「いい」転職理由と「悪い」転職理由

今回は私の転職エージェントとしてのキャリアで、求職者の良い転職理由と悪い転職理由ついてご紹介したいと思います。

転職エージェントをしていると様々な方と出会い、人それぞれの考え方や歴史を感じます。

転職理由もさまざまですが、中には本来の転職の目的を逸脱したり、転職自体をに考えている方もいました。

筆者プロフィール
名前: 小玉崇
転職エージェント歴:10年
転職経験:3回
利用したエージェント:27社
現在の年齢:41歳
実績の詳細はこちら

転職理由は能力やスキル以上に重要

これは30代の男性求職者のお話です。

彼は大手化粧品メーカーの営業部で係長をしていました。

大学時代は硬式野球部に所属し、軍隊のような縦社会で育っています。

こういった背景もあり、あいさつ・礼儀・言葉遣いなどは立派で、誠実な印象を受けました。

そんな彼は、既に3社ほど転職エージェントへ登録していましたが思うような転職活動ができず、小回りの利くサポート支援で評判があった私の転職エージェントに来たのです。

面談ではこれまでの実績などを細かくヒアリングしましたが、非常に優秀でした。

ただ、彼には転職軸が定まっていなかったため転職活動が思うようにいっていなかったのだと感じました。

書類選考の通過率は良いのですが、面接で見送りになっていたのです。

転職軸が曖昧であるため、面接の受け答えが抽象的で良い印象を与えられなかったのだと思います。

彼の転職理由は、まともであり大手企業特有の理由でした。

『今の会社では出来ることが限られていて、将来的に自分がどんなことをしているのか簡単に想像がついてしまう。

もっと業務領域を広げてスキルアップしたい、業務の質も追及できる環境で仕事がしたい』

といったものです。

不満直結型の「転職理由」はNG?

求職者の中には、転職を容易に考えてしまっている人もいます。

これは転職が当たり前となった時代背景も影響しているのでしょうが、現職で何か不満があればすぐ転職というスタンスは間違っています

正しい考え方は

  1. 企業に不満があっても我慢する
  2. 我慢が限界になったら、何度も会社に問題解決のための提案をする
  3. それでもダメなら転職する

というものです。

これを実践していないと、面接で「この人は転職後も嫌なことがあれば逃げ出してしまうな」と見限られてしまいます

転職を容易に考えている方は我慢以降がなく、不満が転職に直結してしまうのです。

これから、ご紹介する具体的な実例は、この典型です。

悪い転職理由その1

これは20代前半の女性求職者の話です。

見た目は清楚で、よほどの転職理由でない限り、どこかすぐに内定が出るなと感じました。

余談を挟みますが、転職では見た目がすごく大事です。特に女性は。

こんなことを言ってはいけないのかもしれませんが、知り合いの人事担当者や採用決裁者は皆同じことを言いますから、これが実情だと思ってください。

ズバリ言いますと、女性は容姿が採用基準です。

特に事務系の職種で未経験可の職種は、容姿さえ良ければ内定が出ると言って良い程です。

私は転職エージェントとして、いくつもの企業へ求人のヒアリングに出向きますが、この手の職種の募集要項だと確実に

『求人票には書かないでほしいけど、うちの上層部から容姿が良い子を採用しろと言われてるいるから、容姿が良い子だけ紹介して…』

といったことを言われます。

余談が少し長くなりましたが、話を戻したいと思います。

よほどの転職理由だった!!

実際に転職理由を聞いてみると『仕事が面倒だから、もっと楽な仕事ができる会社に行きたい』というものでした。

思わず苦笑いしてしまったのですが、転職を容易に考えている典型です。

彼女は、大学は私立のお嬢さま大学で、現在の会社には親のコネでギリギリ入社したため、これまで我慢や苦労をした経験が全くなかったようです。

本人なりに苦労や頑張ってきたことをいろいろ話してくれましたが、完全に世間ズレしている方でした。

ただ、この方は非常に素直で、スポンジのような性格といった長所がありました。

社会一般の基本的なアドバイスをすぐ取り入れ、見る見る成長した姿が見ることができました。

ただ、転職理由はもっと考えようということで、転職理由と志望理由をあえて混同させてネガティブな転職理由を目立たせなくしました

これだけネガティブですと、テクニックを使わざるを得なくなります。

結果、もともと容姿が良かったこともあり、すぐ内定が出ました。

転職先でも同じようにならないか心配していましたが、その後は転職希望の連絡を受けてないので頑張っているのだとは思います。

悪い転職理由その2

次の方は天然な性格で、自分に責任があることに気付けず印象が悪くなっていたケースです。

まさに『部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任』といった人物です(汗)

