数字絶対主義の不動産会社に転職してうつ病になった体験談

大手出版社から、ベンチャーの広告会社への転職が失敗に終わり、何かできることが無いかと考えていた時に、転職サイトで見つけた不動産営業の仕事に興味を持ちました。

この不動産会社で、うつ病と診断されてしまうまで精神をボロボロにされてしまった体験談をお話しします。

執筆者の情報
名前:須田雅夫(仮名)
性別:男性
転職経験:3回
現在の年齢:31歳
転職時の年齢と前職:28歳(広告営業)、28歳(ベンチャー出版社)、29歳(不動産会社)

転職を決めた理由

会社との出会いは大手転職サイトでした。

キャッチコピーには、「年収1,000万円も可能」と、不動産営業らしい文句が掲載されていました。

もちろん、それだけ稼ぐ人も中にはいるのだろうと思っていましたが、不動産のお金の流れに多少の知識のある私は、自分はそう簡単に1,000万円なんて稼げるわけがないと思っていました。

しかし、学生時代に宅建を取得していて資格手当の面で優遇を受けることが出来る事や、営業という仕事自体は経験していたので、挑戦してみようという気持ちが強く、広告業→不動産業という異業種への転職を決意しました。

数字が全てという面接官

面接では、特に圧迫面接などもなく、ごく普通の面接でした。

ただ、不動産仲介業という性質上、成功報酬の為、契約に結びつかなければ今までの行為は一切無駄。

契約を締結させて、報酬を得て初めて評価される。

3か月単位で目標を設定し、評価の対象は結果100%、プロセス0%という事をはっきりと言われました。

ただ、営業職なら数字を求められるのは当然のことで、個人的にはハッキリと言ってもらえたことが良かったと思いました。

面接の翌日には採用が決まり、翌週から入社する事になりました。

ライバルとの足の引っ張り合い

入社してから一番最初に違和感を感じたのは、社員同士の人間関係です。

自分が出た電話が違う担当者の顧客だと判ったとたんに、急に態度を急変させたり、自分の担当する客以外の事は、たとえ客からの要望であっても一切手伝う事はありません。

もちろん、折り返し電話が欲しいと言われても、それを伝言するようなことはありません。

同社では、客からの伝言を伝えなかった同僚が悪いのではなく、担当者がその場に居なかった事や、携帯ではなく会社の電話に電話をさせてしまった担当者が悪いという考え方でした。

これは、売り上げの順位に応じて担当者に支払われる歩合給が変わる為で、本来は他人より自分が頑張る為の制度ですが、完全に他人を妨害するための制度になっていました。

事務の女性曰く、これでもマシになった方で、10年くらい前までは、案内用の持ち込み自家用車に悪戯をされたり、パソコンにウイルスを仕込まれたり、ネット掲示板に有ることない事書かれたりという様な事も有り、警察沙汰にもなったことが有るようです。

罵声と辱め

3か月ごとに成績を計上する同社では、3、6、9、12月末に営業会議が有りました。

私にとっても入社から3か月経過し、初めての営業会議でした。

私の目標達成率は88%。未達でした。

しかし開口一番上司に言われた言葉は、

「あと5時間で今月が終わるけど、どうやってあとの12%の数字つくる?」

と言う言葉でした。

不可能でした。

不動産売買なんて、夜の5時間で契約、ローン審査、融資実行、決済なんて出来るわけが有りません。

もちろんそのようなネガティブな発言をするわけではなく、当たり障りのないように、進行中の顧客がいる旨や、目標達成できなかった反省を真摯に答えました。

すると、

「てめぇ、言い訳が聞きたいんじないんだよ!足りなかったら借金してでも金もってこいや!」

「この給料泥棒が!給料だけじゃなく、会社の酸素まで盗むつもりか?てめぇが呼吸するとそのぶん酸素が無駄になるから二度と社内で息はするな」

「明日、社長以下全社員に土下座して私は給料と空気を盗む泥棒ですって謝罪して廻れ。わかったか!?」

という様な対応です。

私は小さく「はい」と答えると、

「だから息するなって言っただろがおい。息せずに返事しろやボケ」

と机の書類を投げつけてきました。

翌日、「給料から天引きな」と言う言葉と同時に、スポーツ用の酸素ボンベを渡され、本社の朝礼で謝罪する事になりました。

その時、私以外にも5名ほど謝罪した人が居ました。

とうとう鬱と診断される

このようなやり取りが3か月に一度必ず発生していました。

もちろん、達成した時も有り、それはそれで相当な給料をもらうことが出来ました。

しかし、最初は稼ぐために頑張っていた仕事でしたが、気が付けば、上司に怒られない為の仕事になっていました。

毎日会社に行くことが嫌になり、給料いらないから休みたい。と思うようになってきました。

仕事でもミスが出るようになり、中でも仲の良かった同僚に勧められ、心療内科へ行って見たところ、鬱と診断されてしまいました。

結局そのまま同社を退職する事にしたのですが、来月末で有給を消化の上、退職する旨を伝えると、裏切者、給料泥棒扱いをされ、明日から出社に及ばず。

有給は取得させない。

今月分の給料は裏切りの代償として支払わない。

文句が有るなら労基だろうと、裁判だろうと何でもすればいい。

と突き放されてしまいました。

結局、労基に駆け込み、向こう一か月分の基本給と、有給分の支払いを受けることが出来たのですが、後で聞いた話では、

「あいつが労基に駆け込むリスクよりも、あいつが存在することで俺の機嫌が悪くなるリスクの方が大きい」

と言っていたようです。

成績至上主義の会社では、数字を作れない人間は虫けら以下

このような会社に入社してしまった理由は、「成績至上主義」を甘く見過ぎていたからです。

数字を上げない人間は、会社にとって全く価値が無く、プロセスにおいて会社に貢献していようとも、一切評価されません。

会社から価値のない人間とみなされてしまうと、まるで邪魔者のような扱いを受けてしまいます。

同じ営業職でも、成績はもちろん大事だが、プロセスも評価してくれる会社はたくさんあります。

余程の自信が無い限り、数字が全てという会社に入社するのは、やめた方が良いかもしれません。

この記事の筆者

須田雅夫(仮名)
1984年生まれの31歳。大学卒業後、大手広告雑誌出版社に就職。

6年間広告営業として勤務するが、人事異動に反対し退職する。

しかし、転職したベンチャー企業(広告業)で超絶ブラック企業の渦に飲み込まれ、わずか2か月で退職。その後、不動産会社に転職するも、またもや精神が蝕まれる様なブラック企業に・・・。

3社目でやっと転職に成功し、不動産営業として経験を積み、2015年夏独立し、小規模ながらも不動産会社を経営する。

その傍ら、広告代理・印刷物デザインなども手掛ける。

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