【現役エージェントが語る】大企業とベンチャー企業の違いとは
求職者のみなさんの会社は大企業ですか?
それともベンチャー企業ですか?
会社で得られる経験というのはその規模によって異なるため、その規模が転職活動に影響することがあります。
求人企業は、求職者が「どのような会社」で経験を積んできたのかを見るのです。
私は現在、転職エージェントとして求職者の転職支援をしている立場です。
かつては、企業の人事として採用の仕事にも携わり、何度か転職活動をした経験もあります。
この三つの経験をもとに、今回は「ベンチャー企業から大企業への転職」と「大企業からベンチャー企業への転職」というテーマで記事を書いていきます。
今回の記事の目次
就活生は賢い!
かつての日本は終身雇用制度がきちんと成り立ち、新卒で入社した会社には忠誠心を近い、定年までその会社で勤め上げるということがほとんどでした。
しかし、今の時代はこの終身雇用制度が崩壊して、転職が文化の一つになっています。
私は転職エージェントという立場上、学生の就活支援を行うこともあるのですが、今の就活生は本当に賢いと感じますね。
「新卒で入った会社は数年で退職して、転職した会社で本領発揮」といったキャリアプランを持つ方が増えています。
転職を想定して就活をしている学生が多くいるのです。
この考えは間違いではないですし、その人生プランやキャリアビジョンが明確ならば私は賛成です。
賢い考えの理由
私が新卒で就職をした時代は転職が当たり前ではなく、少しずつ転職が文化になりつつある時代でした。
転職エージェントである私は、30代以降の求職者と20代の求職者で、会社やキャリアプランの考え方に随分と違いがあるのを実感しています。
新卒の就活生は、入社する会社に対して愛社精神がほとんどありません。
かなりドライな考えを持っていることが多いのです。
今の就活生が上記のような「賢い考え」をもつ理由としては、両親や先輩からキャリアに対するアドバイスを多く受けていることが考えられます。
両親は恐らく終身雇用制度が全盛の時代に社会人となった世代で、メリットやデメリットをすでに経験しているのでしょう。
また、先輩となれば就活生と年齢が近く、同世代になります。
就活経験や入社後の経験を通じて、今のビジネス文化を後輩にレクチャーしているようです。
就活生は、自分が信頼を置ける身近な人にアドバイスを受けると、多少なりとも影響はあるかと思います。
賢い考えを持つ就活生の特徴
転職を前提として就活した人は、性格や考え方が非常にハングリーである場合が多いです。
仕事においてのハングリー精神は主に
- 出世したい
- 給料を上げたい
の二つです。
ビジネスマンであれば誰しも大なり小なり思ったことはあると思います。
人は皆このハングリー精神を持っていて、今回紹介している就活生はそれが非常に強いのです。
しかし、いくら理想が高くても一般的な企業だと新卒ではそれが程遠いものになってしまいます。
そのため、ハングリー精神を強く持つ就活生はベンチャー企業に入社していきます。
みんなと一斉にスタートをきる大企業ではまずいのです。
ベンチャー企業と大企業の特徴
ベンチャー企業と大企業には文化の違いがあります。
この文化こそが、ハングリー精神を強く持つ人の狙いとなります。
ベンチャー企業は小規模で経営を行っているため、個々の従業員に与えられる仕事量は膨大で、新卒時代から責任ある仕事に就くこともできます。
一方、大企業の場合は、大きな資本を元に組織が大きく、従業員数も多いです。
新卒で入社しても入社3年以内は、教育を受けて仕事を覚える期間となり仕事量はそれほど多くはありません。
責任ある仕事よりも上司や先輩の仕事を手伝うという文化です。
この二つのうち、ハングリー精神を持ち転職を視野に入れている就活生がどちらを選ぶかは明らかですよね。
ベンチャー企業に入って、早い時期からビジネスマンとしての経験値を積もうと考えるのです。
経験こそが市場価値
若いうちから膨大な実践と失敗を積むことは、ビジネスマンとしてプラスに捉えることができます。
この経験が濃いか薄いかにより転職市場での求職者の価値が変わってくるのです。
転職市場に限らず、経験があればより高いレベルの仕事に就くこともできるでしょうし、より高い役職や報酬を得ることもできます。
転職先の企業での役職や報酬は、前職を考慮して決まります。
現職や前職でいかに高い役職や報酬を得ていたのかが、ポイントになるのです。
新卒入社する会社にベンチャー企業の選択をする就活生は、こういった条件に関しても家族や先輩からアドバイスを受けているようです。
転職市場は、経験を企業が買う市場ですので、ベンチャー企業で濃い経験をしていることは最高の武器になると思います。
