人材紹介って何?人材紹介の仕組みは?
みなさん、こんにちは。
転職活動を行う多くの人は自分の転職活動をサポートする立ち位置として転職エージェントをイメージするかと思います
私もこれまで3度ほど転職経験を持ちますが、同じように求職者である自分を支援するものとして転職エージェントを考えていました。
この転職エージェントという言葉は人材業界を中心としたビジネス用語であります。
求職者が転職活動を行うことと同じく採用する企業も採用活動を行いますが、企業サイドとしては転職エージェントという表現よりも人材紹介という呼び方が普通になっています。
- 転職エージェント:求職者視点
- 人材紹介:企業視点
私は現在、転職エージェントとして活動していますが、ほとんどの企業は人材紹介事業者と呼びます。
転職する対象は求職者であり、人材の紹介を受ける対象者は企業であるため、同じ事業者であっても呼び方が違うのです。
今回は、採用する企業視点で呼ぶ人材紹介についてご紹介したいと思いますが、まずは、人材紹介とはどのようなものか、そして、どのような仕組みで成り立っているのか、このあたりから話を起こしていきたいと思います。
人材紹介とは?
人材紹介とは、先ほどご紹介したように企業視点での用語になります。
日本の中途採用市場ではかつて転職サイトが主流となっていましたが、現在は転職サイトを活用するよりも、人材紹介を利用して中途採用を行った方がメリットが多いです。
というのも、転職サイトは、求職者に対して企業がその転職サイトに自社の採用をかけるという流れで成り立っています。
転職サイトは採用広告費という側面を持ちますので、企業はその広告出稿で採用できなくとも広告費を転職サイトへ支払うことになります。
求職者はネームバリューのある企業に目が行ってしまい、中小企業やベンチャー企業には応募すらしないという傾向があります。
そうなると転職サイトを利用して採用成功する企業はほとんどが大手企業であり、それ以外の企業については、単純に広告費を垂れ流しているにすぎないということになります。
このような結果が長く続き、結果的に転職サイトへ広告掲載する企業が減り、現在の低迷に至っています。
企業が転職サイトに広告掲載をしなくなると、求人数が少なくあまり魅力を感じなくなり、結果として転職サイトを利用する求職者も減り、今では掲載する企業、登録する求職者も減っている状況です。
現在の転職サイトは、かつての底辺からは抜け出し少しずつ媒体としての力が戻ってきてはいるものの、かつての盛り上がりとまではいかない状態です。
人材紹介サービスのメリット1
中途採用を行う企業として人材紹介サービスを利用するメリットについてご紹介したいと思います。
どの企業にも期間を区切って採用予算が設けられ、この予算内で、決まった人員を確保することが必要になります。
特に中小企業やベンチャー企業は予算が少ないため、一度の採用失敗が致命傷となることもあり、できれば確実に採用成立したいと考えています。
人材紹介サービスは、人材紹介事業者から紹介があり入社した段階で費用を支払うため、無駄な採用コストを使わず確実にそのコストに見合った採用が実現します。
そして、企業側としては人材紹介事業者と契約する段階では費用が発生せず、また、同時に人材紹介事業者へ求人を発注できる手軽さがあり、どの企業も最低3社程度は同時に利用しています。
このように転職サイトとは異なり、中途採用を行うどの企業に対しても平等に成功報酬という仕組みであるため、人材紹介サービスを使う企業が増えているのです。
人材紹介サービスのメリット2
二つ目のメリットとしては、採用活動における事務処理の簡素化です。企業が中途採用を行う場合、必ず募集要項というものを作成します。
転職サイトへ企業が広告を掲載する場合は、転職サイトの営業マンやライターと打ち合わせをしたり、広告用の撮影があったりと手間もあります。
しかし、人材紹介事業者であれば、営業マンが来社して1度の打ち合わせだけで済み、その後は求人を発注して求職者の紹介を待つという流れで済みます。
また転職サイトだと、どんな求職者でも応募できるので、その求人にミスマッチな求職者が応募することもあり、書類選考の手間が増えます。
しかし、人材紹介サービスの場合は、キャリアアドバイザーが求職者を選抜して企業へ紹介するので、応募数も少なく、書類選考の質も担保することができます。
また、この他の簡素化としては、求職者が面接をドタキャンすることを回避することが可能です。
