非公開求人のカラクリとは?【転職エージェントが語る】

今回は、転職活動においてよく見かける非公開求人について解説致します。

非公開求人とはエージェントに登録している方々の中で、応募条件に合致する求職者に対してだけ紹介される求人です。

また、非公開求人は転職エージェントの社内でのみ確認することができ、求職者はその求人を持ち帰ることはできません。

つまり企業側にとっては情報漏えい対策になるというメリットもあるのです。

重要ポジションの募集は秘密裏に

非公開求人と一言で言っても、募集する内容が異なります。

企業にとって、求人を出しているという事実を隠しておいた方がよい職種やポジションがあるのです。

具体的には、その企業の中核職種や中核ポジションが秘密裏に募集されやすいです。

職種と役職

世の中にはいろいろな職種や役職がありますが、企業ごとにその企業の中心的な職種や役職が異なります。

しかし、大体どの企業も中心とする職種や役職は同一ですが、非公開求人にする求人では下記の場合が多いです。

以下の部門の部長級以上

  • 財務部門
  • 人事・ヒューマンリソース系
  • 経理部
  • 営業本部
  • IT部門

以下の部門の管理職以上

  • 商品開発本部

見ていただければ分かる通り、部長以上の役職がほとんどです。

また、ポジションについては企業の経営資源である、人・モノ・金・情報に強く関わる職種は内密に募集されることが多くなります。

というのも、これらの職種や役職の人材を採用することが競合他社などに広まると、競合他社は採用しようとする企業が新しいことをしようとしていると察するヒントになるからです。

例えば自社商品を持ち、事業展開している場合は商品開発はその企業の中核になりますし、商品を類似されたりするリスクがあります。

また、経理や財務系は、企業の中には、IPO(新規株式上場)をしようと計画する企業があります。

この場合、決算処理や財務体制を万全にしておかなければ上場基準には満たないため、その準備ができる人材を募集します。

上場は企業にとってトップシークレットになりますので、非公開求人の中でも特に厳重に取り扱われています。

企業が非公開求人とするもう一つの理由

これは、採用活動をスムーズに行い事務処理の簡素化を目的としています。

転職サイトほどではありませんが、転職エージェントも利益を生まなければならず、求職者を多く紹介して誰が転職決定につながればという考えがあります。

そうなると、本来は応募条件に満たない求職者に求人を紹介して、求職者はできれば応募する企業数を増やしたい訳ですから大体が応募します。

応募基準に満たない求職者が応募手続きを行うと、採用する企業の書類選考は非常に手間です。

そのため、求職者の中でも応募基準に満たない求職者はスクリーニングをしますが、これがもう一つの理由です。

紹介すると大体の求職者は応募しようとしますし、応募を控えるようキャリアアドバイザーが説得しても最終的に企業の手間が増え、企業から転職エージェントへクレームになってしまうからです。

ここは、転職エージェントの保身です。

転職決定の近道?

最近の傾向として、トップシークレットになるような中核的ポジションの求人だけでなく、ミドル以下を対象とした極秘求人も増えています。

ミドル以下を対象とした求人の場合、社運を決めるほどの極秘事項ではないため、求職者はかなり細かい企業側の情報を手に入れることができます。

このような背景があり、実はほとんどの転職エージェントでは公開求人の比率は半分以下です。

つまり求職者からすれば、どれだけ非公開求人を拾うことができるかによって転職の成否が決まるのです。

どの転職エージェントがオススメ?

転職エージェントの中には、転職支援で差別化として非公開求人を多くもち、それを特徴にしている転職エージェントがあります。

中には、極秘かつ独占、という求人もあったりします。

求職者は一つの転職エージェントではなく、複数社へ登録した方がよいでしょう。

それによって求人の重複を防ぎ、求人数を確保することが可能になっています。

では、非公開求人を得意とする転職エージェントはどの転職エージェントかについて、ご紹介したいと思います。

パソナキャリア

東京を中心に全国展開している大手の転職エージェントです。

この転職エージェントは、かつてあまりメジャーではなかったのですが、数年前から非公開求人を売りにして多くの求職者を集めることに成功しました。

実際、パソナキャリアの公開求人はすでに全体の20%を割っています。

これがパソナキャリアの求職者に対してのアプローチ方法です。

人は隠されると知りたくなる性質を持ちます。

この心理を読み取り、「表に出てこない求人」を売りにしているのです。

私も求職者時代に、パソナキャリアを利用したことがありますが、この売り文句で登録しています(笑)

