全員を集めて会社の概要を説明します。
もちろんその時、熱心に説明を聞いているかどうかはチェックしています。

次に、ヘルメットをかぶり、募集した職種の職場を見学するため、工場に案内します。
その時、仮に10人いるとして、列の後部にいるような人はまず、見込みがありません。

往々にして、説明者(私)のすぐあとについてくるのは熱心な方であり、列の後ろでゆっくり歩いてくる方からは、やる気が感じられません。

したがって、採用してもらいたいなら、途中からは他者を追い越してでも、説明者の近くに来るべきでしょう。

ついでに言えば、ヘルメットのかぶり方、両手をポケットに入れていないか、周囲や足元を確認しながら歩いているかなども、さりげなくチェックしています。

重厚長大産業の工場ですから、安全意識の低い方は後々危険な目に遭うからです。

そして最後に、簡単な学力試験を行います。

こんな方は面接で落とす

職種や離職理由に一貫性がない

応募者全員の面接を終えて、最も早い段階で落とされる方が、これです。

なぜなら、採用しても、再び辞めてしまうのではないかと思われるからです。

学力が低い

これは、中学生程度の国語・数学のレベルがあれば問題ありません。

もちろん会社や職種によっても違いますが、簡単な漢字が書けない、分数の計算ができないとなると、仕事に支障が出るのは想像に難くありません。

印象が暗い

会社あるいは企業とは、ある特定の目的(利潤の追求など)のために、多くの方が集まった組織です。

そんな組織において、一緒に働きたい方とは、どんなタイプでしょうか。

やはり、暗いよりは明るい、反応が遅いよりは速いほうがよく、知識や知恵があるに越したことはありません。

面接の場で、「こいつを採用してみたい」と思わせる大きな要素は、明るく、反応がダイレクトであることです。

こうすれば面接に有利

面接を有利に進めるには、今まで書いたことをポジティブに実践すればいいのであって、それをまとめてみましょう。

服装

折り目のついた背広を着ましょう。

ネクタイは中央に、しっかりと結びます。

女性なら、清潔感のあるスーツで、笑顔を心がけます。

受け答え

そして、面接官の質問に対しては、明るくはきはきと。

転職回数が多ければ、過去の経験を今後の職種に生かそうという意気込みに結びつけることができればいいと思います。

例えば、大工から製造現場への転職であれば、「ものづくりの基本は同じである」と。

営業職から製造現場への転職なら、「将来的には、顧客に売れる製品づくりを目指したい」と。

私は塾講師から現在の人事労務に転職しましたが、面接の場面においては、「人を教育した経験を、新規採用者および社員教育に生かしたい」と答えた覚えがあります。

工場見学

説明者のすぐそばで、熱心に話を聞きましょう。

途中で誰かを追い越しても、です。

驚くべき面接体験

次に書くのは、私が実際に体験した、驚くべき面接者の方々です。

学力試験を白紙で提出した

あとで本人に聞いたところでは、学力より人物そのものを見てもらいたいということでしたが、あまりにも常識外れですね。

市長から圧力をかけてきた

ある応募者を面接したあと、私あてに市長から電話があったのです。

「今日、○○さんを面接して、1次は通ったそうだけど、2次面接もよくやってください」

これには驚きました。
1次が通ったと言われても、単に面接をしただけです。

しかも市長から電話をかけさせるというのには、驚きを通り越して怒りがわいてきました。

仮に、彼を採用したら、どうなるでしょう。
何か失敗や過ちを起こしたら、誰かのせいにしたり、言い訳に終始したりするに違いありません。

こんな人は願い下げです! 即、不採用の通知を出しました。

面接では、誰も助けてくれません。
そればかりか、政治家に頼って圧力をかけるなど、もってのほかです。

サンダル履きで面接に来た

この方は2度、応募してきました。

勤務している社員のご子息だから面接したのですが、1度目もサンダル、2度目もサンダル、服装は普段着です。

「あなたは面接に来た段階で落ちているよ」

と言ったのですが、それが何なのか、最後まで理解できないようでした。

あまりに早く来るのもよくない

面接開始が13時ということがありましたが、すると、12時をちょっと過ぎた頃に来る方がいます。

熱意を示そうという気持ちは分かりますが、12時から13時はおよそ休憩時間ですから、あまり早く来られると担当者の昼休みがなくなってしまいます。

相手を思いやる気持ちが少ないと思われてしまいかねません。

早くても15分前訪問を心がけましょう。

面接で勝つためには

さて、面接で生き残るためには、身だしなみや明るい対応を心がけることはもちろんですが、基本は、あまり無理をしないことです。

ありのままの自分を

無理して背伸びして、自分をよりよく見せようとしても、どこかで無理がきますし、人事担当者はそれを見抜いてしまいます。

それに、背伸びして採用されたとしても、それは入社後、どこかで破綻します。

男性なら、やるぞという気概を見せること、女性なら、清潔感と笑顔が大切ではないでしょうか。

それらを、無理せず、素直に出すことが第一です。
それで落とされれば能力が及ばなかったと諦めましょう。

そのためには、普段から新聞やビジネス書を読み、時事問題に関心を持つことです。

普段から訓練できるのは、テレビ番組で、司会者が時事問題についてゲストにコメントを求めたとき、「自分ならどう答えるか」を絶えず考えるよう努めることです。

そして、身だしなみ、学力試験の準備は、短期間でも習得できることですから、普段からそういう意識を保つよう、最大限努力すべきです。

ほどよい緊張感を

最後に、面接の場面で緊張しすぎるのもよくありませんが、リラックスしすぎて「タメ口」をきくのも問題です。

好感が持てるのは、ほどよい緊張感をもって臨んでいると感じられる場合で、誠実さが感じられます。

いかがだったでしょうか。

私は、1000人以上の面接を行ってきましたが、会った瞬間に「こいつは管理者になれるな」とか「リーダーシップがあるな」というのは分かるものです。

彼らに共通しているのは、目に輝きがあることと、仕事をやるぞという気概・迫力があることです。

それらは一朝一夕には獲得できませんから、普段から自己啓発に努め、向上心を持つように心がけましょう。

そうすれば、面接でライバルに勝つことができるはずです。

この記事の筆者

桐本文俊(仮名)
50代男性、現職の人事担当者です。

30歳のときに中途採用で現職に就いて以来、新卒・中途採用者の面接から社員教育、人事考課、安全衛生担当、資材購買、行政や地域への窓口担当を行ってきました。

仕事はいわば、「工場における製造と技術以外、人に関わることの全て」です。

座右の銘は「禍福は糾(あざな)える縄の如し」で、つらいことがあっても、いつか良くなると楽観的に考えるようにしています。

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