ブラック企業を見分け方【転職エージェントが語る】
日本の企業は、大きく優良企業とブラック企業の2つが存在します。
私も以前、ブラック企業の面接に行ったことがありますが、やはりどこか違う雰囲気を感じました。
今回はブラック企業の実態やその見極め方についてご紹介したいと思います。
転職エージェントもブラック企業との取引は行わないよう配慮していますが、正直なところ見極めができない場合もありますし、利益確保のためブラック企業と分かっていながら入社を勧めることも少なくありません。
自分の身は自分で守るということを念頭に置いて頂ければと思います。
- 筆者プロフィール
- 名前: 小玉崇
転職エージェント歴:10年
転職経験:3回
利用したエージェント:27社
現在の年齢:41歳
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今回の記事の目次
まずは、業界から
ブラック企業が属する業界には偏りがあります。
- 人材業界
- 飲食業界
- 通信業界
- 不動産業界
これらの業界は転職でも求人が多くあるため、わざわざ新卒で入社するまでもないと聞いている大学生もいるようです。
転職サイトの掲載企業にこの業界の企業は多くあります。
これらの業界を転職エージェントから求人を紹介された場合は注意が必要ですので、選考前から内定段階まで細かくリサーチすることをお勧めします。
職種はどうか?
企業全体がブラックでなくとも、企業内のある職種がブラックな体質を持っている場合があります。
ブラックな傾向が強い職種は営業系です。
他にもエンジニア系の職種もありますが、少し性質が異なりますので後で軽く触れたいと思います。
みなし労働制
非常にテクニカルなことをしている企業が多いため、情報を知っておかなければこの見極めは難しいです。
営業職は「みなし労働制」というものが適用されるケースが多いです。
営業は会社にいて仕事をすることは少なく、大半の時間は社外で顧客回りをすることになるはずです。
この場合、法律では『1日の法定労働時間を超えても、その企業の所定労働時間内とみなす』という規定があるのです。
ある企業の営業マンが社内で3時間、社外で7時間の労働時間をしても、みなし労働制を適用して全体で8時間とみなすことが許されます。
ブラック企業はこれを悪い意味で利用して、15時間とか20時間とかの労働時間にしても残業代を払わないようにしたり、過度の労働を強いる場合があります。
ノルマと歩合給
営業職にはノルマと歩合給の環境といったブラック要素もあります。
営業職は他職種と異なり、一定期間ごとに個人の業績によって営業歩合給が発生する企業が多いです。
ノルマを超えた場合には達成給、超えた業績に応じて業績歩合給が支給されます。
達成した場合は良いのでしょうが、達成できなかった場合は最悪です。
単純に給料が減ります。
これは違法行為ですが、ブラック企業には普通に見られるパターンです。
「業績粗悪」による給料カットは法律上違反行為ですが、ブラック企業はこれを「業務怠慢」と取る訳です。
しかも、ノルマは頑張っても明らかに達成できないレベルのものを設けられ、泣き寝入りする他ない場合が多いのです。
エンジニア系の職種も営業系の職種と同じく特殊な労働制を持つ企業があります。
ただ、こちらは特別なスキルを必要とする職種であるため、給料が高く、自分の裁量に応じて仕事を進めることができる環境にあるため、営業とは違う性格となっています。
企業規模はどうか?
企業規模では、ベンチャー企業がブラックであることがあります。
ベンチャー企業は従業員が少なく、1人に与えられる業務量が多いため、必然的に労働時間が長時間になる場合が多いのです。
そしてベンチャー企業は若い人材をほしがる傾向にあります。
年齢が高い人材より若い人材の方が、給料が安く済むからです。
また、成長意欲のある若い人材は「周りより高い給料がほしい」、「周りより早く出世したい」という願望がありますが、この心理を逆手に取るのです。
第2新卒に属する年齢の求職者は特に注意が必要です。
『当社は成長率が高く、若くても裁量ある仕事ができ、昇給昇格のスピードも早くやりがいある環境です』といった求人を出しているベンチャー企業は多いですが、
この文言を悪用して「結果が出るまで死ぬ気で働け」と言っているのです。
ブラック企業のまとめ
ブラック企業の見極めを行うために、まずはブラック企業とはどんな企業なのかを把握しておくことが重要です。
応募して内定が出ても良い転職とは言えないため、転職エージェントにどれだけ勧められても応募しないことをお勧めします。
人材・飲食・不動産・通信の業界であり、かつ営業系の職種で、さらにベンチャー企業であった場合はブラック企業である可能性が極めて高いため要注意です。
私は企業研究のために、数多くの企業の面接に訪問したことや内定をいただいたことがありますが、今お伝えした企業は、大半の確率でブラック企業と言える環境です。
ブラック企業かどうかの見極め
ブラック企業の定義を紹介しましたので、ここからはブラック企業の見極め方についていくつかご紹介していきます。
企業ホームページから読み取る
企業にはそれぞれ特徴のある文言や表現があり、ホームページは企業の玄関や顔と言われます。
