大手企業の関連子会社への転職は?
みなさん、こんにちは。
今回のテーマは、『大手企業の関連子会社への転職は?』と題して、求職者が大手企業の関連子会社などに転職することについて、いくつかの視点からアドバイスできればと思います。
今回の記事の目次
大手企業の関連子会社とは?
まずは、大手企業の関連子会社とは、どのような企業のことを言うのか、このあたりから今回の話を進めていきたいと思います。
大手企業の関連子会社とは、大手企業が関連会社や子会社の株式を保有して、ホールディングスとして大手企業を中心に関連子会社も含めて全体的なシナジーを生む一つの会社を言います。
大手企業の企業名が関連子会社に一部入っている場合は、分かりやすいと思いますが、大手企業の社名とはまったく関係ない社名が関連子会社についていることがあります.
関連子会社かどうかは、関連子会社の株主を見れば大体分かると思います。
大手企業はなぜ関連子会社を持つのか?
求職者のみなさんが、大手企業の関連子会社を転職先とする場合、大手企業がなぜ関連子会社を持つのか理解しなければ、転職後にちょっとイメージと違ったというような食い違いが生まれる場合もあります。
大手企業は、なぜ、わざわざ関連子会社を立ち上げるのかと言いますと、大きく二つの意味があると言われています。
商品やサービスを分けるため
大手企業が事業として展開する商品やサービスのほかに、新規事業を立ち上げたとしましょう。その新規事業の商品やサービスが、それまでの大手企業の商品やサービスとはまったく違う場合をイメージしてください。
例えば、もともとは自動車関連の事業で成長してきたなかで、新規事業で自動車とはまったく関係のない飲食関係の事業をその大手企業が立ち上げたとします。
そうすると、消費者としては、自動車関連の事業から飲食事業にドライブしたのかな?と感じてしまい、大手企業からすると都合が悪いのです。
そこで、消費者の認知として誤解を与えないようにするため、関連子会社を立ち上げて、新規事業である飲食関係の事業は、その関連子会社が行うという仕組みをとるのです。
決算のため
もう一つの理由は決算内容を赤字にしないようにする方法です。これは、正直なところ、逆のパターンになることがあり、これを理由にして関連子会社を作る大手企業はそこまで多くないと言われています。
どの企業の年度単位でその企業の収支を出しますが、これを年度決算と言います。
利益が多く出ていれば黒字決算となり、収支が赤字であれば赤字決算となります。
どの企業も売り上げがでていなくても販売管理費などのコストを抑えて黒字決算にしようと努力しますが、単体ではどうにも黒字にできない場合があります。
そうなると、上場企業の場合は株価に影響してその企業の資産が減るということにもなり経営のリスクとなります。
そこで、関連子会社と連結した形で決算すると本体となる大手企業が赤字でも関連子会社が本体の大手企業の赤字部分をカバーするぐらいの黒字決算であれば、連結としては黒字決算になります。
逆のパターンとは大手企業が大黒字でも関連子会社が大赤字であれば連結として赤字決算となることもあるということです。
求職者のみなさんはその関連子会社がホールディングスとしてどのような立ち位置にある企業なのか、しっかり把握してから応募するかどうか決めた方が良いと思います。
大手企業の転職難易度
求職者のなかには、転職先として大手企業への転職を希望する方も多くいると思いますが、転職市場における大手企業の転職は難易度が高いと言われています。
というのも、全体の求人数から考えると大手企業の求人は少ないからです。転職市場にある求人を企業規模で割合をご紹介すると、7対3ぐらいの比率でベンチャー企業の求人が多くなっています。
求職者の傾向としても、大手企業で安定的な基盤で安定したビジネスライフを送りたいと考える求職者の方が多いですので、有効求人倍率としても難易度が高いということになります。
特に女性の求職者は大手企業狙いの場合が多い
特に女性の求職者の場合は、安心、安定を希望することが多くベンチャー企業よりも大手企業を希望する傾向が強いです。この傾向の理由は、ワークライフバランスが関係しています。
女性の場合、労働者である前に女性として結婚、出産、育児、そして家事ということがあります。
大手企業の場合は、業界ごとに推進率は異なりますが、少なくともベンチャー企業よりも大手企業の方がワークライフバランス制度を導入している可能性が高いです。
この背景があり、女性の求職者は男性の求職者に比べても大手企業へ転職したいと考える数が多いです。
大手企業の関連子会社へ転職
現在の転職市場は求職者が有利の売り手市場で求人数としては、これまでにない数の求人が多くありますが、このような状況でも大手企業への転職は有効求人倍率が高いため、求職者からすると狭き門と言えると思います。
ただ、転職市場には、大手企業ではないものの、大手企業の資本が入っていたり、大手企業が株主になっていたりする関連子会社の求人もあります。
