公務員から民間企業へ転職希望の求職者と民間企業から公務員を目指す求職者の違い
最近は、民間企業への就業経験がない公務員の方も転職市場に増えています。
基本的に転職市場ではいかに民間企業で優秀な経歴を積んだかがポイントになるのですが、公務員の方が転職活動で内定を勝ち取れないかと言えば、そうとも言えません。
逆に、現在民間企業で仕事をしている方が公務員への転職を志望するという例も少しずつ増えています。
働き方や労働環境が相反する公務員と民間企業は、それぞれの経験が生かせることは少ないように見えますが、実際はどうなのか。
また、転職市場や公務員試験の観点ではどうなのか、といった点を詳しくご紹介したいと思います。
今回の記事の目次
民間企業でビジネスマンとして働く求職者が公務員へ転職する理由
公務員になるには年齢制限があるため、公務員に転職しようとするほとんどの方は20代後半までになっています。
では、なぜ20代の求職者は、それまでの経験を生かして転職活動を行わずに公務員へ転職しようとするのでしょうか。
私は現在、転職エージェントとして活動していて多くの求職者が登録いただいていますが、その中には公務員への転職を第1希望としている方もいます。
公務員へ転職したいと考えている主な理由
- 将来が不安
- 民間企業の働き方が合わない
- もっと楽な仕事をしたい
民間企業に対して将来の不安を感じる求職者
まず、民間企業に対して将来の不安を感じる求職者に関して。
私はこの考えを持つ求職者の気持ちが分かります。
人であれば誰しも将来に不安を感じるものですし、いきなり会社の業績が悪化することもあり得ます。
転職先に大手企業を希望する求職者は、仕事に対して安定を求めているからだと思いますが、公務員へ転職したいと考える求職者の方と全く同じ考え方だと思います。
同じ安定でも、大手企業と公務員ではその盤石さが全然、違うと言って良いと思います。
もし、仕事に安定だけを求めるのであれば、公務員へ転職した方が絶対に良いと思います。
自分の性格や考え方と民間企業の働き方が合わないとする求職者
民間企業の働き方が合わないという求職者は、今の会社に不満を持っていることが多いです。
そうであれば、その不満を解消できる他の民間企業に転職すれば良いと思うでしょう。
私も正直、そう思います。
しかし、こういった求職者は、知人などからその他の民間企業の環境を聞いて『どこの民間企業も同じ』というような、ネガティブな考えを持っていることが多いです。
『民間企業に入ってもすぐ辞めてしまうだろうから、毎日同じような仕事をしていれば給料がもらえる公務員が良い』と考えています。
公務員として社会に貢献したいとか、『こんな仕事をしたい』という前向きなことを持っていることは少ないようです。
ネガティブであまり良い判断とは言えないのですが、公務員の場合はこの考えでも苦労することは少ないと思いますので、何の目的もなく民間企業へ転職するよりは良いのかなと思います。
このような求職者のタイプの方は、一度転職をしても転職を繰り返してしまう傾向にありますので、目標や夢はなくとも普通に仕事さえしていれば給料がもらえる公務員へ転職した方が楽な人生を送れるのかもしれません。
もっと楽な仕事をしたい求職者
普通ならばこういった転職理由はいかがなものかと思います。
しかし、転職先を公務員とする場合は100%ネガティブとは言い切れません。
高卒や大卒の方も、卒業後に公務員になる方は多いです。
私の友人にも、在学中に公務員試験を受けて新卒で公務員になった友人が多くいます。
『公務員って決まった仕事を毎日こなすだけで良いし、人と競うこともなければ、営業のようなノルマもないから楽でしょう』
と、みんな口を揃えて言っています。
恐らく公務員を目指す方は、多くの方が『楽だから』という理由があるのだと思います。
民間企業である限り楽な仕事は一つもないと思いますので、転職先が公務員であるならば間違った転職理由にはならないと思います。
転職するためには?