また、相対的な理由で選考基準が上がったとしても十分勝ち抜くことができると思います。
転職市場の求人動向
ベンチャー企業は中途採用で即戦力の人材を確保する傾向が強いです。
今の転職市場は、8割~9割がベンチャー企業の求人とされています。
大企業は中途採用よりも新卒採用から人材を確保するケースが多く、転職の求人が少ない状況です。
離職があったとしても、人員的なリソースは十分にあります。
毎年人材を確保できるため、あまり中途採用を行う必要がないのです。
ベンチャー企業は中途採用に積極的
企業の文化を作る上で新卒採用を中心に行っているベンチャー企業もありますが、即戦力は非常に魅力を感じる存在です。
ベンチャー企業の多くは人材確保の方法として中途採用に積極的なのです。
新卒採用も積極的で中途採用も積極的であれば小資本で経営するベンチャー企業としては余剰人員となります。
それについて、経営リスクも高いのでは?と考える方もいると思います。
しかし、ベンチャー企業は、仕事量と成果に厳しい成果主義により離職率が大企業よりも高く、離職率が高いため新卒採用や中途採用を積極的に行っても余剰人員になりません。
したがって、従業員数としては純増ということにはならず経営計画通りの人件費となる訳です。
ハングリー精神が強い人がベンチャー企業に求めること
ハングリー精神が強い人がベンチャー企業に求めることとしては、安定的な労働環境ではなくブラック企業やそれに近い労働環境を逆に希望しています。
違法な労働環境でない厳しい労働環境をハードワークと言いますが、ハードワークこそがその後のキャリアを支える礎になると考えているのです。
- 長時間労働もありがたい
- 厳しい成果主義の環境もありがたい
- 理不尽な労働条件もありがたい
と前向きに捉えていることが多いです。
このような労働環境である一方、ベンチャー企業では成果に応じてそれに比例する以上の役職や報酬を年齢の若いうちから得ること可能です。
極端な話、新卒1年目であっても十分な成果を出すことで、大企業で経験10年の人と同じような報酬を得ることもできます。
このような完全実力主義、そして労働環境として不退転の状況は、転職を視野に入れている人からするとありがたいとしか思えないようです。
私も転職エージェントとしてこのハングリー精神が強い求職者の転職支援に携わってきましたが、驚くぐらいみなさんが同じようなことを言います。
「最初から今、働いているベンチャー企業は3年と決めていましたし、3年は何が何でも我慢して、早い年齢から濃い経験値を積みながら、転職した先の入社条件を高めるために、今の会社で少しでも給料や役職を上げておく必要があった」
どこからで口裏合わせをしたのかな?というぐらい同じ内容を言います。
若いうちに苦労することで、その後の人生が大きく変わるという言葉はよく聞きますが、体力があるうちに厳しい仕事や環境を経験して、そのなかで理不尽さも経験し、質の高い仕事も経験し、高い役職や給料を得て、転職活動では自分の立場を有利にして事を進めたいということだと思います。
ベンチャー企業に入るのであれば、ゆくゆく想定している転職活動を視野に入れることなどを考えなければ、かなり厳しい労働環境になると思います。
大企業が求職者に求めるもの
大企業の環境は先述の通り、大きな組織で、多くの従業員を雇用し、潤沢な資金と人員があります。
そのため、異動などではカバーできない欠員部分を補充する程度という見方もありますが、実際には大企業もボランティアで中途採用を行う訳ではなく、即戦力として経験を求めることが強くあります。
この即戦力とは、大企業のなかでも大企業では得られない可能性が多い経験を求職者に求めるのです。
大企業が欲しがる人材は、現職や前職が大企業ではなくベンチャー企業で働いてきた求職者です。
ベンチャー企業で働いてきた求職者はハードワークや成果主義の経験を持ち、大企業であれば中間地点でしか経験することができない裁量のある仕事を経験している方が多いです。
大企業の場合は、中途採用によりベンチャー企業を経験した求職者を雇用することで、組織全体に刺激を与えて組織活性を期待しています。
また、業務としても年齢が若くても仕事を教える必要がなく、教育工数を省くことができます。
まさにベンチャー企業での経験を持つ求職者は、即戦力として最高の人材となっています。
同世代のリーダー的存在に
大企業の若手人材は、大企業独特の労働環境により、良くも悪くも保守的であり、自主性に欠けるとされる場合が多いです。
大企業の長年の課題は若手人材の育成にあり、育成が成熟しないことで、企業としての力が衰えたり、向上しなかったりすることはよくあります。
しかし、自分の近くに自分とは違う、骨太の人材がいればどうでしょうか?
