未経験OKの求人では職務経験以外を上手にアピールしよう!
- 執筆者の情報
- 名前:くま さん太(仮名)
性別:男性
現在の年齢:39歳
面接の経験人数:-
面接経験時の役職:-
企業・業種:ベンチャー企業向けの人事コンサルタント
皆さん、こんにちは。
いくつかの企業で採用のコンサルティングやお手伝いをさせていただいております。
半年くらい前に成長中のITベンチャー企業で事務系職種の採用のお手伝いをすることになりました。
これまで求人サイトや紹介会社で継続的に募集していたところ、なかなか良い方と巡り合えず、いよいよ業務量的に厳しくなってきたので、別件の仕事でお邪魔していた私に相談が飛んできたわけです。
早速、企業側と採用についての考え等をヒアリングし、これまでの採用活動や求人原稿を見直してみました。その中で、ちょっとした事なのですが、これまで経理経験◯年等が書かれていた募集内容を未経験OKに変更して、採用活動を再開することとしたのです。
そして3ヶ月後に見事に良い採用ができたのですが、未経験OKという変更を行っただけで、なぜ採用に繋がったのでしょうか??
今日はそんな内容を通じて、よく見かける「未経験OK」求人の秘密についてご紹介したいと思います。
今回の記事の目次
未経験者OKの求人は本当に未経験で応募できるものなの??
- 未経験OK (経験者優遇)
- 未経験可 あったら良い資格、経験 ◯◯◯◯、△△△△
割としっかりとした企業の正社員募集でも、こんな記載はたまに見かけると思います。
こういう場合は本当に未経験者でも採用するつもりがあるのかどうか迷うことはありませんか?
「結局、資格とかある人が採用されるんじゃないかな?」
「経験ある人と応募が重なった時は経験者の方を採用するんじゃないかな?」
「ホントは経験者が欲しいけど、応募数が増えないから未経験可にしてるのでは?」
確かにそう感じてしまう(未経験で自信が無い方は特に)表現に見えますよね。
未経験者でも積極的に採用したいならいっそのこと、こう書けばいいと思ってしまいます。
- 未経験者だけ応募可
- 未経験者特に優遇
これだと自信をもって応募できそうですよね(笑)。
でも見たことはありません。
わざわざ未経験者OKという求人の書き方をしているわけですが、実はそこには採用側のいくつかの意図が隠されています。
経験者より未経験者を採用した事例
この未経験OKの採用側の意図を考える前に、実際に経験者と未経験者の応募があった中で、未経験者の方を採用した事例をいくつか紹介したいと思います。
急成長ベンチャーの総務部メンバー採用の事例
こちらは私が実際に採用のお手伝いをしていた、信じられないスピードで急拡大された企業の事例です。
社員が20人くらいの時から、総務はマネージャーが一人で担当されておりましたが、急拡大で社員が数カ月で100人を超え、今後も増員が見込まれるということで、さすがに一人では無理ということで30歳前後の人員を1名採用しようということになりました。
急ぎだったこともあり人材紹介会社へ依頼したのですが、この時“未経験可”としました。
実は総務のマネージャーさんは現在の業務の忙しさから、自身の業務を分担して任せられる経験者が欲しいと仰っておりました。
ところが候補者から経験者2名、未経験者1名に絞り込んで面接を行った結果、採用されたのは未経験者の方でした。
いったい何故だったのでしょう??
大手企業のグループ会社営業職メンバー採用の事例
こちらも採用のお手伝いをした企業ですが、某上場企業の製造業のグループ会社なので、どちらかというと落ち着いて働けるような安定企業でした。
採用理由は退職補充ということで前述の企業と大きく環境は異なりますが、やはりこちらも上長が製造業で営業関係を経験されている方を希望していらっしゃいました。
色々とヒアリングした上で、私が“未経験可”で募集することを強くお勧めし、求人媒体経由で10名ほど面接されたうえで、やはり採用されたのは未経験の方でした。
これはまた、どういうことなのでしょうか??
