面接官が語る 「返答がありきたりで居眠りしそう!」

執筆者の情報
名前:永井 成果(仮名)
性別:女性
現在の年齢:47歳
面接の経験人数:約500人
面接経験時の役職:-
企業・業種:-

会社の歴史を長々と話す人

面接を受ける人たちはそれなりに受け答え方法を準備して面接に臨みますが、これから紹介する人も、その意味ではきっと準備をしていたのでしょう。

面接が始まり基本的な質問から始めたのですが、待ってましたとばかりスラスラと答えてくれました。

無難というのでしょうか、差し障りなくというのでしょうか、質問に対して答えを返すという意味では何の問題もないスタートでした。

たとえば、基本質問のひとつ「当社への志望理由を教えて下さい。」に対する答えは、

「はい!御社は○○年の創業以来、堅実な経営で着実に業績を伸ばしてこられました。特に、○○年には新工場設立はじめ、・・・。そして、今や業界の中堅として不動の地位を気付かれました。今回の営業職の募集を拝見し、そんな御社の一員になればと思い応募させていただきました。どうぞ、よろしくお願いいたします。」

時間にして1分少々でしょうか、待ってましたとばかりに話してくれました。

志望動機というより当社の創業から工場新設や支店開設、海外進出までの歴史でしたが、途中で詰まることもなく、スラスラと話してくれ最初の印象としてはまずまずでした。

ただ、当社の歴史をそこまで詳しく言ってくれなくてもいいよと思ったのも確かです。また、「よく覚えたでしょ!」と言っているようにも取れました。

個人の特徴をつかむために追加質問

いくつか基本質問が終わると、次は個人の特徴を掴むために少しずつ掘り下げた質問をしていきます。前職時代の仕事内容に関する基本質問では、志望者は職務経歴書に沿って、ほぼ読み上げる形の返事となりました。

入社時の配属先、数年後の異動先、その時の仕事内容について職場名、肩書き、職場名が彼の口から出てきましたが、どんな仕事をしていたのかわからないので、

「では、その中で○○さんが最も頑張ったことについて教えて下さい。」

と質問をしてみました。

「はい!私は手を抜くのが嫌いでどの仕事にも全力でぶつかってきました。仕事は選んでするものでなく、与えられてするものだと考えていますので特にこの仕事に力を注いだというものはありません。従ってどんな仕事を与えられてもお役に立てるよう頑張りますのでよろしくお願いします。」

この質問も想定していたのかすかさず返事が返ってきました。ただ、答えは私たちの想定外で、「う〜ん、そうじゃなくて・・・」と言いそうになりましたが気持ちを取り直して、

「お聞きしたかったのは、前職の6年間、いろいろ頑張ってきてこられたというのはわかるのですが、中でも特筆すべき仕事の成果や、特にご自分の得意分野での仕事実績があれば教えてもらえないかと思いお尋ねしたのですがいかがでしょうか?

「はい、6年間の仕事実績はそれぞれの職場と仕事で自分の全力を出し切った結果と自負しております。途中、人間ですからへこたれそうになったことも何度かありましたが、粘り強く取り組んできました。私の特徴は粘り強さで、・・・。御社に入りましてもどんな分野でも頑張れると考えます。」

答えは正論で、何も間違ったことを言っているわけではないのですが、ただ、はぐらかされたことは間違いなく、結局、知りたかったことについての答えはもらえませんでした。

具体性がなく、つい居眠りする面接官

そこで、切り口を変えて質問してみました。

「では、前職で営業をやっておられた中で、営業成績の方はいかがでしたでしょうか?」

「はい、予算を達成した時もありましたが、未達成で上司に迷惑をかけたこともあります。営業職にとって予算は是が非でも達成しなければならない目標なのですが、その時々の事情もあって達成できないこともありました。こう言うと弁解がましく聞こえるかもしれませんが、これは予算を達成できなかった言い訳ではなく、次回への反省として重く捉えておりました。そして、予算達成の時は、チーム全員の力の結集としてみんなで讃え合い、・・・」

と、話はとうとうと続きましたが、ここに来て、この人は流暢でよどみなく答えているが、内容に具体性がほとんどないということをみんなが気付き出しました。

聞けば聞くほど眠気を誘うだけで、実際、隣の面接官はあってはならない居眠りをしていました。

面接官が居眠りするのは失礼とは言うものの、一方で面接官に何の注目もさせられない受け答えの悪さに、本人はまったく気付いていないのです。それは、答えている時の彼の態度や表情が物語っていました。

決してごまかしたり、苦し紛れの応答ではなく、どちらかと言えば“うまく話せた!”に近い、結構自信のある態度が見えたからです。

具体的にPRするのが面接

面接という言葉を聞くと、どうしても「聞かれたことにちゃんと答える」というイメージがあります。

面接が終わり、出来栄えはどうだったと聞かれた時、「ちゃんと答えていたので大丈夫!」と思ったのに結果は不採用となる原因は、この前提のイメージが間違っているのです。

面接は「ちゃんと」ではなく、「PRできたかどうか」なのです。おわかりのように、この紋切型で単調で具体性の乏しい応答は、まるで街頭演説のようでPR的な要素はまったくありません。

眠気を誘うのは「まったくPRできていない」ことの証拠です。志望動機しかり、前職で頑張ったこと、前営業職時代の成績、すべて何1つPRされていません。

「御社のお役に立ちたい」「御社に貢献できる」とか、「頑張ってきた」「一生懸命」とかいう言葉は面接場面でついつい使ってしまう便利な言葉ですが、具体的内容や実績を語れない受け答えは、単なる“能書き”でしかないということです。

この記事の筆者

永井 成果(仮名)
企業で何人も転職者の面接をしてきました。

その後、私自身が転職し、今度は反対にその経験から転職者を支援する仕事もしました。

企業の面接経験では、こんな人は絶対受からない、逆にこういう人は非常に好感を持たれ面接をパスできる人だというのがよくわかり、一方、支援する仕事ではそれを転職者にアドバイスしてきました。

この両経験から、転職者の役に立つ体験談とヒントを紹介したいと思います。

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