福利厚生を転職基準にするのはありえない!
みなさんが転職活動をする上で、誰しも自分の希望条件があると思います。
求職者のみなさんに希望条件があるように企業にも採用する上で採用条件があります。
企業があるからこそ転職することができるので、企業の採用条件に合致する経験や能力、スキルがあれば転職決定の確度は上がります。
ただ、求職者のみなさんは希望条件に企業の採用条件を必ず加えなければいけないかと言うとそうではありません。
今回のテーマは?
今回は、福利厚生を中心に転職の希望条件を考える求職者の方や、福利厚生を中心に内定承諾を決める求職者について紹介していきます。
福利厚生は労働環境の中心ではない!
福利厚生は、確かに転職する企業が持つ労働環境になりますし、最近は福利厚生を充実させる企業も増えています。
しかし、求職者のみなさんは働くために転職するのですから、希望条件の中心に置くべき要素は
- 社風
- 企業理念
- 労働時間
- 休憩
- 休日
- 賃金
などの労働条件であり、福利厚生を希望条件に据えてはいけません。
福利厚生は企業の労働環境ですが、あくまでサブの労働環境であり、どの企業も福利厚生を中心に経営していません。
どの企業も利益を追求するために経営しているのであって、そこで働く人の労働環境を整備するために経営しているのではないのです。
転職エージェントである私から言わせると、福利厚生を一番に考える転職活動は意味がなく、転職活動そのものを検討し直した方が良いと思います。
それでは、そもそも福利厚生とは何かということから話をしていこうと思います。
福利厚生とは?
求職者のみなさんは、福利厚生とは具体的にどのようなものかご存じでしょうか?
まず、福利厚生とは、法定内福利厚生と法定外福利厚生に分かれます。
転職エージェントをしていると、たまに義務である社会保険の加入を福利厚生の一部と勘違いしている方がいて驚くことがあります。
このような認識を持っている求職者の方は、少し基礎知識が浅いと思います。
確かに社会保険は福利厚生とする場合がありますが、その場合でも法定内福利厚生ということでどの企業でも当たり前のようにある福利厚生です。
法定内福利厚生とは企業の管理会計上の言葉で、転職用語や労働用語ではありません。
それを求人に記載しているだけのことですので、求職者のみなさんは社会保険が任意の福利厚生と思わないようにしましょう。
法定外福利厚生とは?
法定外福利厚生とは、その名の通り法律で定まっていない福利厚生です。
つまり、企業が任意で行っているということになります。
企業からすると整備する必要性はないので、法定外福利厚生を整備していない企業もあります。
求人で法定外福利厚生として住宅手当や通勤手当を記載している企業もありますが、住宅手当や通勤手当は法律上は賃金に該当します。
なので、本来は法定外福利厚生に記載するべきではありませんが、企業のなかには法定外福利厚生としている場合もあります。
住宅手当は別にしても、通勤手当は今どき当たり前に支給される賃金なので、通勤手当が法定外福利厚生にあるだけで魅力を感じないようにしましょう。
住宅手当を福利厚生にする企業
勘違いしやすい法定外福利厚生として住宅手当があります。
住宅手当は、先ほどお伝えしたように賃金に該当します。
住宅手当が法定外福利厚生の福利厚生に入っている場合、それだけで喜んではいけません。
求職者のみなさんは、転職後に毎月の給料とは別に年に数回賞与の支給を受けると思います。
その場合、賞与の算出は基本給をベースに算出されるため、賞与の算出の対象外の住宅手当が支給されるという見せ方にしています。
企業からすると、住宅手当は採用訴求になるので、求職者のみなさんからの応募数が増え、しかも自社のコストも抑えることができます。
求職者のみなさんは、この企業の裏事情を知らずに、法定外福利厚生に住宅手当がある『良い会社』と考えて応募し、内定後は迷わず承諾する方もいます。
しかし、こういった裏事情を知ると、魅力的な法定外福利厚生とは言えないと思います。
住宅手当は年収を下げる要因になる法定外福利厚生です。
法定外福利厚生が転職後に与える影響
法定外福利厚生は企業の義務ではないため、企業それぞれに特徴があり、今の時代の労働市場は福利厚生ブームと言っても良いぐらい、それぞれの企業が工夫を凝らしています。
先ほどご紹介した住宅手当は、今ではそこまで法定外福利厚生として持っている企業は少なく、むしろ労働環境の整備として法定外福利厚生を整備する企業が多いです。
法定外福利厚生の運営にかかるコストは、企業の経営活動から得た売り上げから捻出します。
私もかつて転職活動をした経験があるのですが、私は法定外福利厚生が充実している企業はあえて避けていました。
なるべく法定外福利厚生が充実していない、できれば全く法定外福利厚生がない企業の方がうれしいと思っていました。
その理由は、今お伝えしたように法定外福利厚生にはコストがかかるからです。
私としては、『法定外福利厚生の福利厚生でコストをかけるならば、そのコストは、給料に反映させてほしい』と思っていました。
法定外福利厚生は労働条件ではなく、労働環境の一部に過ぎません。