リクルートエージェント

リクルートエージェントも非公開求人を得意としていますが、パソナキャリアほど前面に押し出してはいません。

しかし、リクルートエージェントは転職エージェントの中でも最大手であり、企業の信頼を強く得ています。

そのため、とにかく求人の依頼が多いのです。

人事担当者は、それぞれどの転職エージェントを中心に採用活動しようか決めています。

私も人事経験がありますが、私の場合も例外なくリクルートエージェントを中心に採用活動を行っていました。

ほとんどの企業の人事担当者は、採用活動においてリクルートエージェントを中心に取引していると思います。

DODA

この転職エージェントも大手の転職エージェントです。

ちなみに転職サイトも同時に運営しています。

この転職エージェントは大手企業との取引が強く、大手企業の非公開求人が多くあります。

転職エージェントとして私は、大手企業を希望する求職者には「必ずDODAにも登録しておいた方が良い」とオススメします。

穴場の転職エージェント

小規模の転職エージェントは取引する企業や登録する求職者の数こそ少ないですが、求人の質にこだわりを持っている転職エージェントが多くあります。

小規模の転職エージェントの中でも歴史が古い転職エージェントはお勧めです。

独占の非公開求人を持っています。

小規模の転職エージェントが持つ非公開求人は企業の経営者や重役からの直接求人となるため、他の転職エージェントには出回らないものが多いです。

選考フローの短縮や条件に合致していることが前提となりますが、採用に至る確率は他の転職エージェントよりも上がります。

ハローワークにもある?

私の周りや、私の転職エージェントに登録する求職者から、『ハローワークに極秘求人があるみたいですが、どうですか?』と確認があることがあります。

しかし、ハローワークには非公開求人など一切存在しませんので、この情報はデマです。

ハローワークは公的な紹介事業機関になりますので、誰でも求人情報を閲覧することが可能な環境を整備しています。

求職者の不利益にならないよう、企業の全ての情報を公開することが求人を引き受ける条件になっています。

転職サイトでも探せる?

冒頭で非公開求人は転職サイトにはないとお伝えしましたが、厳密に言えばあります。

二つのパターンがありますので、参考までにご紹介します。

転職エージェントとの転職サイトの一体型

中には転職エージェントサービスと転職サイトを同時に運営して、連動型の転職支援を行う場合があります。

大体が大手の転職エージェントがそれに当たります。

転職サイトに非公開求人の情報を一部掲載することにより、求職者はその情報を全部見たいと思うはずです。

この一部掲載を求職者の動機づけとして、転職エージェントへの登録へ誘導するのです。

一部掲載の情報はウソではありませんが、既にクローズとなった求人も含まれていますので登録してがっかりということもあるようです。

大手の転職エージェントや転職サイトを見ていただければ分かりますが、掲載されている過去の取引企業なども求職者への動機づけになります。

転職サイトのダイレクトメール

転職エージェントが転職サイトに登録することもできます。

転職サイトへ登録するとダイレクトメールで『あなたの条件に合致した求人が掲載されました』とか、『新規求人のお知らせ』というタイトルで求人の紹介があります。

そのダイレクトメールに、登録している転職エージェント名も抱き合わせで非公開求人を紹介があります。

この方法が転職サイトにも非公開求人が掲載されているという意味になります。

小規模の転職エージェントは自社で登録者を確保するのが難しいため、この機能を活用していることが多いです。

選考通過率はどれくらい?

求職者の中に、非公開求人は応募しても選考通過しにくいのではないかと不安に思っている人が多くいます。

これについて解説したいと思います。

確かに、部長級以上の役職やポジションであれば、選考基準が高く通過しにくいことがあります。

しかし、非公開求人と言っても、多くの場合採用する企業の思惑が多く含まれていたり、転職エージェントの求職者への動機づけが理由になっていたりします。

ですから、公開しているかどうかと選考基準はリンクしません。

紹介状が必要って本当?