転職理由も『自分の力はあるけど、周りのレベルが低いので、もっとレベルの高い会社で働きたい』といったものでした。

スキルや経験は数多く積まれた方なのでしょうが、この内容をそのまま企業へ共有すると確実に見送りになると思い、もっと自分に意識を向けた自責の理由が必要だと伝えました。

ただ、この方はプライドが高く「自分の転職理由をそのまま企業に伝えてほしい」とありました。

結果は書類選考の通過率が0%です。

私のキャリアの中で、書類選考通過率0%はこの方だけです(汗)

結果を知り、ようやく見直すことを決めてくれたため転職理由について再考しました。

この方も時間はかかりましたが見事に内定を勝ち取り、その際に伝えた転職理由は

『今まで失敗や成功を多々経験してきましたが、良くも悪くも自分がその影響をもたらしてきました。

しかし今の会社で失敗をリベンジするのは難しく、もっと自分を追い込める厳しい環境で仕事がしたい

といったものになっています。

この理由は前向きな要素が含まれていて、なかなか良いものです。

最初の頃のように失敗を他人のせいにしては、いくら優秀な能力があっても採用したい、一緒に仕事がしたいとは思ってもらえないのです。

最後に良い転職理由

最後に良い転職理由を紹介します。

転職理由は現職含めた環境を否定的なものにすると、まず前向きに考えてはくれません。

正直さも重要ですが、時には本音と建前をうまく使い分けて転職理由を設計することが転職成功のポイントです。

転職の中ではネガティブワードというものがあり

  • 面倒くさい
  • つまらない
  • 嫌い
  • やりたくない

など、後ろむきな言葉を使ってはいけません。

特に、転職理由の最初の出番であるレジュメに記載する転職理由(志望理由も含めて)には、細心の注意を払いましょう。

私が経験したベストの転職理由は、

これまで周りのサポートがあって重要な仕事をさせていただきましたが、

成功も失敗も、もっと自分にダイレクトに返ってくる、刺激のある環境で自分を磨き、周りに還元したい

といったものです。

この転職理由には自分をへりくだる表現、自分をもっと成長させたいという意欲があり、自分の利益ではなく企業や周りへの貢献が優先になっています。

私の転職エージェント内では評判があり、なかなか転職活動がうまくいかない方には、この転職理由を紹介したりします。

転職理由と志望理由で丸々のウソをつくのはいけませんが、多少誇張したり矮小化(わいしょうか)したりすることも必要です。

書類選考では自分が何もできない状態になりますので、いかに面接まで進むかが大切です。

そもそも、転職理由と志望理由は違います

現職が大手企業で転職先にベンチャー企業を志望する求職者は、今お話した方と同様に「もっと裁量ある仕事がしたい」「業務領域を広げたい」という考えが根底にあります。

逆にベンチャー企業から大手企業への転職を志望する求職者は「労働時間が長い」「仕事とプライベートを両立させたい」という考えが根底にあります。

この方は前者で、理由は明確でアドバイスする点はありませんでした。

しかし志望理由が曖昧で、転職理由と志望理由を同じように考えてしまっていたのです。

どの企業でもこの理由を伝えたため『この人はベンチャー企業ならどこでも良いんだろうな』と思われてしまったのです。

つまりは、この方には企業に対する必然性が大きく欠けていたのです。

転職活動をする上で転職理由が重視されがちですが、志望理由も同じく重要です。

転職理由は「なぜ現職を辞めて、転職したいのか」ですから、主眼は現職になります。

一方、志望理由は「現職を辞めて、なぜその企業に転職したいのか」ですから、主眼は転職先になります。

結果、この方は転職理由と志望理由を整理したことですんなりと内定をもらい、希望のベンチャー企業に入社することができました。

この方の転職理由は非常に良いものでしたが、単純に転職理由と志望理由を混同していたのですね。

エージェントとの面談、転職理由はどこまで本音で話すべき?