そこに余分なコストを使うよりも、給料に反映してくれた方が良いと思っています。
法定外福利厚生がない企業
私は以前、企業に在籍して人事部長という立場で人事の仕事をしていた経験があります。
法定外福利厚生は人事が発案者となり、人事の責任者が承認し、人事の責任者が経営者と予算などを考えて運用するかどうかを決めます。
そのため、人事部長だった私は、法定外福利厚生に予算をかけるぐらいなら、その分を給料に回した方が従業員は喜ぶと考え、法定外福利厚生は一切整備しませんでした。
その分、経営者と話し合いの上、本来は法定外福利厚生に充てるはずのコストを従業員の賞与の予算に組み替えたりして、従業員が一番喜ぶ年収に反映させています。
このように、法定外福利厚生を全く整備しない一方で、平均年収が普通よりも高くなっている企業があるのです。
法定外福利厚生は社内の労働環境として、ないよりもあった方が何かと便利だとは思いますが、賃金に反映させることができるにも関わらず、あえて法定外福利厚生に予算を投資する理由はなんでしょうか。
法定外福利厚生の目的
企業視点で考えると、法定外福利厚生に良いイメージを持つことはなくなると思います。
法定外福利厚生の企業視点での役割は、社内的には従業員のモチベーションアップが狙いですが、採用という観点では求職者のみなさんに良いイメージを与えることです。
法定外福利厚生の予算を賃金に回したとしても、他の同種の求人と対比して目を見張るほどの大きな大差はないため気付くことはないと思います。
そのため、企業としては、インパクトが薄い賃金のベースアップよりも、パッと見て分かる法定外福利厚生を整備した方が、求職者の目を引くことができるのです。
求人内容をしっかり把握することは求職者のみなさんにとって大切なことですが、そもそも法定外福利厚生の意味やその裏側を知らなければ、理解しているとは言えません。
求人内容はあくまで結果であり『なぜ、その結果になったのか?』ということを知るのが大事です。
法定外福利厚生の背景
法定外福利厚生は確かに見栄えが良く、充実していればそれだけ魅力を感じると思います。
求職者のみなさんにもそれなりにメリットはあるとしても、本質的にもっと大きなメリットを受けるのは整備した企業自身です。
もちろん、企業も労働者のためを思って法定外福利厚生を整備しているのだとは思いますが、必ず見返りを期待します。
モチベーションを上げて仕事をしっかりやって業績に貢献してほしいということです。
法定外福利厚生の整備をして労働者のモチベーションが上がり、業績が一気に拡大したとすれば、そこに充てたコストは、その段階でペイしたということになり企業としては願ったりかなったりです。
私は、人事部長として経営者と近い立場で仕事をし、他の企業の経営者や人事部長と定期的に懇親会をする機会がありますが、法定外福利厚生については、どの企業も私がお話したような背景を持って整備しています。
単純に企業が温情で法定外福利厚生を整備している訳ではなく、法定外福利厚生を整備する分、『企業の業績に貢献してね』という期待や狙いがあることを把握しましょう。
法定外福利厚生で転職することは危険
転職エージェントとしての経験上、数ある希望条件要素のなかで法定外福利厚生を中心に、考えて転職活動をするのは非常にリスキーです。
なぜかと言いますと、これまでご紹介した背景や理由があることはもちろん、法定外福利厚生は、あくまで労働環境の一部であり、労働条件ではありません。
法定外福利厚生は先述の通り、企業が任意で、予算を投資して運用します。
そのため、企業の選考中に法定外福利厚生があったとしても、それがいつまで続くかは分かりません。
労働条件は求職者のみなさんが転職後に自分の業績により動いていきますが、労働環境はみなさんの思惑に関係なく変化します。
特に、企業は法定外福利厚生を頻繁に変更します。
労働環境のなかで変化しやすい法定外福利厚生を中心に転職を決めることが、どれほど求職者の方にとってリスキーで、無意味なものになる可能性があるかご理解いただけたと思います。
法定外福利厚生は、尚可条件に!
求職者のみなさんは法定外福利厚生については、ご自身の転職希望条件の尚可というレベルにとどめておいて、労働条件などを中心に考えて転職活動をされた方が良いと思います。
転職エージェントを利用している方は経験があるかもしれませんが、たまにキャリアアドバイザーが法定外福利厚生が魅力として応募を勧めることがあります。
その場合、まずその担当者を変えた方が良いです。
人生をかけた大事なターニングポイントである転職において、いつなくなるか分からない法定外福利厚生を魅力だとPRして応募を勧めるような転職エージェントやキャリアアドバイザーは失格だと思います。
そのようなキャリアアドバイザーから転職支援を受けても転職活動が失敗する恐れがありますので、情けは無用です。
すぐに担当を変えた方が良いと思います。
法定外福利厚生はあくまで「あれば尚可」です。
法定外福利厚生を中心に考えて転職活動をすることは求職者のプロでありません!
最後になりますが、求職者のみなさんの転職活動が有意義なものであることを祈り、これで話を終わりにしようと思います。