公務員として転職するためには採用試験に合格する必要がありますが、公務員と言ってもその範囲は結構広いです。
地方公務員、国家公務員、教員など、どの公務員を希望するかにより試験の難易度や応募条件も違います。
民間企業の方が公務員になる場合、警察官や消防員、または教員という選択を取る場合が多いようです。
私にも新卒で警察官になった友人がいて、民間企業からの転職組が多いと聞いています。
「民間企業に新卒入社して1年ぐらいで退職して、アルバイトをしながら勉強して警察官になるという人が意外と多い」と言っていました。
友人に『なぜそんなに警察官になりたい人が多いのか?』と聞いたところ、
『試験がそんなに難しくないし、警察官は一生食べていける公務員だから。』と言っていました。
一方、教員を目指して転職する方の理由は
「学生時代からの夢を捨てきれない」
「日本の教育を変えたい」
といったものが多いようです。
公務員が民間企業へ転職する理由
次に現在、公務員として働いている求職者の方が民間企業の転職を希望する場合です。
私はかつて企業の人事として採用にも従事してきましたが、高校の体育教員として働きながら転職活動をしている求職者などに会いました。
採用に従事して間もない時期は、『安定がある公務員で働いているのに民間企業に転職しようとするのはもったいない』と感じていましたが、現在はそういった応募数が多く、当たり前のことのように感じています。
安定よりも成長を求める求職者
一度は安定を考えて公務員になった求職者の方も、同じ業務を繰り返している環境に自己成長を感じないという場合があります。
「マンネリ化」、「日々同じ業務を繰り返している環境」がまさに公務員の典型的な働き方です。
どうしても同じ業務の繰り返しとなる面は否めないために、ストレートに言うと飽きてしまうことも多いようです。
私は公務員として働いたことがありませんので実体験を語ることはできませんが、公務員をしている私の友人は全員同じように「仕事に刺激がない」と言っています。
公務員の給料は安いですし、年功序列、終身雇用の文化であるためやりがいは少ないのかなと思いますが、何より安定がありますので社会的な信用は抜群だと言えます。
その立場を捨てて何の保証もない民間企業への転職はかなり勇気が必要なことだと思います。
給料に不満
また、民間企業で働きたいと考える公務員の求職者は、大体の場合給料に不満があります。
公務員は安定があることと引き換えに、給料は明らかに民間企業より低いです。
どれだけ頑張って仕事をしても定められた規定の給料しかもらえません。
そのため、公務員として働く求職者の方は『頑張ったら頑張った分だけ』の見返りを期待できる民間企業へ転職したいと考えるようです。
公務員の転職市場の価値
転職市場では、求人に関係する経験を持っていたほうが内定確率は上がります。当然評価も高いです。
現在、転職市場にある求人は、ほとんど全て公務員の経験を歓迎・優遇することはありません。
企業は公務員の経験を低く評価しているのではなく、公務員が民間企業を目指して転職活動することを想定していないだけのことです。
では、想定していないとしても、公務員の経験や経歴を持つ求職者がどのような評価を受けるのか気になりますよね。
このあたりについても具体的にご紹介できればと思います。
公務員は転職市場でも社会的な信用度が高い
国家公務員や教員となれば、転職市場での社会的な信用度は高いです。
公務員は誠実で真面目なタイプというイメージがあるため、選考においても良いイメージを持たれることが多いです。
どの企業も求職者としてよりも人としてという部分を大事にしています。
そう考えると公務員の経験や経歴を持つ求職者の方は、社会的なイメージが良いので有利になります。
公務員のなかでも特に教員は適性検査に強い!
公務員の採用試験には一般常識という科目があり、企業の選考で行われる適性検査と同じ言語・非言語の問題があります。
公務員になって間もない求職者の方は、勉強で得た知識を企業の適性検査でも生かすことができると思います。
特に適性検査との相性が良い職種は教員です。
小学校の教員をされている場合は、日頃から言語・非言語について教えている立場にあるためかなり強いと言えます。
私がかつて在籍した企業の求人に応募してきた公立の小学校で働く女性求職者の適性検査の結果は100点でした(汗)
通常、適性検査は60点前後が平均点で80点を超えると『超優秀』や『勉強できる人なんだな』という評価を受けます。
100点という得点を想定して適性検査は作られていませんし、恐らくどの企業でも100点を取る求職者はほとんどいないと思います。
『さすが、教員』という感じですよね。
教員をされている方は適性検査に自信を持った方が良いですし、転職エージェントでも適性検査の指南を受ける必要はないと思います。
年齢が若い方が評価は高い!
