病歴を持つ求職者の転職はどうなるか?病歴が転職に与える影響!

転職市場は、求職者のみなさんが転職活動を行うだけの市場ではありません。

転職するためには相手となる企業から内定を受けて採用されることが絶対条件です。

人材業界では、転職市場は採用市場といい、名称が変わります。その理由は、『視点の違い』です。誰の視点で市場を考えるかにより、転職市場と採用市場が変わります。

転職市場は求職者視点、採用市場は企業視点となります。

同じ市場であり、求職者のみなさんは、企業から採用されることが転職になりますので、

この観点で考えると、採用活動を行う企業がどのような視点で採用活動を行い選考し、採用するのかを知ることは、求職者のみなさんにとって転職決定への近道です。

病歴を求職者、企業の立場から考える

求職者の方のなかには、やむを得ない理由で、体調を崩し、病気やケガとなる病歴を持っている方もいますので、

  1. 病歴が求職者の方にどのような影響を与えるのか
  2. 病歴に関して企業はどのようなことを思うのか

についてご紹介できればと考えています。

これまで誰でも一度は風邪などの軽度の病気をしたことはあると思います。

風邪程度という言い方が適切かどうかは別にして、今回のテーマの主役である病歴や病気に比べると確実に軽度です。

風邪で会社を休んでも、病歴にはなりませんが、これからご紹介する病歴の病気については、同じ病気でも風邪とは違い、転職活動においては病歴になります。

まずは、転職活動においての、病歴の定義から今回の話を起こしていこうと思います。

転職活動における病歴の定義

転職活動を既にされている求職者の方は、経験があるかもしれませんが、企業の選考を受ける際に、書面で病歴の確認や面接で面接官から健康状態について聞かれたことがあると思います。

病歴について触れない企業もありますが、病歴や健康状態について選考中に確認する企業が普通だと思います。

この病歴の定義は、過去に重度の病気をして、その病気が今後の生活や仕事に支障があるかが基準になります。

例えば、交通事故により足を骨折してしまい、その骨折の影響で歩行が困難になったとします。

そうすると、今までは生活や仕事に影響はなかったとしても、その後は、生活や仕事に影響するため、転職活動においては、病歴になります。

骨折でも、一時的にギプスや松葉づえにより歩行が困難な場合、完治すれば病歴になりません。

しかし、ケガの場合は見た目で判断することができますが、病気の場合、見た目で判断することができない場合もあります。

また、最近、増えている精神疾患については、第三者では分かりにくい病気であり、また、本人自信も治癒や完治状態にあるのかどうか確実なことは分からないということもあります。

転職活動では、治癒や完治していない場合や治癒や完治しても後遺症をもたらし、生活や仕事に影響がある場合は、病歴になると考えていただければと思います。

病歴をなぜ、企業は確認するのか?

なぜ、企業は求職者の方の病歴を確認するのでしょうか。

理由は、求職者の方を考えているというよりも、企業のリスクマネジメントが中心です。

求職者のみなさんは、労災という言葉をご存じでしょうか?労災とは、『労働者災害補償保険法』が正式名称なのですが、名称が長いため、一般的には労災と呼んでいます。

この労災は、求職者(労働者)の保護が目的で、業務中、または通勤中にケガや病気,災害に遭った場合、ケガや病気を治すための通院費を補償することになっています。

また、ケガや病気にかかり後遺症・障害が残った場合、障害により普通に仕事をすることができなくなります。そうなった場合、減給されるのが一般的で、その減給分を補償してくれるのが労災になります。

他にも、ケガや病気により仕事をすることができず、会社を休業する期間の生活補償として金銭面の援助もあります。

労災保険料は企業が毎月全額負担してくれます。ですので、現職中の業務上、通勤上でケガや病気になった場合、労災の適用を受けることができます。

労災保険料を全額負担するため・・・

労災保険料は、企業が全額負担することが義務化されていますので、必ず企業が全額支払うことになりますし、それが企業責任です。

労災保険料の算出方法は、従業員の数ももちろん含みますが、これまでの労災発生件数や、企業が行う事業の労災発生率が高いか低いかも算出の項目に入ります。

つまり、労働者が業務中や通勤中にケガや病気をする度に、労災保険料が上がります。

全額負担しなければならない企業からすると、経営コストが上がり、事業運営と直接関係のない間接コストは、極力下げたいと考えます

病歴を持つ求職者の方が、そのままある企業に転職してその病気が再発したとします。

たとえその病気が転職後の業務によって直接引き起こされていないとしても、業務を行ったことで、病気が再発したと認識されることがあります。

その場合、M求職者は労災認定を受けることになります。

求職者のメリット、企業側のデメリット

  • 求職者:再発により通院や休業などの補償がでる
  • 企業側:労災保険料の支払額も一気に上がり、経営コストが上がり、利益率に影響

したがって、企業は病歴を持つ求職者について神経質になるのです。

労災については、最近、過重労働などにより労災認定を受けるなどニュースになっていることも多く、一般社会としても意識が強くなっています。

それにより、さらに企業も病歴については意識が上がっています。

精神疾患は特に不安

求職者の方も病歴を持つことは、再発の恐れがあるため、仕事に限らず日常生活においても不安があると思いますが、企業も同じように不安を持ちます。

目に見えるケガについては、目視することで判断することができますし、採用後も、労災認定になる業務上や通勤上に影響する確率は低いので、不安は軽減します。

しかし、目に見えず、求職者の方自身も、自分が治癒、完治しているのか明確には分からない精神疾患については、企業は特に不安に思います。

精神疾患の場合、日常業務とは直接関係ない場合でも労災の認定になるリスクが高いです。

求職者のみなさんは、現職で所定労働時間を超えた範囲となる残業をされていると思います。

この残業時間の範囲は、求職者の方それぞれに違うと思いますが、平均的には月間30時間前後と言われています。

仮に病歴を持つ求職者の方を採用した企業が、その求職者に採用後に月間、30時間前後の残業の事実があったとし、その間精神疾患が再発したとします。

月間30時間であれば、特別、多い残業時間にはなりませんが、その求職者が、

「残業時間が理由で再発した」

と医師に相談したとすれば、労災認定の範囲になります。

企業は、この場合も労災認定を認めることになり労災保険料も上がります。

採用する企業にとって、精神疾患の病歴を持つ求職者は、いつどうなるか分からない要素が大きいため、採用において不安を持つことが多いです。

病歴の公表

ここでは求職者のみなさんが、自分が応募手続きをする求人企業に対して、自ら病歴を企業に伝える必要があるのかどうかについてご紹介したいと思います。

転職エージェントの立場

病歴は伝えた方が良いと思っています。

企業によっては病歴が選考に影響することもあるので、病歴を伝えると求職者のみなさんにとって不利になることもあります。

一方で、伝えておかなければ、入社後に企業に迷惑がかかることが想定されます。

そういった意味で、事前に自分の病歴については伝えておいた方が、求職者のみなさんとしても気分的に楽だと思います。

個人的な見解

個人的には、病歴を聞かれなければ、進んで自ら伝えることはないと思っています。

現職の仕事や転職活動に影響しないほど治癒、完治していれば、それは過去のことであり、現在に支障がないと思います。

言う、言わないについては、転職エージェントとしての意見、私個人の意見で相反する形になりますが、このあと、ご紹介する理由が重要です。

この理由については、個人ではなく、転職エージェントとしての経験上をもとにお伝えします。

病歴が発覚する確率

今の日本は個人情報保護法の規定により、当人以外が、当人の個人情報を取得、公開するためには、個人情報元である当人の同意を得ることが義務になっています。

病歴については、本人の個人情報に該当しますし、病歴は個人情報のなかでも、重要情報の一つになっています。

これは、転職活動に限らず、求職者のみなさんも一般的な見解として、自分の病歴を自分が知らないところでやり取りされることは不快に思うでしょうし、恐怖に感じることもあると思います。

