保育士の年収事情と、待遇改善の方法とは?

昨今の日本においては、女性の社会進出が急速に進んでいます。

それ自体は望ましいことではありますが、幼い子どもを持つ女性にとっては、預け先の確保に苦労する場合が非常に多くなっています。

これがいわゆる待機児童問題です。

働く女性の子どもたちの受け皿を増やそうと、今日本では国を挙げて、保育園が全国各地で急ピッチで進められています。

しかし保育園が増えても、肝心の保育士が足りていないことがさらに深刻な問題として浮き彫りになっています。

つまり、保育士にとっては働き先には困らないともいえます。保育業界以外の方からみれば、職場探しに苦労しないなら、良い待遇の勤め先を見つけやすいのでは?と思わるかもしれません。

しかし、保育士の年収は、業界全体でも残念ながら決して恵まれているとはいえず、そのために現場で働く保育士もなかなか増えていかないのです。

今回は、保育士の年収の実態と、保育士として働くことを考えた場合、どのように年収アップを図っていくべきかについて解説します。

筆者プロフィール
名前:諏佐諒次
保育業界専門の転職エージェントに勤務
転職経験:2回
現在の年齢:29歳

保育士の初任給は

さて、特にこれから保育士になろうと考えている方にとって、気になるポイントのひとつが初任給の額ではないでしょうか。

厚生労働省が発表している「産業別新規学卒者の初任給の推移」(※1)によると、保育士が含まれる「医療・福祉業」の初任給の平均額は、平成28年度において「高専・短大卒」で17万9千円となっています。

これは額面ですから、手取りは15~16万円弱といったところでしょうか。

また、この分類では医療業も含まれますが、福祉業は医療業と比較して一般に待遇が劣るといわれていますので、保育士の平均だけをとりだせば、この額よりさらに低くなると考えられます。実際に、手取りが10万円もない、といった保育士の方もいるのです。

保育士の昇給は

次に、保育士の昇給状況はどのようになっているのでしょうか。

これも厚生労働省が発表している資料「職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」(※2)によると、平成27年度において22~23歳の保育士(女性)の額面給与が約1
8万4千円、27~28歳で19万8千円となっています。

4年~5年で約1万4千円の昇給ですので、1年あたりおよそ3千円~4千円ごとのアップといえます。この額をどう評価するかは個人の価値観にもよりますが、決して大きな昇給幅とはいえないでしょう。

統計的にみるとどんな特徴がある?

では、保育士の年収状況について、さらに詳しい分類でみるとどのようになっているのでしょうか。まず男女の別でみると、同「職種・性、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」から試算すると、32歳の男性保育士が約376万円、同じく32歳の女性保育士が約312万円となります。

男女いずれも全業種的には高いとはいえませんが、男性の方が60万円ほど高い傾向にあるようです。

年代別ではどう変わるのでしょうか。

女性保育士の例でいうと、22~23歳で262万円、42~43歳で約352万円、57~58歳で約406万円となっています。

20歳前後の就職から、60歳ごろの退職付近までで、150万円ほどの幅があるといえます。

ただし、これについても、60歳付近でようやく400万円を超えるというのは、低めの水準といわざるをえないでしょう。

地域別については、保育士限定のデータはありませんが、全業種的な平均でいうと、やはり東京や大阪などの大都市圏内が高く、地方へ行くほど低い傾向にあります(※3)。

また、保育士はいわゆる私立の保育所に勤める方と、地方公務員として公立の保育園に勤める方とがいます。

後者についてはいわゆる地方公務員のくくりとなりますので、私立の保育園に勤める偏りも、特に役職者クラスになると年収はぐっと高くなる傾向にあるようです。

保育士の年収と結婚の関係は?

さて、全業種的に保育士の年収が低いことは述べた通りですが、この弊害はいうまでもなく私生活にも大きく及んでくるものです。

特に男性保育士の場合は、年収の低さにより、結婚について不安を抱える方が多いようです。

配偶者となる方に十分な収入があったとしても、女性は結婚や出産を機に退職を考える場合も多いので、やはり男性側としては安心できる収入を確保しておきたいのが人情でしょう。

そうしたケースの場合、保育士を続けたいのであればたとえば私立から公立の保育園への転職がひとつの手段となります。

しかしこれには公務員としての採用試験を受ける必要があり、また試験自体も頻繁に行われているものではないため、ハードルとしてはかなり高いものです。

特に男性保育士の方で現実として多いケースは、結婚を機に保育士としての仕事を辞し、他の仕事への転職するというパターンです。

残念なことではありますが、保育士の年収の低さが、否応なしに招いている実際なのです。

保育士で年収アップを狙う方法は?

最後に、男女の別を問わずして、保育士として年収アップを狙うにはどういった方法があるのでしょうか。

一つの園でキャリアアップを図っても、劇的な収入増を見込むことは難しいでしょう。

となれば、より待遇の良い他の園へ転職することが現実的な手段となります。

では、より高待遇の園はどのようにして見つければ良いのでしょうか。

最も有効なのは、国や地方自治体が後押ししている保育士の待遇改善のシステムを積極的に取り入れている園に転職することです。

最も進んでいるのが東京都で、東京都では特に23区を中心として、多くの保育園が賃貸住まいの保育士に向けて月額8万円以上の家賃補助を提供しています。

同様のシステムは近隣のさいたま市などでも実施されていますが、最も普及しているのは東京都です。

特に地方在住の保育士の方は、ベースとなる給与アップとともに、前述の制度を利用することで上京に伴う家賃増などの負担を大きく軽減できるので、真っ先に検討してみましょう。

また、こうした制度を利用していなくとも、独自に社宅を用意している保育園なども増えています。これらの情報については、独自に調べることはもちろんですが、転職サイトやエージェントを利用して効率的に集約するのが
よいでしょう。

いずれにせよ現在は、待機児童問題から端を発し、保育士の待遇という問題がいまだかつてないほど注目を集めています。

実際に勤務している保育士、あるいはこれから保育士を志す方にとっても、これは大きなチャンスといえるのです。社会の流れを十分にフォローし、よりよい環境で保育士として働くチャンスを積極的につかみにいきましょう。

(※1)(※2)(※3)http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2015/index.html

この記事の筆者

名前:諏佐諒次
保険業界においてバックオフィスや営業など、様々な職種で7年間勤務。

その後、保育業界の転職エージェントを約1年間経験。

多くの保育士から転職相談を受け、よりよい職場を提供できるよう、転職理由の根本の把握に努めた。

現在は民間の教育機関の運営に携わり、主に人事関連の業務を行う日々。

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