公認会計士の転職 年収はどう変わる?
具体的にどんな選択肢がある?
弁護士、医師、公認会計士。これらは三大国家資格と呼ばれます。今回はその中でも公認会計士の転職に注目したいと思います。
投資銀行・M&A
公認会計士は、お金に関わる業務のプロフェッショナルです。
そのため、税理士と何が違うのか?と疑問に思う方もいるでしょう。
公認会計士は税理士よりもレベルの高い資格で、扱う金額も税理士よりも大きいです。
補足情報として税理士の主な業務は、税関係のことになり、企業の税務署への提出資料の作成や代行業務になりますが、公認会計士の場合は、これよりもはるかに大きな金額を扱うことになります。
お金を扱う企業と言えば、求職者のみなさんは真っ先にどのような企業を思い描きますか?
浅はかかもしれませんが、私の場合、銀行をイメージします。
銀行は求職者のみなさんも含めた個人のお金を預かり、運用する機関です。
なかでも、公認会計士と相性が良いとされるのが、投信銀行です。
投資銀行は、新規に企業を設立する創業者や企業が新規に事業を立ち上げる際に、投資する機関です。
また、投資銀行は、企業のM&Aとも関わりがあります。
企業同士で、合意があれば、ある企業が行う事業をそのまま買収することもありますし、または、企業そのものを人も含めて買収するケースもあります。
そこには非常に大きなお金が動くことになりますが、企業にゆとりあるキャッシュがあれば、投資銀行を利用する必要はないのですが、手持ちが不足していても、その事業や企業に将来性を感じるのであれば、ある程度の借り入れをしてでも買収したいと思う企業もあります。
ここで投資銀行の出番です。
M&Aを行う際に、投資銀行は、投資を希望する企業の将来性や財務状況を見て、デューデリを行い投資の有無を決めます。
その際、専門的な知識やノウハウを活かし、適切な判断をする役割が必要になりますが、それが公認会計士です。
公認会計士はお金のプロフェッショナルであり、投資銀行はM&Aも含めてお金を日常的に扱う機関です。
ともにお金に特化したサービスと言ってよく、公認会計士のニーズは高いです。
転職可能性も十分ありますし、公認会計士は、取得難易度が高く、資格取得者が飽和しているということはありませんので、転職市場に求人も豊富にあります。
年収
では、公認会計士として、投資銀行に転職すると、年収はどのようなものか、やはり気になるところだと思います。
これだけ高いレベルの資格を持ち、お金を扱う投資銀行に転職する訳ですから、ある程度、求職者のみなさんも期待するところでしょう。
私が転職エージェントとして知る投資銀行の公認会計士が叩き出している年収は、軽く1000万円を超えてきます。
この1000万円という年収は、投資銀行の公認会計士としては、ぶっちゃけ安いです。
私が今まで知り合った投資銀行の公認会計士で最も高い年収は6000万円です。
6000万円は、一握りと思う方もいるでしょう。
しかし、投資銀行の公認会計士の場合、年収の感覚が他の業界や職種と比べてもちょっと感覚がズレています。
一般的に金融業界の年収は他の業界よりも高いとされていて、そのなかでもM&Aも行う投資銀行の年収は頭一つ抜けるぐらい年収が高いと言われています。
この前提があり、三大国家資格の公認会計士ですので、年収が高いということは必然とも言えることです。
よくメディアで、お金に関係する事件が話題になりますが、そのなかで、公認会計士の詐欺事件などもあるかと思いますが、公認会計士は、やろうと思えば、大きな金額を詐欺することもできる非常に際どい職種です。
その人のモラルや人間性が前提となる、信頼できる人間であるからこそ、大きな金額を扱う公認会計士として投資銀行は雇用する訳です。
すこし余談になりましたが、投資銀行で公認会計士として転職することができれば、転職しない限り、高額所得者になることは間違いありません。
ちなみに、投資銀行の公認会計士としての選考基準は、それだけ高い年収を支払う訳ですから、かなり高いですし、先程、触れたように詐欺を行うこともできる立場になります。
ですので、信用や信頼が必要で、そのために、求職者のみなさんの選考時に提供する履歴書や職務経歴書だけでは不十分で、前職調査を行い、第三者評価も重要になります。
業務内容
続いて投資銀行の公認会計士の業務内容ですが、これは、年収の部分で多少触れたと思いますが、基本的には企業との交渉を行うことになります。
企業は、銀行からどのように、どれぐらいの金額を投資してもらえるのかというところに着目しています。
そのため企業によっては財務状況をよく見せてテクニックとして大きな金額を投資してもらうようにすることもありますが、それをしっかり、プロフェッショナルの視点で見極めることが公認会計士の仕事です。
