ベクトルを利用してみた(転職エージェントプロが語る)
私はこれまで3度ほどの転職経験があるのですが、1度だけ株式会社ベクトルの転職サポートを利用したことがあります。
このベクトルは転職エージェントとしては中堅クラスに位置しており、本社を東京において大阪に拠点を持っています。
ベクトルは他事業で収益モデルが完成されているため、無理な押し込みなどは一切ありません。
ただ、在籍するキャリアアドバイザーの多くが高学歴であるため、会話がロジカルで若干機械的な感じもします。
職種については人事・経理・財務・法務・総務・一般事務などの管理系の職種に強く、役職についてはハイクラス(いわゆる課長以上の管理職)に強いです。
転職エージェントとしてのシェアは低いものの、強みである職種・ポジションでのシェアだけで見れば大きな転職エージェントです。
今回の記事の目次
登録から担当者決定まで
検索エンジンで転職エージェント関連のキーワードで検索しても、ベクトルは上位表示されません。
私がベクトルを知ったきっかけは、ある転職エージェントで紹介された求人の応募意思を伝えると、
『この求人は提携している他の転職エージェントが保有している求人ですので、そちらへ出向いてください』
と言われたことです。
その提携している転職エージェントがベクトルでした。
ちなみに私は人事経験もあり、転職エージェントの情報はある程度把握していましたが、ベクトルのことは全く知りませんでした。
はじめてのベクトル
来社日時などを決める電話連絡は翌日にあり、フットワークは軽かったです。
後日求人紹介のために株式会社ベクトルへ登録に向かうのですが、なかなかのビルにオフィスを構えています。
オフィスのエントランスも非常に立派で『儲かってるんだろうな』と勝手に思ったものです。
受付を済ませて個室に通され、担当となるキャリアアドバイザーと対面します。
キャリアアドバイザーは男性2名でした。
1名は今回の求人を発注した企業の担当で、もう1人が私の担当となるキャリアアドバイザーです。
2名とも40歳前後だったように思います。
私の個人情報はベクトルを紹介してきた転職エージェントと共有してあり、面談までに用意するものはありませんでした。
なお、ベクトルは従業員数が50名ほどで転職エージェントに関わっている従業員も少ないことから、担当のキャリアアドバイザーを変更したい場合でも変更は不可と聞いています。
実際の面談内容
面談はあいさつから始まり、これまでの私の紹介、ヒアリング、そして求人の説明という流れです。
面談時間は1時間半程度でした。
面談内での私の自己紹介には逐一チェックが入り、実績に対しての具体的な説明が求められます。
冒頭でお伝えしたようにかなりロジカルな話し方をしてきますので、求職者の方によっては冷たい印象を受けるかもしれませんが、本人はそんなつもりはないと思いますので許してあげてください(?)
面談中は笑顔もなく、本当に機械的なビジネスの一貫という印象で「このキャリアアドバイザーとは相性が合わないな」と思ったのを覚えています。
- ベクトルを知っていたか?
- 今回の求人に応募したいと思った理由
- 今回の求人企業のイメージは?
- 私自身の長所と短所
- 現職の入社理由と退職(希望)理由
- 転職の諸条件(会社規模、職種、勤務地、年収、労働時間など)
どちらかと言えば、私が希望した企業と親和性のある内容が中心でした。
ヒアリングが終わると求人の説明になりますが、これも単純に求人票をただ読み上げているだけです。
最後に「何か質問はありますか?」と聞かれます。
私は特に疑問な点がなかったので「ありません、大丈夫です」と答えたのですが、「面接では質問力も試されるので、もう少し質問事項を考えておいた方が良い」とアドバイスを受けました。
面談の場で求人紹介は1社
自分としては、せっかく訪問する訳だし何社か紹介があるのかな?と思っていたのですが、実際にベクトルからの紹介された企業は1社のみでした。
ベクトルとしては私が希望する求人に優先的に入社してもらいたい思いがあったようで、この求人だけしか紹介しなかったようです。
これを皆さんがどう取るかは別として、ベクトルでは複数求人を同時に紹介するよりも、その時に優先的にクローズした求人を限定的に紹介してきます。
複数紹介を打診しても「会社の方針として、複数紹介は行っていない」と断られました。
表向きは「今回のこの求人に集中しましょう」と前向きな言い方をされるのですが、融通が利かないなと思いました。
私は転職エージェントを何社も利用したことがありますが、紹介が1社のみで終わった転職エージェントはベクトルのみです。
ベクトルという転職エージェントを後日調べてみたのですが、どちらかと言えば利益の出どころとなる企業目線に立った転職サポートのようです。
企業からの希望に沿って活動しますから、求職者にもその影響は少なからずあると言えます。
応募企業の選定と決定まで
しかも、質問事項がなかったために再度求人票を確認して検討してほしいとあり、その場での応募手続きをすることができなかったのです。
翌日あらためて応募意思を伝えたのですが、そこでも「企業に対して、どのような感想がありますか?」と聞かれました。
ベクトルは面接の内容が悪ければ企業からの信用を失うと考え、応募手続きの前に徹底した求職者の厳選をしているようです。
このあたりも企業目線の転職エージェントですね。