採用選考過程で注目するポイントは大別すると3区分になる
前述の2社の求人原稿は私が“未経験可”にするようプッシュしたものでした。
その理由は、採用権限者にヒアリングしたところ、未経験者の方が採用される可能性が高いかもしれないと感じたからです。
だいたい両社とも、採用したい人材イメージで同じようなポイントを上げていました。
- 業務経験があり、すぐに丸ごと仕事をお任せしたい(職種で詳細は異なりますが)
- 地頭が良い
- コミュニケーションスキルが高い
- 素直
等々。
このような採用したいイメージは大別に整理してみると、だいたい以下の3つに区分されてきます。
- 業務における経験、スキル(いわゆる経験者)
- ビジネスを行う上での経験、スキル(仕事するうえでの必要な、いわゆるビジネス経験、スキル)
- ヒューマンスキル(地頭、表情、コミュニケーション力、仕事にも活用される、いわゆる人間力)
こうしてみると、業務的な経験者or未経験者という区別は3つの区分の中の1つでしかない事に気付いていただけるのでは?と思います。
企業の採用では実はこの3区分に優先順位がある
当然ですが、担当業務のあらゆる事項に精通し、ビジネスマンとしても優れており、人間的にも素晴らしい人材が応募してきたら、間違いなくその人を採用します。
しかし、世の中にそんな人は簡単に出会えることはないですよね?
だから、採用時には候補者として応募してきた中で良さそうな人と面接等を行って比較検討するわけですが、その比較時の基本となるのが先の3区分で、実は企業の状況や採用権限者の考えていることなどから優先度がついているのです。
もうお分かりですよね??
“未経験可”の求人の場合、3区分の中で「業務経験、スキル」の優先度が低いのです。
絶対的に業務経験の優先度が高い場合は“未経験可”は付けません。
前述の2社の場合、経験者が欲しいと仰っしゃられていましたが、私がヒアリングした印象から、優先度が絶対的に高いわけではなく、むしろ低いと感じたので、“未経験可”と記載したわけです。
つまり、全く印象の異なる企業でしたが、どちらもビジネス経験があって人間的に良い人材であれば、採用決定する可能性があり、実際に採用されることになりました。
だからといって未経験なだけでは採用されない
ここまでくると、“未経験可”求人に対して、本当に未経験で応募しても大丈夫かな?と感じられてきたのではないでしょうか?
しかし、これだけでは経験者と一緒に応募した時に採用されるとは限りません。
3区分の中の優先度が低いだけであって、選考においての一つの判断材料ではあるため、経験を持っている応募者のわかり易いアピールに負けてしまうことが多いからです。
実際に、前述の急成長ベンチャー企業の総務職採用で面接に同席したのですが、総務のマネージャーさんは、最後に面接した経験者の方を最初は一番の候補として考えておりました。
これは、何だかんだいっても忙しくて猫の手も借りたい状況になっていると、とにかく仕事を渡したい意識が本能的にあるため、“経験”がもの凄く魅力的に見えてしまうからです。
また、最後に面接した方が一番記憶に残っているというのもあると思います。
こちらの総務マネージャーさんは、改めて募集をした時のヒアリングさせていただいた内容と面接した3名の方の履歴書や面接メモを並べて確認いただいたところ、最終的に未経験者の採用が決定されました。
このような例からも言えますが、“未経験可”求人だからといって、経験者と比較されてしまうと、やはり負けてしまう可能性が出てくるわけです。
未経験で応募する時に心がけることは?
せっかくの“未経験可”求人です。やりたかった業務にチャレンジできる数少ないチャンスかもしれません。
どうしたら経験者にも負けずに採用される確度を上げることができるでしょうか??