投資銀行は、企業に投資することで、その企業がその後、成長し、大きな利益を得た際に、キャピタルゲインを手にしようとする訳です。
それが投資の見返りになりますが、投資銀行はその大きな利益を得るために、投資する段階で確実な見極めが必須になります。
公認会計士として投資銀行に転職すると確実に投資担当者に任命されるでしょうし、また、転職市場にある求人にも転職後の必須業務に投資担当者としての業務はあります。
公認会計士の知識がどう生かされるのか
投資銀行へ公認会計士として転職すると、その知識や経験やフルに活かすことが可能になります。
というのは、投資を希望する企業の担当者は、その企業が顧問契約する公認会計士であることも想定されますし、また、実務担当者は同時に財務担当者であることも間違いありません。
公認会計士の資格は、簿記、企業法、租税法、監査論、経営論とお金に関連する実務や法律のほか、企業の経営に関する内容も含まれています。
投資銀行は企業がM&Aを行う際などにお金を投資する訳ですので、ただ、財務状況を確認して投資するかどうかの判断を行うのではなく、投資を希望する企業の経営についても、一定以上の調査をする必要があります。
また、投資が難しいとされた場合、その企業がどのようにすれば、投資を受けることができるのか、経営コンサルティングのような業務も発生することがあるため、公認会計士の知識はかなり活かすことができると思います。
社内競争の激しさの程度
社内競争という若干、理解が難しい表現を使っていますが、投資銀行には公認会計士の資格を保有する従業員が多くいます。
そのため、社内でも競争があり、他の公認会計士の資格を有するライバルよりも、実績を残し、指名を受けるぐらいにならないければ、投資銀行では昇格することは難しいと言われています。
私が取引する投資銀行の人事担当者は、投資銀行に在籍する公認会計士の従業員については、『雇用契約があるため、社員という立場はありますが、実際には、社内で独立しているようなもの』と表現しています。
それだけ、その立場は、実績、結果ありきで評価され、公認会計士と言えども、実績や成果が出ない場合は、簡単に解雇されることもあるそうです。
特に外資系の投資銀行は、日系の投資銀行よりもシビアだと言われています。
経営コンサル
次に転職の可能性として経営コンサルをご紹介したいと思います。
投資銀行のなかで、軽く触れた通り、公認会計士は、経営論も試験の科目に含まれていますので、経営コンサルティングを行うことも可能な資格です。
経営コンサルティングは、いくつかあるコンサルティングのなかでも最上位と言われていて、だれでも希望すれば経営コンサルティングの職で転職できるとは言えないものです。
もちろん、公認会計士の資格を持っていなくても、経営コンサルティングとして転職することができます。
実務に従事することもできるのですが、公認会計士の資格を持っていればその立場を他の方から認められ、仕事が舞い込んでくることが非常に多いです。
そのため、経営コンサルティングを行う企業は、公認会計士の資格を持っている求職者の方を必要としていることが多いですし、その他で言えば、MBOなどの経営資格を有する方を優遇することがあります。
年収
経営コンサルティングの年収について、ご紹介すると、投資銀行の公認会計士よりも平均年収は下がりますが、他の業界や職種に比べると十分すぎるぐらい高い年収を得ることが可能です。
経営コンサルティングとして転職することができれば、高い年収をキープすることはもちろんのこと、それ以上に社会的立場を得ることもできますので、それも踏まえると、銀行からの借り入れも特に問題なく審査が通過します。
その意味で、借り入れも年収と考えることもできるかと思います。
業務内容
経営コンサルティングとして公認会計士の仕事はどのようなものかと言いますと、まさに、取引する企業の経営問題を解決することにつきます。
どうすれば事業が成長し、利益を多く生むことができるか企業の経営者と一緒になって考えることが仕事になります。
余程の大企業でない限り、中小企業やベンチャー企業の経営者は、経営者としてまだまだ浅い知識や経験であるため、外部の経営コンサル企業と取引して専門的な意見や情報を得ることが多いです。
経営コンサルティングとして公認会計士が仕事をすると、その実績や成果にもよりますが、その企業から引き抜きをもらうこともよくあります。
また、友人や知人関係が必然的に企業の経営者であることがよくあり、経営コンサルティングとして仕事をすると、必然的に経営的な情報が自分に入ってくるため、近い将来、自分が起業することもよくあります。