大手企業の転職がなかなか難しいと考えた求職者は、ホールディングスとしての立ち位置である関連子会社へ転職することで、実質的な大手企業と同じ内容の転職になると考えている方もいます。
この考え方は間違えていませんが、企業によっては間違えているとなる場合もありますので、決めつけることは控えた方が良いと思います。
大手企業の関連子会社が同じ社風や同じ規定の場合
この場合は、先述の通り大手企業の転職が難しいとして、関連子会社の求人企業へ転職することも問題ないことが多いと言えます。
大手企業であっても関連子会社であっても、必ずその企業の文化や社風があります。この社風や文化が同じであれば、働く場所が違うというだけでこれらの観点での内容という意味では同じ場合が多いです。
また、規定についても同様で、どの企業でも労働者を雇用する以上は就業規則や賃金規定などの規定があります。
これらの規定が同じであれば、文化や社風と同じように同じ基準で就業規則や賃金規定を整備しているため、関連子会社へ転職しても良いと思います。
大手企業の関連子会社が違う社風や違う規定の場合
問題は、本体である大手企業と関連子会社の社風や規定が異なる場合です。この場合は、大手企業の関連子会社と判断するのではなく、まったくの別会社と考えた方が良いです。
社風や文化、そして就業規則や賃金規定などの規定が違うとなれば、いくら資本関係や株式関係で関係性があったとしても、求職者としては働き方そのものが違ってきます。
この場合は、あくまで資本関係では関連子会社であるものの、雇用契約関係においてはまったく違う会社だと思った方が良いです。
大手企業の関連子会社ですから資本的な安定はあっても働き方がまったく違います。大手企業と仕事上で関わることはほぼないと思った方が良いです。
ちょっとテクニカルな考え方
もしかすると、大手企業の関連子会社へ転職を希望する求職者のなかに、今からご紹介する内容を視野に入れている方もいるのかな?と思いますが、このテクニカルな方法は絶対ではないですし、保証はないということをご理解した上で、聞いていただきたいですし、参考にしてほしいと思います。
大手企業と関連子会社の場合は、資本的な部分で切っても切り離せない関係性にあることがほとんどです。
※一部、例外もありますので、これについては、別枠でこの後、ご紹介します。
求職者のみなさんのなかで、大手企業で就職したあとに、異動ということで、関連子会社へ異動または出向になった経験がある方はいませんか?
転職活動における、ここでいうテクニカルな方法とは、まさにこれと同じことです。
つまり、転職市場としては難易度が高い大手企業は最初から考えず大手企業の関連子会社を狙い、ゆくゆくは成果を出して大手企業へ異動や出向を狙うという方法があります。
この方法は、転職活動そのものでは大手企業へ直接、転職することができない場合の裏ワザとなります。大手企業と関連子会社はホールディングスとして成り立っているため、相互に労働者の出入りが頻繁に起こります。
求職者の方は、この頻繁に起こる異動や出向を狙って、転職では、まずはハードルの低い関連子会社へ転職して、転職後に大手企業で働くことを試みるという手段もあります。
しかし、先ほど、申し上げたように、この方法は絶対ではなく、また、何の保証もありませんので、この点だけご注意ください。
なお、面接などで、面接官に、それとなく『転職後に本体の大手企業で働くことは想定されますか?』などと聞いて、どれぐらいの割合で、関連子会社から本体となる大手企業への移動や出向があるのか、把握してこの方法を使うというやり方もありだと思います。
ただ、関連子会社の選考途中に、転職後にこの方法を狙っているということは口が裂けても言ってはいけません。
まず、間違いなく選考見送りになってしまいます(汗)
関連子会社への転職が危険な場合
転職活動では関連子会社を狙い、転職後に大手企業を狙うという裏ワザが求職者にとってマイナスに働くことも、ごくわずかですが可能性としてはあります。
どのような状況かと言いますと、企業買収という言葉を聞いたことはありますか?大手企業は、連結決算で赤字が続き、もはやホールディングスとして意味がないと判断する関連子会社を、その関連子会社で働く従業員も含めて他の企業へ売却することもあります。
関連子会社が他の企業へ売却されると、そこで働く従業員は基本的に、一緒に違う企業で雇用契約を結ぶことになります。
もちろん、従業員には売却先との雇用契約を拒否する権利がありますが、大体の従業員は会社とともに売却先の企業と雇用契約を結び、その企業で働くことが多いです。
仮に、売却先の企業との雇用契約を拒否した場合、その従業員は本体となる大手企業へ異動や出向ということはほぼないと思った方が良いです。そうなるとしても、かなり確率としては低いです。
売却で売却先の企業との雇用契約は拒否し、本体の大手企業へ異動や出向することもできないとなれば、その従業員はその後、どうなると思いますか?
