保育士の転職は厳しい?

昨今、待機児童問題から、保育士不足が叫ばれているのは多くの人がご存じのところでしょう。

温かくて優しいイメージがある保育士はかねてから女の子の憧れの職業でもあり、こうした世相を背景に保育士を目指そうという学生の方も少なくないのではないでしょうか。

しかし、見た目のイメージとは裏腹に、保育士はとても厳しい職業です。

子どもたちの世話のみならず、保護者対応やこまごまとした事務作業、女性だらけの職場独特の人間関係など、ストレスの絶えない日々を送る保育士はたくさんいます。

そして実際、保育士の転職率というのはとても高いのです。

ただし、保育士は国家資格と言えど、その他の資格と比べると、保育士資格を武器とした転職は簡単ではないといわれています。

今回は、保育士の転職事情の実際と、より有効的な転職ノウハウについて解説します。

筆者プロフィール
名前:諏佐諒次
保育業界専門の転職エージェントに勤務
転職経験:2回
現在の年齢:29歳

他の国家資格と比べると難しい保育士の転職

さて、他の国家資格と比較したときに、保育士の転職は難しいとされていますが、なぜでしょうか。

これは転職がしにくいというよりは、「良い求人条件の職場を探すのが難しい」と解釈した方が正確でしょう。

というのも、保育士業界は一般的に他の業界と比べると給与などの待遇面が劣る点が多いからです。

医師や看護師、薬剤師といったいわゆる医療系の“花形資格”であれば、高待遇の求人を見つけることは必ずしも難しくはありません。

しかしながら、保育士は正直なところ給与面などはどこも似たり寄ったりなので、今勤めている園から、飛躍的に待遇を上げることは難しいのが実際なのです。

人手不足と言われているが高待遇にならないのはなぜ?

人手不足から超売り手市場と言われる保育業界にあって、それでも保育士の待遇が高くならないのはなぜでしょうか?

これは、簡単には説明ができません。

保育業は介護などと同様に福祉業界です。

介護もそうですが、福祉業界はおしなべて給与が低いといわれています。

どちらかというと公益に近い業種、という点で、高給をもらって仕事をするイメージが世間からの認識とそぐわないという面はあるでしょう。

しかし、さらに由々しき原因があります。

それは特に私立の認可保育園の場合、保育料などが(保護者の収入によって)一律に定められており、かつ自治体から補助金をもらうことで事業が成り立っているからです。

保育料を任意に定められないということは、いくら充実した保育を実施したとしても、収入に限りがあるということです。

また、補助金をもらって行う事業である以上は、その使い道も園の思うがまま、というわけにはいかないのです。

限られた収入の範囲で、定められたお金の使い道しかできない保育園というビジネスは、その実保育士の給与をおいそれと上げられる仕組みにはなっていないのが現実なのです。

異業種転職、仮にできても非正規系が多い?

では、保育士としての道をあきらめ、異業種への転職を志すという方法はどうでしょうか。

これは、各個人の資質によって正否が分かれます。

一般的に保育は潰しが利きにくい仕事といわれているので、異業種と言っても事務職などの仕事に契約社員やパートなどの非正規で就かざるを得ないケースが少なくないようです。

しかし、保育士はその職務において子どものみならず、気難しい保護者などへも対応を行っているわけで、そこで培ったコミュニケーション能力は強力な武器となります。

そうした能力をうまく使えば、例えば営業職に転じて成功を収められる方もいるのです。異業種への転職を考えている保育士の方は、悲観的にならず、自らの経歴をしっかり棚卸ししてみることが重要でしょう。

情報収集をしっかりすれば転職の道も開ける?

先に述べた通り、保育士は同業界にせよ他業種にせよ、待遇を大幅に上げる転職は難しいケースが多いです。

しかしそれでも、保育士の待遇を上げようという社会的な機運は確実に高まっています。

例えば東京都の多くの区では、保育士の長期就業を支援しようと、「住宅借上支援制度」というシステムを用意しています。

これは、勤続年数などの一定条件を満たす保育士に、区と園が協力して家賃を月額で80,000円程度補助するという制度です。

こうした制度をはじめとして、保育士の待遇改善に熱心な自治体、園は増えている傾向にあります。そうした情報をこまめに収取すれば、より良い待遇の職場をみつけることは、決して不可能ではないのです。

書類作成の書き方で転職しやすくなったりする?

転職においては履歴書などの書類作成が必須ですが、ここでもポイントがあります。

保育業界内での転職の場合、少なからぬ園は履歴書の提出のみで、職務経歴書の提出を求めないケースがあります。

しかしいざ面接を受ける際は、職務経歴書も作成しておいた方が望ましいでしょう。職務経歴書は、保育士として勤めている間にどのような仕事をし、どのようなスキルを身に着けたかをアピールするツールです。

職務経歴書を作成することで自らのキャリアを振り返ることもできますし、またそうした書類をしっかり作成することで、先方へのアピールにもなります。

ややもすると一般的な社会常識が備わっていないと思われかねない職種なので、他業種への転職を検討する場合は特に、そうした書類作成にも気をはらうべきでしょう。

たとえ厳しかろうが転職するべき境遇

さて、今まで述べてきたとおり、保育士にとってよりよい待遇を求めた転職は難しいことが多いです。

しかしそれでも転職をした方がよいケースというのは確実にあります。

それは例えば労働環境が劣悪すぎる場合です。

給与が不当に低く、生活ができない場合、また深夜までの残業を求められるなど、身体への負担が大きすぎる場合、他にも休日がほぼない、休憩時間が皆無など、考えられる状況はさまざまあり得ます。

特に心身に負荷がかかりすぎているなと自覚した場合は、即刻に転職を考えるべきでしょう。

保育業界は、正直言って労働条件などに関する認識がまだまだ低い業界です。

勤務する園の状況が直ちに改善されることはあまり望めません。

なにより大事なのは自らの健康ですので、今述べたことに思い当たる節があるかたは、厳しい道でも、転職を考えた方がよいでしょう。

この記事の筆者

名前:諏佐諒次
保険業界においてバックオフィスや営業など、様々な職種で7年間勤務。

その後、保育業界の転職エージェントを約1年間経験。

多くの保育士から転職相談を受け、よりよい職場を提供できるよう、転職理由の根本の把握に努めた。

現在は民間の教育機関の運営に携わり、主に人事関連の業務を行う日々。

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