保育士は乳児院で勤務できるのか
昨今叫ばれている待機児童問題を引き合いに出すまでもなく、保育士はとても社会からのニーズが高い仕事です。
また、特に女性の場合は、幼いころに接した保育士さんの姿に憧れて、自分も保育士を志している…という方が、とても多くいます。
しかし、念願かなって保育の仕事に就いても、実は、保育士はとても転職回数が多い職業なんですね。
というのも、仕事の重大性に見合わず、お給料がとても低かったり、女性だらけの職場ならではのストレスに悩まされ、次の職場、また次の職場と、転々としてしまうケースが後を絶たないからなんです。
でも、保育士の職場は保育園しかないから、どこも似たような状況では?と思いますよね。
しかし実は、保育士がそのスキルを活かせる職場は、保育園だけではありません。その有力な選択肢のひとつが、「乳児院」です。
今回は、保育士が乳児院への転職を考えたときに知っておくべき情報を、一挙解説いたします。
- 筆者プロフィール
- 名前:諏佐諒次
保育業界専門の転職エージェントに勤務
転職経験:2回
現在の年齢:29歳
乳児院とは
乳児院とは、児童福祉法に基づいて設立される児童福祉施設の一種です。
生後間もない乳児から、おおむね就学時前までの子どもを対象として受け入れを行う点は保育園とほぼ重なりますが、施設としての機能は保育園と異なります。
というのも、乳児院は一日のうちのある時間帯について子どもの預かりをする保育園とは違い、一定期間に渡り子どもを養育することを主たる目的としているからです。
乳児院では、時として数か月以上の長期にも及んで子どもの預かりを行います。
その理由は、両親の死亡や病気、また経済的な理由によるものなど、さまざまあります。
親による虐待から逃れて…という、痛ましいケースも中にはあります。
そのような事情を背景に、子どもの受け入れを行うのが乳児院なのです。
乳児院は現在、全国に120箇所ほど存在し、およそ3,000人の子どもたちが入所しています。
保育士は乳児院でどんな仕事をするのか
では、乳児院に勤める保育士は、一体どのような仕事をするのでしょうか?
乳児院が保育園と最も異なる点は、24時間365日の体制で子どもを預かるという点です。
保育園であれば、一日の中で親が就業している時間帯に限られますが、乳児院は“入所施設”であるため、子どもを管理する時間に制限がなく、その分子どもに対しての責任は非常に大きくなるといえます。
また、例えば保育園では子どもたちを年齢で分け、年齢別に複数の担任を付けるケースが一般的です。
一方乳児院では、保育士が1対1で“自分の担当”の子どもを任されることがしばしばあるのです。
担当の子どもについては、保育士としてのみならず、正に保護者のような感覚で、病気になれば病院に連れていったり、足りないものがあれば買い物に行ってあげたり…といった身の回りのこともこなす必要があるのです。
乳児院で働くことのメリット・デメリット
それでは、乳児院で働くことのメリットとデメリットには、どんな点があるのでしょうか。
デメリットでいうと、何よりも業務負荷の高さが挙げられます。
通常の保育園に勤務する保育士も一般には激務であることが多いと言われますが、乳児院の場合はそれに輪をかけて業務の量・責任ともに増す傾向にあります。
もちろん24時間で子どもを預かる以上、夜勤もあります。
また、すでに述べた通り、単なる保育士という距離感を超えて、正に子どもの保護者としてこなさければならないものごとも沢山ありますので、心身ともにストレスは大きい仕事といえるでしょう。
また、待遇面も、通常の保育園勤務と比べてことさらに高いわけではありませんので(夜勤手当がつくなどの差はありますが)、そうした点でも恵まれているとはいいがたいです。
大変な勤務……でもやりがいは大きい
ただし、先にあげた責任の重さという点については、実はメリットにもなりうるものです。
というのも、大きな責任を持って子どものお世話をするというのは、何物にも代えがたい「やりがい」に直結するからです。
苦労ももちろん多いでしょうが、その分子どもたちが日増しに成長する姿を親と同じ目線で目の当たりにできるというのは、間違いなく大きな喜びとなるでしょう。
このやりがいを求めて、乳児院勤務を希望する保育士は少なくないのです。
乳児院の求人を探す方法
さて、実際に乳児院の求人を探す方法としては、どのようなやり方があるでしょうか。
そもそも認識しておく必要があるのは、乳児院の求人はとても少ない、ということです。
何しろ全国で120ほどしか施設がありませんから、それだけ求人が出てくる頻度は低くなります。
そういった状況の中ですから、欠員が出て求人が出たとしても、すぐ補充されてしまうこともよくあります。
では、乳児院への就業をより確実にするのはどういった方法があるのでしょうか?
施設への直接問い合わせが一番有効
ハローワークや求人サイトをこまめにチェックする、といったアクションはもちろん必須です。
ただし、それ以上に可能性を高める方法としては、「乳児院に直接問い合わせをするといった手段があります。
もちろん、連絡をした乳児院にたまたま欠員があって、幸運にも就業できた…というようなケースはごく稀です。
しかしながら、先行して自らの存在を院にアピールしておくことで、欠員が生じたときに優先的に面接をしてくれるといったこことはあるでしょう。
気になる乳児院があれば、ぜひ積極的に問い合わせをしてみるべきといえます。
この記事の筆者
名前:諏佐諒次
保険業界においてバックオフィスや営業など、様々な職種で7年間勤務。
その後、保育業界の転職エージェントを約1年間経験。
多くの保育士から転職相談を受け、よりよい職場を提供できるよう、転職理由の根本の把握に努めた。
現在は民間の教育機関の運営に携わり、主に人事関連の業務を行う日々。