最終的に応募手続きはできたのですが、すっきりしない対応でした。
また、履歴書や職務経歴書の添削サービスは一切なしです。
「自己責任としてしっかりと準備してもらい、転職エージェントはそこには関与しない」と言われました。
企業の質問にはやけに厳しいのですが、選考で重要なレジュメ関係には頓着していないようで矛盾を感じました。
書類選考通過
私が応募した企業への応募が済み、後日選考結果がメールで送られてきました。
このメール文面も「求職者の名前と企業名を差し替えてコピペしてるんじゃない?」というぐらい淡泊な内容でした。
書類選考は自力で通過することができました。
管理系の職種についている私の友人もベクトルを利用した経験がありますが、書類選考通過率は他の転職エージェントより低いそうです。
ベクトル経由で書類選考が通過した場合は、自信を深めて良いと思います。
選考から内定を勝ち得るまで
一般的に狭き門といわれる書類選考を通過し、次は面接フェーズとなります。
この時に応募した企業の面接回数は3回でした。
ベクトルは企業には評判が良いようで、それぞれの面接冒頭で『ベクトルさんの紹介なら期待できそうだね』と言われました。
面接官のこの発言からも分かる通り、ベクトルは応募者にかなり面接教育をしていると思います。
ベクトルでは面接が終わると電話報告は必須です。
特にゴリ押しされるもなく、これまた機械的な対応です。
ただ、面接での質問については事細かく聞かれます。
ちなみに、これだけ質問事項を把握したがりますが、面接前の対策では質問の事前共有がありませんでした。
この後面接が進み内定を頂いたのですが、結果的に辞退しています。
ベクトルの企業視点が強く、内定交渉でこじれたのです。
内定後の入社条件の調整
転職エージェントのサポートの一つに、内定後の条件交渉を代理で行ってくれるといったものがあります。
このサービスはベクトルにもあります。
求職者にとっては非常に有利なものですが、ベクトルではここでも機械的であまり対応はしてくれません。
どの転職エージェントも内定時は『おめでとうございます』の一言があるのですが、ベクトルのキャリアアドバイザーには何も言われませんでした。
機械的なマニュアル通りの対応も必要だと思いますが、私の担当はちょっと人間味がなかったので残念な感じは否めません。
内定後、また、内定辞退について
ベクトル経由で内定した企業には入社したかったのですが、内定条件通知書に「人事と兼務で総務」との記載がありました。
ベクトルに聞いてみると「人事と総務は親和性があり、その企業としては急に総務の従業員が産休となるために兼務でお願いしたいと希望があります」とあったのです。
私としては特に問題は感じなかったのですが、それであれば給与面でもう少し交渉してほしいとベクトルへ依頼したのです。
しかし、一応は打診したものの給与交渉はできないとの回答でした。
割に合わない条件で入社しても良いことはありませんし、総務の後任を採用する方向もないとのことで、激務になるであろう仕事と給料が割に合わないと考えたのです。
当初の求人内容と条件が違う訳ですから、求職者目線の転職エージェントであればしっかりと当初の条件に戻すか、給与面での交渉を落ち着かせたでしょう。
この理由でベクトルに入社辞退を伝えると、「この理由では企業は納得しない」として面談を求めてきました。
内容的にかなり不満な表情でしたが、私は「条件が変わらない限りは内定辞退します。ここまでこじれて条件が戻ったとしても気まずくて入社できない」と伝えたのです。
結果的には辞退することができましたが、非常に後味が悪い結果となりました。
ゴリ押しではないものの、求職者にとっては大切な転職活動の最終局面で企業の言いなりになる転職エージェントはいかがなものかと感じました。
あくまでこれが絶対ではなく私の体験談にすぎないので、この記事を参考にベクトルを完全否定しないようお願いします。
私の場合は、たまたま企業の言いなりになる企業視点100%のキャリアアドバイザーだっただけかもしれませんので。
ベクトルは管理系の求人に強い
最後となりますが、ベクトルは転職エージェントとしての規模が少ないこともあり、求人数は少ないですが管理系の職種には強いです。
特に経理や財務という職種には強みがあります。
キャリアアドバイザーの中には企業視点の強い方もいますが、強みのある求人を探すにはメリットがあるかもしません。
また、ベクトルは求人数が少ない穴埋めとして、同規模の転職エージェントと連携して求人数を広げています。
もし希望する求人がなければ、提携している転職エージェントから紹介ができないか確認してみることも一つの手です。
私自身は良い結果にはなりませんでしたが、相性の良い求職者はいると思います。
あまり転職エージェントには関与しないでほしいという場合はお勧めの転職エージェントと言えるでしょう。
それでは、皆さんの転職成功が少しでも早く実現することを祈り、今回は終わりにしたいと思います。
この記事の筆者
小玉 崇(仮名)
1975年生まれの40歳。
人材業界にて転職者の支援に一貫して従事。
転職者に常に寄り添う事をモットーに、転職後のフォローも行いながら、これまで数百名の転職者を支援。
特にIT業界やベンチャー企業へのパイプが強みとしながら、現在も初心を忘れず人材業界で日々、精進中。
人材業界は経済の波に左右されやすい業界であるため、先を見ながら転職者のエージェント活動を行っている。