まずはしっかり自分の整理をしよう
転職前の自己分析は担当してきた業務や経験職種については行われますが、ビジネススキルやヒューマンスキルについては意外と行われていない場合が多いです。
未経験の求人に応募する時には、この2区分が重要なアピールポイントですので自己分析や周囲の方にヒアリングして強みとして把握しましょう。
あくまでも採用選考様ですので、「これまでの◯◯の業務経験から仕事におけるコミュニケーションは色々な役職や職種の方とバランスよく取ることができる」等のように、仕事に使えるビジネススキル、ヒューマンスキルである、というようにまとめておきましょう。
応募企業の選考時の優先するポイントを求人媒体や企業HP等から読み取ろう
求人票自体に「コミュニケーションに抵抗が無い方」などとわかり易く書いてある場合もありますが、そうでない場合は企業のHPや採用ページなどから読み取ることも重要です。
会社のビジョンや行動規範などで全社員に求めているポイントは“未経験可”求人では特に重要な選考基準となります。
応募職種で重要となる(重要と思われる)ビジネススキル、ヒューマンスキルを洗い出す
各職種にはベースとして必要なビジネススキルやヒューマンスキルが必ずあります。
例えば営業職では第一印象の良さなどは共通して必要ですし、経理職では正確性などが必要です。
最近ではインターネットの情報サイトでも職種や仕事自体に求める要件やどんなタイプの人が向いているかなど紹介されている内容も多いですので、参考にしましょう。
自身の強みと応募企業や職種とをマッチングさせて貢献できるよう伝える
業務経験の有る無しが判断材料として強いのは、入社後貢献してくれるイメージが持てるからです。
同じようにビジネススキルやヒューマンスキルも、自身の強みとして企業に貢献できるように伝えることで、業務経験と同じようにポジティブな印象を与えられます。
「これまでの◯◯の経験から、集中して正確かつ迅速に業務を完遂する意識やスキルが身に付いています。これは急成長している御社の中で業務を行う上でも重要だと感じておりますし、応募させていただきました▢▢業務では正確さが必要な緻密な作業があると思いますので、未経験ではありますが努力することで早期に戦力として貢献できると考えております」というような伝え方をイメージしておくと良いでしょう。
「実際に前職では業務内容は異なりますが、同じような状況で△△な形で貢献をしてまいりました
といった形の具体的なエピソードがあると、なおわかり易いと思います。
未経験OKとしたら、よい人を採用できた時の話
冒頭で述べた「成長中のITベンチャー企業で事務系職種の採用」において、採用側企業がなぜなかなか採用ができていなかったのに、未経験OKとしたことで、満足のいく採用に繋がったのか、もうお分かりいただけると思います。
このIT企業は、外部に対する顧客意識の高さを経営者自ら毎月の全社MTGで繰り返すほど重要だと位置付け、さらに事業のスピード感を上げるために異なる部署・担当でも、ざっくばらんにコミュニケーションを取り合うことを奨励し、異なる意見でも柔軟に吸い上げて、事業を前に進めていくような文化でした。
業務経験をもとに書類選考を行って面接に繋げていましたが、顔を合わせる面接では、面接官が体に染みついている、企業文化の視点で選考しており、なまじ高い専門性やこだわりを持っている経験者では、スピード感や柔軟性が求められるこの企業と、ビジネススキルやヒューマンスキルが合致しないのでは?と判断され、NGとなっていたのです。
そこで未経験OKと入口を修正し、書類選考時に企業の雰囲気に合いそうな印象の方(前職などが同じような急成長した企業だった、等)を意識したところ、見事に未経験者でもマッチングできました。
特にヒューマンスキルがその会社の文化とマッチしていたようで、周囲にうまく馴染んで業務へのキャッチアップも速いようです。
まとめ:未経験求人に応募する時は準備をしっかりしよう!
未経験OKの求人であれば、たとえ職務経験が無くても、自分を知って、相手(企業、応募職種)を知れば、しっかりと求人に応募し、選考を進めていくことが十分にできることがお分かりいただけましたでしょうか??
チャレンジは無駄にはなりませんので、未経験でもやってみたい思いが強ければ、ぜひ頑張っていただければと思います。
ただし、未経験募集の大前提として、入社後に一生懸命業務を覚えて成長して貢献して欲しい、という企業側の思いがございます。
その為、私の様な年代になってきますと時間的に難しいと判断されてしまうことも(>_<) そういった部分もしっかりと知ったうえで、価値のある転職活動になるよう、応援しています!
この記事の筆者
くま さん太(仮名)
1976年生まれの39歳。大企業からベンチャーまで複数業態企業で人事総務部門を実務からマネジメントまで幅広く従事。現在はその経験を活かして、ベンチャー企業向けの人事コンサルタントとして採用サポート含めて活躍中。人事は会社の業績に大きなインパクトを与える間接部門と認識し、今日も情熱をもって会社と人の間を飛び回っている。