求職者のみなさんが転職エージェントに提供する情報のなかで、企業にどこまでの情報が流れるのか気になるという方も多いと思います。

特に転職理由や退職理由です。

転職理由と退職理由は、厳密に言えば、別物ですが、大枠の意味では同じになります。

求職者のみなさんが持つ、転職理由が、現職や前職を批判するようなものであれば、それは、企業としては、ネガティブな理由ととり、求職者のみなさんも、それをそっくりそのまま企業へ伝えることは嫌でしょう。

すべての転職エージェントが均一に同じということはないのですが、転職エージェントは、転職支援はビジネスで行っているので、求職者のみなさんが不利になること=転職エージェントも不利です。

そのため、求職者のみなさんが転職エージェントに対して本当の転職理由を伝えても、それをうまく中和する言い方に変えて転職エージェントは、企業に報告することが多いです。

ですので、求職者のみなさんは、転職エージェントを信頼し、しっかりと本音で伝えても良いと私は思います。

ただ、一方、キャリアアドバイザーによっては、本音と建て前の世界を知らない若輩者も存在し、企業がネガティブと思うような求職者のみなさんの転職理由をそっくりそのまま伝えることもあります。

求職者のみなさんとしては、そのキャリアアドバイザーを登録面談内でしっかりと見極めて、このキャリアアドバイザーなら信用できると判断した場合に本音で話した方が良いと思います。

求職者が喋ったことは基本的に採用を行う企業にも伝えられる!?

求職者のみなさんが転職エージェントに伝えた内容を転職エージェントが企業に伝えるということはありません。

先述でもお伝えした通り、求職者のみなさんが不利になることは、転職エージェントにも不利になり、つまりは、転職エージェントとしては利益を得る確率が下がります。

転職理由やその他のネガティブな情報を中和することと虚偽をすることは違います。

うまい転職エージェントやできるキャリアアドバイザーは、このあたりのさじ加減に優れているのです。

あくまで、私の個人的な意見ですが、大手の転職エージェントであれば、年齢が高いキャリアアドバイザーが良いでしょう。

また、中小規模、特に小規模の転職エージェントは、この点については、かなり優れているので、どのようなキャリアアドバイザーであっても、安心できる存在だと思います。

求職者のみなさんが転職エージェントに伝えた内容は推薦状という書類に記載されますが、その記載内容には、求職者のみなさんが不利になる情報は記載されませんので、ご安心ください。

企業からすると、このことも織り込み済みで、転職エージェントから求職者のみなさんの紹介を受けます。

転職エージェントは求職者について知り得た情報を意図的に隠してはならない」というルール・・・

転職エージェントは、求職者から知りえた情報を意図的に企業へ隠してはならないというルールがありますが、これは、はっきり言って、遵守されていることはあまりないと思います。

なぜかと言いますと、求職者のみなさんは、現職に何の不満もないのであれば、転職などするでしょうか。

もちろん、本当にキャリアアップを希望して転職しようとする求職者の方もいるでしょうが、大半の求職者の方は、現職に何らかの不満があるから転職を希望するのです。

この背景から分かる通り、転職理由にポジティブな理由を持つ求職者の方は少ないです。

つまり、何度も言いますが、ネガティブな理由=転職エージェントにとっては不利な情報になりますので、それを、企業にそのまま伝えることはありません。

ただ、意図的に隠すということが発覚した場合は、問題行動になるのですが、意図的にという定義が、いまいち、曖昧で、表面的なことではなく、各キャリアアドバイザー個人に起因することです。

実態としては、意図的に隠していても、それを図ることは現実的に難しいですし、調査のしようがないことですので、意図的に隠しているということは、転職エージェント業界では暗黙の了解になっています。

転職エージェントの規模やその他の要素に関係なく、求職者について知り得た情報を意図的に隠してはならない」というルールは、運用上は遵守されていないことが大半です。

この記事を読んで少しでも転職活動が順調に進むことを祈っております。

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