病歴は個人情報に該当し、企業が求職者の同意なしには、調査することはできません

また、調査についても企業は転職後に病歴の傾向がない場合は、普通に仕事をしているという判断をしますので、病歴を調査することはありません

転職エージェントとして、企業に求職者の方が転職後にどこまで気にしているのか聞いたことがあるのですが、ほとんどの企業は、特別、支障がないのであれば、病歴をわざわざ調べることはしないと言っています。

調べることはできますが、企業は求職者のみなさんが転職後は、病気の傾向がある場合を除き、時間とお金をかけてわざわざ調べるようなことはありません。

病歴を転職エージェントに言うべきか?

私も転職エージェントとして活動をしているので、求職者のみなさんの転職活動に責任があり、また、企業の採用活動にも責任があります。

求職者のみなさんは、転職エージェントを利用する際にキャリアアドバイザーなどに自分の病歴を聞かれた場合はウソなく答えた方が良いと思います。

ただ、先ほどお話した通り転職エージェントは病歴について求職者の方に聞くことはほとんどありませんので、企業の選考同様に自ら病歴を伝えることは不要だと思います。

病歴が選考に与える影響

求職者のみなさんも企業の選考を受けた場合、健康状態について書面でQ&A形式で聞かれることがあったという方もいるかもしれません。

最近の企業の流れとしては、面接前に、5分程度のアンケートを採り、そのアンケートに病歴を含めた健康状態について確認することがあります。

特に、健康に関する事業を行う企業においては、この傾向があります。

企業のなかには、病歴を持っていても今現在治癒、完治しているのであれば選考に支障がないとします。

ただ、転職後に問題なく就業できる証明として病院や医師から治癒、完治の証明書を提出するように依頼することが多いです。

企業のなかには、アンケートなどで病歴を確認した段階で、マイナス評価として、病歴を理由に選考見送りとする企業もありますが、私の経験上、病歴=一発アウトということはあまりありません。

過去の病気が現在、今後に支障がないと証明できる場合は、考慮する企業が増えています。

また、証明書のほかに、企業のなかには、現職などで健康診断を受けた際の健康診断の結果の提出を求めて、それを証明書の代替とする場合もあります。

病歴を持つ求職者の方に、個別で、健康診断などを受診するように依頼する企業もあります。

病歴&休職

病歴を隠すために、職務経歴書に休職期間がなかった等事実とは違う内容を記載しては絶対にいけません

病気やケガにより休職期間を持ってしまうと、自分の職務経歴を企業に共有するために、職務経歴書の提出が必須です。

その際に、休職期間とともに、『なぜ、休職したのか?』という理由も記載しなければなりません。

仮に、休職期間という結果だけを記載した場合、その理由を必ず企業や転職エージェントは気になり聞いてくると思いますので、結果として、相手に分かるということになります。

その場合も、先ほど、お話したように、今の健康状態が証明できれば問題ないことが多いですので、正直に記載した方が良いと思います。

休職はなくても病気やケガをしたという方は、休職期間がありませんので、履歴書や職務経歴書だけで面接官や転職エージェントが分かるということはありません。

病歴があっても休職期間があっても転職できる!

求職者のみなさんは、ブラック企業が面接で実際の労働環境とは違うことを伝えることを、どう思いますか?きっと良い気持ちにはならないと思います。

それを同じです。聞かれていない場合は、自ら答える必要はないですが、在籍中に病歴により休職期間を持った場合は聞かれないなかでも事実のことを必ず記載しましょう

転職エージェントとしての経験上、病歴による休職期間を職務経歴書に記載しても、病歴が完治、治癒していることを証明できれば、選考に影響しないことも多く、十分転職できます。

企業の採用活動や採用基準は、病歴を中心に考えているのではなく、これまでの職業経験からなる業務経験やスキル、能力、そして人間性が中心です。

病歴は自分の経歴の一つという考え方にしていただき、病歴があるため、転職できないとか、苦戦するとか、先行的に考えることはやめましょう。

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