簡単に言うと無職です。もちろん、これは従業員たる労働者に落ち度があるわけではないので、雇用保険で待機期間を経ずともすぐに失業手当の受給ができます。
しかし、その失業手当も次の転職先が決まるまでではないので、生活において不安があると思います。
転職活動をしても、やむを得ない理由での退職とは言え、その理由が求人企業から好印象を受けるという要素にはなりません。
普通の求職者の方と同じ立ち位置で、何のアドバンテージや保証もない状況で転職活動をする必要があります。
本体となる大手企業と関連子会社の相関図
次に、本体となる大手企業と関連子会社の人材という観点での相関図をご紹介します。関連子会社の社長や役員クラスの人材は、大手企業からの出向人材である場合が多いです。
また、関連子会社で働く人材についても同様に、管理職などは在籍は大手企業ということが想定されます。
この場合、文化や社風、求職者などが同じであれば、違和感なく転職した求職者の方も働けると思いますが、一方では、私が聞いた話によると変な劣等感を求職者は覚えるようです。
本体である大手企業から出向で働いている人材については、責任の高い役職上位の立場で仕事をしております。
そのため、関連子会社に転職で入社した自分は特に何かある訳ではないと思ってしまい、自ら本体である大手企業の出向組みと距離を置いたり人間関係でつまずいたりすることもあると聞いています。
また、万が一、その関連子会社が業績悪化などにより売却、倒産となった場合、転職して入社した求職者は次の保証はありません。
一方、本体の大手企業から出向して働きている人材の場合、そのまま雇用契約上、籍のある本体に戻ることが約束されています。
大手企業の関連子会社の求人
大手企業の関連子会社の求人は、転職エージェントや転職サイトを中心に活動してる求職者の方であれば、その他の転職方法に比べると拾いやすいと思います。
特に転職エージェントを利用されている求職者の方は、実はどの転職エージェントを利用するかにより関連子会社の求人をキャリアアドバイザーから紹介されやすいか決まります。
どういうことかと言いますと、転職エージェントである私も属している人材業界は、大手企業の関連子会社が転職エージェントとして活動している場合もあります。
また、逆に大手である転職エージェントが別事業の関連子会社を持っている場合があります。
もし、大手企業の関連子会社へ転職することを希望する場合は、本体が転職エージェントであるか、または、関連子会社が転職エージェントである、転職エージェントを選んだ方が求人の紹介はあると思います。
ただ、転職エージェントのなかには資本関係で強いつながりがある本体または関連子会社への応募や転職を異常なぐらい強く勧める場合もありますので、この判断の見極めは間違えない方が良いと思います。
実際の話として、転職エージェントからのゴリ押しで関連子会社へ転職して、失敗した求職者がいますので。
補足ですが、転職エージェントを100%信頼することは、その転職エージェントがどのような考えで求職者であるみなさんの転職支援を事業としているのか理解した上で行いましょう。
転職エージェントも、利益を追求する民間企業ですし、また、転職エージェントのなかには自社の利益を優先に考え、利益を得る対象となる求人企業に強く肩入れするスタンスを取る転職エージェントもあります。
大手企業の関連子会社へ転職した成功者
大手企業への転職ができず、大手企業の関連子会社へ第2希望という位置づけで転職したある求職者の話です。
この求職者は、私の友人でもあるのですが、某転職エージェントを利用して飲食業界の大手企業の関連子会社へ転職しました。
その求職者である友人は関連子会社で実績を積み、その関連子会社で昇給や昇格を目指して一生懸命、努力して毎月、毎年、成果を出し続けていました。
ある日、この求職者である友人の個人業績や人間性が、本体である大手企業でも評判となり、その求職者である友人は、面談を経てそのまま大手企業へ転籍出向しています。
ちなみに、今お伝えした転籍とは、転籍出向を意味していて、在籍出向とはまるで意味が違います。
在籍出向とは、雇用契約上の籍は関連子会社にあること(関連子会社に出戻ることも想定される。)
転籍出向とは、雇用契約上の籍も含めて本体である大手企業へ出向すること。よほどの大失態がない限り出戻ることはない。
関連子会社から本体である大手企業へ転職!?
