面接官が気になる「前職を辞めた理由を言いたがらない人」
- 執筆者の情報
- 名前:永井 成果(仮名)
性別:女性
現在の年齢:47歳
面接の経験人数:約500人
面接経験時の役職:-
企業・業種:-
大した理由もなく退職?
中途採用の面接質問では、前職の退職理由は必ず聞きたい質問です。また、真偽も含めしっかり確認したい点なので、志望してくる人は想定質問としてそれなりに退職理由を答えてくれますが、その時は違っていました。
とにかく言いたがらないのがわかりました。それまでニコニコしながら的確に面接に応じてくれていたのが、その質問になると表情が一瞬暗くなったかと思うと、口ごもってしまったのです。
「それでは、前職の退職理由を教えていただけますでしょうか?
これがその時の質問です。なんのひねりもなく、ストレートに尋ねました。
『う〜ん、大した理由もないのですが、そうですね、入社して6年経過しマンネリもあったのでしょうか、やりがいのある仕事についてみたかったのと、キャリアアップもしたかったので転職を決心しました。』
「大した理由もなくて転職するというにはちょっとリスクがありすぎませんか?前職ではお給料もそこそこもらわれていたのでしょ?転職をしたら給料は減ることはあっても増えることはないと思うのですが、それでもいいのですか?」
『いえ、お給料はそこそこいただきたいのですが、やっぱり、まずはやりがいがあることでしょうかね~。あ、いえ、大した理由もないという意味は、決定的な退職理由があったわけではないという意味で言ったのですが、正直言ってマンネリという言葉が一番当てはまっているかもしれません。すみません、わかりにくい言い方で・・・。』
核心の質問“仕事のやりがい”は?
確かにわかりにくい言い方でした。彼女のこの返事でわかったのは「お給料はそこそこいただきたい」という部分だけで、肝心の退職理由は依然と不明なままでした。
我々が前職の退職理由をある程度は確認しておきたいのは、仮に当社に入社しても、またしばらくして同じ理由で辞められたら困るからです。
一種の「転職癖」というのでしょうか、数回転職を繰り返す人はだいたい同じ理由で辞める傾向にあります。
今回の場合も、もし本人の言う「マンネリ」が正解なら、当社に入社後、数年してマンネリに陥る可能性を持っていることになります。前職は給料が低いので辞めた、と言われた方がわかりやすいのです。
最初から聡明な感じで、なんでもハキハキと答えてくれて印象も良かったので、この「前職の退職理由」さえ納得できる答えをくれたら合格を上げてもいいぐらいに思っていたのがなんともはぐらかされているようでした。
ちょっとがっかりしつつも面接時間もまだあり、もう少しツッこんで聞くことにしました。
「では、あなたにとってやりがいのある仕事とはどんな仕事なのですか?」
職場の一体感?
『う~ん、職場との一体感みたいなもので、目標をみんなで成し遂げて喜び合える風土があるのがやりがいにつながると思います。もう1点は、やったことへの適正な評価があることです。すべて成績に反映しなくても、男女関係なく褒めてあげるだけでもやる気につながると思います。』
「なるほど。それじゃ、前職では職場の一体感を感じることもなかったし、褒める文化もなかったわけですか?」
『そうですね〜、私自身より周りのみんながそんな感じでした。毎日があまり楽しくないというか、そんな中で信頼していた先輩も先にやめていかれたりして私もいつまでもいる会社ではないと思っていました。』
まだまだ何か言いたげだったが、どうも人間関係の深いしがらみがあるような口ぶりでした。
あまり深い話を聞いてもラチがあかないと判断して、この話は早々に切り上げることにしましたが、また新たな退職理由が出てきたように思いました。
「大した理由はない」「マンネリ感」「やりがいのある仕事」「キャリアアップ」「職場の一体感不足」「楽しくない職場ムード」「男女平等の評価」・・・。
退職理由はシンプルに言い切る!
同席の面接官に、少し辟易感が漂っているのがわかりました。世間の転職マニュアルでは、転職理由を聞かれたら前向きに応えるよう、たとえばキャリアアップ、スキルアップなどを理由するように書かれています。
その意味では今回の彼女も当初、チラッとそんな言葉をほのめかしました。
しかし、それが第一の理由なら断言して、もっと具体的に述べるべきだし、中途半端な他の理由は言うべきではありません。質問の切り口が変わる度に退職理由も変わりました。
そもそも彼女に決定的な理由がなく、一事が万事で“みんなイヤになった”とさえ取れます。また、迷って言われれば言われるほど、実際には他の理由があったに違いないと、疑いさえ持ってしまいました。
あまり言いたくない理由、たとえばセクハラ?パワハラ?職場恋愛?はたまた単なる彼女の愚痴?まさかこちらから聞くわけにもいかず、不明なまま彼女は結局不採用となりました。理由はやはり転職理由のあやふやさです。
質問のたびに理由がころころ変わり、結局不信感が残った感じでした。
転職理由を尋ねた時、「大した理由はないのですが・・・」と切り出した時からなんかヘンだなという印象がありました。
ヘンだな、と思えば突っ込んで聞いてみたくなるのが面接官の習性です。
応募者の立場に立って言うと、面接官に変な疑念を持たせないために、前職退職理由はどんな複雑な事情があるにせよ、できるだけシンプルに言い切ることが大原則です。
この記事の筆者
永井 成果(仮名)
企業で何人も転職者の面接をしてきました。
その後、私自身が転職し、今度は反対にその経験から転職者を支援する仕事もしました。
企業の面接経験では、こんな人は絶対受からない、逆にこういう人は非常に好感を持たれ面接をパスできる人だというのがよくわかり、一方、支援する仕事ではそれを転職者にアドバイスしてきました。
この両経験から、転職者の役に立つ体験談とヒントを紹介したいと思います。