保育士が退職、転職する際に気をつけるべきこと
出産後も職場に復帰したいという女性にとって、子どもが通う保育園を確保することは死活問題です。
ただし、女性の社会進出(復帰)の増加ペースに、保育園の数が追い付いていないのが現状です。
そして、保育園の数以上に深刻なのが保育不足です。
実際、新しい保育園は続々と設立されてはいるものの、肝心の保育士が足りないということで、どこの園も保育士の採用活動に追われているのが現実です。
つまり逆に言うと、保育士にとっては職場を選びたい放題の状況にある、と言っても過言ではありません。
しかし、保育業界は他業種よりも労働条件などの待遇面で劣る部分が多く、離職率が高い職種でもあるのです。
今まさに保育士として働いている方でも、退職を考えている方は少なくないでしょう。
今回は、保育士を退職しようと思い立った際に、見極めるべき適切な“辞めどき”や、できるだけ円満な“辞め方”について解説いたします。
- 筆者プロフィール
- 名前:諏佐諒次
保育業界専門の転職エージェントに勤務
転職経験:2回
現在の年齢:29歳
退職しようとしても引き止めがキツイ、そんな時は……
給与が低い、労働時間が長い、人間関係が悪いなどなど、保育士の退職理由は様々です。
しかし園側からしたらたった1名の保育士の退職が運営上の死活問題となることも多いので、退職意向を告げた時に、猛烈な引き止めに会うことも少なくありません。
そのような場合は、どのように対処したらよいのでしょうか?
穏当な方法としては、自分がその園を辞めたいと思う理由をきちんと伝えて、園に改善を求めることです。
長すぎる残業が問題なのであれば、仕事の分担などを見直す機会を求めたり、職員間の人間関係が悪いのであれば、話し合いの場を設けてもらう…等々、理由に応じて、対処を要求してみましょう。
例えばそれを求めて2,3ヶ月以内に状況が改善されないのであれば退職する、とはっきり意思表示すれば、園側も必死になって解決にあたるでしょうし、ポジティブな変化が生まれる可能性もあります。
退職の原因が解消されれば保育士にとっても働きやすい職場になり、辞める必要はなくなります。
しかし、中々そうスムーズにいかないことが多いでしょう。
問題が簡単に解決されないことが分かっている場合は、退職を伝える前に次の転職先を確保しておくことが絶対に必要です。
それであれば、引き止めにあっても「次の職場への入職日が決まっているので、退職しないというわけにはいかない」と、きっぱり伝えることができます。
保育士側からしたら、気持ちの余裕も全く違ってきますので、退職を伝える際は、必ず転職先を見つけておくようにしましょう。
退職理由はどう考える?
さて、実際に退職を伝えるとなっても、正直に言いづらいこともあるでしょうし、また本当のことを言ったとしても、園側がスムーズに納得してくれる場合ばかりではありません。
例えば人間関係が原因であれば、誰誰が悪い、と名指しで批判するのは気後れすることも多いでしょう。
きちんと言ったとしても、「まあまあ、誰でもそう思う人の一人や二人はいるから…」と園側から“スカされてしまう”こともあるようです。
そのような場合、退職理由はどのように考えたらよいのでしょうか?
一番効果的な理由としては、給与面での不満を訴えることです。
仮にそれが根本的な退職理由でなかったとしても、給与は園側としても「もっと多く払いますね」とは簡単にいえない(解決できない)部分です。
特に独身でひとり暮らしであれば、もらっている給与では生活できないとぴしゃりと伝えれば、園としても引き止めにくいでしょう。
では、あまり多くはないケースですが、そもそも給与が恵まれている場合はどうしたらよいでしょうか。
難しいところですが、この場合は園に対して不満があることを伝えるよりは、「どうしても別の職種でチャレンジしたいことがある」といったように、ポジティブな理由を述べる方がうまくいくことが多いです。
「現在の職場環境に不満はないけれど、自分の人生なので、やりたいことを貫かせてほしい」というような伝え方であれば、(あまりに短期間の離職でなければ)理解を示してくれる園も多いでしょう。
保育園に行きにくい人は?
では、退職理由が仕事による体調面の不安からきたもので、辞めるにも仕事をするにも、園に足を運びにくくなってしまった…というような場合は、どう対処したらよいでしょうか。
そのような場合まず優先すべきはもちろん自身の体調です。
まずは病欠の連絡を園に入れ、病院に行きましょう。
そして、深刻な症状にいたっているのであれば、直ちに診断書を取り付けてください。
「就労が難しい」という診断書を作成してもらえれば、当然ですが園も強制的に働かせることはできません。
診断書を直接提出するのが難しい場合は、無理を言ってでも自宅に来てもらう。
あるいは電話で自らの症状と退職意向を伝え、診断書とともに退職届を郵送する、といった方法も検討してみましょう。
保育士は責任感の強い方が多いですが、まず何よりも守るべきは自身の健康でです。
気が引けても、体調面で取り返しのつかない状況になること絶対に回避してください。
円満退職を目指しために意識しておくべきことは?
さて、ここまで退職にあたっての留意点を解説しましたが、そうはいっても円満退職したいのが人情というものです。
体調面は別として、その他の点で園に不満があって退職をしたいけども、後を濁す辞め方はしたくない…という方は多いでしょう。そのようなときに意識しておくべきことは、2点です。
まず1点目は「なるべく園への不満を伝えない」、そして2点目は「できるだけ前もって退職意向を伝える」ことです。
1点目は先の項でも述べましたが、退職理由は多少取り繕ってでもポジティブな内容にした方が無難なことが多いです。
園側からすると、いうなれば“悪口を言われて辞めていく”方に対して好意的な印象は持てないでしょう。
また、園同士のヨコのつながりも少なくないので、保育士の悪いうわさも広がってしまうリスクがあります。
できるだけ、前向きな退職理由を考え、伝えるようにしましょう。2点目も、園になるべく迷惑をかけないという部分で重要です。
いくら不満のある職場でも、「今日辞めます、明日から来ません」では、社会人的にもNGなのは明白です。
また、急な退職により最も迷惑を被るのは、園ではなく子どもたちです。
就業規則を確認し、退職を告げる期日を把握するとともに、園側が採用活動の時間をとれるよう、退職意思はできるだけ前もって(可能であれば2ヵ月前以上)伝えるように心がけましょう。
この記事の筆者
名前:諏佐諒次
保険業界においてバックオフィスや営業など、様々な職種で7年間勤務。
その後、保育業界の転職エージェントを約1年間経験。
多くの保育士から転職相談を受け、よりよい職場を提供できるよう、転職理由の根本の把握に努めた。
現在は民間の教育機関の運営に携わり、主に人事関連の業務を行う日々。