無期雇用派遣とは何か

最近、「働き方改革」という言葉をよく聞くようになり、今は、正社員、契約社員、パート、派遣社員、在宅職員、業務委託契約を締結している方、などさまざまな働き方があり、人それぞれのスタイルや価値観で仕事をするようになってきました。

「登録型派遣」と「常用型派遣」

その中にある「派遣」でお仕事をする方もたくさんいらっしゃるでしょうが、以前は「登録型派遣」で働く方が割合的に多かったのですが、最近では「常用型派遣」で働く方も増えてきました。

とはいえ派遣の制度に2種類あること自体知らない方も多いのではないでしょうか。

登録型派遣は、派遣会社に登録し、仕事がある時に有期の雇用契約を締結し、その期間派遣社員で働く制度です。

常用型派遣は、派遣会社の社員として無期の雇用契約を結び、依頼があった派遣先で仕事をする制度です。

派遣先と派遣元の契約が終了すると、次の派遣先で仕事をすることになります。

今回はこの常用型派遣いわゆる無期雇用派遣(以下無期雇用派遣とします)について説明します。

無期雇用派遣で働くメリット、デメリット

無期雇用派遣と聞いても、普通の派遣社員との違いが分からない方が大半ではないでしょうか?

この章では無期雇用派遣で働くメリット、デメリットをまとめていきます。
 
まず、メリットの中でも一番大きいのは雇用期間を気にせず働けるという点です。

一般的に認識されている派遣社員というのは雇用期間・派遣期間が決まっているケースがほとんどですが、無期雇用派遣は派遣会社と期間の定めがない雇用契約を締結して働きますので、派遣期間が終了するから次はどうしようという不安はなくなります。

登録型派遣でよく聞く、派遣先の業績が低迷し派遣切りで急に仕事が無くなる、といったことも基本的にはなくなります。

では、デメリットはというと、就業場所、働く企業が1社ではないという点です。
 
雇用契約を結んだ派遣会社が、A社の仕事を1年間受注してきて、そこに1年間派遣された後、会社がB社の仕事を受注してきたら、次はB社で仕事をする、という働き方になります。

新しい環境に飛び込んでいくのが苦にならない方は良いでしょうが、得意でない方には難しい部分になるのではないでしょうか。
 

採用基準、待遇面は?

次に登録型派遣と無期雇用派遣での採用条件や基準、待遇面での差についてまとめていきます。

まずは採用条件の違いですが、登録型派遣と違い、派遣会社は求職者を無期雇用で採用する訳ですから、採用基準は通常の社員採用に近い形になります。

とはいえ、現在派遣会社も求職者を確保するのが経営課題になっており、実務経験が少ない方でも意欲があれば、採用となるケースも十分考えられます。

また無期雇用派遣を提供している派遣会社は、採用後のキャリアアップ研修制度も充実していますので、就業に対する意欲や自分が目指したい方向性、これまでの経験を活かして今後こういった仕事がしたい、など明確な意欲があれば採用の可能性も高くなるでしょう。

ただし、大幅なキャリアチェンジ、例えば事務職の経験しかないのにITエンジニアを目指す、といった未経験者ではすぐに戦力になりにくい職種へ転職を希望する場合は、この制度での就業を希望するのは難しいでしょう。

派遣会社も派遣先へ行っていただかないと売り上げにならない訳ですから、その場合は採用になるのは難しいかもしれません。

派遣会社が募集している職種や研修制度など、その会社の特色をしっかり確認した後で、応募するようにしましょう。

次に採用後の待遇面ですが、ここは各社でさまざまな契約内容になると考えられます。

ここでは、雇用条件、雇用契約書をしっかり確認する事が重要となります。

無期雇用派遣を前提とした契約ですので、基本的に雇用期間を気にすることはありませんが、以下の点は特に気をつけて確認をしましょう。特にトラブルになりやすい項目です。

①派遣期間中の給与と、自社待機中の給与に違いがあるか
②昇給制度、賞与はあるか
③雇用期間中に他の派遣会社での就業やアルバイト、副業をしてもいいか
④福利厚生(各種保険や、退職金制度など)

特に①に関しては、必ずどこかの派遣先にいるという保証は派遣会社もできないはずなので、後でトラブルにならないように契約をする際に必ず確認した方がいいでしょう。

②~④に関しては各社さまさまですのでしっかり確認をした方が良い内容です。

正社員との違いは?

前章では、無期雇用派遣での採用基準や採用後の待遇面などをまとめてきましたが、ここでは無期雇用派遣での仕事を前提とした社員採用と、正社員採用との違いについてまとめます。

まず前提として正社員とは仕事の内容や業務範囲などに差があるケースがほとんどです。

正社員は会社の要請などにより職種が変わることもあれば、全国規模の会社だと転勤がある可能性もあります。

無期雇用派遣で採用された方は、派遣先が変わることはあれど、携わる業務は同じような内容、例えば事務職であれば事務のみ、になるでしょう。

中には派遣先での功績などが認められ、正社員に引き上げられるケースもありますが、おおよそのイメージとしてはその業務に特化したスペシャリストという印象です。

待遇面に関しては、前章と重なるところもありますが、労働契約に関係してくる法律が絡んでいる内容、社会保険や雇用保険等、また有給制度などといった福利厚生面は正社員と変わりはないでしょう。

このご時世、採用する派遣会社もこういった内容はきちんと対応しておかないと、すぐに口コミで悪評が広がってしまいます。

では、給与面はどうでしょうか。給与に関しては、やはり正社員の方が多少優遇はされているケースが多いでしょう。

特に賞与に関しては、無期雇用派遣社員で採用したからといって、必ず賞与を支払わなければいけないといったこともありませんので、ここでまず差がついてしまいます。

支給されたとしても、先述したように正社員の方が業務に対する責任範囲などが多い面、額に差は出てしまいます。

地域限定型正社員、契約社員との違いは?

では、いざ無期雇用派遣を希望して就職活動を始めると、地域限定型正社員、常用型派遣、無期雇用派遣など派遣会社それぞれ色々な言葉が出てきます。言葉はそれぞれ違いますが、
 ・就業場所は派遣先での就業
 ・全国への転勤はなし(希望の就業地域で派遣先が変わっていく)
 ・雇用期間は無期雇用(安定して働けます)
上記の内容は会社が変わってもあまり差はないでしょう。

「正社員」は前章でもまとめたように、転勤もあれば職種の配置転換もあり色々な責任が伴う分、待遇も優遇されています。

地域限定正社員、無期雇用派遣、どちらも「正社員」ではありません。

地域やある程度の職種が「限定」された働き方になるので、登録型派遣よりも雇用が安定され待遇面もしっかりと保証されていますが、正社員より採用条件では劣ります。

では、どのような方にこの働き方が向いているかというと、

 ・新しい職場に入っていくのが苦にならない方

 ・専門的スキルを活かしたい方

 ・研修などのスキルアップを通して異業種への転職にチャレンジしようとする方 例)販売職 → 事務職など

こういった方々ではないでしょうか。

この働き方の前提として、同じ会社で働き続けることは可能性としては非常に低いので、1社で安定的に働きたい希望がある方にはまず難しいかもしれません。

辞めるには?

これまで無期雇用派遣で働くには、という内容をまとめてきましたが、逆に無期雇用派遣で働かれていて、転職をお考えの方もいらっしゃるでしょう。

いざ退職すると考えた場合、登録型派遣で働く時と違って、雇用期間などが決まっていないので、退職のタイミングは所属している派遣会社と慎重に協議する必要があります。

また、雇用期間だけではなく、無期雇用派遣で派遣されると、登録型派遣で聞くような派遣の受け入れ期間、いわゆる抵触日というのは当てはまらなくなりますので、派遣先・派遣元との折り合いがつけば、長く1社で働く可能性もあり、また派遣元はそうした状況であれば、ご自身に長く派遣でお勤めいただきたいと考えていると想定されますので、所属している派遣会社と退職するとすればどのタイミングが適切なのか、よくコミュニケーションを取って協議を進めてください。

その際、もし退職を考えている理由が、派遣先とうまく馴染(なじ)めない、といった理由であれば違う派遣先を紹介してもらえるケースも十分考えられますので、まずは派遣会社に相談してみましょう。

これまで、無期雇用派遣が雇用期間はなく安定して働ける、辞める時は自分から相談しましょうと説明してきましたが、もちろん派遣先に故意に損害を与えるケースなど起こした場合など解雇といった懲罰も考えられます。

最初に雇用契約を締結し、派遣される際にしっかり就業規則や会社のルールを確認しておきましょう。

補足になりますが、無期雇用派遣で働いていた経歴を履歴書にまとめる場合、所属していた派遣会社名、派遣先、採用形態は無期雇用派遣で採用された旨はしっかり明記しましょう。

ただ派遣社員として、○○株式会社(派遣先)に派遣、と記載してしまってはもったいありません。無期雇用派遣で採用されるまでのプロセスは評価される訳ですから、忘れずに記載をお願いします。

まとめ

今回は無期雇用派遣についてまとめてきましたが、この働き方は確実に増えてくるものと考えられます。

今後、派遣会社間の求職者の囲い込みはさらに激化し、求職者も採用条件が良いほうに流れていくので、求職者視点からは「雇用が安定していて待遇もしっかりしている」という利点があり、
、派遣会社からは「長期で売り上げのめどが立ち求職者の確保もできる」という利点がある、この無期雇用派遣が派遣の主流になっていく可能性も十分に考えられます。

説明したことと重なりますが、「無期雇用派遣」は「正社員」ではありません。

「キャリア」の考え方は人それぞれですが、より責任がありその会社のコアな部分で活躍したい、という自身のキャリア感をお持ちの方は、派遣先での直接採用を前提としたステップアップができる「紹介予定派遣」という制度もあります。

 

どうしても、制度を説明する単語が難しく聞こえがちですが、その制度をしっかり理解していけばさまざまなチャンスがあります。

今回ご紹介してきた内容はいずれも派遣会社が提供している働き方です。各社それぞれ特色がありますので、まずはご自身にあった派遣会社を探してみることから始めましょう。

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