【最終回】消耗品・雑貨業界を渡り歩いた20年の転職記~今まで避けていた謎の企業への転職~
悪名高い噂の企業
さてまたもや無職になってしまったわけですが、今回は自己都合退社なので誰に文句をいう訳にもいきません。
やむを得ず仕事を探しますが、ハローワークへ行ってもこの業界の仕事というのはあまり募集がなく、あったとしても明らかに第二新卒狙いという給与体系です。
以前いたことのある会社がまたしても社員を安い給料で募集しており、苦笑いしながらも案件を探します。
この時期は本当に出物がなく、ハローワークでも転職サイトでもまったく案件出てきませんでした。
そろそろ雇用保険が切れるという時になって、知人が声をかけてくれました。
「私、まだあそこの仕事しているんだけど、やってみますか?」
「あそこ」
というのは以前この知人に紹介してもらった企業の事です。
彼は営業部長としてその会社に勤務しているのですが、給料がかなり安いことと、その時ちょうど別件で採用されたところがあったのでお断りした経緯があります。
別業界から雑貨業界へ新規参入してきたベンチャー企業で、一時大ヒット商品を持っており、それで業界で有名になった会社です。
しかしとにかく離職率の高い会社で、取引先からも
「あそこ1年で5人も営業が変わる上に全然つかまらないんだよ」
という会社でした。
実は私の後輩もそこに入社したことがあるのですが、3ヶ月しか持たなかったそうです。
「あいつで3ヶ月なら俺なんか3秒しか持たないな」
と思いつつ避けてきた企業なのですが、今回ばかりは背に腹は代えられません。
全社員で50名ほどの雑貨メーカーです。
社長が変われば会社は変わる?
この会社に入社する決心をしたのは、社長が代わったと聞いたからです。
以前はそれはそれは強烈なキャラクターの初代社長のオーナーカンパニーだったのですが、オーナーがその会社を売りとばし、今は別の社長がやっているとのことでした。
そして、知り合いの営業部長の直属アシスタントのポジションということだったので、それなら大丈夫だろうと入社したわけです。しかしそこには恐ろしく強烈な営業課長がいたのです。
実はこの営業課長、前々職で一緒だった新規開拓マネージャーと同じ会社の出身だったのです。さっそくどんな人だったのか探りを入れて見ます。
「えっ、あいつ今課長なんかやってんの。全然そんな器じゃなかったのになんで?」
どうやら彼もその営業課長とはそりが合わなかった様子です。そして
「あの人と上手くやろうと思ったら、完全なるイエスマンになることだね。そうじゃなければ対立するだけだよ」
どうやら昔からかなり強烈なキャラクターだったようです。確かにあの強烈な性格は一朝一夕に出来るものではないでしょう。
かなりの不安を抱えたまま私は新しい会社で仕事をすることになりました。
つかの間の平和
それでも半年ほどは平和な生活が続きました。私は営業部長の直轄で、営業課長とはあまり話をする必要がなかったのです。
また、営業課長も私にはあまり話しかけては来ませんでした。
私はあるプロジェクトを任され、部長と二人で動いていたので、あまり他部署の人とも交流することがなく、直行直帰で良いと言われていたのでしばらくは単独行動でした。
若い営業の子同士は仲が良く、ずいぶん年上の私にも気を遣ってくれました。
彼らは二年ほどこの会社にいるとのことでした。しかしこの会社で二年いるというのは大変長いことなのです。その証拠に3年続いている営業さんはいないのです。
来る者去る者
以前ほど離職率は高くないようなのですが、ちょいちょい誰かが入社し、だいたい3ヶ月に1回は誰かが辞めていきます。
入社して1年のうちに経理一人、営業一人、営業補佐一人、マーケティング一人、生産管理一人が辞めました。
中でもかわいそうだったのが営業で入社した人でした。感じのいい方で、40代で私と年も近く、世代的に近い人が入社してきた喜んでいたのですが、一週間ほどで辞めてしまいました。
理由はその強烈な
「営業課長とはやっていけない」
という理由でした。
歳も近いため、ちょいちょい喫煙室に一緒に行ってタバコを吸ったりして、仲良くなれそうだっただけにとても残念でした。
またこの方と私がよく喫煙室に行っているのをみんな見ていて、
「あいつが何か吹き込んだんじゃないか」
という噂が立っていると教えてくれた人がいました。
とんだとばっちりです。そもそも入社1週間も経っていないうちに営業課長から
「こんなルートで新宿行く奴なんかいるのかよ」
と交通費の清算書を怒鳴りながら叩きつけれらたらそれだけで拒否反応を示すというもの。
まあ、彼にとってはやめて正解だと思います。
そしてしばらくしてから私の昔の同僚が二名ほど入社してきました。
ひとりは10年ほどのつきあいでもう一人も6年ほどのお付き合い。これで心強くなりましたが、二名とも地方での採用のため、あまり会う機会がありません。
でも、電話で愚痴を言える仲間が増えたのはうれしかったです。
営業課長との対決
私の直属だった営業部長が役員に昇格し、現場とは一線を引くことになりました。