20代後半から30代前半は転職市場では最高の売り時となっています。
新卒入社3年以内に離職している、いわゆる第2新卒と言われる求職者はイメージが悪いことがありますが、公務員の経験がある求職者の方にこのイメージはありません。
やはり、根元に社会的な信用度が高いイメージがあるからだと思います。
実際に、第2新卒の応募資格はなしとしている企業でも、求職者に公務員の経験があったため応募を認めたという実例もあります。
採用されるかどうかは別問題
現職や前職で公務員の経験がある方の書類選考や適性検査はかなり優遇され、通過率は通常よりも高いと思います。
もちろん、社会的な信用度が高いという理由もありますが、一方で求人を公開する企業の『珍しいから会ってみようかな』という気持ちもあります。
どの理由であっても求職者の方としてはもうけものだと思いますが、その先の面接は実力です。
面接は人間性が良いだけでは選考を通過することができません。
残念なことを言いますが、公務員の方のこれまでの働き方は民間企業で通じるものではないため、経験不足として選考見送りになる可能性が高いと思います。
特に、ベンチャー企業と公務員の求職者は相性が良いとは言えません。
ベンチャー企業は、同じ職種、同じ年齢としても大手企業で経験することの何倍も負荷の高い仕事をしています。
これまでルーティンの業務を行っていた公務員は、そういったベンチャー企業の採用基準を満たしていることはほとんどありません。
大手企業の求人はチャンスがある!
大手企業の場合は、安定・仕事の量や裁量権という意味で公務員の働き方と若干似ているところがあります。
特に若い求職者の方は、経験の量がそれまでに大手企業で経験できるものと変わりませんので、チャンスは十分にあると思います。
私は転職エージェントとして公務員の経験がある求職者を大手企業へ紹介したところ、内定を勝ち取り転職している人が何人かいます。
逆にベンチャー企業への転職実績は1名だけで、そのほかの方は公務員として働きながら転職活動を続けているか、大手企業へ転職しているかのどちからです。
公務員の転職状況
先述の通り、公務員は書類選考や適性検査の通過率は高いのですが、面接となるとどうしても不利な状況になってしまいます。
公務員の経験がある求職者の方は、今の自分の職種と相性の良い業界や企業を研究し、転職エージェントを利用されている場合はキャリアアドバイザーなどからアドバイスを受けてみた方が良いと思います。
例えば、公務員と言ってもいくつか職種がありますが、そのなかで教育業界と人事の教育部門の相性は良いです。
一般的には、公務員の求職者の方は経験という意味で他の普通の求職者よりも見劣りしてしまいます。
ただ、英語や資格は浅い経験を補う好材料になりますので、公務員の方全員が面接で苦戦をするということになりません。
転職エージェントとしてのアドバイス
民間企業から公務員への転職を目指す求職者の方は、面接と筆記試験を受ける必要があるので、現職を退職してアルバイトをしながら採用試験に備えるというのは大いにありだと思います。
公務員の採用試験のメインは筆記試験になりますし、現職を持ちながら不規則な生活のなかで勉強をする時間を確保するのは難しいかと思います。
一方、公務員から民間企業へ転職を希望する求職者の方は、先ほどから述べている通り短期間での内定は難しいです。
そのため、現職を辞めて転職活動に専念するのはリスクにしかなりません。
時間的な余裕がないとしても公務員として働きながら転職活動をする方が良いと思います。
経験の差が内定確度に影響する!!!
私は多くの求職者の転職支援を行ってきましたが、転職市場においてはやはり『求職者の経験』が中心になることは間違いないと思います。
公務員として働いている求職者の方も、将来的に経験を生かせる企業への転職を目指してみる方が良いと思います。
年齢が若ければ、次の転職活動では民間企業の経験を生かすことができますし、将来を見据えて転職活動をしてみてはいかがかなと思います。
また、現職や前職で公務員の経験がある求職者の方は、安定を捨てて社会的な信用度が高い立場を捨てて自己成長や実力主義の世界で頑張ろうとする姿勢は素晴らしいと思います。
私が同じ立場ならば絶対にできないことです。
その姿勢に見合う転職後の働き方できなければ、意味がありませんので、転職活動がうまくいかないとしても、ブラック企業やそれに近い企業へ転職しないでほしいなと思います。
最後になりますが、求職者のみなさんの転職活動が有意義なものであることを祈り、今回の話を終わりにしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。