既卒で就職活動する際のポイント
私は現在、転職エージェントとして多くの求職者の方の転職支援を行っていますが、私の転職エージェントへ登録にくる中には、企業での就業経験がなく、また、新卒採用として就職できなかった、就職しなかった方もいます。
今回は、この既卒者の方を取り巻く転職事情(就活事情)についてご紹介したいと思います。
- 筆者プロフィール
- 名前: 小玉崇
転職エージェント歴:10年
転職経験:3回
利用したエージェント:27社
現在の年齢:41歳
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今回の記事の目次
既卒者とは?
既卒者とは、高校、短大、大学、専門学校などいずれから学校を卒業はしたものの、卒業年度の翌年に就職していない方を言います。皆さんの友人や知人にかつては既卒者だったという方や、今現在、既卒者として転職活動を行っているという方はいませんか?現在の日本は売り手市場であり、新卒市場における採用状況も中途採用市場における採用状況も学生である就活生や求職者が有利とされているため、既卒者の立場を持つ方はそこまで多くありません。
しかし、リーマンショックの影響により日本経済が不況となり、各企業ともに業績を下げていた時代では、就活生や求職者が不利の状況と言われる買い手市場であったため、この状況は、就活生や求職者の数よりも求人数の数が少ないということを示しますので、就職できないという就活生が増えて、一気に既卒者が増えて社会問題にも発展した頃がありました。
既卒者向けの求人データから見る「就職先」
既卒者という立場で就職活動をする場合、やはりいちばん気になるのは「どんな求人があるの?」「どんな会社に入れるの?」という点になってくるかと思います。
結論を先にお示しすると、既卒者向け求人は介護系や外食系など、不人気な業種が多いというデータが示されています。
まず、新卒枠で就職活動をするケースについて考えて見ましょう。
2016年12月時点におけるリクナビ2017から取得したデータによる、全13408件の求人のうち、「既卒者」に対して言及しているのは919件、全体の6%となっています。
新卒向け求人で見た場合、既卒者フレンドリーな求人は全体の10%にも満たないのです。
また、既卒可の求人であっても、「卒業後1年まで」「特定専門分野を修めていること」などと、条件が厳しいケースも多いです。
リクナビ2017による業種大分類に従って、既卒求人に関するデータをまとめたのが以下の表になります。
業種大分類 | 既卒求人件数 | 既卒件数割合 |
---|---|---|
メーカー | 225件 | 5.2% |
サービス・インフラ | 344件 | 8.4% |
商社(総合・専門) | 84件 | 5.2% |
銀行その他 | 35件 | 7.0% |
情報・通信 | 48件 | 7.3% |
百貨店・小売 | 66件 | 8.9% |
IT・ソフトウェア | 117件 | 8.1% |
この表から分かることとしては、①サービス業、接客販売業、そしてIT系といった業種で既卒求人が多いこと、②製造業や商社、銀行などはやはり新卒文化が強いせいか、既卒求人率が低いこと、の2点があげられるでしょう。
では、リクナビ2017が提供しているより細かい業種分類で、既卒求人の内訳を見てみましょう。下の図を御覧ください。
順位 | 業種中分類 | 求人件数 |
---|---|---|
第1位 | 福祉介護系 | 85件 |
第2位 | ソフトウェア開発 | 66件 |
第3位 | 建設 | 45件 |
第4位 | 外食 | 34件 |
第5位 | 不動産 | 29社 |
第6位 | 教育 | 27社 |
第7位 | 食品 | 24社 |
第8位 | 住宅 | 24社 |
第9位 | 情報処理 | 24社 |
第10位 | パチンコ | 20社 |
第10位 | WEB系 | 20社 |
この表から明らかですが、あからさまに不人気業種のオンパレードになっています。
福祉系や外食系、ソフトウェア開発などのIT系は、新卒時の就活でも避ける方が多いかと思います。もちろん中には「ホワイトな」企業もあるのでしょうが、業界全体の傾向として労働環境が過酷であることは明らかです。
他にも不動産営業などがありますが、こちらも超高額商材を扱うため、業務は過酷です。不動産営業の過酷な現実に関しましてはこちらの記事もご参照ください。
以上のデータから、既卒者が新卒枠で応募すると、ブラック色の強い業界に入ってしまう可能性が非常に高いのです。
新卒枠か、中途枠か
企業によっては、2つのパターンがあります。1つ目の方法は新卒と同じく既卒者として翌年度の新卒採用市場で就職活動を行うことです。
新卒採用市場は、転職市場とは比較にならないほど、多くの企業が新卒採用を同じ時期に実施しますので、求人の数としては星の数ほどあると言っても違和感はありません。
採用する側の企業もかつてのリーマンショック以降、このしっかりした人材でありながら縁や運がなく就職できなかった人材を救済しようということで、自社に新卒採用について応募資格を既卒者も可能とする企業が多いです。
何らかの理由により現役では就職できなかった方も翌年度以降の新卒市場で求人を探し、既卒者も可能とする求人に応募することで就職決定に至るチャンスがあります。
既卒者が応募できる新卒求人の特徴
既卒者も対象とした新卒求人は企業の規模に関係なくどの企業でも行っているのですが、中でも、ベンチャー企業の求人は既卒者も応募資格があるということが多いです。
ベンチャー企業では、新卒市場において、就活生となる学生は社会人経験がなく、企業を選ぶ基準にどれだけネームバリューが高いかというものが強くあります。そのため、ベンチャー企業は企業規模が小さいこともあり、ネームバリューという観点では、大手の企業に劣るため、新卒採用では苦戦し、人材の確保が難しい状況にあります。
そこで、既卒者も応募可能というように範囲を広げることで少しでも応募数を増やすようにしているので、ベンチャー企業は既卒者の応募も受けることが多いです。
第二新卒求人へ応募する場合
次は、既卒者が学校を卒業した人材という観点を持つ企業の場合です。本来、転職活動の市場では現職を含む前職を持ち社会人経験のある求職者が対象ですが、最近、社会問題に発展するぐらい若年層を中心に新卒で入社した企業を入社から3年以内に退職する人材が増えていて、第二新卒という市場が新たに生まれました。
そのため、既卒者は社会人経験がないものの、本来の第二新卒の求職者も社会人の経験があるとは言え、ほとんどないに等しいよね、ということで、既卒者をこの第二新卒に含めることが当たり前になっています。
第二新卒限定の求人も少しずつ増えてきているため、既卒者としては就職先を見つける良い機会だと思います。
第二新卒者が増えているため、第二新卒限定の転職エージェントもあります。その転職エージェントは第二新卒と既卒者の転職や就職の支援を行っているため、色々な情報を提供してくれると思いますので、是非、インターネットなどでその転職エージェントを探して登録した方が良いです。
私の友人に企業の人事をしている人がいて、その友人の企業は第二新卒と既卒者の求人も公開することがあると言っていました。しかし、積極的に行っているということではなく、良い人材がいればという程度のものです。
第二新卒枠の求人を公開する企業の中には、ルーティン採用と人材業界では言いますが、常に求人は公開しておくものの、積極的に採用活動は行わないことがあります。あくまで良い人材がいればというスタンスですので、その求人を発注する転職エージェントにも、積極的に紹介して欲しいというオーダーはしていません。
そもそもとして、第二新卒への社会的なイメージは『新卒で入社した企業を3年も在籍できないやる気のない人』というようにマイナスのイメージを持たれています。既卒者の中には、第二新卒にも入れてくれるんだと喜ぶ方もいるかもしれませんが、このようなマイナスイメージを持つ第二新卒と同じ枠組みに入るということは既卒者もこれとほぼ同じイメージを企業は持っているということですので、新卒求人ではなく第二新卒で活動する求職者の方は覚悟を持って活動した方が良いと思います。
既卒者の方は不幸中の幸いで、言葉を選ばず言うと中途半端な立場にいるために、新卒市場でも就職活動することができますし、求職者として転職市場でも転職活動することができます。
既卒者の選考フローと選考基準
先述の通り、どのような理由であれ既卒者に対してどの企業も好印象を持っているということは絶対ないです。その証拠に、人口割合が少ないとは言え、仮に既卒者に対して優秀なイメージや良い印象を企業が持っているのであれば、既卒者限定の求人があっても不思議はありませんし、その入社条件も新卒者や第二新卒者よりも好待遇であるはずです。