公認会計士の知識がどう生かされるのか
経営コンサルの場合、特に公認会計士として経営論や企業法の情報や知識が役に立ちます。
また、その他で言えば、他の企業の経営コンサルも兼務しているため、いろいろな企業の経営情報を知っているため、その情報を知識として、企業へ提供することもできるでしょう。
また、試験科目には入っていませんが、人事的な人事戦略の部分も経営コンサルティングには必要なことですので、他の企業の人事戦略を自分の経験としてインプットして、それを他の企業へアウトプットするということもあり得ることです。
経営は、人、モノ、金、情報の4つの資源からなりますが、公認会計士として経営コンサルティングを行うということは、そのすべてにおいて、十分な情報や知識を持っていることが必要です。
若手の公認会計士では経営コンサルティングとして、大成することは難しいとされていますので、ある程度、公認会計士として企業の経営に外部として関わり情報やノウハウを得てから、転職した方が良いと思います。
社内競争の激しさの程度
経営コンサルティングの場合、公認会計士の社内競争はそこまで激しいものではありません。
なぜかと言いますと、経営コンサルティング企業の内情は、完全に縦割りになっていて、それぞれの役職により担当できる業務が決まっているからです。
ですので、年齢が若く、または、公認会計士として経営コンサルティングの実績がまだ浅い社員については、経営コンサルティングと言っても、資料作成や上司や先輩の足回りのサポートがメインになります。
そのプロセスを経て、いっぱしとして企業の経営コンサルティングに従事することができるため、ある意味では、年功序列の要素も経営コンサルティング企業の社風にあります。
とは言え、経営コンサルティング企業は、入社間もない社員でも他の業界や職種に比べて年収が高いため、メイン担当者ではなくても、ある程度の年収を得ることができます。
総合商社
続いて、総合商社に公認会計士として転職した場合ですが、この場合は、可もなく不可もなくということです。
その理由は、公認会計士の資格を有しながらも総合商社に転職するということは、転職エージェントである私からすると、結構、異色です。
総合商社は、お金や経営の専門企業ではなく、物の売買を専門に扱う企業です。
そのため、公認会計士の難易度が高い試験を突破して、総合商社に転職するということは、個人的には勿体ない選択ではないかと思います。
先述でご紹介した通り、やはり、お金や経営のプロフェッショナルですので、銀行関係や経営コンサルティング企業へ転職した方が、よりその資格を生かすことができるのではないかと思います。
ただ、総合商社も最近ですが、公認会計士の資格を持つ求職者の方を求めることが増えつつあり、それに比例して、転職条件も向上しているので、公認会計士の資格を有する求職者の方は、総合商社の動向は押さえておいた方が良いでしょう。
年収
年収はどうかと言いますと、はっきり言いますと、中の上です。
これは、少しひいき目にみて判断しているのですが、もしかするとそこまで他の業界や職種と大差はないかもしれません。
ただ、総合商社ですので、大手ともなればかなり安定的な立場を勝ち得ることはできますので、公務員に匹敵するぐらい安定的な生活を営むことが可能になるかと思います。
具体的な年収ですが、公認会計士の資格を有するからと言って、優遇されないこともあり、平均的には800万円前後と言われています。
投資銀行や経営コンサルティング企業に比べると、その額の差にかなり開きがあることは分かるかと思います。
業務内容
総合商社に公認会計士として転職すると、営業職として転職した場合は、公認会計士の資格はあってないようなもので、日常業務でほとんど、その知識を活かすシーンはないと思って頂いて良いかと思います。
また、バックオフィスである経理や財務、人事として転職した場合ですが、経理や財務のようなお金を扱う職種の場合は、実務経験が浅くても、課長などの管理職として転職することは可能だと思います。
また、社内的な立場としても、実務経験がなくても公認会計士の資格を持っているだけで、かなり羨望の眼差しでみられ、ある意味、プレッシャーになるかもしれません(笑)
なぜかと言いますと、人事でいう社会保険労務士と同じように公認会計士と経理や財務の実務は知識とは異なります。
知識はふんだんにあっても、実務経験がない分、実務で凡ミスを犯すこともよくあることですので、このあたりは、公認会計士の資格を持っている方でも注意が必要なことだと言えるでしょう。
公認会計士の知識がどう生かされるのか