競争意識が芽生えて、教育よりも早いタイミングで保守的な部分を改善でき、または、のんびりした労働姿勢も改善することができる可能性が高いです。
大企業は、この若手人材のマインドセットを改善するために、ベンチャー企業で厳しい環境で仕事をしてきた人材を雇用する傾向があります。
ベンチャー企業が求職者に求めるもの
次にベンチャー企業が転職活動を行う求職者に求めるものですが、これは、大企業とは比べものにならないレベルの即戦力を期待しています。
ベンチャー企業は、いかに優秀な人材を多く雇用するかは大企業とは比較にならないほど死活問題に直結します。
また、経験のない優秀な人材を育てるという意味でも、その対象として優秀な中途人材を雇用したいと考えるベンチャー企業が多いです。
若いうちからのレベル・質の高い仕事経験は、中途採用を行う大企業やベンチャー企業からすると、非常に欲しいとする対象になります。
このような転職事情を就活時代に転職を視野にベンチャー企業に入社する人材は、織り込み済みです。
新卒時代から経験を多く積むことで、自分の求職者としての価値は上がり、高値で企業が買ってくれるのです。
私も就活生として就職活動をしていましたが、このような賢いことはまったく考えず活動していました。
当時の自分の比べると今の若手の方は視点が高く、中長期的な視野で就職活動をしているので、尊敬するぐらいです。
転職後の働き方
転職先に関係なく、ベンチャー企業での就業経験を持つ求職者の方は、転職後に優位な立場で働くことができると思います。
ベンチャー企業の経験を持っている求職者を採用して失敗だったという場合は少ないとされているようです。
やはり、何より経験値が違い、この経験値が転職後の働き方に大きくプラスの影響を持っているようです。
私も人事として採用活動に携わった経験からして、ベンチャー企業を経験している求職者は転職後の働き方という意味では動きが違います。
ベンチャー企業を経験している求職者の方は転職後に自ら動けるタイプが多く、周りの従業員もそれに引っ張られる形で良い影響をもたらしていると感じました。
私が転職エージェントとして取引する大企業の人事部長は、「大企業の経験を持っている求職者よりもベンチャー企業の経験を持っている求職者の方が使える」ということを言っていました。
また、現在のこの売り手市場という転職環境がベンチャー企業の経験を持つ求職者にはさらに有利になっています。
多くの企業が濃い経験を持つ即戦力を求めて中途採用を行っている状況です。
そういったベンチャー企業の経験を若い年齢からしてい求職者は最高の人材と考える企業が多いです。
大企業からベンチャー企業への転職
逆に大企業の経験を持つ求職者が、ベンチャー企業へ転職することについてご紹介します。
大企業の経験を持つ求職者がベンチャー企業へ転職することは可能ですが、経験が強く求められます。
ベンチャー企業は年齢の若い人材が多いため、年齢が40歳前後となると書類選考で見送りになる可能性が高いです。
40歳の大企業での経験を、ベンチャー企業の20代は既に経験していることが想定できるため、同じ土俵では年齢が若い人材の方を優先することになるのです。
転職できたとしても、大企業で長年勤務した経験を持つ求職者がベンチャー企業で働くということは、カルチャーショックの連続だと思います。
大企業では考えられないような、若い人材が高い役職を持って、部下のコントロールや部署のマネジメントを行っていることは普通にあります。
また、ベンチャー企業では短期間で同僚などが退職する状況を目の当たりにして、大企業の経験を持つ求職者は自信を失うということもあるそうです。
人の出入りについてはベンチャー企業では当たり前の世界ですので、こういった部分を気にする方はベンチャー企業は控えた方が良いと思います。
「ベンチャー企業から大企業への転職」と「大企業からベンチャー企業への転職」
事業という意味で、企業の優位性はベンチャー企業よりも大企業の方が有利です。
ただ、転職市場においては、大企業の経験を持っている求職者の方よりもベンチャー企業の経験を持っている方の方が有利で、若いだけその有利さは強くなります。
※もちろん、新卒入社3年以内は除きます。
私は転職エージェントとして日々、感じることは、「若いうちにかいた汗は将来的にダイヤモンドになる」ということです。
また、若いうちからより濃い経験を身に付けることで、ビジネスの世界では優位な状況になります。
求職者がマッチング確度を上げるためには、転職市場では企業のニーズに近づかなければなりません。
企業は新卒採用ではポテンシャル、中途採用では経験と明確な基準があります。
転職を成功に近づける方法は濃い経験を身に付けることです。
年齢に関係なく転職活動が順調に進んでいる方の共通要素
- 経験値が高い
- ほかの求職者にはない経験を持っている
経験こそが最大の武器
ベンチャー企業から大企業への転職と大企業からベンチャー企業への転職は、それぞれに違いがありますが、どちらの場合でも若いうちから厳しい環境でビジネスマンとして経験を磨くことが大事です。
ベンチャー企業の労働環境は厳しい面が多々あり、大企業の労働環境は安定的な面が多いです。
将来的に転職も視野に入れているのであれば、若い年齢のうちは、ベンチャー企業で働いた方が得策だと思います。
昔は、大企業は新卒採用でのみ人材を雇用すると言われた時代がありましたが、その傾向は今の時代に該当しません。
転職市場にある求人の割合をみればベンチャー企業の数の方が圧倒的に多いですが、大企業にも十分に転職することが可能な時代です。
その大企業もベンチャー企業での経験を持つ求職者は高く評価しています。
転職をビジネスプランに入れている場合は、若いうちは大手ではなくベンチャー企業の方が良いと思います。
最後になりますが、求職者のみなさんの転職活動が充実し、そして有意義なものであり、転職が人生の良いきっかけになることを祈り、今回のテーマである、「ベンチャー企業から大企業への転職」と「大企業からベンチャー企業への転職」はこれで終わりにしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうとございました!