転職するにあたって企業に聞いておくべきこと
転職活動において、最も安心するときは企業から内定をもらったときではないでしょうか。
私は現在、転職エージェントとして活動していますが、皆さん同じようなことを言いますし、私が転職活動をしたときも内定をもらったときが一番安心しました。
転職活動が絶対うまくいく保証はどこにもありませんし、必ずしも希望通りの企業から内定をもらえるとも限りません。
そんな状況で、ようやく決まった内定先に入社すると
『あれ?こんな話はなかった』
『こんな業務内容は聞いてない』
など、内定時の条件と異なることがあり、最悪は早期退職といったこともあるようです。
今回は、このようなトラブルを入社前に未然に防ぐためのアドバイスをさせていただこうと思います。
労働条件通知書の内容について
内定が出て転職先の条件が決まると、書面で労働条件通知書(会社によっては、内定通知書などと呼ばれる)が送られてきて署名捺印をして返送という手続きがあります。
この労働条件通知書は慎重に確認する必要があります。
分かりにくい内容もたくさんあると思いますが、入社前に確認すべき点は、この労働条件通知書に全て記載されていると思っていただいても過言ではありません。
絶対的明示事項のチェック
労働条件通知書は、法令その他の労働または社会保険の諸法令に従って作成されています。
(※労働条件通知書がない場合やこれから話す絶対的明示事項の記載がない場合はブラック企業といえます。入社は辞めましょう。)
以下の様な項目が絶対的明示事項とされていて、必ず労働条件通知書に書いていなければならない内容です。
労働者として事前に確認すべき項目
- 労働時間(残業代を含む)
- 賃金
- 休憩
- 休日
- 就業場所
- 業務の種類
- 社会保険加入の有無
これらの事項は全て、働く側としては絶対に聞いておいておきたい内容です。
企業からすると求職者に不安を与えないように、入社後に話が違う内容で働かせないためのエビデンスとして書面にて取り交わす契約書です。
特に注意が必要な明示事項
この絶対的明示事項はどれも重要なのですが、中でも労働時間と残業代、そして業務の種類、社会保険の有無は確認が必要です。
万が一、絶対的明示事項の記載内容が法令より下回っていれば、その箇所は法令の基準に差し替えられます。
実はひどい条件が出されいるのに気づかないで入社してしまうなんてことがないように、必ず内定が出たら細かく確認しましょう。
労働時間と残業代について
法令では1日の労働時間は8時間、1週間で40時間と決められています。
しかし、中には9時間とか10時間とか微妙にオーバーしていることがあるのです。
これは法令違反ですから、仮に転職エージェントを利用している場合は確認してもらいましょう。
そうでない場合でも、自分でその企業に問い合わせが必要です。
法令では、みなし変形労働制という特殊な働き方を認めています。
外出が多い営業系の職種では実質的な労働時間を正確に把握できないので、8時間をちょっと超えるぐらいなら8時間働いたとみなすという規定を設けています。
言い換えれば8時間を超えた時間(残業時間)の残業代を支払う義務がないのですから、企業にしてみれば助かる話です。
こういった背景で、残業代を払わないように通知書に記載する企業もあります。
最近の傾向で勘違い
最近では残業代の計算の手間を省くために、あらかじめ給与の中に一定時間の残業代を含んでいる場合が多いです。
大体は1カ月当たり30時間分の残業代が給与に含まれているというケースです。
これを理解していない人は労働条件通知書を見て
『あれ?希望の条件より給料が高い!』
『こんなにもらえるのか!うれしい!』
とぬか喜びになり、入社後
『え?そんなの聞いてない』
『30時間含まない時を計算したら希望条件より低い、だまされた!』
となってしまう場合があるのです。
業務の種類について
業務の種類が入社前後で違うということがよくあります。
ひどい場合は労働問題に発展して、せっかく転職したけど辞めるということもあります。
ベンチャー企業などでは労働環境の変化が多く、入社して数カ月後には労働条件通知書と違う業務を担当するといったことが多いのです。
これ自体は特に違法ではないのですが、理由が大事です。
必ず、どういう場合に業務変更や部署異動があるのか確認して書面に残しましょう。
会社経営の不振による業務変更や部署異動はやむを得ない事由と解釈できますが、「業務粗悪のため」といった漠然な理由だと判断しがたいので、できれば定量的に記載した方が良いでしょう。
社会保険の有無について
ある一定の労働者を上回る人数を抱える企業は、必ず社会保険に加入する義務があります。
- 労働災害保険
- 雇用保険
- 健康保険
- 厚生年金保険
労働災害保険は企業が全額負担で、その他は企業と労働者が折半負担します。
この社会保険が意外と高いため、企業は負担したくない訳です。
「試用期間中は、社会保険の負担は無し」などといった記載は違法です。
社会保険の負担がないということは、将来の年金額に反映されない期間があるということです。
健康保険の加入もないので、病気やケガをした際は全額自己負担です。
社会保険の負担が『無』と書いている企業は基本的にブラック企業ですから、入社しない方が良いです。
試用期間中の社会保険加入を無しとしているのはエステティック業界に多いので、当てはまる方はご注意ください。
実際にあったトラブルケース
次に実際にあったトラブルと、その対応策についてご紹介します。
転職サイトを利用していた私の友人が、面接で『この上司と相性が気になる』と思っていた企業から内定をもらい、転職活動で苦戦していたため入社しました。
面接での嫌な予感は入社して数か月後に的中します。
最初はその上司も一定の良い距離感で接していたようですが、数か月後、その上司は態度を一変させてパワハラをするようになったそうです。
その上司は会社上層部にはうまく対処しており、結局問題解決には至らず事態はそのままという状態でした。
その上司が原因で同僚が退職するといったこともあり、自分の前任もこの上司の問題が理由で退職していたことが分かりました。
友人は面接で前任の方の退職理由を聞いたところ「自分のやりたいことが見つかったため退職した」と聞いていたそうですが、実情は違うのです。
結果的にこの友人は、耐え切れず会社を辞めてしまっています。
この場合、事実と違うことを聞かされたため訴訟できるのではないか?と思うかもしれませんが、前任は実際に表面上「やりたいことが見つかった」という名目で退職をしていたため、起訴はできませんでした。
私は、内定後の企業と会食などでコミュニケーションを図るべきだったと思います。
面接では分からないその人の特徴や本質も、会食だったら把握できることもあります。
また、このような事態を未然に防ぐために内定後のフォローもしてくれる転職エージェントを利用すべきだったと思います。
転職サイトを利用するデメリットが如実に現れた内容だと思います。
最後のまとめ
私は長年、人事担当として、また現在は転職エージェントとして雇用の現場に携わっています。
このような「内定時と入社後で約束した条件が違う」、「同僚や上司と相性が合わない」というトラブルはよく耳にします。
途中でもお伝えしましたが、労使対等の労働契約書(労働条件通知書)を取り交わしたとしても、入社すると立場は強者と弱者に変わってしまうこともあります。
問題が起こってからでは遅いため、その前にリスクヘッジすることが何より先決で大切なことです。
最後になりますが、このようなトラブルに巻き込まれて、貴重な時間を多く費やし内定を勝ち取った訳ですから、その後はぜひ充実した仕事生活を送ってほしいと思います。