採用ページにはもちろん、採用に関係するいろいろな情報が載っています。
企業の多くはホームページに良いことしか載せませんが、創業者(社長)のメッセージや経歴にヒントがあります。
社長のメッセージに、例えば『世界を変えよう!』とか大きなことを書いている場合は、多少疑いましょう。
その社長が比較的若い場合は特に。
そして、社長の経歴が最も重要です。
経歴こそ、そのビジネスのベースになっています。
社長がこれまでブラック企業での経験を積んできたのなら、その企業はブラック企業である可能性が高いです。
若いベンチャー企業の社長は、大きな富を得たい理由もあり創業しますから、コストには非常にシビアです。
利益を高めるために人件費は削りたいと思うことが多くあります。
会社の資本金もチェックしよう
次にホームページから読み取れる資本金の比率も重要です。
資本金比率が社長の独資だったとしたら、100%に近いレベルでブラック企業です。
私の知る経営者にも100%独資という人が何人かいますが全てがブラック企業ですし、皆さんこう言います。
『うちはブラック企業だけど気にしてない。行政に何か言われたら直せば良いだけでしょ。今の日本は甘い。』
『俺は結果が出ないなら死ぬ気で寝ずに働いてきた。給料払ってるのは俺なんだから、定時で帰るやつ・有休使うやつには給料払いたくないんだよね。正直辞めてほしい。』
これは誇張でもなく、本当の話です。
独資にするのは、経営を自分の思い通りにしたいからです。
そのような企業はどんなに業績が良くとも独資は変えず、上場もしようとしません。
他株式や他資本が入り自分の思い通りに経営できないことを嫌うのです。
ただ、こういう企業はだいたい業績悪化して独資では経営を続けられないのですが。
転職サイトをチェック
転職サイトと転職エージェントに同時に求人がある企業は、だいたい大量採用を狙っているため、営業系の職種です。
企業ページにある入社後のモデル年収が良すぎる場合は、間違いなくウソに近い情報です。
具体的には、入社2年目27歳、年収1000~2000万とかです。
転職サイトの意向により条件が上がっているということもあるのですが、ブラック企業は実在しない架空のモデルを掲載します。
また、企業の成長率を見てほしいです。
前年比200%アップとか、ちょっと成長率の桁が違い過ぎる事が数年連続で続いている場合は気を付けましょう。
企業は成長する必要がありますが、100%や200%の成長率が数年連続で続く場合は、利益率を上げるために人件費を何らかの方法で支払わない環境を取っている場合があります。
残業代などのキャッシュアウトを減らせば利益率が高まり、成長率も当然に高まるでしょう。
新卒サイトをチェック
どの企業も新卒採用を実施しますが、ブラック企業はやけに新卒採用に力を入れます。
これは、優秀な人材を低い給料で雇用できることや、入社した企業に染まれば、ブラック企業であれ、それが当たり前となり労働問題に発展しないことが多いためです。
新卒採用の募集サイトで見てほしい箇所は大きく二つあります。
採用人数
ベンチャーのブラック企業は、採用人数で違和感を覚えた方が良いです。
新卒は教育工数も多くかかることから、既存従業員8割に対して新卒2割というのが理想です。
この比率を大きく崩して新卒採用人数を多くしている場合は、従業員を労働力としか考えていないため、働くだけ働かせて病気になったら切り捨てるのです。
これは新卒だけに言えるのではなく、企業の社風としてそうなのです。
ですので、新卒採用人数を把握することでもブラック企業かどうかは判断できます。
選考が派手
新卒採用は企業にとってアピールの場となります。
企業のプロモーションを行うため選考や企業説明会を派手にする企業はブラック企業が多いです。
ベンチャー企業は新卒の母集団が大手に劣るため、より多くの学生を集める手法を使います。
社長が登壇する際に煙幕が出てきたり、説明会とは思えないパフォーマンスを取る企業は、全部ブラック企業です。
派手な選考プロセスという点については、具体的な例を挙げます。
- 無人島合宿選考
- 運動会選考
- 山登り選考
- ゲーム形式選考
ゲーム形式はともかく、他の選考は全て体力勝負です。
ブラック企業は体力がある人材を欲することが多いのです。
これらの選考は、やけに達成感があります。
この達成感が、入社志望度を高めてしまうのです。
それにより若者の早期退職者が急増して、第2新卒という言葉が生まれるまでになったのです。
新卒採用からも、企業の求める人物像や入社後の働きがイメージできるポイントはありますので、転職をする際にも確認していただきたいと思います。
未経験者歓迎、第2新卒歓迎
やけに「未経験者歓迎」「第2新卒歓迎」というキャッチコピーがある求人は、ブラック企業であることがあります。
これらの求人は営業系の職種に多いことが特徴です。
新規営業の場合は質よりも量であるため、ある意味スキルや経験がなくとも関係ないのです。
未経験者や第2新卒の方の「早く新しい会社に移りたい」という心理を逆手に取り、年齢が若いため給料は低く、飛び込み営業要員とされてしまいます。
こういった求人は慎重に進めましょう。
離職率の高い企業は要注意