「極秘求人に応募したかったら、誰かしらの紹介状が必要になるんだよ」

こんなこと聞いたことがありませんか?

言うまでもなくこの情報は誤報です。

非公開求人に応募する際に、誰かの紹介状が必要ということは一切ありません。

もちろん転職エージェントを通して応募する際、推薦状を付け足すことはあります。

ただ、転職エージェント経験者として申し上げますが、これはどこもやっていることです。

トップシークレットの極秘求人でも、普通紹介状は要求されません。

繰り返しになりますが、非公開求人はその名称こそプレミア感が大きいですが、実際はそこまで特別なものではありません。

企業の公式サイトにも同じ求人が……なぜ?

非公開求人は企業としては経営リスクを回避する目的、採用における事務処理の簡素化が大きな目的になりますが、同じ求人が企業のHPにも掲載している場合があります。

これは非常にレアケースです。

競合他社がその企業のHPをチェックしていればすぐに情報が分かってしまいます。

そうすると、転職エージェントを通して秘密裏に募集する意味がなくなります。

では一体なぜ公式サイトに求人が乗るという事態が起こってしまうのでしょうか。

答えは企業の体質にあります。

企業は採用コストを抑えたり、本当に入社意欲のある求職者を採用するために、ルーティンで採用情報を公開したりしています。

実は、その企業は採用していない期間が長く、非公開求人を転職エージェントへ依頼した期間が重複することがあるのです。

つまり「秘密裏に出しているはずの求人がなぜか公開されている」というケースは、あくまで一時的な現象です。

デメリットもあるの?

非公開求人は転職決定の近道で、メリットが大半です。

しかし、一方ではデメリットもありますので、ご紹介します。

それが、社名や業績を伏せている場合があるということです。

そうなると、求職者としては選考に進むかどうかの判断材料が通常より少なくなります。

実際にあった話ですが、ある求職者が社名や業績を伏せた非公開求人に応募して面接での印象も良かったため入社しました。

しかし面接でも具体的な情報の開示がなく、実際に入社してみると企業の業績が芳しくなかったというケースです。

判断材料が少なすぎると感じた際は、キャリアアドバイザーに必ず相談した方が良いです。

キャリアアドバイザーは絶対にその企業名やある程度の業績を把握しています。

仮に、キャリアアドバイザーから企業から共有しないように言われているとなった場合は若干危険を感じるため、応募しない方が良いと思います。

というのも社名や業績を伏せている企業の中には、ブラック企業が隠れているからです。

判断材料となる情報が少ない場合はそれだけまともな意思決定が難しくなりますので、転職エージェントとして申し上げますが、応募は控えた方が良いと思います。

ベンチャー企業も出してるの?

次にベンチャー企業の非公開求人についてご紹介します。

ベンチャー企業は一般に、離職率が非常に高い会社が多いです。

そのため離職率を隠す目的で、企業情報を伏せることができる非公開求人を用いるケースがあります。

これは採用戦略の一つで法的にも何ら問題がありませんが、ベンチャー企業を志望する求職者としては特に興味を引くと思います。

求人で大切なことは特別感ではなく、求人そのものの質や内容です。

募集が秘密裏に行われるのは、採用する企業側の思惑が大きな理由ですので、勘違いしないようにしましょう。

特にベンチャー企業は大手企業に比べそもそもの募集者が少ないため、いろいろな採用工夫をして採用活動を行います。

「極秘求人」と銘打ってプレミア感を出そうとするのは、その一例です。

まとめ

非公開求人は特別なものではなく、転職エージェントであればどこでも紹介を受けることが可能です。

私の転職エージェントにもこのタイプ求人がありますが、特別なものは一部だけで、ほとんどはごく普通の求人内容です。

求職者からすると特別感を持たせる言葉に心が動きそうになるでしょうし、キャリアアドバイザーによっては自分の業績のために特別な印象を与えて紹介することもあります。

本当に特別な極秘求人は一部です。もっとはっきり言ってしまいますと、本当に特別な極秘求人であればヘッドハンティングが使われます。

ですので、社名や業績を伏せている非公開求人以外には、どんどん応募して選択肢を広げるべきです。

最後に、今回ご紹介した内容が求職者の皆さんに何らかのお役に立てばと思いながら、これで終わりにしたいと思います。

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