マイナンバー制度が与える求職者の転職活動
最近、政府が新しい世の中の仕組みとして導入したものがマイナンバー制度です。
このマイナンバー制度に対して、あまり良くない理由で神経質になっている求職者の方もいるようです。
このあと具体的に紹介させていただきますが、このマイナンバー制度により自分の学歴や職歴の偽装が発覚するのではないかと、心配しているのです。
何はともあれ、一番にお伝えしたいことは求職者の方が自分の学歴や職歴を偽ってはいけないということです。
これは、マイナンバー制度が導入されようとされまいと絶対にしてはいけないことです。
この学歴や職歴を偽る行為は、『私文書偽造』という立派な犯罪にあたりますし、発覚した場合は問答無用でその企業の選考は見送りになり、転職エージェントや転職サイトの利用は禁止になります。
転職後にそれが分かった場合は、懲戒解雇の明確な事案になってしまいます。
今回の記事の目次
今回のテーマは?
今回はマイナンバー制度と転職活動の関係性を中心に、マイナンバー制度により企業は求職者の個人情報どこまで知り得るのか、ご紹介したいと思います。
現在、私は転職エージェントとして活動していて、行政などにマイナンバー制度について問い合わせして一定の知識は保有していると自負しているので、私が把握する範囲でご紹介ができればと思います。
基礎知識として、そもそもマイナンバー制度とは?
マイナンバー制度は、欧米諸国では既に導入している国もあるようです。
日本でもこのマイナンバー制度は前々から導入が検討されていましたが、諸問題の解決に時間を要してようやく導入されたという背景があります。
今までは複数の公的機関が別々に国民の個人情報を管理していたので、年金などの抜けが発生する大きな原因となっていました。
これを解決して、公的機関の業務で国民が迷惑を被るようなミスがないように対処するものです。
マイナンバー制度は、どちらかと言えば行政などの公的機関のために導入されたと言われていますが、国民も手続き関係で利便性が上がると言われています。
国は『公平かつ公正な社会を実現する社会基盤作り』のために、マイナンバー制度には大きく三つのメリットがあるとしています。
公平・公正な社会の実現
まず、行政が提供する給料や生活保護の受給状況を管理しやすくなり、生活保護などの給付を不正に受けることを防止する目的があります。
国は国民の誰かしらが不正行為をしている可能性があるということを疑っていることが前提でしょうし、個人的には国が国民を信用しない日本の世の中はどうかなと思います。
転職活動そのものと関係はありませんが、給料という観点では少なからず影響はあると思います。
行政の効率化
二つ目は、行政などの公的機関で煩雑な業務の時間や労力が大幅に削減されます。
さらには、業務遂行に関して部署間での連携がスムーズに進むようになります。
国民の利便性の向上
三つは、国民が行う手続き関係において、書類の削減などに効果があります。
これも業績などの公的機関側のメリットになりますが、多くの書類を簡素化するという国民の負担も軽減されます。
そして、行政などの公的機関が把握している国民自身の情報を確認したり、さまざまな制度や情報の知らせを受け取ったりできるようになります。
国側のこれまでの煩雑な管理や運用により、一時期ニュースによく取り上げられた『消えた年金』などの国民が被害者になることがなくなるとして、最終的には国民にもメリットはあるよねということだと思います。
マイナンバー制度は、転職活動自体には特別なメリットやデメリットはありません。
マイナンバー制度によりひもづけられる個人情報
国民の個人情報は、マイナンバーによりどの範囲までひもづけられるのかご紹介したいと思います。
マイナンバー制度で共通管理される個人情報
- 12桁のマイナンバー
- 氏名
- 住所
- 性別
- 生年月日
現状ではこの範囲までになりますが、今後は他の情報を付加されていく予定となっています。
それでは、国が公表しているマイナンバーに今後付加されていく予定の情報をご紹介します。
マイナンバーと雇用保険の情報
現職に在籍している求職者の方としては、確定申告の情報が平成28年に付加されます。
また、社会保険の一つである雇用保険の情報も平成28年にマイナンバーに付加されます。
雇用保険はハローワーク(公共職業安定所)が管理する社会保険です。
企業と労働者(求職者)は、全員が必ず加入する義務を負います。
転職活動を行う求職者の方は、転職エージェントや転職サイト、そして選考を受ける企業に履歴書や職務経歴書により個人情報を提供すると思います。
この雇用保険の加入実績は求職者の方が自己申告した職歴とひもづきますし、イコールでなければおかしな話になる訳です。
もし、雇用保険の加入履歴と求職者のみなさんの職歴にズレや相違があれば、求職者の方の自己申告が誤りということになります。
個人情報保護法の観点で、ハローワークが企業やその他の求職者自身以外の情報を同意なく第三者に提供することは違法になります。
しかし、マイナンバーの導入により平成28年度以降は、企業は従業員の管理の一体化を図るため、マイナンバーの個人番号を取得する企業もあるようです。
このマイナンバーである個人番号を企業に提供するだけでは、これまでの雇用保険上の職歴が知られることはありません。
にもかかわらず、インターネットなどでマイナンバー制度により個人情報のどの範囲までを企業や転職活動の関係者が知り得るのかを懸念している方は、この点を心配しているのです。
副業とマイナンバー制度
転職活動では関係ないですが、転職活動の結果、内定を受けて転職したとしましょう。
その企業は就業規則などで副業を禁止しているとして、転職した求職者は土日などを利用して他の仕事をしていたとします。
この場合、マイナンバーの個人情報のうち給料や所得についてもひもづけられる予定ですので、そうなると転職先である企業にマイナンバーにより副業が発覚するかどうかを懸念している求職者もいます。
しかし、マイナンバー制度の概要でご紹介したように、企業がマイナンバー制度により従業員の副業を知れるということはありません。
あくまで、所得や給料については、納税関係で行政が把握するためのものです。
健康保険、国民保険(厚生年金保険)とマイナンバー制度
平成29年(2017年)には、健康保険や国民保険(厚生年金保険)もマイナンバーの個人情報に付加されます。
雇用保険と同じように健康保険、国民保険(厚生年金保険)は、企業に在籍している間は雇用契約を結び在籍している労働者(求職者)は加入義務を負います。
また、雇用保険と同じようにマイナンバー制度により健康保険、国民保険(厚生年金保険)の加入履歴(職歴)は企業に知られることはありません。
ただ、労働者(求職者)の同意を得た場合は、企業は日本年金機構へ問い合わせして確認することはできます。
ただ、社会保険の加入履歴を行政に問い合わせすることは、ほとんどないと思います。
私の周りではそういったことを実際に行った例は聞いたことがありません。
求職者の方を採用する企業も、誓約書の取り交わしはあるものの求職者の方の自己申告内容を信頼しているという前提の上で採用しています。
マイナンバー制度と個人情報に対して神経質な求職者
国は転職活動を行う求職者の偽りを発覚するためにマイナンバーを導入した訳ではないですが、学歴や職歴に偽りがある求職者の方は自分に対して後ろめたいことがあるため、かなり神経質になっているようです。
マイナンバー制度に対して、個人情報の観点から神経質になっているタイプの方もいます。
余談ですが、私は個人情報に対して楽観的だとは言いませんが、神経質になっているほどではありません。
国はマイナンバー制度の導入までにかなりの準備期間を経て現在の導入に至っています。
徹底的に危機管理を行っているため、導入後の運用や管理において、個人情報の漏えいについては万全の管理をしているとのことです。
また、マイナンバーは行政などの公的機関だけが運用・管理することになり情報の閲覧者はかなり限定されますので、安心しても大丈夫だと思います。
社会保険や年末調整で行政とのやり取りの簡素化を目的に従業員からマイナンバーを授受する企業もあるようですが、企業がマイナンバーを受けるのは事務処理の簡素化のために過ぎず、余計な情報が漏れるということはありません。
マイナンバーにより偽り内容が発覚することは今後もないでしょう
いろいろな意味で話題になっているマイナンバー制度により個人情報が自分の同意なく、自分の知らない範囲で発覚するということはないです。
個人情報保護法が改定され本人の同意がなくてもマイナンバー制度で第三者が本人の情報を無断で入手することができるということもないと思います。
求職者のみなさんは、学歴や職歴について偽ることをしなければ何ら不安や懸念を持つことはないと思います。
マイナンバー制度を気にする、経歴を偽っている求職者の特徴
マイナンバー制度に過敏に反応する求職者は、何かしら本当の内容で転職活動をしてしまうと不利になる状況なのだと思います。
転職市場は、求職者の方のこれまでの経験が企業に評価されて合否が決まります。
また、企業としては年齢が若いうちに転職する第2新卒と呼ばれる求職者をあまり評価していません。
年齢に関係なく転職回数が多い求職者は採用してもすぐ辞めてしまうのでは?という不安がマイナス評価になります。
転職エージェントとして私がこれまで見てきた中で、転職の最高回数は21回です。
その求職者の方の登録を拒否することなく転職支援をしていましたが、結局長年転職することができずに音信不通になってしまいました。
このように転職回数が多い場合は企業から評価を受けないということを知っているため、転職回数を少なくしたり在籍期間を実際よりも長くしたり細工しているようです。
残念ながら、それまでの経歴は誰でもない求職者の方自身が作り上げたものです。
求職者である前に1人の社会人としてその経歴に責任を持ち、真剣に転職活動をした方が良いと思います。
マイナンバーが与える求職者の転職活動
今回のマイナンバー制度を主役にしたお話は、転職活動とは関係のないことと感じる求職者の方が圧倒的に多いと思います。
転職エージェントである私としては、自分には全く関係ないという方が全員であることが一番うれしいことです。
求職者である前に1人の人として、そして1人の社会人として信用を失うようなことがあってはいけませんし、誠実に自分と向き合っていなければなりません。
最後になりますが、求職者のみなさんの転職活動が有意義なものとなることを祈り、今回の話をこれで終わりにしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!