転勤のない転職は、転職後にどうなるのか?

みなさん、こんにちは。

転職活動をする際に、求人のなかにある『勤務地』という項目は、求職者であれば誰しも気になる項目だと思います。

転職エージェントを利用している場合であれば、転職エージェントへ登録する際の面談などで希望勤務地を伝えることで該当する勤務地の求人が紹介されると思います。

また、転職サイトを利用している求職者の場合も、求人検索で勤務地を設定することで希望の勤務地となる求人を検索することができるでしょう。

求職者にとって、転職後に実際に働く勤務地は、希望条件としては上位に入る項目です。私も求職者として転職活動をした際に、勤務地は気になり、通勤時間は1時間以内と考えていました。

勤務地と同様に性格を持つ項目が、『転勤のありとなし』です。

転勤とは、具体的にどのようなことを意味するのか、また、どのような職種や仕事内容が転勤と親和性があるのか、このあたりから今回の話を起こしていこうと思います。

そもそもとして転勤とは?

転勤という言葉は、求職者で、企業で働いた方であれば誰しも1度は耳にしたことがあると思います。

転勤とは、この漢字が示すとおりに『勤める場所が転ぶ』ということで勤務地が変更になること意味します。

求人にも転勤について記載がある場合とない場合がありますが、ない場合でも転勤があるということはあります

求人に転勤に関する記載がない場合、求職者によっては明示義務違反ではないかと考える人もいるようですが、この点については、人によって判断が異なります。労働条件の明示義務というものが企業にはあります。これは、労働基準法にしっかり明記されていることで、企業としては絶対に守らなければいけない範囲の項目になります。

ただ、労働基準法ではあくまで入社前の内定時という規定があるだけです。転勤という労働条件は、求人に必ず記載しなくてもよいのです

転勤と職種の関係性

次に転勤と親和性がある、転勤の可能性がある職種についてご紹介したいと思います。

求人には多くの種類があり職種も多くあります。その職種のなかで転勤の可能性がある職種はどのようなものがあるか、求職者のみなさんは把握していますか?

私は転職エージェントとして、現在活動していますので多くの企業から求人を受けますが、転勤のある求人には偏りがあります。

ある企業では、ある職種については、遅かれ早かれ必ず転勤があるという企業もあるぐらいですので、転勤が企業の文化や昇格基準になっていることもあります

ちなみに転勤を不可とする場合で、その企業が昇格基準に転勤を含めている場合は昇格レースからはじかれるということもあるようです。

営業職は一番、可能性が高い

どの企業でも営業職については、比較的、フレキシブルに勤務先を変更し一定期間ごとに転勤を文化にすることが多いように思います。

全国展開している企業であれば、全国に支店や営業所を構えて事業を展開しています。このような企業の営業職の場合は売る商材、サービスは同じですので、転勤の可能性が高いです。

不動産業界の営業職

不動産業界で全国に支店や営業所を構える企業の営業職は、転勤の頻度が高いと考えていただいた方が良いと思います。

例えば東京都内でも支店や営業所がある場合は、都内で転勤となることもよくある話です。

不動産業界は多くの業界のなかでも離職率が極めて高く欠員補充する必要があります。

もちろん新規人材を中途採用でカバーすることもありますが、一般的に

不動産業界の営業=離職率が高い

不動産業界の営業=理不尽な働き方

というイメージが強く、なかなか採用に至らない場合もあります。

不動産業界の営業職の採用は、比較的、選考基準は低く、未経験者でも採用に至ることはよくありますが、応募数が少ないです。

このように中途採用でカバーしきれない場合で、欠員が出た支店や営業所には、ほかの支店や営業所から転勤で人員を充足させるという考えがあります

金融業界の営業職

不動産業界に匹敵するぐらい、転勤が当たり前となっている業界が金融業界です。

金融業界と言ってもその範囲は広いのですが、ここで言う金融業界とは銀行の営業職だと思ってください。

ご存じの通り都市銀行は日本全国に支店を持っているため、転勤は文化になっていることが多いです。

私の友人にも都市銀行の営業職として勤務している友人がいますが、『またどこかに転勤してるの?』というぐらいの頻度で勤務地が変わっています。

私も銀行で勤めたことがないですので、詳しいことはあまり分かりません。

その友人が言うには、銀行の体質や文化として転勤が花形ということもあるそうです。優秀であれば、それだけ転勤の可能性が高くなるとも言っていました。

転職エージェントとして銀行の人事にも求人内容のヒアリングで打ち合わせをした際、同じようなことを言っていたので、銀行の体質的には転勤が昇格の基準になっていると言えるでしょう。