自動的に営業課長が営業部長になり、私の直属の上司になりました。これで逃げも隠れも出来なくなりました。
この方、人間的には悪くない面もあるのですが、こと仕事のことになると口が悪いというか自分の思い通りにならないと怒鳴りつけるというか、かなりヒステリックな面を持っているのです。
それこそイエスマン以外は許さないと言った感じです。若い子たちも完全にイエスマンです。
裏ではかなり悪口大会のようですが、オフィスにいるときには完全に軍隊のように従っています。
私もイエスマンとしてやっているつもりなのですが、イエスマンとしてはまだまだらしく、怒鳴られることしばしばです。
仕事でとちった時ならまだしも、
「忙しいんだから携帯に電話を掛けるな」
などとよくわからないことでも怒鳴ります。
こちらも急ぎなので掛けたくもない電話をかけているのですが。
私はあまり怒鳴る上司に当たったことがなかったのですが、こういう人って結構いるんでしょうかね。
電話をすれば
「メールで十分」
メールをすれば
「メールですむような話か」
話しかけようとすると
「後にしろ」
と言われます。
会議で何かを質問しても、
「そんなレベルの事は誰か他の人に後で聞け」
と言われますし、説明しようとすると
「何言ってるかわからないから後でメールして」といった感じです。
こういう態度は実は私にだけではないのですが、やなり新参者の私にはかなり厳しく感じます。
私と、私の後に入った営業さんにはかなり風当たりが強いです。
そして社長退陣
現在はまあなんとか転職し、そりの合わない上司はいるものの仕事があり、昔の仲間も入社してなんとかやっております。
そんな中、社長が代わることになりました。
この社長は二代目なのですが、現場のことをよく理解しようとしており、久しぶりに出会ったいい社長でした。
しかし諸般の事情で退陣することが決まったようです。正確な理由はまだ公表されておりません。公表されることもないかもしれません。
社長が代わっても会社は変わらなかったりしますし、ドラスティックに変わる場合もあります。
今後どうなるのか私自身にもまだわかりません。
ここにいるのか、ここではない何処かへまた行かねばならないのか、まだまだ道の途中です。
エピローグ
私としてはこの会社にいることも営業でいることも天職だとは思っておりませんが、この業界が好きなことは事実のようです。
人生結構生きてきても自分の事ってわからないものですね。
私は人から見たら営業に向いているように見えるようですが、学生の時の友人たちは
「お前が営業なんかやってんの」
と言います。何が天職なのかは自分にも分らないのかもしれません。
「ドクタースランプ」や「ドラゴンボール」でおなじみのかの鳥山明先生をして「自分は週刊連載漫画に向いてない」とおっしゃったそうです。
鳥山明先生が週刊連載漫画に向いていなければいったい誰が向いているんだろうと思いますが、向いているのと出来ることはまた違うのかもしれません。
転職をお考えの方へ
何回も転職している私が言うのも何ですが、客観的に見ていい会社であれば転職はしないほうがいいかもしれません。
長いこと一つの会社にいれば、社内も社外もおなじみになるし、退職金だってもらえます。歳を取れば古株の顔をして先輩風を吹かすこともできます。
しかし、転職をおそれることはありません。体や心を壊してしまうくらいなら迷わず転職をお勧めします。
今が監獄だと思ったら脱獄すればいいのです。抜け出す決心が出来るのはあなただけです。
もちろん上手くいかないこともあります。居れば監獄出てみりゃ地獄、なんていうこともあります。
しかし、渡る世間は鬼ばかりではありません。
世の中いい奴ばかりじゃありませんが悪い奴ばかりでもありません。
だから私はいい会社ばかりじゃないけれど悪い会社ばかりでもないだろうと信じています。
私は商才がないので、自営業は無理だろうと考えていましたが、50代になり、定年も見えてくる年になったら自営業は定年がなくていいなあと思いはじめました。
まあ、そんなことは一朝一夕に出来ることではありませんが、一つの夢、一つの選択肢として考え始めています。
私のことをブルーバードシンドロームという人もいるかもしれません。
でも仕事は生きている限りは続くものだし、楽しく仕事をしたいというのは誰でも願うことだと思います。
それを探し続けるのは決して悪いことだと思いません。
最後に私に思いつく転職についてのアドバイスを書いて、終わりにしたいと思います。
- 体と心が壊れそうになったら転職を視野に入れる
- 少しでも転職を考え始めたらまず転職サイトに登録し、継続してチェックする
- 出来る限り転職前の退職は避ける。足元を見られます。
- 自分にできることをよく認識する。頑張ってもできないこともあります。
- あきらめがつくならあきらめる。あきらめがつかなければチャレンジする。
当たり前のことばかりですが、転職をお考えのどなたかのご参考になれば幸いです。
それでは楽しい未来に向かってがんばりましょう。
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