転職活動で大手企業の関連子会社へ転職して、そのまま普通に関連子会社で仕事をしていると、チャンスが舞い込んでくることがあります。
それはホールディングス内での自己推薦や自己応募で本体の大手企業へ『転職』するパターンです。
この自己推薦や自己応募の前提は、本体である大手企業で欠員が出たとして、中途採用を行う前に、ホールディングス内部で、人材を募集することになります。
このパターンは、正直なところ、関連子会社で働く人材からすると、かなりの人気で倍率も高いのですが、通常の転職活動をした上で大手企業へ転職する難易度に比べるとその難易度はかなり低くなります。
このパターンの選考フローではアドバンテージがあります。
この話をしてしまうと、求職者のみなさんのなかでこれを狙って大手企業の関連子会社に転職しようとする方も出てくると思いますが、この方法は自分でどうこうできる範囲の方法ではありません。
本体の欠員状況次第ということになり他人を当てにするしかありません。
そのため、この方法を狙って関連子会社へ転職しようとすることは、結構なリスクがありますので、気をつけていただきたいです。
女性の求職者と大手企業の関連子会社
先述でご紹介しましたが、女性の求職者は転職に対して安定を望みワークライフバランスを持った企業で働きたいということで大手企業への転職を考えている方が多いです。
大手企業の関連子会社であれば、大手企業と資本関係があり、社風や文化、規定などが大手企業と全く同じ場合もあり、その選考基準は本体の大手企業よりも低い場合が多いです。
女性の求職者で、大手企業の選考がうまく進まない方は、下手に妥協してベンチャー企業や中小企業へ転職するよりも大手企業の関連子会社へ転職した方がいいです。
というのも、大手企業でなくとも本体がワークライフバランスを整備しているのであれば、関連子会社も同様であるからです。
女性も含めて変な妥協は転職活動では御法度ですので、自分の希望する環境がある企業は視点を変えることで見つかることも往々にしてありますので、転職活動で妥協はやめましょう!
通信業界の大手企業は関連子会社が多い
日本の企業には多くの業界がありますが、多くの業界のなかでも通信業界(IT業界を含む)は、本体となる大手企業と連結関係を持つ関連子会社を多く持っていることが多いです。
そのため、転職エージェントや転職サイトでも通信業界(IT業界を含む)の関連子会社の求人は他の業界に比べると、その数は多いです。
求人数が多いということは、大手企業の関連子会社へ転職するチャンスが増えるということになりますが、IT業界含めた通信業界の関連子会社は、本体である大手企業と社風や文化、規定などが違うことが多いです。
本体である大手企業は法令順守がしっかり整備されたホワイト企業でも、関連子会社は全く真逆のブラック企業やそれに近い企業もあります。
資本関係も弱い場合の関連子会社もありますので、求職者のみなさんは通信業界やIT業界の関連子会社の求人を見たら、すぐに応募することや、内定が出てすぐに内定承諾するのではなく、キャリアアドバイザーなどのアドバイスや友人などに相談して判断した方が良いと思います。
自動車業界と化粧品業界も意外と多い!
自動車業界も本体となる大手企業の関連子会社で成り立っている場合があります。
自動車業界は、商品である自動車を企画、製造するメーカーと、メーカーが企画や製造した商品となる自動車を消費者に販売する販社があります。
CMなどで世界的に有名な自動車メーカーを見かけると思いますが、これがまさにメーカーです。
そして、求職者のみなさんの自宅や会社の近くに、自動車の販売店はありませんか?その販売店こそが販社です。
メーカーと販社の会社名が似ていることやメーカーの社名に『販売会社』という文言が加わった販売店を見たことはないでしょうか?
この場合、メーカーは大手企業となる本体で、販売会社は、本体である大手企業の関連子会社ということになります。
化粧品業界について
化粧品メーカーと化粧品を消費者に販売する販社が分かれている場合があります。これは業界の特徴でもありますが、化粧品メーカーは大手企業である本体となり、化粧品を実際に市場で販売する役割が関連子会社になります。
化粧品業界はメーカーと販社で分かれています。
化粧品メーカーと販社が同じ会社という勘違いしてしまい、メーカーを希望していたにも関わらず、転職したら販社だったということもありますので、ぜひご注意ください。
私の経験上・・・
私は、現在の転職エージェントとして活動する前、企業の人事として採用活動にも従事して多くの転職市場の情報を把握していますが、関連子会社への転職は、社風や文化が同じであれば、全く問題ない転職だと思います。
また、本体である大手企業と関連子会社が同じビルや同じオフィスという場合もありますが、この場合は、さらに関連子会社に転職しても問題ないと思います。
しかし、関連子会社と聞くと本体ではない子会社という若干、イメージが悪いため、今お伝えた条件であっても関連子会社への転職を敬遠する求職者もいます。
安定を一番に考えるのであれば、単体で事業を行い経営している中小企業やベンチャー企業へ転職するよりも、大手企業の関連子会社へ転職した方が経営基盤がしっかりしているので良いと思います。