キャリア採用とは?中途採用と何が違うのか?
最近、「中途採用」と同じ意味で「キャリア採用」という言葉を聞いたことはありませんか?
ここ最近、中途採用をあえてキャリア採用と言い換えて採用活動を行う企業が増えています。
現在、私は転職エージェントとして活動していますが、私の転職エージェントで取引のある企業も最近になってキャリア採用という企業が増えています。
今回は、企業が中途採用をキャリア採用と言い換えるようになった背景や、内容としては何が違うのかを中心にご紹介できればと思います。
今回の記事の目次
中途採用をキャリア採用と言い換えるようになった背景
誰しも聞いたことがある中途採用はその企業に求職者が『途中』で入社するために、中途採用と呼ばれます。
数としては少ないですが、中途採用を途中採用という企業も中にはあるようです。
さて、キャリア採用のキャリアとはどのような意味があるかご存じですか?
簡単に説明すると、キャリアとは一定の経験やスキルを保有した人(ビジネスマン)を言います。
企業は即戦力として中途採用を行う
ビジネスの世界では、キャリアとは一定の経験やスキルを持つビジネスマンを意味しますので、そのような求職者を「キャリア組」と呼ぶこともあります。
「一定の経験やスキルを持った人材に対して『中途』と表現することがあまり好ましくないのではないか」と企業が求職者に対して配慮するようになったために、中途採用ではなくキャリア採用と呼ぶようになっています。
日本語には同じ意味で印象が変わる言葉がありますが、中途採用とキャリア採用はこの典型だと思います。
キャリア採用と呼ぶようになった企業の実話
ここで、転職エージェントとして企業と取引をしている私の体験談をご紹介したいと思います。
その企業はIT業界にあるベンチャー企業で、創立から数年で年商50億の売り上げを誇る急成長中の企業です。
しかし、男性に特化した商材を扱っていたために女性求職者からの知名度はいまひとつで応募数が足りなかったのです。
その企業は人事のトップが優秀で、採用においても常に他の企業と違う方法はないかと模索していました。
そんな中で
『中途採用って何か違和感ない?』
『言い方を変えれば目新しいものになるから、言い方から変えてみない?』
という提案がありました。
結果的にその企業は中途採用からキャリア採用へと言い方を変えるのですが、それまでに多くの表現が飛び出し面白かったですし参考になりました。
その企業は転職エージェントを利用する一方で、効果測定の意味も含めて転職サイトにもいろいろな表現で掲載していました。
キャリア採用と表現方法を変えた期間は、その他の期間に比べて2倍の応募数が集まったそうです。
性別に関係なく数が2倍になっているので、女性求職者が少ないという課題も解決したのです。
キャリア採用する企業
中途採用をあえてキャリア採用と表現する企業には特徴があります。
どのような企業が該当するのか、転職エージェントとして知り得る範囲でご紹介したいと思います。
なお、中途採用をキャリア採用と表現することで採用方法や採用基準が変わるということは聞いたことがありませんので、言葉が違うだけと思っていただいた方が良いと思います。
外資系企業
キャリアとは正確な日本語ではないという人もいるぐらい微妙な言葉です。
和製英語と言われる場合もあります。
そのため、日本にある外資系企業では中途採用をキャリア採用と呼ぶ場合があります。
外資系企業の場合は横文字を多用するもともとの文化も影響しているようです。
つまり、外資系企業は求職者への配慮というよりも企業文化としての理由が大きいと思います。
同じように、外資系企業出身の経営者も中途採用をキャリア採用と表現することがあるようです。
IT業界
IT業界は比較的新しい文化を取り入れるなど、欧米的なフランクな企業が多くあります。
必ずスーツを着る必要もなく、自由な服装で成果さえ出せばそれでOKというフランクでドライな一面があります。
これは外資系企業の社風とかなり似ていると思います。
IT業界で起業する経営者は、元いた会社で強い発言力がなく日本的な企業文化をあまり好んでいないため、自分で会社を立ち上げたときには従業員に自由な裁量権を与えたいと考える傾向もあります。
