保育士から幼稚園教諭への転職

待機児童問題から、保育士の不足が大きな社会問題となっています。

そもそも保育士は優しく温かいイメージから女の子の憧れる職業のひとつでもあり、こうした社会背景をきっかけに保育士を目指す方は少なくないのではないでしょうか。

しかし一方で、保育士が働く場である保育園は、職場として激務であることが非常に多いのです。

子供の世話はもちろん、気を遣う保護者対応や、行事前などは深夜まで残業して園の飾りつけなどを行わなければならないこともあり、ストレスが絶えないのです。

そうした負荷に耐えられないと感じた方は、保育士を離職することになるわけですが、保育士を辞めた方が転職先として考えることが多いのが「幼稚園」です。

幼い子供とのかかわりという部分は共通しながら、幼稚園教諭は実は保育士と似て非なる職業です。

今回は、保育士が幼稚園教諭への転職を志す際の留意点などについて、解説いたします。

筆者プロフィール
名前:諏佐諒次
保育業界専門の転職エージェントに勤務
転職経験:2回
現在の年齢:29歳

幼稚園教諭で求められるスキル・経験・資格

幼稚園教諭になるには、「幼稚園教諭免許」を取得する必要があります。

業界外の方からは、保育士資格と何が違うの?と思われるかもしれません。

まず明確な違いとして、保育士資格が児童福祉法を根拠とする資格で厚生労働省管轄であるのに対し、幼稚園教諭免許は学校教育法で定められた免許で、文部科学省管轄となっています。

つまり資格の根拠となる法律と、管轄省が違うのです。

幼稚園教諭免許を取得するためには、幼稚園教諭用の教職課程を設けている学校に入学し、必要な単位を取得しなければなりません。

保育士資格と幼稚園教諭を併せてできる学校も少なくありませんので、両者とも似たような知識に基づく資格ではないかとも誤解されますが、似て非なるものなのです。

ふたつの職種とも幼い子どもたちの世話をするという点では共通していますが、保育士は睡眠や食事、遊びなど、子どもたちの生活習慣全般を管理する仕事です。

保護者に近い存在で子どもに寄り添う仕事で、子どもを預かる時間も1日8時間以上と長時間にわたります。

一方、幼稚園教諭はその名の通り「教諭」であり、生活そのものというよりは、子どもたちの学びをサポートする在なのです。

そのため、というわけではありませんが、幼稚園が子どもを預かる時間は保育園のおよそ半分、4時間です。

給与水準・待遇はどっちが上

保育士と幼稚園教諭では、給与水準などどちらの方が高待遇といえるのでしょうか。

インターネットの大手情報サイト「年収ラボ」によると、平成27年度の保育士の平均年収は323万円、幼稚園教諭の平均年収は339万円となっています。

このデータだけを見ると平均的には幼稚園教諭の方が若干保育士よりも給与は良いともいえます。

ただし、いずれにせよ他の業界と比べると両職種とも給与水準は低いといわざるをえません。

幼稚園は保護者の介入がもっとキツイ?

幼稚園は保育園と比べると保護者の介入が激しい、と言われることがあります。

そのようなことがあるとすれば、それは保護者が置かれている状況の違いによる面が大きいといえるでしょう。

保育園は原則として、両親がふたりとも正社員として勤務しているなど、子供の面倒をみる時間を確保できないしかるべき事情がなければ利用することができません。

一方、幼稚園にはそうした基準はなく、子どもが3歳に達していれば基本的に入園は可能です。

つまり幼稚園に子どもを通わせている保護者の方が、園に対していろいろと思いを巡らせる「余裕」がある、といえるかもしれません。

ただしこれはハッキリ言って個々の園と、保護者によります。保育園であっても、モンスターペアレントといわれるような、園への介入が激しい保護者はもちろん少なからずいるのです。

保育園から幼稚園教諭への転職を考えている方は特に、余計な先入観を抱かない方がよいでしょう。

求人数は増えてる? 減ってる?

さて、幼稚園教諭の求人数やその質は、どのように推移しているのでしょうか。

これはハッキリとしたデータがないので明確に把握することは困難です。

しかしながら、文部科学省が公表している資料によると、幼稚園に通う園児の数は長期的にみると減少しています。

これは少子化の影響もあるでしょうし、また女性が正社員として勤務する割合が増えたことで、幼稚園よりも保育園のニーズが高まっていることも理由といえるでしょう。

つまり、少なくとも、幼稚園の求人の数が大きく増えているということはなさそうです。

また、求人の質についても同様で、明確な資料はありません。しかしながら、保育園については昨今の世論の影響を受けて保育士の待遇を改善しようという動きがみられるのに対し、幼稚園教諭はそういった声は聞こえてきません。

保育園の陰に隠れてしまって、というわけではありませんが、良い待遇の求人が多く出回っているという状況ではないでしょう。

幼稚園教諭→保育園というキャリアパスの場合

幼稚園教諭から保育士に転職する方がしばしばいます。

この理由はさまざまですが、一番はキャリアやスキルの幅を広げたい、というものでしょう。

先に述べた通り、幼い子どもを相手にするとはいっても、幼稚園教諭と保育士は似て非なる仕事です。

特に0~2歳の乳幼児の世話ができるのは保育士だけです。保育士と幼稚園教諭を両方とも経験しているということは、その後のキャリアを考えたときに大きな強みとなる可能性があるのです。

また、これもすでに記しましたが、保育士は今、社会的な脚光があたっているポジションです。

東京都などでは各区が園と共同で賃貸住まいの保育士に月額80,000円以上の家賃補助を行うなど、待遇改善の動きもにわかにみられています。

そのような動きに敏感な方であれば、少しでも待遇の良い職場を求め、幼稚園教諭から保育士への転職を考えるでしょう。

この記事の筆者

名前:諏佐諒次
保険業界においてバックオフィスや営業など、様々な職種で7年間勤務。

その後、保育業界の転職エージェントを約1年間経験。

多くの保育士から転職相談を受け、よりよい職場を提供できるよう、転職理由の根本の把握に努めた。

現在は民間の教育機関の運営に携わり、主に人事関連の業務を行う日々。

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