しかし、残念なことに既卒者限定の求人はありませんし、入社条件の待遇も新卒や第二新卒よりも良いということはありません。この待遇についてはこの後、ご紹介します。
ここでは、このようにあまり良いイメージのない既卒者の選考フローと選考基準についてご紹介したいと思います。
新卒採用市場の求人に応募して企業の選考を受ける場合
まず、新卒採用市場の求人に応募して企業の選考を受ける場合です。どの企業も既卒者専用や限定の選考フローを別に持っているということは基本的にはありません。新卒者と同じように適正検査やエントリーシートの選考からスタートしてその後、数回の面接になります。
ただ、若干違う点があるものは、選考フローにおいて、既卒者の場合は面接が新卒者よりも増えることはあっても減ることはないということです。基本的には増える場合が多いと思った方が良いです。増える理由は、企業も既卒者に対してはマイナスイメージからスタートしているため、既卒者に対してはいつもより慎重に選考を進めるためです。
このように選考フローが増えるという状況は逆を言えば、その企業はその既卒者に対して興味を持っているということになりますので、変な不貞腐れはやめて前向きに捉えて面接に向かいましょう。
選考基準については、既卒者についてはどの企業もシビアです。理由は簡単です。大体の
新卒者よりも年齢的に年上であることが多く、また、就職活動に関しても前年度に一度、経験しているため、就職活動から得た企業情報や企業の雰囲気、選考フローについても把握していると考えるためです。
もっと言うと、既卒者の方が本来は同期になるはずだった学校の友人や知人を通して選考状況や選考内容も知っているのではないか?と深読みする企業も中にはあります。
これらの理由により、既卒者は一般の学生よりも選考基準は高いと思った方が良いですし、仮に同じレベルの人材が既卒者の方含めて2人いたとすれば、その企業はまず間違いなく既卒者以外の就活生を採用すると思います。
既卒者としては、ほとんどの就活生は1回のチャンスで就職決定しているところを2度の
チャンスを得たということは前向きに考えて頂いて良いですし、ラッキーだと思いますが、それ相応の厳しい社会の目があり、選考基準に関しては影響します。
このように状況のなかでも心を入れ替えて2度目の就職活動で就職決定した既卒者はたくさんいますが、選考に向けては必要以上に、自分としてはこれで十分と思った以上に選考準備をした方が良いです。
この準備が他者との差別化に繋がり、既卒者のマイナスイメージを打開してくれる武器になりますので。
中途採用市場の求人に応募して企業の選考を受ける場合
この場合は、新卒市場よりもハードルが上がると思った方が良いです。第二新卒枠は転職市場の中では誰しも転職活動に苦戦する傾向があります。中にはすんなり転職している求職者がいますが、このタイプは何か特別な理由があってのことですので例外と考えた方が良いです。
基本的にはイメージが悪い第二新卒枠の中で、既卒者としても良いイメージを持たれていない中で、転職活動を行う訳ですから、マイナス×2という状況下です。
選考フローは第二新卒と変わりませんが、選考基準はマイナス×2からのスタートになりますので、まず、苦戦する選考は書類選考です。この書類選考は、通常の求職者でも
全ての選考フローの中で最も通過率が悪く苦戦します。第二新卒は当然、通常の求職者よりも書類選考の通過率は低い中で、既卒者となればその通過率はもっと下がると思った方が良いでしょう。
私の転職エージェントに登録する第二新卒枠の求人に応募する既卒者でこの書類選考を通過する確率は平均的には3%前後です。30%ではなく3%ですので、100社の応募を行い書類選考を通過した社数は3社前後という計算になります。
この数は、かなり異常値で、私の転職エージェントだけではなく、他の転職エージェントからも情報を聞いていますが、このパーセンテージはどこも同じようです。
選考フローののっけでこのように厳しい現実になります。書類選考を通過して面接に入るのですが、この面接も苦戦が予想されます。まず、ネガティブな質問が必ずあると思った方が良いです。私も転職エージェントとして既卒者の選考に同席したこと何度かありますが、その全てで学生時代に就職できなかった理由を聞かれ、それを正直に答えるとその段階でまたマイナス評価を受けます。
既卒者が転職市場で転職活動を行っても内定を勝ち取るということは至難だと私は個人的に思っています。しかし、既卒者はこのような状況の中でも諦めず転職活動を行わなければなりません。
既卒求人を公開する企業の特徴
既卒者も対象とする求人は多くありますし、先程、既卒者を対象とする企業の特徴にベンチャー企業があるとご紹介したと思います。
ベンチャー企業の中でもIT業界や営業体質を持つベンチャー企業は特に既卒者への理解があります。IT業界では、慢性的な人材不足に陥っているために、優秀な人材であればどのような立場の求職者であっても採用に至ります。
また、営業体質のベンチャー企業は、離職率が高いこともあり、若手人材の確保は至上命題となっています。この企業課題を解決するため、企業としては就職先に困っているだとうとう仮説のもと、既卒者への理解を示し、自社の課題解決に繋げるのです。
既卒者とブラック企業の親和性
更に既卒者への理解をある意味示す企業があります。それが、どの業界や企業規模にも関係なくブラック企業です。ブラック企業に入社することは、就職後に劣悪な労働環境で仕事をするということは確実にあります。学生時代に就職できなかった焦り、そして転職市場でもなかなかうまくいかない状況に焦りを感じて、企業選びの基準がずれたり、または、基準そのものを一気に下げて、『とりあえず就職』というようになってしまい、採用してくれるならばどこの企業でも良いと思うようになってしまう既卒者も
います。
しかし、これは絶対にやめた方が良いです。就活生も求職者も就職活動や転職活動を行う目的は転職後に充実したビジネスライフを送るためです。就職活動や転職活動はその目的を果たすための手段でしかないですので、内定をゴールにしてはいけないのです。
焦る気持ちも分かりますが、ブラック企業への就職は人生の下り坂の序章になりますので、基準をむやみに下げることなく諦めず活動を行い、チャンスを伺った方が得策です。
既卒者の就職活動と資格について
そもそもとしてイメージがあまり良くない既卒者が新卒採用市場であれ中途採用市場であれ、イメージを良くする方法があります。先述の通り、履歴書などの書類で判断される書類選考は既卒者からすると鬼門中の鬼門で非常に厄介です。
しかし、この鬼門中の鬼門である書類選考を他の就活生や第二新卒者と差別化を図る方法があります。それは資格取得です。特に新卒採用市場で就活を行う就活生は学生であるため、資格取得まで配慮していることは少ないです。
ライバルとなる就活生が持っていない武器を取得することは既卒者にとってはかなりのアドバンテージになります。実際に、既卒者の中で、就職のために資格を取得した場合、それまでとは明らかに書類選考の通過率が変わりますし、その後の面接でも資格取得に至った努力背景や理由を紹介することでイメージが良くなります。
第二新卒枠で転職活動する場合も同じく資格は武器になりますが、最近、転職エージェントでは第二新卒者の転職決定率の悪化を回復するために資格取得を推進することが増えているために、明らかな差別化となることは難しいですが、それでもライバルとなる他の求職者が資格を保有している中、既卒者の自分が保有していないとなれば、それは逆の意味で差別化を図られることになり、不利になります。
紹介予定派遣で正社員雇用を目指す
私の個人的な意見としては新卒市場、転職市場ともにライバルに関係なく絶対的な選考基準が高いために、選考基準が低い転職方法の方が私は無難だと思います。
最近、法改正により話題になっている派遣雇用の中でも正社員前提の派遣となる紹介予定派遣という方法があります。
この方法は、入社に関する書類選考や面接がなく、職場見学という名のものに派遣会社の営業マンが同席のもと、面談で判断になります。どの企業も派遣スタッフへは作業系の事務関係を依頼することが多く、選考もライトな内容ですので、既卒者からすると、雇用形態は正社員ではありませんが、企業に入社して仕事をすることができます。
これだけであれば、私もお勧めしませんが、紹介予定派遣という方法は派遣として入社後に本人の業務態度が良ければそのまま正社員として雇用されることになります。
企業としてもどのような理由であれ、就職活動で就職先を見つけることができなかった既卒者に対して正社員の選考では慎重になりますが、派遣であればライトな判断になります。
その派遣期間に企業へ業務態度や人間性をアピールして正社員を目指した方が私は得策だと思っています。