どの企業も面接となれば最低でも30分は確保しますが、転職サイトの場合求職者がドタキャンすることがあり、面接スケジュールをリリースすることになります。
特に面接段階後半ともなれば役員や社長クラスが面接担当となり、その段階でも求職者は平気でドタキャンするので、役員や社長クラスの時間をリリースすることは大きな経営リソース損失になります。
このような事態を未然に防止してくれる役割を人材紹介サービスは担保しますので、採用する企業は人材紹介サービスを利用するのです。
人材紹介サービスのメリット3
三つ目のメリットとは、採用する企業が面接などを行った結果、必要人材と判断した求職者に対して人材紹介事業者がクロージングを代理で行ってくれる点です。
直接応募の場合は、企業が必要人材と判断した求職者に対して内定手続きや入社クロージングを行うのですが、企業にとってこの工数は大変で、できれば第三者に委託して入社受け入れの準備に集中したいと考えます。
この点を人材紹介サービスであれば、採用する企業に代わり必要人材である求職者を口説いたり説得したりしてクロージングまで持って行き入社段階までケアしてくれます。
どの企業の人事も内定を出して求職者に対しては絶対に入社してもらわなければ自分の評価に影響するため、是が非でも入社してほしいと考えます。
この部分についても人材紹介サービスがしっかりとクロージングやケアを行ってくれるため、直接応募に比べて工数も少なく、また、内定辞退となるケースもかなり軽減されます。
私も企業の人事だった時代に同じように人材紹介サービスを利用しましたが、この内定辞退は人事としては非常に大きなマイナス評価になるため、人材紹介サービスに内定を出した求職者に対しては必ず責任を持って入社まで持って行くように依頼した記憶があります。
人材紹介サービスも内定だけでは利益にならず求職者が入社して利益になるビジネスモデルであるために、何が何でも内定が出た求職者に対しては入社するよう仕向けます。
ただ、あまりにゴリ押しする人材紹介事業者は中長期的な視点で考えると印象がよくありませんので、入社してほしいとは言えど、あまり好感を持てるものではありませんでした。
求職者としても、このような背景があることを理解して転職エージェントが内定時に入社をゴリ押ししてきたとしても断る勇気を持つことが必要です。
いかがでしょうか?転職サイトとの比較を含めて人材紹介サービスとはどのようなものか、そしてどのような仕組みでビジネスモデルを展開しているのかご紹介しましたがご理解いただけましたでしょうか。
求職者視点ではなく企業視点で人材紹介サービスを解説しましたので、企業と人材紹介サービスの関係性やそれぞれの思惑も把握できたかと思います。
人材紹介サービスと転職エージェントは同一人物ですが、相手によって言葉も変わりますし、サービスの内容も異なります。
人材紹介サービスという特性は、利益を求職者ではなく企業から入ってくるため、求職者よりではなく企業よりで物事を捉える傾向にありますので、求職者としてはこの裏事情も理解した上で転職エージェントを利用した方が良いかと思います。
人材紹介サービスの余談
人材紹介サービスは、これまでは中途採用に関係するサービスでしたが、最近は、新卒採用でも人材紹介サービスが利用されています。
人材紹介サービスは、人材紹介事業者が転職または就職を希望する求職者または就活生が登録して、登録した人材を採用する企業に紹介して利益を得る仕組みです。
新卒採用においてもこれまではサイトによる採用活動が中心でしたが、中途採用と同じようにサイトでは、大手企業のひとり勝ちという状況になりました。
採用活動にかける費用や行動、時間の割には良い人材の獲得につながらず費用対効果が悪いため、事務処理やその他の採用活動を代理で行ってくれる人材紹介サービスを利用するようになっています。
余談はここまでとして、今回、後半は私が人事をしていたころの人材紹介サービスとのやり取りついて、エピソードをご紹介したいと思います。
人事時代の人材紹介サービスとのエピソード
私は合計4社で人事として仕事をしており、どの企業でも採用に関わってきました。うち1社は大手企業で、その他はベンチャー企業での人事経験になります。
その中で、30代前半で在籍していたベンチャー企業時代に取引していた、ある人材紹介事業者との話です。
当時、私が在籍していたベンチャー企業はいわゆる人気のベンチャー企業で、転職サイトに掲載しても採用成功するぐらいの人気ぶりでした。
そのため、成功報酬とは言え、転職サイトの掲載費用よりも高いこともあり転職サイトを中心に中途採用活動を行っていたのですが、ある日、ある人材紹介事業者の営業担当が飛び込みで訪問してきました。
