不動産業界、事務職は意外にホワイト
一般的にはブラックなイメージがある不動産業界。
特に超高額商品であるマンションなどを扱う不動産売買は離職率が極めて高い超絶ブラック企業が多いです。
とはいえこれらのブラックなイメージは、実は「不動産業界」の「営業職」にのみ見られる傾向です。
不動産業界の事務職は、意外にも安定して働けるホワイト環境なのです。
- 筆者プロフィール
- 名前: 小玉崇
転職エージェント歴:10年
転職経験:3回
利用したエージェント:27社
現在の年齢:41歳
実績の詳細はこちら
営業と事務でガラリと変わる働き方
不動産業界は、新卒市場では人気の低い業界となっています。
求職者の誰しもが学生時代に就職活動を経験していることもあり、不動産業界の大まかな特徴(ブラック傾向強し)を理解している場合が多いのです。
そのため転職活動を行う上で、不動産業界へ積極的に転職しようと考える方は多いとは言えません。
しかし、求職者の中には、金銭的な好待遇を期待して一般的には人気が高いとは言えない不動産業界に転職しようとする求職者もいます。
不動産業界の企業はどの企業でも大きく2つに分けられます。営業職と営業職以外の職種です。営業職以外の職種も、細分化すると多くの職種がありますが、転職市場や実際に働く労働者としては、大きな差がありません。
ストレスフリーの事務職
まず、はじめに営業職以外の職種の働き方についてご紹介します。
先程、不動産業界へ転職を積極的に考える求職者は、金銭的な好待遇を期待してとお伝えしましたが、営業職以外の職種については、この要素はほぼないです。
私は現在、転職エージェントとして求職者の転職支援を行っていますが、不動産業界の事務系の職種に応募しようとする求職者は、金銭的な理由というよりも、他の業界や企業の同じ職種と全く同じ理由を持って不動産業界へ転職しようとしています。
全く同じ理由とは、求職者によって様々ですが、事務系の職種はどちらかと言えば安定的な労働環境であるために、安定的に長く就業できることを期待して不動産業界を希望します。
不動産業界は、扱う商材の金額が高く、そのため、1度の契約や取引で大きな金額を売上とする要素があります。
また、不動産業界の扱う商材は一戸建てやマンション、用地買収となりますが、いずれも利益率が高いことがあります。
そのため、不動産業界の企業は大体が、企業規模が大きく資金面でも潤沢であり、倒産リスクが少ないというメリットがあります。
このご時世、企業規模が大きければ資金力が強ければ絶対に倒産しないということは言えませんが、そうであっても、規模や資金力のある企業は倒産し難いということも言えますので、不動産業界の営業職以外の職種の求人へ応募し転職する求職者は、不動産業界の大きなメリット的特徴を期待しているのです。
その期待通り、不動産業界の営業職以外の職種の働き方はその他の業界や企業とほとんど変わりないぐらいの労働環境で安定的な働き方ができます。
労働時間や休日についても、この後、詳しくご紹介する営業職とは異なり、直接、顧客とコミュニケーションを取る仕事内容ではないために、長時間労働ということも少ないですし、休日についても一般的には多い土日や祝祭日ということになります。
どの企業の営業職にもありますが、ノルマというものが不動産業界の営業職以外の職種にはないために、『数字のストレス』というものとは縁のない職種です。
ちなみに、どの企業の営業職にもあるノルマについては、不動産業界の営業職は半端ではないぐらい厳しいものです。
また、女性に特化して言うならば、不動産業界は女性には向かない業界という声もありますが、これは営業職を表していることであり、営業職以外の職種は、不動産業界であっても女性も仕事内容という観点では働きやすいと言われています。
ただし不動産業界は、昔から営業職が花形で営業職上位の社風を持つ企業が多いため、また、どの不動産業界の企業も営業職は男性が多く、男性文化となっているため、女性であることで優遇されるということはほとんどないです。
軍隊や体育会系の文化が強いために、社内で怒鳴り声が頻繁にあるため、この環境が合わないとして女性は不動産業界を好まない求職者がいることも事実です。
負担も大きいがパワーも大きい営業職
続いて営業職の働き方です。
営業職は不動産業界ではどの企業でも中心的な存在で、花形と呼ばれています。
ここ数年で、どの企業でもインターネットの普及により、営業職よりもCRMと呼ばれるポジションを中心にマーケティング職が花形と呼ばれることが増えていますが、不動産業界では営業職が花形と呼ばれることは今も変わりません。
これには理由があり、不動産業界の企業が扱う商材は一戸建てやマンション、土地も含めて不動産ですので、不動産の契約を個人や法人に関係なく取り付けることは難しいです。
また、1つの契約がもたらす売上や利益が高いです。
つまり、一人の営業マンが、契約成立が難しい状況の中で、高額な契約を決めるとなれば、社内的にもフューチャーされるため、また、企業の業績や成長を営業マンが支えているということになるために、不動産業界では営業職が花形で組織の中心になります。
どの企業でも各部門のトップが集まり経営会議ということがありますが、この経営会議は、部門の立場により発言力が違い、それに付随して議題も決まることが多いです。
不動産業界では先述の通り、営業職の立場が社内で強いために他の部門の発言よりも優遇されることがあり、営業部門としては企業内では仕事がしやすい環境となっていることが多いです。
恐らく、求職者の皆さんの現職でも企業への貢献度により、発言力の強い部門やそうではない部門があると思うのでイメージしやすいのかなと思いますが、不動産業界では営業部門の立場が極めて高いため、その他の部門は我慢をするということが多いです。
営業職の働き方は、社内的に強い立場である一方、非常に厳しいものがあります。営業部門は当然、部長以下、それぞれの役職や立場の労働者がいますが、営業部門で考えると末端になればなるほど、厳しい働き方となることは必至です。
言い換えると、営業部門の部長クラスの労働者は、社内的にも強い部門に属し、その強い部門のトップにいるため、不動産業界の企業の中では最も良い立場とも言われることが多いです。
末端に近い営業職の労働者は、個人のノルマがあるため、このノルマを達成することが何より最優先となりますので、極論、生活の全てをノルマ達成に向けて時間を割くということが多くあります。
ただし、ノルマ達成は容易なものではないため、昼夜、休日関係なく馬車馬のように営業活動を行うことが良くあります。
会社全体がブラックというわけではない
ノルマ達成のためには、生活の全ての時間をそこに割く労働者もいるとご紹介しました。また、上司からの厳しい叱責も当たり前の環境ともお伝えしました。このどちらもそこだけ見れば、ブラック企業では?と思う方が多いと思います。
実際のところ、どうなのかと言いますと・・・その通り、ブラック企業です(汗)
良く不動産業界にはブラック企業やブラック企業に近い企業が多いと聞くと思いますが、これは厳密に言うと、不動産業界の企業そのものが組織としてブラック企業ということではなく、不動産業界の一部である営業部門がブラック企業の仕組みを持っているという意味です。
一部と言っても、不動産業界の企業は、その一部である営業部門の立場が強く、従業員数も他の部門よりも多いために、世間的な印象として不動産業界の企業そのものがブラック企業と思われがちです。
先程、お伝えしたように不動産業界は、営業職以外については労働環境としては女性も十分に安定感を持って働けますので、企業全体がブラック企業という誤解はしない方が良いと思います。
ブラック企業やそれに近い環境でありながら不動産業界の営業職は高い報酬を期待して転職しますが、この環境や働き方が長く続けることができるかどうかは、また別問題です。
不動産業界の営業職については、入れ替わりが早く求人も多いことで知られています。求人には2つのパターンがあり、一つは、業績拡大に伴う純増と、もう一つが退職者の穴を埋めるための欠員補充です。
不動産業界もこの2つがあります。営業職以外は純増の求人が多く、営業職については欠員補充です。不動産業界の営業職は退職者が多く、そのため、離職率が極めて高いことでも知られています。
企業によって厳密には違いますが、不動産業界の営業職だけを見れば、離職率は50%を超えるという場合もありますし、これはレアケースではないです。
高い報酬を得ることができると言っても生活の全てをそこに注力することは短期間であれば可能かもしれませんが、どれぐらいの人がその環境に長い期間、耐えることができるでしょうか。私ならば長期的には難しいです。
不動産業界の営業職は、1年、2年程度で退職することが多く見られますし、長期的にこの環境で働ける営業マンはかなり優秀であり、体力的にも精神的にもタフな方が多いです。
余談ですが、不動産業界の営業で成功する特徴は、学生時代に体育会系の部活動に所属していた方が多いです。学生時代の部活動は厳しい上下関係、そして、理不尽なしごきは当たり前ですので、不動産業界の営業部門と似ているために、親和性があると言われています。
不動産業界の求人については、不動産業界の企業の事情と、そこで働く労働者の働き方を把握することが重要ですので、求職者としては求人が公開される背景を理解する必要がありますので、今、ご紹介した内容を軽視することなく、自分が転職後に不動産業界で働くイメージを持ってみましょう。
不動産業界の転職市場
不動産業界の転職市場は、不動産業界の働き方に直結しています。転職市場においても営業職と営業職以外では意味が違います。
事務系職種の転職市場
不動産業界は、営業職を除き新卒文化であることが多いです。
特に大手の不動産企業については、あまり営業職以外の求人は多くはありません。
しかし、求職者としては、転職後の企業に安定を求める場合が多いため、少ない求人に対して応募数が多いということがあります。
特に企画系と事務系の求人は転職市場全体で考えても人気の高い求人となっています。
求職者からすると狭き門と言えるでしょう。私の転職エージェントにも不動産業界で、かつ、営業職以外の求人はありますが、営業職に比べるとその数は明らかに少ないです。
転職エージェントでは、ある業界に強い転職エージェント、ある職種に強い転職エージェントが最近、増えていますが、不動産業界に特化した転職エージェントは存在しませんので、求職者としてはどのように求人を拾うのか分からないということが多いと思います。
求職者の中で不動産業界の営業職以外の求人を希望する場合が、大手の転職エージェントへ必ず登録した方が良いです。
小規模の転職エージェントでは、そもそもとして、取り扱う求人数が少ないため、不動産業界の営業職以外の求人を持っているという可能性も低いです。
先程、大手の不動産企業は営業職以外の職種については転職市場に出回らないとお伝えしましたが、その中でも大手は大手と取引するということが転職市場には良くあるため、大手の不動産企業は大手の転職エージェントへ求人を依頼する傾向にあります。
事務系職種の選考基準
営業職以外の職種の選考基準については、応募数が多いために、企業としては採用活動をしている途中に意図的ではなく自然に選考基準が上がることが良くあります。
不動産業界の営業職以外の求人については、人気とお伝えしましたが、求職者の多くは最初から不動産業界を希望するのではなく、転職活動を進めていくうちに他の求人と対比する中で不動産業界の営業職以外の求人が良いと判断していることがあります。
不動産業界に営業職以外の求人は、求人公開時は、そこまで応募数を期待している訳はないため、選考基準も高く設定していませんが、採用活動を進めていくうちに応募数が一気に増えることがあるため、基準そのもので考えると高くはないのですが、応募者を選べる状態となり、相対的な比較として基準が上がるということになっています。
事実、不動産業界の営業職以外の求人の選考フローは、書類選考からスタートして面接も2回程度ですし、面接基準も私が知る不動産企業ではそこまで高い設定をしている企業はありません。
これは私が転職エージェントとして経験したことですが、不動産業界の営業職以外の求人を受けたときに、最初は選考基準が普通であり、選考フローも書類選考、面接1回としていたのですが、応募数が増えたことにより、より厳選したいということで、その求人に係る選考フローが変更となり、書類選考の後に適正検査が加わり、面接回数も1回か2回に増えたという企業もありました。
不動産業界を最初から決め打ちして志望する求職者は少ないのですが、不動産業界の企業が求人を公開する過程で応募数が増えて選考基準や選考フローが変わるということはありますので、ご注意ください。
求人の探し方
不動産業界の求人をどのように探すのか、営業職以外については、多く転職市場に出回ることがないため、大手の転職エージェントを活用しながら探す方が良いとご紹介したと思います。
それと同時に営業職以外の職種の求人は、転職サイトでも拾うということは難しいです。ただ、事務職については、転職サイトとの親和性があるため、転職サイトで拾うことはできるように思います。
不動産業界の事務職は、女性からすると人気の職種であり、企業からすると低い年収でも採用することができるため、転職エージェントを使うよりも転職サイトを活用した方が母集団形成しやすいのです。
一方、営業職はと言いますと、選考基準が高く、一定以上の素養を必要とする財閥系の不動産業界については、大量採用ではないために、転職エージェントでも拾うことができます。
しかし、それ以外の不動産企業の営業職については、年がら年中、退職者がいるためもあり、労働力を確保する必要があり通期採用を行っています。
私が思うベストの求人の探し方は、その企業の採用ページを直接確認してみることです。不動産業界の営業職は、世間的なイメージがあまり良くないために、それが転職市場の求職者にも紐づいているため、慢性的な人材不足になっています。
少しでも多くの人材を採用するために、転職サイトにも常に掲載して募集していますし、自社のホームページにも営業職については募集していることが多いです。
この記事を執筆している中で、ある大手の不動産業界のホームページを確認したところ、やはり、求人を募集していました。多くの不動産企業は営業職の人材を非常に必要としているために、大袈裟な話ではなく年がら年中、採用活動を行っています。
中には、最近はどの企業も正社員を採用する場合にはあまり利用しないとされるハローワークにも求人を出している不動産業界の企業もあります。
二極化している不動産業界
不動産業界は、転職市場でも転職後の働き方も二極化しています。安定を求める求職者、安定のある職種とハイリターンを求める求職者、ハイリターンの期待できる職種です。
全く同じ不動産業界や企業であってもこれだけ二極化する業界は珍しいです。転職後も働き方が全く違いますし、得られる報酬も大きく違います。
求職者にはそれぞれの特性や企業に求める内容や本人の価値観が違いますので、不動産業界は特にそうですが、比較検討して判断した方が良いと思います。
最近、不動産業界の営業として女性が活躍している場合も多くなっていますし、世間的な営業職のイメージも変わっています。現状としては、不動産業界の営業職は、常に常に採用していますし、それ以外の職種についてはなかなか出会えないことがありますので、このあたりをしっかり踏まえて転職活動をしてみてはいかがかと思います。
最後になりますが、求職者の皆さんの転職活動が充実して最高の転職となることを祈り、今回はこれで話を終わりにしようと思います。最後までお読み頂きありがとうとございました。