ちなみにその友人は本当に全国にあらゆる地域で転勤していて、同じ都道府県内での転勤ではなく都道府県をまたいだ転勤です。

大手商社の営業職

大手商社の場合も、全国や世界を舞台に事業展開しているため、転勤は付き物だと考えた方が良いです

不動産業界や金融業界も含めて、転勤に性別は一切関係しませんので、女性の方であっても転勤を命じられたら、その企業で生きていくのであれば、転勤に応じる必要があると思います。

この他の業界でも飲食業として全国展開しているチェーン事業を行っている企業では、店長やエリアマネージャークラスの転勤はよくあります。

求職者としては、大手の企業であれば、資本も大きく公務員に匹敵するぐらい安定的な就業ができると考えていると思います。

これは正しい考えだと思いますが、一方では、大手である場合、事業を全国展開している可能性が多く、営業職については転勤は必須になるだろうという想定を持っていた方が私は良いと考えています。

私は求職者時代に転勤はできれば控えたかったために、全国展開している企業は優先順位は下げて活動していました。

転勤が少ない職種

転勤が多い職種は営業職になりますが、それとは逆にその企業が全国展開していても転勤の可能性が低い職種があります。

それは管理部門、つまりは間接部門の職種です。

人事や経理、総務、法務などが該当します。これらの間接部門の職種は本社を勤務地とすることがほとんどで、部署異動がない限り、長年本社で勤務することがほとんどです

ただし、人事や広報などの場合は、仕事内容として全国の地域に仕事をしにいくことも多いため、転勤ではなく、出張するケースも多いです。

私もかつては、人事として企業で勤務していましたが、新卒採用の説明会や、地方の営業職の採用などでかなりの頻度で出張することが多かったです。

間接部門の職種は、一般的に安定があり、離職率も低いと言われることがありますが、この理由は、転勤がほとんどないということも一つの理由になっています。

実際に、転職サイトや転職エージェントの求人を見ても、間接部門で転勤があるということはほとんど見かけません。

転勤に伴う手当

転勤とは本人が希望する場合はほとんどなく、大体の場合は企業の人事異動や組織構成上の問題で起こることです。

そのため、転勤に際して転勤手当を、給与とは別に支給することもあります。

しかし、企業の都合でありながら、転勤手当が支給されないという場合の方が多いです。

法令の観点でご説明すると、転勤手当については、内定通知書や雇用契約書に『転勤の可能性あり』と記載してあるだけで、転勤に伴う手当を支給する必要はないとなっています。

企業都合の転勤であっても企業のさじ加減で転勤手当を支給するかどうかは決めることができます。

しかし、内定通知書や雇用契約書に転勤の記載がない場合、会社の都合で転勤となった際は、転勤手当の支給は発生します

このあたりを具体的に解説しますと、本人が希望しない会社都合の転勤は、求職者(労働者)からすると労働条件の不利益変更になり、本来は、転勤させてはいけないことになります。

そこで企業は、求職者(労働者)の説得材料として、転勤に応じてくれれば手当を支給するという交渉をすることが多いです。

求職者(労働者)は、その企業で生きていくためには、転勤を受ける必要がありますし、また、転勤手当の穴埋めがあるのであれば転勤に応じるケースが多く見られます。

転勤は労働条件の重要な項目で内定通知書や雇用契約書に転勤なしと書いていない場合に、後々転勤を命じられた場合は、求職者(労働者)は遠慮なく転勤手当や特別手当の希望を伝えて良いと思います。

テクニックとしては、転勤手当や特別手当ではなく、基本給を上げるよう交渉した方が絶対に良いです。

と言うのは、各種手当については、企業内の賞与算定の基礎には含まれないことが多く、そうなると、月給としては手当で若干、高くなるとしても、賞与額に反映されません。

しかし、基本給に転勤手当や特別手当を反映しておけば、賞与の算定にも当然に含まれますし、賞与額にも反映されることになります。

転勤と転籍は違う

転勤と類似した言葉で、『転籍』という言葉があります。この転籍とは、転勤とは訳が違います

『転籍』とは、二つのパターンがあります。ご存じでしょうか?具体的に説明すると、『在籍出向』と『転籍出向』です。

一般的には『転籍』を『出向』と表現することもありますが、転勤とはまったく意味が違いますので勘違いしないようにお願いします。

求人には、たまに『転勤』と記載があり、かつ、『転籍』と記載がある場合があります。

『転勤』『転籍』この二つの並びが意味することは『入社後に違う企業に出向になり、それに伴い勤務地も変わります』と言っているのです。

転籍を具体的に説明します

転勤と転籍をはき違えないために、また、転籍には二つのパターンがあり、求人を見ただけでは、この二つのパターンがどちらか判断し切れない場合もあります。

この転籍前提の求人を見た場合は、必ず転職エージェントや企業に確認を取ってください。

その材料となるように、ここで二つの意味をそれぞれご紹介します。

在籍出向とは

『所属は転職した企業ですが、働く企業は他の企業です』ということ。籍は転職先に残しつつも、働く場所は変わりますということ。

  • 雇用契約、給料を支払う企業→転職先の企業
  • 就業規則→出向先の企業 ※始業や終業時間や所定労働時間についても出向先に合わせる

これは場合によっては、同じ給料でありながら、出向先の方が労働時間が短い場合は、求職者からすると好条件になります。その逆の場合もありますが、その場合は不利益変更には該当しないことになります。

転籍出向とは

正式には、『移籍型出向』と言う。書類選考や面接がないだけの転職のようなもの。

転籍出向の場合は、その時点で雇用契約のまき直しを行い、出向先と雇用契約を交わし、給料も出向先から支払われ、就業規則など一切の労働環境は出向先になる。

  • 雇用契約、給料を支払う企業→転職先の企業
  • 就業規則→出向先の企業

『転籍出向』は在籍出向と言葉は似ていても、その実態はまるで別物です。

ブラック企業やそれに近い企業の場合は、本当は転籍出向を視野に入れている中でも、応募する求職者が減ると考えてあえて転勤と記載していることがあります。

転勤と転籍を、ある意味、うまく活用しているのですが、これは法令的にはグレーゾーンです。

確かに転勤の場合は、勤務地が変わりますが雇用契約や給料が支払われる企業の変更はありません。しかし、転籍出向となれば一切の労働条件が変わることになります

転籍出向を転勤と記載する企業は、親会社、子会社という関係性を持ち、事業展開している場合や企業同士で強い協力関係があります。

後者の企業同士で強い協力関係がある場合だと、協力会社の評判が悪く求人を出しても応募数が少なく良い人材を確保することが難しいことがあります。

その際は、一方の企業の企業名を使い、その企業が採用しているように見せて、評判の悪い企業の採用をサポートするという仕組みがあります

このような場合でも、内定通知書や雇用契約書に転籍出向と記載する必要があるのですが、あえて転勤という表現に変えている場合もあります。

求職者は転勤という記載がある場合は、必ず内定通知書や雇用契約書をしっかりと確認しなければ後々、痛い目に遭います。

昇格という転勤、栄転

転勤は決して悪いことだけではありません。

確かに会社都合である場合がほとんどで、転勤の場合は家族を巻き込むことになり、嫌悪感を持つ求職者も多いと思います。

しかし、転勤と同時に昇格するということはよくあります。これを『栄転』と呼びます。

栄転とは

言い換えると抜てきということで、転勤先の支店や営業所の業績が悪く、その企業として立て直しをする必要がある場合に、優秀な人材を転勤させて業績の悪い支店や営業所を立て直す転勤のこと。

会社から指名された場合は、家族を巻き込むこともある。

栄転とは違う意味の転勤

栄転とは逆に、あまり受けたくない転勤があります。別名、『島流し』と言います。

島流しとは

武士時代に何か悪いことをした武士が、反省の意味で強制的に違う土地に行かせられることに使われた言葉。

個人業績が悪い場合に、その求職者(労働者)が地方に飛ばされることをいう。

私の同僚や先輩や後輩、または上司に関しても、本社から島流しの意味で地方の支店に飛ばされたことを経験しています。

この島流しとなる転勤となった場合は、相当な努力がなければ、元の勤務地に戻ることは難しいとされています。

転勤を拒否するとどうなるか?