どの企業の人事担当も少数で業務を回しているため、アポのないスケジュールに時間を割くほど余裕がなかったために、名刺だけもらって帰っていただきましたが、その営業マンは次の日もその次の日も同じ時間帯にアポなしで訪問してきたのです。
最初の訪問で、『当社は転職サイトで十分、中途採用は成功しているために、人材紹介サービスは利用しない』ということで断りを入れたのですが、毎日、同じ時間帯にアポなしで訪問してきました。
1カ月ぐらいたった日に同じようにアポなしで訪問してきたのですが、その日はたまたまスケジュールに余裕があり、その営業マンに情も入り仕方なく30分ぐらいならということで打ち合わせを行いました。
その営業マンは女性の担当者で20代中盤の方です。『なぜ、当社に訪問したのですか?』と尋ねてみると、転職サイトの掲載回数を見て人気企業で中途採用を積極的に展開していると分かり、お役に立ちたいと思ったからですと答えました。
しかし、その後の企業紹介やサービス紹介の営業トークは全く意味が分からず、かなり緊張していたせいか汗をかきながら説明していました。その営業マンも後日、言っていましたが自分でも何を言っているのか分からないぐらい緊張していたそうです。
結局、その打ち合わせで特に取引するメリットはないと感じたために前向きな返答はすることなく違う企業で営業を頑張ってほしいと断り帰っていただきました。その営業マンも打ち合わせで思うように話すことができずにどこかかわいそうに思えるぐらいしょんぼりして帰っていきました。
ただ、その営業マンはトークもボロボロで特に魅力を感じるサービスでもなかったのですが、あいさつと礼儀や言葉遣いは本当に印象に残りました。この営業マンはどこか違う企業だったら契約まで取り付けることができるのではないかと感じました。
そして、打ち合わせで断った翌日に、いつもと同じ時間帯にその営業マンはまた訪問してきたのです。ちょっと驚きもありましたが、一度打ち合わせをしていたため、会わずに帰るのも悪いと思い、あいさつして帰ってもらおうと受付まで行った時です。
その営業マンは昨日の打ち合わせでの反省点とそして緊張して話せなかったために昨日の打ち合わせで伝えたかった内容を資料にして持ってきたのです。今思えばこのタイミングで私はその営業マンを尊敬していたのだと思います。
当時も今もそうですが、ここまで愚直に仕事に打ち込む若い営業マンはあまりいませんでしたので、本当に感動したことを覚えています。当時の季節は夏で本当に暑く女性でありながら汗をかいていましたし、お礼の意味も込めてジュースをプレゼントしてその日は帰っていただきました。
営業マンの熱意はボロボロトークを超越する!!
帰っていただいたあとに持ってきた反省文と資料に目を通しました。反省文は手書きで確か10枚程度で書いていたと思います。十分な思いが伝わり感動の領域でした。また、資料についても1日でよくここまで仕上げてきたなと思うぐらい素晴らしい内容でサービス内容や取引後のメリットについても細かく紹介がありました。
この営業マンの素晴らしいポイントの一つはメリットだけではなく、その人材紹介事業社のデメリットも正直に記載されていた点です。大体の営業マンはどの業界でも同じですが、取引したいがためにメリットを誇張したりデメリットを矮小(わいしょう)したりします。
しかし、この営業マンはある意味、ばか正直にデメリットもしっかり記載されていました。私は人事経験が長く、どの人材紹介事業者がどのようなメリットがありデメリットがあるのかある程度把握していましたので、資料を見ずとも大体理解していたのですが、その資料にはウソ偽りのない内容ばかりで、この営業マンならば真摯(しんし)に取引できるのではないかと前向きに思えたのです。
ただ、当時の企業の採用戦略上、人材紹介サービスではなく転職サイトを活用して十分成果も出ていましたので、取引に応じたい気持ちはありましたが、断ろうと思いました。
その分、その営業マンの頑張りに報いたいと思い、私の友人が経営している企業を紹介しようと思いました。
その営業マンはまた翌日も同じ時間帯に来るだろうと私も予測できたため、アポはなかったですが、その時間帯は予定を開けて待っていました。すると『やっぱりな』という具合に同じ時間帯にいつものようにその営業マンが訪問したため、他企業を紹介するために打ち合わせを行いました。