転職エージェントから紹介された場合や転職サイトを利用する場合、企業情報の離職率は絶対に確認しましょう。
離職率とは『1年間で何人の正社員が退職したか』を表します。
この離職率を正確に把握しなければ、とんでもないことになります。
企業によってはあまりに離職率が高いために、計算単位を2年とか3年とか、それ以上にしている場合があります。
離職率が10%未満という会社も多くありますが、離職率を計算するための年度は何年単位かにより実情は全然違ってきます。
転職エージェントを利用する場合は、必ずキャリアアドバイザーに年度の単位を確認してください。
転職エージェントでもこの離職率を正確に理解している人は多くはありませんので、ぜひ正しい離職率を把握しておきましょう。
字面だけで離職率が低いと言っても、中身が違うことがあり、1年単位で離職率を計算すると、求人票に記載されている離職率とは大きく違うことがあります。
その他、キャリアアドバイザーが企業へ問い合わせても計算してないと言う企業もあるでしょう。
人件費の計算をする上で離職率は大きな項目になりますので、企業が離職率を把握していない訳がありません。
離職率を教えてくれない企業は、その段階で応募することは辞めましょう。
面接での見極め
書類選考が通過すると、数回の面接がありますね。
この面接内でもブラック企業かどうか見極める方法がありますので、ご紹介します。
社長面接以外の面接
人事の責任者が面接官であった場合はラッキーです。
人事は組織を組む際に大きな役割を持つため、社長は自分と同じ考え方や性格を持った人材を人事に置きたがります。
そうしなければ、自分の思い通りの人事的な経営戦略が打てないからです。
面接内で退職理由として労働時間を挙げたときに嫌な表情をされたら、労働時間が長いブラック企業の場合があります。
ブラック企業の人事としては、残業代を求める人材は必要ない人材になります。
その求職者を入社させてしまうと労働問題に発展し、行政からの指導が入る場合があるためです。
社長面接の場合
社長面接では一番ブラック企業の判断をしやすいです。
ブラック企業の社長はまず人の話を聞きません。
面接内で自分の会社の特徴や考えや理想をやたらと語ります。
そして話している間に求職者の表情を伺い、自分の考えや理想に共感しているか確認しています。
そして、「どこまで結果にこだわれるか?」という質問がちょくちょくあります。
結果にこだわるかどうか=残業を気にせず仕事をやり続ける、といった考えを求職者が持っているか確認するのです。
面接内容以外で分かりやすいのは面接時間です。
通常45分~1時間程度の面接ですが、ブラック企業の特徴は10分など極端に短いか、2~3時間など極端に長いです。
短い場合は、社長が『こいつはすぐ辞めるだろ』と思った場合です。
長い場合は、労働時間に対する意識がなく、結果が出るまで働き続けるという本人の思考が丸々出ています。
人事の責任者と社長の面接では特にブラック企業特有の材料が出ますので、自分自身も企業を見るという意識を持っておきましょう。
女性の採用に消極的な企業
女性の採用に消極的な企業は、ブラック企業である可能性があります。
女性を採用すると労働量や労働時間についていけず、すぐ退職することが多くなるためです。
長時間労働に耐えうる体力とメンタルを持ち合わせた男性を多く採用したがるブラック企業が多くあります。
男性の求職者の方は求人企業に応募する際にご注意ください。
社章と社訓唱和のある企業!?
スーツの左胸付近に社章をつけているサラリーマンやOLを見かけたことはありませんか?
この社章の装着が義務化されていてベンチャー企業であり、先述した四つの業界はブラック企業の可能性が高いです。
また、社訓を毎朝唱和する企業も要注意です。
この社章や社訓唱和は、企業への愛社精神を強要する方法として用いられます。
転職エージェントで見極める
これまで企業を中心に見極め方法を紹介しましたが、次の視点は転職エージェントです。
営業体質で、個人の業績に厳しい環境の転職エージェントには注意するべきです。
転職エージェントにもさまざまなタイプがありますが、このタイプは求職者よりも個人の業績をいかに上げるかという視点が強いのです。
転職エージェントも人材業界に属しますので、気を付けたい業界に入っています。
ブラックな転職エージェントは市場感覚がまひしているため、受注した求人がブラック企業であっても、気付きません。
このような転職エージェントは、求人を紹介する際や内定時に異常なほど入社を勧めてきます。
この場合は結構分かりやすいですので、見極めは難しくないと思います。
最後に・・・
ブラック企業の見極めは他にもありますが、今回ご紹介した方法により、かなりの確度で見極めることが可能になると思います。
転職活動の段階で、ブラック企業かどうか見極めて、本来の意味での転職成功をしていただければと思います。
近年はブラック企業撲滅として行政も積極的に動いていますが、企業もいろいろな工夫をして隠すことが多く発見や是正にはつながっていないのが現状です。
そのため、今回私がご紹介した情報も参考にしながら、自分の身を自分で守るよう努めてほしいと思います
皆さんの転職がその後に人生に実りあるものでありますよう、お祈りしながら今回はこれで終わりにしたいと思います。