保育士を辞めたい!

女性の社会進出を阻むものとして、いわゆる待機児童問題が深刻化しています。

日本では、働く女性の子どもたちの受け皿を少しでも確保しようと、保育園を増やそうという動きが国策として実施されています。

しかし、顕著な進展は図られておらず、未だ多くの待機児童が存在しています。

原因として、日本ではそもそも少子高齢化が進んでいて、働き手となる若い人材が不足しているという傾向があります。

しかしそれ以上に輪をかけて深刻なのは、一般に保育士は待遇が低く、また様々なストレスにさらされる仕事でもあるため、離職率が高い職種であるということです。

今回は、保育士の離職原因に焦点をあて、その詳細について徹底解説します。

筆者プロフィール
名前:諏佐諒次
保育業界専門の転職エージェントに勤務
転職経験:2回
現在の年齢:29歳

保育士が辞めたくなる理由とは

保育士が仕事を辞めたいと思う理由は一体何でしょうか。

もちろん一つには絞れませんが、代表的な原因がいくつかあります。

真っ先に挙げられるのが給料の低さでしょう。

保育士の給料は業界全体を見渡しても、残念ながら他業種と比較して劣っていることが多いのが現実です。

勤続10年以上のベテランでも、手取り給料が20万円を切るケースも少なくないのです。

どんなにやりがいがあっても、生活が出来なければ続けていくことはできませんよね。

次に挙げられるのが仕事量の多さや、責任の重さです。

保育士は単に子どもを預かることだけが仕事ではありません。

実は裏では書類作成などの事務作業が多かったり、行事ごと前には制作物を作らねばならなかったりと、非常に多くの仕事をこなさねばならないのです。

また、特に幼い子どもを預かるという点で、ひとつのミスが生命の危機に直結する可能性もあり、責任も非常に重大です。

こうした業務の過多や責任の重大性に、耐えきれなくなる方も多いのが現実です。

そして最後に挙げられるのが、人間関係のこじれです。

これは主として、保護者対応におけるものと、職場内のものとがあります。

前者については、モンスターペアレントと呼ばれるような保護者の存在を考えれば想像がしやすいでしょう。

保育士は、子どもよりもその裏にいる親との関係構築が真に大変な仕事といえます。

また、職場内については、いかんせん女性ばかりの環境という点で、複雑な人間関係が渦巻くことが多く、精神的なストレスが大きくなることがしばしばあるようです。

辞める場合にも障害が……

周りから見れば、そんなに大変なら辞めてしまえばいいのでは?と思う方も多いでしょう。

しかし実際には、退職も簡単にはいかないのが保育士業界の相場なのです。

というのも、常時人手不足と言われる保育業界にあって、たった一人の退職が業務を立ちいかなくさせてしまうというケースが非常に多いのです。

一人辞めてしまうことで、五月雨式に退職が発生することもよくあります。

また、特に認可保育園の場合は、法律で定められる子どもに対する保育士の配置基準を厳密に守る必要があるので、園運営の維持という点でも死活問題になります。

こうなれば、園側が保育士の退職を死に物狂いで止めるというのも、頷ける話でしょう。

また、いくら辞めたいと思っても、年度内の退職は子どもたちへの悪影響が大きく、人情的にも難しい部分が大きいのです。

下手をすると辞めたい思いを1年近くも引きずりながら日々の業務をこなさければならず、これは相当にきつい状況といわざるを得ないでしょう。

いざ辞めた場合でも……

意を決し、園と必死の交渉を行い退職がかなったとしても、その後のキャリアが順風にいくとは限りません。

転職先を見つけていない状況で退職すると、当然ですが失業の状態になります。

雇用保険に継続的に加入していればいわゆる失業手当が受給できますが、その額も決して生活を長く支えてくれるような水準でありません。

また、保育士に嫌気がさし、別の業種へ転職を志そうとしても、中々うまくいかないことが多いといわれています。

というのも、学校を卒業後直ちに保育士になった方は、ともすると「社会人同士の礼儀作法や、一般常識」を十分に備えていない場合が少なからずあり、他業種における採用面接などでは特に評価を受けられないことがしばしばあるからです。

転職するなら誰を頼るべきか?

では、覚悟を決めて転職をするとなった場合、保育士は一体誰を頼りにしたらよいのでしょうか。

保育業界内で、他の園に勤めたいという場合、確実性が高いのは「知人の紹介」でしょう。

保育士は専門学校を卒業して資格を取得する方が多いので、いわゆる業界のヨコのつながりを持っている場合が少なくありません。

そうした知人を介して得た情報であれば、他の園の労働条件など、一定以上の信ぴょう性を置くことが出来るのです。頼れる知人がいなければ、転職サイトやエージェントを利用するのもよいでしょう。

特にエージェントは、仕事を求める保育士の転職を成功させることで利益を得ているため、親身になって相談に乗ってくれることが多いです。

また、公的なサービスであるハローワークも、情報量という部分で優位性があります。

どうしても異業種がいいという場合は、業界研究と自身の強みの分析をしっかり行い、出来るだけミスマッチのない職種へチャレンジするのがよいでしょう。

これについては個人差があるので一概にはいえませんが、保育士は子どもから大人(保護者)まで、幅広い年齢と対応するコミュニケーション能力を備えている方も多いので、意外ながら営業職で成功する方もしばしばいます。

また、保育士を辞めてしばらく仕事から離れたいと思っても、金銭的な事情で、例えば配偶者が復職を求めるようなケースもあります。

そのような場合は、無理に保育士に戻らなくとも、他業種でパー勤務を行うなど、無理のない範囲で仕事を行うことが重要です。

保育士を辞める方は、心身ともに疲弊しきっている方がとても多いのが現実です。自身の健康を第一に、働き方についてはよくよく考えるのが良いでしょう。

この記事の筆者

名前:諏佐諒次
保険業界においてバックオフィスや営業など、様々な職種で7年間勤務。

その後、保育業界の転職エージェントを約1年間経験。

多くの保育士から転職相談を受け、よりよい職場を提供できるよう、転職理由の根本の把握に努めた。

現在は民間の教育機関の運営に携わり、主に人事関連の業務を行う日々。

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