営業職の場合は、ほとんど知識は活かすことができませんが、接待などの席では公認会計士の資格を持っていることが話のネタになることもあるようです。
活かすことができる職種としては、繰り返しになりますが、財務や経理、特に財務の職種は親和性が高いと言えます。
社内競争の激しさの程度
社内競争は、ゼロに等しく、あくまでその企業の評価制度により評価されますので、ライバルというよりも、仕事の成果や実績によると言えるでしょう。
ベンチャー企業
事業会社、特にベンチャー企業へ公認会計士として転職することは、その求職者の方にとっては、非常に良い経験になります。
ベンチャー企業の場合、まだまだ経営が弱体的であり、お金や経営の専門的なインプットが不十分です。
そこで、ベンチャー企業はヘッドハンティングなどを利用して、高い年収を提示して採用活動を行うこともよくあります。
転職後は、経営と一体的な立場で、経営にも関わることができますし、また、財務的なポジションも担当することになります。
仕事量は非常に多く、かなり激務が予想されますが、その恩恵として、転職した企業が上場した場合は、ストックオプションにより、一生遊んで暮らせるぐらいの大金を手にすることもあり得ることです。
転職時の年収も高い場合は2000万近くを提示され、最低でも1000万はあると思います。
転職のメリットとデメリット
転職のメリットは、求職者の方にもよりますが、今、事業会社で仕事をしていて、経営コンサルティング企業や銀行系、または上場前のベンチャー企業へ転職する場合は、業務内容、自分の知識や経験、年収の意味でも相当なメリットがあります。
しかし、事業会社から事業会社へ転職するのであれば、それほどメリットがあるとは言えないので、よほどの不満がない限り、現状維持の方が良いでしょう。
私の友人で何人か公認会計士の資格を持ち、それまで事業会社で仕事をしてきた友人は、転職=独立と考えていて、全員が自分で事務所を立ち上げて独立しています。
転職によって年収はどう変化するのか?
これについても、今、置かれた状況と転職先により異なりますので、一概に言えませんが、せっかく三大国家資格の公認会計士を有している訳ですから、自分に最もメリットがある転職を考えた方が良いと思います。
公認会計士の場合、ヘッドハンティングの対象にもなりますので、自分で転職活動をするよりも、ヘッドハンティングを待つということも転職戦略かと思います。
転職エージェントである私としては、年収については、公認会計士の場合、上がることはあっても、下がることはないと思います。
もし年収1000万円以上を目指すなら?
年収1000万とは、世間一般としては高額所得者に入ります。公認会計士の場合、この金額は普通です。むしろ、低い部類に入るかもしれません。
※もちろん公認会計士の資格を持っていても、400万前後の方もたくさんいます。
1000万以上を目指すのであれば・・・と特別な言い方をしていますが、普通に仕事をしていれば、公認会計士は1000万以上は普通に得ることができる年収で、特別感はありません。
2000万以上ともなれば、話は違いますので、ターゲットは経営コンサルティング企業、銀行系(特に外資系)、ベンチャー企業ではないかと思います。
そのほか、転職市場に少ない求人ですが、監査法人への転職があります。
公認会計士の資格を持っていて、TOIECや簿記の資格を持っていると有利としている情報サイトもありますが、転職エージェントである私から言わせるとTOIECはあって良いと思います。
しかし、簿記やその他の経営やお金に関する資格を持っていても公認会計士の試験や業務と重複がありますので、あまり意味がないです。
監査法人に在籍している場合は、是非とも上場準備の企業へコンサルティング経験を積んでほしいです。
そうすることで今後の公認会計士としての転職活動の幅は確実に広がり、高い年収を提示されたなかで転職することができます。
転職をする時期は?
公認会計士として転職する時期ですが、通期で採用枠はありますが、私が転職エージェントとして求人の傾向を見ると、12月と6月です。
3月決算という企業が日本には多いのですが、決算の数カ月前に求人を公開し、2カ月前に転職してもらい、業務を覚えてもらうという流れです。
半期決算もありますので、12月と6月がもっとも公認会計士の資格の売り時だと思います。
今回は公認会計士についてご紹介してきましたが、求職者のみなさんはどのような感想を持ちましたでしょうか。
公認会計士の資格を持っていれば、大きなミスがない限り、大体の方は、高い年収を得て経営に近いポジションで仕事をし、キャリアを積むことができます。
非常に難しい資格ですが、取得を目指す価値は十分にあると思います。最後までお読み頂きありがとうございました。