しかし、その営業マンは紹介を断ってきたのです。ちなみにその紹介企業は人気の高い企業で中途採用も積極的に行っており人材紹介事業者として求人を受けることは絶対的にプラスになるぐらいの企業です。
その企業への紹介をその営業マンは断ってきたのです。喜んで帰ってくれるだろう思っていたため、かなりびっくりして、どうして断るのか聞いてみたところ、その営業マンはどうしても当時、私が勤めていた企業と取引したいとのことでした。どうしても取引したい企業とは取引できず、その企業から紹介された企業と取引しても自分の成長につながらないと答えたのです。
立派過ぎて、感動を超えました。その営業マンの信念に応えてあげようと決意して、その打ち合わせが終わったあと、すぐに社長に直談判してその営業マンの人材紹介事業者と一度、取引したいと伝えたのです。最初はごねられましたが最終的には決裁が出ました。
その営業マンはまた翌日も訪問するだろうと思い、また同じ時間帯にスケジュールを空けて待っていたのですが、またまた『やっぱりな』という具合に同じ時間帯に訪問してきたので、打ち合わせを行い、取引OKを伝えました。
非常に喜んでくれて人事冥利(みょうり)に尽きる瞬間ですが、営業マンはやはりトーク力ではなく熱意だとあらためて感じた瞬間でした。
その営業マンはしっかりと採用活動に寄与してくれて最高の採用をすることができましたし、そのお礼を含めて紹介しようとした企業をまた紹介して今度は引き受けてくれました。
紹介した企業でもしっかりと採用支援したようで、その企業もまた違った企業を紹介して、どんどん顧客が増えていき、結果的にその営業マンは1年後にはトップセールスになったそうです。
優秀な営業マンがいる転職エージェントを選ぶべき
このエピソードは今でも心に残っていますが、この営業マンのいる転職エージェントは今も存在して業界上位の地位を常にキープしています。
大きな資金力がある訳でもなく常に転職エージェントの上位に位置している理由は、やはりサービスの質だと思います。
今回ご紹介したエピソードの営業マンがいるような転職エージェントを利用することは求職者にとって転職決定の生命線のような気がします。
私も現在、転職エージェントとして活動していますが、愚直に真摯(しんし)に何事にも取り組む姿勢を持つ転職エージェントは内定時に無理なゴリ押しをすることはないでしょうし、転職支援の質や量も充実していると思います。
転職エージェントには本当にさまざまなタイプの事業者が存在して今は飽和状態に近いぐらいですが、求職者にとって転職エージェントをしっかり見極めて選ぶことはその後の転職活動に大きく影響しますので、あらゆる手段を用いて転職エージェントごとに情報を整理して自分に合った転職エージェントを選んだ方が良いでしょう。
私の経験上、営業マンがしっかりした対応を取る転職エージェントは事業者としても優秀だと考えています。転職エージェント同士の交流会によく出席しますが、大体の転職エージェントは今、私がお伝えしたような意見を持っています。
求職者としては企業を担当する営業マンと接点を持つことは難しいと思うでしょうが、そのようなことはありません。担当となるキャリアアドバイザーに営業マンと会わせてほしいと依頼すると必ず対応してくれます。
求人ごとに担当営業が異なりますので、登録後、最初のうちは多少時間がかかったとしても転職エージェントを見極める意味で営業マンとコミュニケーションを取って優秀な営業マンかどうか判断してみてください。
その判断基準が転職エージェントを選ぶ判断基準としても問題ないと思います。
今回のまとめ
求職者にとって転職とは人生のターニングポイントです。また、同じく企業も採用はその企業にとって大きな経営インパクトを残します。
その両者の間に立って転職、採用の支援を行う転職エージェントまたは人材紹介事業者はどちらにとっても貴重な存在です。いくつかある転職や採用の方法の中では最も効率的でどちらにとってもメリットが大きい存在です。
しかし、求職者としては転職エージェントの中には企業視点で転職支援を行う事業者も存在することを把握しておかなければ人生のターニングポイントを無駄にしてしまう恐れも秘めています。
求職者からは一切の費用負担がないことが何よりの証拠です。ぜひ、このからくりをしっかりと理解して自分の転職に後悔ないようにしていただきたと思います。
最後になりますが、皆さんの転職活動が有意義なもので早期に転職決定することを祈り今回はこれで終わりにしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうとございました。