求人票の裏には年齢、性別制限あり?【現役エージェントが語る】
今回は、みなさんの転職活動の出来を左右する求人票を中心にお届けしたいと思います。
今人気の転職方法である転職エージェントを利用する場合は、転職エージェントごとに求人票のフォーマットが違いますし、ある程度見慣れておくことも大事です。
同じ求人でも転職エージェントによって作成内容が異なる場合もあり、求人内容に気になる点があれば、最も信頼が置ける転職エージェントに事情を説明して、どの求人内容が正しいのか確認することで解決できると思います。
まずは、企業が求人票に込める考えや目的についてご紹介したいと思います。
今回の記事の目次
企業が求人票に込める考え
企業は求人を通して、採用に対する思いや、そのポジションがどのような重要性を持つのかを伝えています。
その典型が求人票の採用キャッチコピーです。
求人票をよくご覧いただければ『将来の幹部候補』とか『部長候補』などの謳い文句があると思います。
この内容は本当の場合もありますし、話を盛っている場合もありますが、盛っている場合でも期待は間違いなく込められています。
求職者のみなさんは、求人票を確認する際にこのキャッチコピーの部分も軽視せずに把握した方が良いと思います。
求職者は法律知識を持とう!
いきなり法律という硬い話になってしまいますが、なるべく分かりやすくご紹介したいと思います。
求職者のみなさんが手にする求人には、かなり法律に関係することが記載されていることはご存じでしょうか?
この法律とは労働関係や社会保険関係に関する法律になります。
求人と関係性が深い代表的な法律は以下の様なものです。
求人と関係性が深い代表的な法律
- 労働基準法
- 雇用保険
- 労災保険
- 健康保険
- 国民年金保険(厚生年金保険を含む)
転職活動に特化した法律というものは特別ありませんが、転職先では労働者としてこれからの法律が大きく関わってきます。
転職活動中は常に求人の内容を見ながら、『自分はこの求人に転職した場合、このような働き方になるのだろう』というイメージをしておくことが大切です。
私も転職エージェントとして求職者の方に転職活動に関していろいろとアドバイスさせていただいていますが、求職者の方のなかには求人票をあくまで企業の紹介票としか考えていない方もいます。
労働条件などは自分が興味があることしか見ずに転職活動してしまっているため、転職そのものがフランクな形で終わってしまうことがあります。
転職は人生に関係する大切なことですし、そのきっかけになるものが求人票になりますので、求人票への理解や意味を重く捉えた方が良いと思います。
労働条件と労働基準法
求人票に記載されている労働条件が労働基準法に違反していないかどうかを比較検討するためには、ある程度の知識が必要です。
労働基準法は、労働・社会保険関係のなかで基本となる法律です。
最低でも知っておいてほしい条件
- 労働時間
- 休憩
- 休日
- 賃金
- 職位
- 勤務場所
転職エージェントを利用していても、キャリアアドバイザーの質や経験はそれぞれに違いますので、すべてのことを頼り切りにするのはあまり良い傾向とは言えません。
自分の身は自分で守る意味でも、労働基準法の基本的な範囲については知識を積んでいただきたいと思います。
転職サイトを利用される場合は自分ひとりで転職活動をすることになり、求人内容もすべて1人で把握しておかなければなりません。
最近は転職サイトのサービスに法令の知識という箇所がありますが、そういったページもうまく活用して求人票の理解を深めていただければと思います。
労災保険と労災保険法
労災保険とは、求職者のみなさんが転職後に業務上や通勤上でケガや病気などになった際、給付金が支給される保険です。
国は企業に加入を義務付けていて、労災保険の保険料もすべて企業が支払うことになっています。
一方、求職者のみなさんは転職後、労災保険について保険料の支払い義務はなくても加入できることになります。
企業のなかには労災保険の加入の有無について記載していないことがありますので、ぜひ確認事項の一つとしてください。
雇用保険と雇用保険法
雇用保険は、特に労働者の退職後に失業保険に役立つ法律です。
資格取得で学校に通った場合、その授業料の一部を負担してくれる制度もありますし、職業訓練そのものが雇用保険法マターのものだったりします。
このように求職者のみなさんを助けてくれる雇用保険に加入していない企業も中にはありますので、その場合は応募することは控えましょう。
法律について知識がないときは『そうなんだ』ぐらいでスルーしてしまう部分も、法律の知識があることで正確な判断をすることができます。
健康保険と健康保険法
健康保険は雇用保険と同じく身近な保険で、内容は労災保険法との対比で覚えると良いと思います。
労災保険法は転職した後に業務上のケガや病気になったときに給付金が支給されますが、健康保険は転職後に私傷病で病院に通ったりした場合に医療費の7割が負担されるというものになります。
ちなみに、妊娠や出産に係る給付金はこの健康保険からのものになり、企業が加入していないとすれば当たり前のように支給されるべき給付金は一切支給されません。
今どき健康保険に加入していない企業はないだろうと思う方もいらっしゃると思いますが、実際には転職後、健康保険はご自身で加入してほしいという企業もあります。
年金と国民年金保険法(厚生年金保険法を含む)
年金は将来みなさんが老後になった場合に必要な生活費になりますので、支払うことになります。
この年金は企業と労働者に必ず加入義務と保険料の支払い義務があります。
最近、今の労働者世代が支払っている保険料に等しい年金は受給できないのではないかという声が多いですが、納税は国民の義務になりますし、年金保険料の支払いは企業の義務になります。
必ず支払うことが必要ですし、求人に国民年金保険法の記載がない場合は応募を控えた方が良いかもしれません。
求人票の裏の顔
求職者のみなさんが手にする求人票は、法律に触れない範囲で表の体裁を整えていることが多いです。
そのため、どんな求職者の方でも必ず応募できるぐらいの求人もあります。
しかし、実際に誰でも応募できるということはなく、裏ではかなり絞り込みをかけている場合があります。
採用については、法律により年齢や性別を基準に採用判断してはいけないなどの規定があるため、女性が欲しいポジションでも男性も応募することができるようになっていることもあります。
特に年齢においては裏の顔はものすごいことになっています。
転職エージェントには打ち合わせなどの口頭で制限を伝えているため、年齢を追うごとに紹介される求人数が徐々に減っていきます。
書類選考と求人の裏の顔
企業は法律違反の発覚リスクを回避するために、求人には記載することなく口頭でのやり取りをしています。
しかし、企業の選考そのものに制限があるのであれば面接を受けても必ず見送りになるのですから、わざわざ裏でこんな面倒なやりとりをしなくても良いのではと個人的には思ってしまいます。
法律の改正を行い、求人に表裏を作らせない正々堂々とした環境になれば良いと思います。
転職エージェントとしては、求職者の方に求人を紹介して応募手続きしても結果は絶対に見送りになりますから紹介はしませんが、法律により無駄なことが増えているように思います。
求人票の転職後の業務内容
求人票には転職後に想定する業務内容の紹介もありますが、これはあまりあてにならないと思った方が良いです。
例えば転職後に人事の教育という分野を想定しているとあっても、転職後は採用に配属されることもありますし、数か月後に業務変更することもあります。
求人に記載されている転職後の業務はあくまで想定の範囲になりますので、転職後に必ずその業務に従事できる保証はないです。
人事だけではなく他の職種も同じで、想定業務を100%信用するというよりもその業務の分野の職種を優先して考えた方が良いと思います。
私も転職エージェントとして、同じ職種でも転職後に違う分野に業務異動した求職者の方を何人も知っています。
そもそも、企業はいつどのような状況になるのか分かりませんし、変化に柔軟であることも必要なスキルだと思います。
余談ですが、専門業務にこだわる求職者は敬遠される・・・
最近、面接で増えている企業からの質問が
『他の職種や業務への興味はありますか?』
というものです。
この質問の企業側の思惑は職種変更です。
中途採用した求職者の方が異動を拒否したりすると、組織改編に影響することがあり、その悪影響を防止するためにこのような質問をします。
そこで、転職エージェントである私の経験上、求職者の方は
『しばらくは今回の求人に記載している職種や業務に携わりたい希望はありますが、その後は組織の都合に合わせることは可能です。』
というような言い方をすることがベストだと思います。
面接内でその質問に対して頭ごなしに拒否する姿勢を見せてしまうと、『組織になじめなそうな人材』とか『組織改編の妨げになりそうな人材』というネガティブな評価でそのまま不合格になってしまうことがあります。
私は以前企業の人事として採用に関わっていましたが、専門性を追求したい気持ちが強い求職者の方は組織になじめないことが多く、見送りにすることが私もよくありました。
転職後は何があるか分からない!
異動や業務変更に対して頭ごなしに拒否する姿勢を見せてしますと自分自身にメリットがありません。
今、希望している職種や業務内容以外で自分に合った仕事があるかもしれませんし、先々のことを今から否定しては可能性が狭くなってしまいます。
柔軟な思考と柔軟な姿勢を持つことが大切なのではないかと思います。
それと、先ほどの質問には将来企業の中心人物として期待しているという背景もあり、一つの職種や業務内容だけでは幹部候補として力不足になってしまいます。
異動や業務変更を通して幅広い経験をもとに経営判断できる人材になってほしいということは、求職者にとって最高の話です。
この意味でも最初から異動や業務変更に否定的にならずに、前向きに捉えることも必要ではないかと思います。
面接で求人票と違う職種変更を転職段階で求められることもある
求職者のみなさんは、面接で求人票に記載がある職種と全く違う職種で選考を続けないかという打診を受けたことはありませんか?
私は求職者として転職活動をしていた時代にこのような打診を受けたことがあり、断っています。
この場合は、転職後しばらくして異動や業務変更になるのとは訳が違います。
その職種では完全に見送りのところを、違う空きポジションなら考えますという意味です。
つまり、ポジティブな打診ではなく微妙な評価結果である証拠です。
転職エージェントとしての経験上、この打診を受け入れて転職しても良い方向にはなりません。
短期間で職種や業務内容がコロコロと変わり、それぞれの職種や業務内容で経験を積むこともできず実績もなかなか出ません。
面接段階で職種変更をされた場合は選考をきっぱり諦めて、強気に次の企業の選考で頑張った方が良いと思います。
求人票は企業の少しの情報にすぎない
求職者のみなさんが転職エージェントなどから紹介を受ける求人票は、情報としてはほんの一部です。
ですので、求人票に記載する内容をホームページなどに派生させて、情報に深みを持たせることが必要だと思います。
また、法律の知識を持つことで、求人票にある内容が適切なものか比較検討することができます。
求人票には本音の部分を記載できないこともありますので、その部分は面接での質問力に生かしてほしいと思います。
基本情報は求人票から抑えることができますので、最低でも企業の社長の名前や事業内容、企業理念は抑えてほしいと思います。
最後になりますが、求職者のみなさんの転職活動が有意義なものになるよう祈りつつ今回の話を終わりにしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。