IT業界の創業者は20代後半や30代前半の方が多く、ITバブルの時代に新卒だったという背景もありITの先駆けとなる欧米諸国の企業文化をまねる傾向があります。
ベンチャー企業
業界に関係なくベンチャー企業は、どのような情報でも大手企業よりも早くキャッチアップして活用しようとする傾向があります。
例えば新商品開発についても資金力のある大手企業が先に発売してしまうと明らかに劣るため、少しでも早くリリースして消費者に対してインパクトを与えようとします。
ベンチャー企業にはこのような企業傾向があるため、中途採用ではなくキャリア採用と呼ぶ文化があります。
私が転職エージェントとしてベンチャー企業との取引をしてきた中で感覚的に感じる統計です。
ベンチャー企業は知名度の低さから優秀な人材が集まらないという傾向があり、このあたりでも大手よりも早く使うことで採用活動の差別化を図りたいと考えているようです。
IT業界で、かつベンチャー企業だった場合はかなりの確率で中途採用をキャリア採用と呼ぶように感じます。
第2新卒と区別している企業
例外的に、ある企業の採用基準についてご紹介したいと思います。
求職者の中には、第二新卒のように一定の経験やスキルを持ち合わせていない求職者もいます。
第2新卒とは新卒で入社した企業を3年以内に退職した求職者を言いますが、この求職者が即戦力となる経験やスキルを持っている可能性はかなり低いと思います。
そのため、見習いという意味合いで第2新卒対象の採用を中途採用と言い、経験やスキルがある求職者をキャリア採用と呼ぶ企業があります。
この違いを入社した求職者全員に説明して、第2新卒枠で入社した求職者には見習いであることを理解してもらい早くキャリアを積んでほしいと期待を込めますし、キャリア採用で入社した求職者に対してはキャリア採用で採用した意味を理解してもらい即戦力として期待していることを伝えモチベーションアップに役立てています。
この企業の中途採用とキャリア採用では入社時の年収など、労働条件面に大きな差があります。
そのことも中途採用で入社した第2新卒の求職者には伝えて、入社後に活躍して年収面をアップさせてほしいという言葉も付け加えているそうです。
この動きは今後もっと加速すると言われていますので、見習いという立場で転職は嫌だということであれば第2新卒の方は最低でも3年以上は新卒で入社した企業で頑張り、キャリア採用に入るスキルや経験を積んだ方が転職活動として生産性が高いと思います。
キャリア採用の対象者
キャリア採用の対象者は一定の経験やスキルを保有する即戦力人材ですが、より具体的に職種によっても異なりますのでご紹介したいと思います。
経営企画職
この職種は企業の経営インパクトを与えるポジションであるため、経験が浅くても将来の幹部候補としてキャリア採用の部類に入ります。
特にベンチャー企業ではこの経営企画というポジションが務まる若手人材が少ないこともあり、即戦力ではなくとも十分にキャリア採用としての入社が可能です。
また、経験やスキルが十分な経営企画の方はどの企業でも即戦力として期待され、好条件での転職が可能と言われています。
人事職
人事という仕事は、従業員のパーソナルを理解して人のプロとして役割と責任があります。
企業は人が中心になりますので、従業員がいかに成果を出す行動を取れるかも人事の仕事です。
特に、人事のトップとしての転職はまず間違いなくキャリア採用と呼ばれるでしょう。
私は転職エージェントですので、人事の方と特に密接に取引を行いますが、企業の人事のトップはどの方も優秀でありキャリアと呼ぶにふさわしい人材ばかりです。
世間的にも人事という職種は印象が良く、人事のトップになれれば勝ち組というイメージもあるぐらいです。
財務職
財務の仕事は、今ある企業のお金をいろいろな手段を使って増やす仕事です。
お金は企業の運営には欠かすことのできない資源になりますので、資金があれば安定につながりますし、新しい事業へ投資することもできます。
このポジションは経営企画と同じように人材不足になっているため、一定の経験やスキルがなくともキャリアと呼ばれます。
転職エージェントとしてこのポジションの求人を受けたことがありましたが、企業の人事から『このポジションはうちの中核でかなり重要なので選考基準もかなり高いです』と言われました。
経営企画に近い内容の筆記試験があるなどハードルは高いですが、求職者としてはやりがいのある仕事だと思います。
意味があるキャリア採用を行う企業
キャリア採用という言葉は最近出始めた言葉ですが、実は既に当たり前のようにキャリア採用という言葉を使っている企業群があります。
それは大手商社や大手企業の重役クラスです。
大手商社は新卒採用を中心に人材獲得しますので、めったにキャリア採用は行いません。
大手商社には学閥というものが強く存在しており、ある大学以外はその段階で不採用となります。
入社難易度が非常に高くキャリア採用もめったに行わないために、大手商社で働く人材は優秀な人材という意味でキャリア組と呼ばれます。
日本において、キャリアという言葉の発信元は大手商社で働くビジネスマンを意味するという説があります。
大手企業の役員クラスには大手商社のような絶対的な学閥は存在しませんし、大手商社ほどキャリア採用の回数が少ないということはありません。
しかし、大手企業の役員クラスともなれば、ベンチャー企業の社長に匹敵するぐらい優秀な人材であることは間違いないために、ここでも優秀=キャリアとなるわけです。
転職エージェントの求人
転職エージェントのキャリアアドバイザーから紹介された求人で「将来の幹部候補」というくくりを見たことはありませんか?
ただし、これは転職エージェントと企業の間での採用戦略であり、どちらかと言えば採用成功を目的として求人の打ち出し方を工夫しているものです。
実際には、どの企業も将来の幹部候補にはもっと大きな予算を割いてヘッドハンティングで採用します。
または、他社の毛色を持たない新卒をゼロからたたき上げて育てることが一般的です。
中途採用者も実績に応じて幹部に昇格することはありますが、まだ実績も分からない中では幹部候補が入社するとは考えていないのです。
親切なキャリアアドバイザーで求職者視点に立つ場合は、この事実を遠回しに教えてくれます。
私もかつて取引した企業から、『優秀な人材が多く応募するので、とりあえず将来の幹部候補としてください』と言われたことがあります。
この言葉から分かるように、企業は本気で将来の幹部候補を獲得しようとは思っていません。
本当に優秀で企業の幹部候補になり得る人材は、自ら転職市場に出ないということを知っているためです。
将来の幹部候補となるかどうかは入社して実力を見極めてから判断することであり、面接もしてない求人票のタイミングで将来の幹部候補採用としているものは真に受けない方が良いです。
いい加減なキャリアアドバイザーもいる
キャリアアドバイザーの中にはいい加減なことをアドバイスする人材もいます。
求人に将来の幹部候補などと書いてはいないにも関わらず、独断でこのようなことを求職者に言います。
転職エージェントの交流会でもこのようなことは問題になっています。
特に第2新卒の方は、前向きに考えられることは少なく、入社前に将来の幹部候補として考えることはありません。
ビジネスライフのリスタートと考えて「将来の幹部候補」と聞くと応募したくて仕方なくなるでしょうが、第2新卒はブラック企業の労働力となることが多いため、特に将来の幹部候補とうたっている求人に出会ったら慎重に判断するのが得策です。
キャリア採用と中途採用の違い
私が誰かに『キャリア採用と中途採用の違いは何ですか?』と聞かれたら、こう答えます。
『言葉だけの違いで意味は同じ』
一部の業界や企業では明確にキャリア採用と中途採用の違いについて基準を持っていますが、あくまでマイノリティーです。
日本にあるほとんどの企業はこの二つの言葉に内容的な違いを設けていません。
中盤でご紹介した企業のように、第2新卒と経験やスキルのある人材をキャリアと分けることは今後増えると思います。
求職者の皆さんが企業や転職エージェントの採用戦略で『将来の幹部候補』、『将来のキャリア候補』といううたい文句に踊らされず良い転職活動、良い転職ができることを祈り、今回はこれで話を終わりにしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。