【保育士の転職先】企業内保育士という選択肢
昨今、就・転職業界において、保育士は超売り手市場と言われています。
待機児童問題から端を発し、今や全国各地に続々と新しい保育園が設立されています。
しかし、園は作られても、そこで働く保育士の確保が追い付かず、どこの保育園でも保育士の採用には頭を悩ませているのが現状です。
ただし逆に言えば、保育士の立場からすると、職場の選択肢は豊富にあるということです。
さて、給与や通勤時間、残業の有無など、保育士が職場を選ぶ基準はさまざまです。
そんな中、保育士から今にわかに注目を集めているのが、「企業内保育」という形態です。今回は、企業内保育の特徴や、就業を検討する際に留意しておくべき点などを一挙解説します!
- 筆者プロフィール
- 名前:諏佐諒次
保育業界専門の転職エージェントに勤務
転職経験:2回
現在の年齢:29歳
企業内保育と通常の保育業務の違いは?
企業内保育とは、その名の通り「企業の中に設置される保育園」のことを指します。
ひとつの施設として独立して建てられている通常の保育園と何が違うの?と思われる方も多いでしょう。
しかし、両者の間にはいろいろな相違点があります。
まず特徴的なのが、地域より広く児童を募る通常の園とは違い、企業内保育の園児は、基本的にその企業に勤める方々自身の子どもたちであるということです。
つまり、企業内保育は、その企業が社員への福利厚生の一環として提供している園=サービスだということです。
特に産休から復職を考える女性たちにとって、子どもの預け先は一番の悩みどころです。
その意味で、自分が勤める職場内で子供を預けられるとなれば、安心という意味ではこれ以上ない環境ですよね。
さて、そうした園児の違いのみならず、企業内保育は保育業務自体も通常の園とは異なる点があります。
まず挙げられるのが、企業内保育では運動会や遠足、各種お遊戯会などのイベントが少ない点です。
まったくないというわけではありませんが、保護者側からのニーズや設置する企業側の認識(子どもの預け先の用意が第一で、保育内容の充実化にまで気を配れない企業が多い)の面からも、イベントごとは重要視されない傾向が高いようです。
そういった意味においては、イベントに費やす労力が少ないので、特にイベントに使用する制作物の用意など、保育士の負担は低めといえるかもしれません。
一方で、配置されている保育士の人数については気をつけなければなりません。
というのも、企業内保育は基本的には認可外保育園です。
保育士の人員について厳密な基準・運用が定められている認可保育園とは違い、企業内保育では子どもの数に対して潤沢な保育士を確保できているケースは必ずしも多くないようです。
子供の数自体も多くはありませんが、例えば1名か2名の保育士しかいないようだと、おのずと個々の保育士にかかる業務負荷は高くなりますので、その点については注意が必要でしょう。
年収、待遇面の違いは?
さて、企業内保育に勤務する保育士の待遇面はどのようになっているのでしょうか?
これは企業内保育の運営者の違いによるとしかいえません。
企業内保育は、保育所を設置する企業自体が運営を行うケースと、外部の法人に運営を委託するケースの2種類があります。
前者のケースだと、あくまでもその企業の「余力」で保育所を運営することになるので、あまり高い待遇は望めません(とはいえ近年においては大手IT企業などが企業内保育を開設し、そこで勤務する保育士を厚待遇で迎えるケースもでてきているので、例外はあります)。
一方後者の場合は、すでに複数の保育園の運営実績がある法人などに委託していることが多いので、そこで勤務する保育士も運営元が展開する保育園と同等の待遇は望めるでしょう。
また、給与以外に、休日はどのようになっているのでしょうか。
これは基本的には設置されている企業の営業スケジュールによるので、一概に休日が多いか少ないかは断定できません。
しかしながらすでに述べた通り、企業内保育は少人数の保育士しか配置されないことが多いので、有給などはどちらかというと取得しづらい傾向にはあるといえます。
廃止リスクが結構高い?
通常の保育園とは違い、企業内保育で特に憂慮すべきなのが「廃止リスク」です。
企業内保育は一企業のスペース内で、基本的には個別の企業が社員に対する福利厚生事業として実施するものです。
つまり、保育サービスの継続性はもっぱら企業内の社員からのニーズに左右されるため、利用したい社員が少なくなれば、存続が危ぶまれます。
また、ニーズがあっても設置する企業の財務力が弱まれば、必然的に(その企業の本業ではない)企業内保育も廃止を余儀なくされることがありうるのです。
万が一企業内保育が廃止になったとして、そこで働く保育士はどうなるのでしょうか?
これはその保育士がどのような就業形態で勤務しているかにもよります。
企業内保育に勤める保育士はパート勤務や契約社員であることが多いです。
基本的にパートまたは契約社員の場合は、企業内保育所の廃止と同時に、離職とならざるを得ないでしょう。
しかし、割合としては少ないながら、設置企業の正社員として雇用されている企業内保育士もいます。
その場合、企業内保育が廃止になったからと言って、企業側はそこに勤める保育士を簡単に解雇するわけにはいかなくなります。
そうしたケースでは、事務や営業などほかの職種に“異動”となるでしょう。
しかし、保育士として務めていた方が急にほかの職種に移されても、直ちになじむことは難しいようです。そうなると、正社員として勤めている方でも、結果として自ら転職を選ぶ場合も少なくないようです。
この記事の筆者
名前:諏佐諒次
保険業界においてバックオフィスや営業など、様々な職種で7年間勤務。
その後、保育業界の転職エージェントを約1年間経験。
多くの保育士から転職相談を受け、よりよい職場を提供できるよう、転職理由の根本の把握に努めた。
現在は民間の教育機関の運営に携わり、主に人事関連の業務を行う日々。