先ほど、転勤には二つのパターンがあるとご紹介しましたが、厳密には三つです。

もう一つは、特に理由なく人事構成上の問題で会社都合としての転勤の場合です。

栄転となる転勤の場合は、求職者(労働者)も前向きに考えることができて、快く受け入れることができると思いますが、特に理由がない場合や島流しというネガティブな意味での転勤は受け入れがたいものがあると思います。

この場合、転勤を拒否することも求職者(労働者)の与えられた権利としてありますが、拒否したあとは一体どのような働き方や労働環境になるのでしょうか。

拒否したあとの実例を踏まえてご紹介したいと思います。

同じ会社でありながら完全アウェー状態

会社都合の転勤とは、言い換えると『会社命令の転勤』です。

転勤も含めて会社とは、強者と弱者の二つがあり、強者は会社そのものでありまたは上司です。

一方、弱者とは、労働者を指します。労働基準法では労使対等をうたっていますが、実際には力関係は生まれます。

この力関係により、会社の命令となる転勤を拒否した場合は、その求職者(労働者)のその後の労働環境はかなりきついものになります。

本来、あってはならないことですが、不利益に労働条件が低下することもありますし、働きにくい職場環境になってしまう場合もあります。

そうすると、転勤した方がましだったと思うでしょうし、そのまま退職になってしまうこともあります。

私の個人的な意見ですが、転勤が嫌だという場合は、そもそもとして転勤の可能性がない企業へ応募した方が良いです。転勤を拒否して最終的に退職するぐらいならば、転勤を受け入れて、その間に在籍しながら転職活動した方が得策だと思います。

本社ごとの転勤!?

最近、少しずつ増えている転勤パターンの一つに本社まるごと転勤するということです。

これは言い換えると本社移転と言いますが、求職者(労働者)個人からすると本社移転であっても勤務地が変わるために転勤となります。

この本社丸ごとの転勤については恐らくその企業も想定してないことであり、内定通知書や雇用契約書に記載されていないかと思います。

このように本社丸ごと転勤ということは、最近、地方活性化のために企業を地方へ誘致する動きがあるためです。

本社を地方に移転させると、その地方から補助金などの支援を受けることができますし、地方の方が明らかに固定費が安く済むため、企業からすると非常にメリットがあります

この場合は、企業もかなり求職者(労働者)に配慮しているようで、本社は移転しても、しばらくは、在宅勤務を認め、遠隔で業務連携したり、転勤手当を手厚くしたり、基本給を高く設定したりしているようです。

転勤のない転職は、絶対にないとは言い切れない

ここまでいくつかの視点で転勤についてご紹介しましたが、基本的には、転勤の可能性がある場合は求人の項目に『転勤あり』や『転勤の可能性あり』と記載があります。

しかしご紹介した通り、転勤のない転職をしたつもりでも結果的に転勤となることはよくあります。

転勤がない記載していても、会社の業績などの都合で転勤のなる場合もあります

特に会社業績の都合の場合は、転勤なしと記載があっても労働基準法違反ではなく、『やむを得ない事由』に該当します

転勤するなら転職エージェントに相談しよう

求職者としては、転勤は場合によってはリスクを伴うことになりますので、転勤については慎重に考えた方が良いですし、転勤なしと記載があっても会社の業績都合で勤務地が変更、つまり転勤となる場合もあり得ます。

転勤するよりも転職した方が良いと捉える求職者もいると思います。

首都圏から地方へ転勤となりますと、その地方で転職活動することにもなりますし、求人の豊富さを考えると首都圏の方が明らかに多いです。

転勤の可能性については、転職エージェントを利用している場合は、キャリアアドバイザーとよく相談する方が良いです。

企業の選考中の面接でも聞いてもまったく問題ないことですので、気になる求職者はしっかり聞いた方が良いと思います。

最近は、首都圏に本社を構える企業が業績を担保するために本社丸ごと移転ということもありますので、想定範囲外のことが転勤については起こり得る時代になっています。

転勤とは、不測の事態も含まれますし、転勤が絶対に無理だと考える方は転勤を機に転職活動しても良いと思います。退職理由としては十分な理由になりますので。

求職者のみなさんの転職活動が順調に進み、最高の転職成功となることを祈り、今回の『転勤』というテーマはこれで終わりにしようと思います。最後までお読みいただきありがとうとございました。

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